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14章
助けを求める声 ②
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マングローブの林の中で連絡を受けたシュトラールが討伐した魔獣を手から離して直ぐに戻ると言ったが、船で2時間かかる場所で、しかもマングローブの林の中は上空から見えにくい為にスピナが迎えに来ても見付ける事は難しいかもしれない。
そう考えてシュトラールがカリッと爪を噛むとリュエールが会話を聞いて「ふむ」と思案する。
「シュー、ここら辺一帯を円状に木を切り倒すよ!」
「へっ?なんで?」
「スピナに見つけてもらいやすくするなら周りに物がない方が良いでしょ?」
「そうだね。やろうリュー!」
「せーのぉー!」と声を出して2人がマングローブに生えている木々を薙ぎ倒し始める。
メキメキとなぎ倒されていく木々の音と破壊音に魔獣が集まっては2人が邪魔だとばかりに木を振り回し倒していくのでスピナが2人を見付けた時は、魔獣の死体の山を築き上げていた。
「あたしはそんなに大きいドラゴンじゃないからリューは後で自力で船で帰ってくれる?」
「それは構わないよ。この魔獣もどうにかしないといけないしね」
「リュー、解体苦手なのにごめんね」
「別にいいよ。シューは母上と僕らの妹か弟を助けに急いで」
「わかった。スピナお願い!」
「最速で行くよー!」
スピナにシュトラールが乗るとスピナが風を操り加速して飛んでいく。
リュエールが「シュー、落ちなきゃいいけど」と必死にスピナにしがみ付いている弟の姿を見送る。
「さーて、僕も急いで帰らなきゃな。この魔獣の山・・・素材だけ持ち帰りで良いか」
バックパックから小さなナイフを取り出して、魔獣の角や爪をより分け始めたリュエールの耳にドシーンドシーンという地響きの様な足音が近づいてくる音が聞こえる。
鼻をひくつかせるが倒した魔獣の血の匂いで少し鼻が利きづらくなっている為に、小さく魔法を口にする。
水魔法で血を洗い流しマングローブの林の下を流れる川に流していくと、川の中で小さな水しぶきが上がる。
「うわー・・・人食い魚の数すごいなぁ・・・まぁ要らない魔獣は川に捨てればいいか」
ドシーンとまた音が近付き、マングローブの林から鳥がバサバサと音を立てて飛び立っていく。
マングローブの林の間から足音を立てている主が姿を現す。
大きな体に5つ首が付いている10メートル程のヒドラがリュエールを見下ろす。
リュエールにヒドラの顔が突っ込んできて、慌てて避けると、山積みにした魔獣の死体をヒドラがバリバリと音を立ててかみ砕く。
「血の匂いに釣られてきちゃったのか・・・でも、素材を採って無いからあげないよ!」
リュエールが【破壊】を唱えながらヒドラの首を触るが、大きさが大きさな上に首は5つ。
【破壊】でもそれ程のダメージは言っていないらしく、骨が折れても自己回復で次の瞬間には治っている。
「うっそぉー・・・」
Cランクの討伐で来れる様な所で危険な魔獣は少ないだろうと踏んでの攻撃で【破壊】でイケると思ったが、少し計算違いだったかもしれないと内心冷や汗を垂らしながらも、自己回復があるし大きさからして自分には気が付かないかもしれないと、距離を取ると魔獣の死体を無視してリュエールの方へ5つの顔が一斉に向く。
シャーッと5つの口から威嚇の音がして、リュエールに襲い掛かってくる。
「うわわっ」
足場の悪いマングローブの木々の根っこに足を取られながら、ヒドラって危険度どのくらいだったかな?と記憶を探っていく。
逃げまどいながら、記憶を探るのを止めて腕輪に魔力を通してハガネに連絡を取る。
『リューか?どうした』
「ハガネ、ヒドラって危険度ランク幾つかわかる?」
『ヒドラはSだな。あいつは再生能力が高ぇから見掛けても手ぇ出すんじゃねぇぞ?』
「あー・・・倒し方ってわかる?」
『倒し方?んなもんSランクの冒険者がチーム組んで行くしかねぇだろ?ってか、お前何してんだ?』
ボンッと真横に炎が吐き出され、リュエールが「ええええ?!!!」と声を上げる。
魔法通信をしていたハガネがリュエールの声とメキメキと轟音を立てる音に嫌な予感に「まさかな・・・」と首を振る。
「ハガネ!ヒドラが火吹いてくるんだけど?!」
『だから、お前何してんだー!!!』
「仕方ないでしょ!ヒドラが魔獣の血の匂いで来ちゃったんだから!それより倒し方なにかない?」
『・・・ハァー・・・ヒドラはとにかく見つかっても攻撃しなきゃ襲ってこねぇけど、その様子ならやっちまったんだな?』
「まさかCランクの狩場に危険度Sが居るなんて思わないよ?!」
『仕方ねぇから【破壊】を使え。それしかねぇだろ?』
「・・・試したけど、直ぐさま回復しちゃってダメージになってなかった」
『打つ手なしかよ・・・シューはどうした?』
「母上の所に行ったばかりだよ」
『不味いな。ヒドラに目を付けられると中々諦めてくれねぇからな。弱点が無いか調べてくるから、それまで何とか逃げ回っとけ』
「お願いするよ」
リュエールが「不味い事になっちゃったな」とヒドラの攻撃を避けながら、なるべく木々の間をすり抜ける様にして逃げ回る。
産院の待合い室からハガネが病室のドアを開ける。
体力温存の為にベッドに横になっている朱里と朱里の手を握るルーファスの姿を見てハガネが少し尻込みするが、迷っている場合では無いと口を開く。
「旦那、少し話がある」
「何だ?」
「別の部屋で話したい」
朱里の手を離すのは心配だが、ハガネの顔から緊急だと察して朱里の手にキスを落とすとハガネと一緒に部屋を出る。
「で、何事だ?」
「リュエールが不味い事になってる。ヒドラを1人で相手にしてるみてぇだ」
「ハァッ?!何をしているんだリューは!!」
ルーファスが眉間にしわを寄せて天を仰ぐように額に手を当てる。
「ヒドラの弱点とか何か分からねぇか?」
「倒し方は5つの首を同時に落とすぐらいしかないだろうが、1人ではどうする事もできないだろう・・・行ってやりたいが、アカリから離れるわけにもいかんしな・・・戦えそうな奴をニクストローブに乗せて連れて行かせるしかないか」
「それしかねぇよな・・・リューが持ちゃぁいいんだが・・・」
ルーファスとハガネが難しい顔をしながら重いため息を吐いた。
そう考えてシュトラールがカリッと爪を噛むとリュエールが会話を聞いて「ふむ」と思案する。
「シュー、ここら辺一帯を円状に木を切り倒すよ!」
「へっ?なんで?」
「スピナに見つけてもらいやすくするなら周りに物がない方が良いでしょ?」
「そうだね。やろうリュー!」
「せーのぉー!」と声を出して2人がマングローブに生えている木々を薙ぎ倒し始める。
メキメキとなぎ倒されていく木々の音と破壊音に魔獣が集まっては2人が邪魔だとばかりに木を振り回し倒していくのでスピナが2人を見付けた時は、魔獣の死体の山を築き上げていた。
「あたしはそんなに大きいドラゴンじゃないからリューは後で自力で船で帰ってくれる?」
「それは構わないよ。この魔獣もどうにかしないといけないしね」
「リュー、解体苦手なのにごめんね」
「別にいいよ。シューは母上と僕らの妹か弟を助けに急いで」
「わかった。スピナお願い!」
「最速で行くよー!」
スピナにシュトラールが乗るとスピナが風を操り加速して飛んでいく。
リュエールが「シュー、落ちなきゃいいけど」と必死にスピナにしがみ付いている弟の姿を見送る。
「さーて、僕も急いで帰らなきゃな。この魔獣の山・・・素材だけ持ち帰りで良いか」
バックパックから小さなナイフを取り出して、魔獣の角や爪をより分け始めたリュエールの耳にドシーンドシーンという地響きの様な足音が近づいてくる音が聞こえる。
鼻をひくつかせるが倒した魔獣の血の匂いで少し鼻が利きづらくなっている為に、小さく魔法を口にする。
水魔法で血を洗い流しマングローブの林の下を流れる川に流していくと、川の中で小さな水しぶきが上がる。
「うわー・・・人食い魚の数すごいなぁ・・・まぁ要らない魔獣は川に捨てればいいか」
ドシーンとまた音が近付き、マングローブの林から鳥がバサバサと音を立てて飛び立っていく。
マングローブの林の間から足音を立てている主が姿を現す。
大きな体に5つ首が付いている10メートル程のヒドラがリュエールを見下ろす。
リュエールにヒドラの顔が突っ込んできて、慌てて避けると、山積みにした魔獣の死体をヒドラがバリバリと音を立ててかみ砕く。
「血の匂いに釣られてきちゃったのか・・・でも、素材を採って無いからあげないよ!」
リュエールが【破壊】を唱えながらヒドラの首を触るが、大きさが大きさな上に首は5つ。
【破壊】でもそれ程のダメージは言っていないらしく、骨が折れても自己回復で次の瞬間には治っている。
「うっそぉー・・・」
Cランクの討伐で来れる様な所で危険な魔獣は少ないだろうと踏んでの攻撃で【破壊】でイケると思ったが、少し計算違いだったかもしれないと内心冷や汗を垂らしながらも、自己回復があるし大きさからして自分には気が付かないかもしれないと、距離を取ると魔獣の死体を無視してリュエールの方へ5つの顔が一斉に向く。
シャーッと5つの口から威嚇の音がして、リュエールに襲い掛かってくる。
「うわわっ」
足場の悪いマングローブの木々の根っこに足を取られながら、ヒドラって危険度どのくらいだったかな?と記憶を探っていく。
逃げまどいながら、記憶を探るのを止めて腕輪に魔力を通してハガネに連絡を取る。
『リューか?どうした』
「ハガネ、ヒドラって危険度ランク幾つかわかる?」
『ヒドラはSだな。あいつは再生能力が高ぇから見掛けても手ぇ出すんじゃねぇぞ?』
「あー・・・倒し方ってわかる?」
『倒し方?んなもんSランクの冒険者がチーム組んで行くしかねぇだろ?ってか、お前何してんだ?』
ボンッと真横に炎が吐き出され、リュエールが「ええええ?!!!」と声を上げる。
魔法通信をしていたハガネがリュエールの声とメキメキと轟音を立てる音に嫌な予感に「まさかな・・・」と首を振る。
「ハガネ!ヒドラが火吹いてくるんだけど?!」
『だから、お前何してんだー!!!』
「仕方ないでしょ!ヒドラが魔獣の血の匂いで来ちゃったんだから!それより倒し方なにかない?」
『・・・ハァー・・・ヒドラはとにかく見つかっても攻撃しなきゃ襲ってこねぇけど、その様子ならやっちまったんだな?』
「まさかCランクの狩場に危険度Sが居るなんて思わないよ?!」
『仕方ねぇから【破壊】を使え。それしかねぇだろ?』
「・・・試したけど、直ぐさま回復しちゃってダメージになってなかった」
『打つ手なしかよ・・・シューはどうした?』
「母上の所に行ったばかりだよ」
『不味いな。ヒドラに目を付けられると中々諦めてくれねぇからな。弱点が無いか調べてくるから、それまで何とか逃げ回っとけ』
「お願いするよ」
リュエールが「不味い事になっちゃったな」とヒドラの攻撃を避けながら、なるべく木々の間をすり抜ける様にして逃げ回る。
産院の待合い室からハガネが病室のドアを開ける。
体力温存の為にベッドに横になっている朱里と朱里の手を握るルーファスの姿を見てハガネが少し尻込みするが、迷っている場合では無いと口を開く。
「旦那、少し話がある」
「何だ?」
「別の部屋で話したい」
朱里の手を離すのは心配だが、ハガネの顔から緊急だと察して朱里の手にキスを落とすとハガネと一緒に部屋を出る。
「で、何事だ?」
「リュエールが不味い事になってる。ヒドラを1人で相手にしてるみてぇだ」
「ハァッ?!何をしているんだリューは!!」
ルーファスが眉間にしわを寄せて天を仰ぐように額に手を当てる。
「ヒドラの弱点とか何か分からねぇか?」
「倒し方は5つの首を同時に落とすぐらいしかないだろうが、1人ではどうする事もできないだろう・・・行ってやりたいが、アカリから離れるわけにもいかんしな・・・戦えそうな奴をニクストローブに乗せて連れて行かせるしかないか」
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