380 / 960
13章
コーデンからの移動
しおりを挟む
熱も下がり、体調も万全でギルドに朱里が顔を出すと冬場は冒険者が別の国へ行ってほとんど居ないアンギーテンのコーデン支部に冒険者が集まっていた。
「おはようございます。凄い人ですね?」
ミンクを見付けて朱里が声を掛ければ、ミンクが朱里の腕を掴んで急いで冒険者ギルドの事務所の方へ朱里を連れて行く。
ルーファス達が低く唸り声を上げながら付いていくと、ミンクが困り果てた表情でルーファス達に「シーッ」と指を立てる。
「デンシャクさんを捕えた事でミヤ実技官の名前が冒険者ギルドの各地に情報として載りまして、A+ランクの竜人相手にCランクが勝った上に犯罪を暴いたという事で、ミヤ実技官をパーティーへスカウトしに来た冒険者が押し寄せているんです」
「ええー・・・あの人達全員ですか?」
「全員です。中にはミヤ実技官のランクを疑っている方もいますので、決闘を申し込まれたりする場合もあります。危険ですので早めにお知らせしたかったのですが、職員も尾行されていまして、お知らせが遅くなり申し訳ありません」
どうしよう?と、ルーファスに目配せをしたら、ルーファスがスカートを口で引っ張ってくる。
しゃがんで顔を近づけると耳元で「オレ達が居ると余計に目立つ。幻惑を使ってオレ達を人型に見せているとでも言ってここから脱出しよう」と言い、頷くとルーファスがリュエール達を毛づくろいする振りをしながら耳打ちしていく。
「ランク剥奪実技官としての最後のお仕事はどうなりますか?」
「それなんですが、この状態ですから宿がバレるとミヤさんも危険ですから、待ち合わせ場所を決めましょう。このコーデンの街の先にエクルドという街があるんですが、そこに『ピーナ』というお菓子の専門店があるんです。お恥ずかしながら、私の妻が営んでいる店でして、そこで待ち合わせでも良いでしょうか?」
「わぁ、お菓子屋さんなんて素敵ですね。では『ピーナ』で待ち合わせですね。私は幻惑魔法で魔獣を人型に見せて脱出しますので、後程お会いしましょう」
ミンクが「え?」と言った時には、朱里が杖を適当に振って「幻惑」と言い、ルーファス達が人型に戻る。
「うわっ・・・凄いですね・・・」
「ふふっ。では」
ルーファスが朱里を抱き上げると裏口のドアから先にリュエールとシュトラールが冒険者ギルドを出る。
少し時間をおいてから、朱里とルーファスも出ていく。
「ルーファス、結構ドキドキしますね」
「クククッ。どうせならオレと一緒の時にだけドキドキしておけ」
「それはいつでもしていますよ。ふふーっ」
「んーっ。オレの番が可愛い」
ルーファスに猫可愛がりされながら人気のない公園に行くと、リュエールとシュトラールがどこで買ったのか大きな串焼きソーセージを食べて待っていた。
「あ、シューそっち頂戴。」
「じゃ、リューのも一口頂戴」
一口ずつ食べあいっこをして、朱里達に気付くと「遅いよー」とソーセージを一気に串から引き抜いて食べて、串を公園のゴミ箱へ投げ入れると、満足そうな顔をして2人に駆け寄る。
「いつの間にソーセージなんて買ったの?」
「ギルドの前にいつの間にか露店が出来てた」
「冒険者が集まると商魂たくましい人は露店出すからね」
朱里が「ギルドから離れる為に出たのに、入り口前に舞い戻るとは肝が据わった子供達だわ」と苦笑いしながら、朱里の髪をマフラーの様に首に巻き付けていたグリムレインに移動を告げると、辺り一面に真っ白な雪を降らせて視界を遮ると、体を大きくしてコーデンの街を飛び立った。
「ミンクさんの奥さんのお店楽しみだね」
「お菓子食べれるかな?」
「お菓子の種類にもよるね」
朱里と子供達2人がお菓子を楽しみにしながらはしゃいでいるのを見てルーファスも自然と笑みが零れる。
うちの番も子供達2人もとても可愛い。家で待っている2人の子供も可愛いし、今度お菓子の詰め合わせでも用意してみようか?しかし、お菓子なら可愛い番が作った物が一番美味いから他の国から珍しいお菓子の材料でも取り寄せて作ってもらうのも良いかもしれない。
「ルーファスどうかしましたか?」
「いや、アカリに帰ったら何を作ってもらうかなと考えていた」
「今回は迷惑を掛けちゃった分いっぱい腕を振るって作りますよ!」
ふんすっと言いながら小さくガッツポーズをする朱里にリュエールとシュトラールが「ジャガイモをお肉で包み込んでパリパリに焼いたやつ!」「パイ包みのミンチ肉が入ってたやつ!」と言ってグリムレインが「我はとろとろに煮込んだ角煮が良い!肉は嫁と一緒に獲りに行く!」と騒ぎ、狩りに行くなら自分達もついていく!と子供達が騒いだ。
騒いでいるうちに隣り街のエクルドが見え、道の途中でグリムレインが降り立つと、他の街にもミヤをスカウトに来た冒険者が居るといけないので人型のまま5人で歩いてエクルドの街へ入る。
ミンクの妻が経営しているというお菓子屋『ピーナ』は街の中央にある噴水通りにある店の1つで、ギモーヴ専門店だった。
ギモーヴはマシュマロに似ているお菓子で生マシュマロと言われていて、マシュマロがメレンゲ入りならギモーヴはメレンゲの入っていない物で、マシュマロよりもっちゃりしてフルーツピューレを使う事からフルーツの味わいが濃厚なもの。
作り方としてはジャムかフルーツピューレ、砂糖に水飴に粉ゼラチンにコーンスターチに水くらいなもので、湯煎しながらボウルの中で泡立てて型に流し込むだけ。一晩常温で寝かして、切り分けたらコーンスターチをまぶすだけ。
簡単な物だけど、ジャムの種類やフルーツピューレの多さを考えれば種類はとても多くなる。
異世界にもオシャレなお菓子があるんだーと、朱里が『ピーナ』の扉を開くと中に居た店員が「いらっしゃいませ」と振り返る。
振り返った女性の顔を見て朱里が少し目を丸くする。
「日本人・・・?」
「おはようございます。凄い人ですね?」
ミンクを見付けて朱里が声を掛ければ、ミンクが朱里の腕を掴んで急いで冒険者ギルドの事務所の方へ朱里を連れて行く。
ルーファス達が低く唸り声を上げながら付いていくと、ミンクが困り果てた表情でルーファス達に「シーッ」と指を立てる。
「デンシャクさんを捕えた事でミヤ実技官の名前が冒険者ギルドの各地に情報として載りまして、A+ランクの竜人相手にCランクが勝った上に犯罪を暴いたという事で、ミヤ実技官をパーティーへスカウトしに来た冒険者が押し寄せているんです」
「ええー・・・あの人達全員ですか?」
「全員です。中にはミヤ実技官のランクを疑っている方もいますので、決闘を申し込まれたりする場合もあります。危険ですので早めにお知らせしたかったのですが、職員も尾行されていまして、お知らせが遅くなり申し訳ありません」
どうしよう?と、ルーファスに目配せをしたら、ルーファスがスカートを口で引っ張ってくる。
しゃがんで顔を近づけると耳元で「オレ達が居ると余計に目立つ。幻惑を使ってオレ達を人型に見せているとでも言ってここから脱出しよう」と言い、頷くとルーファスがリュエール達を毛づくろいする振りをしながら耳打ちしていく。
「ランク剥奪実技官としての最後のお仕事はどうなりますか?」
「それなんですが、この状態ですから宿がバレるとミヤさんも危険ですから、待ち合わせ場所を決めましょう。このコーデンの街の先にエクルドという街があるんですが、そこに『ピーナ』というお菓子の専門店があるんです。お恥ずかしながら、私の妻が営んでいる店でして、そこで待ち合わせでも良いでしょうか?」
「わぁ、お菓子屋さんなんて素敵ですね。では『ピーナ』で待ち合わせですね。私は幻惑魔法で魔獣を人型に見せて脱出しますので、後程お会いしましょう」
ミンクが「え?」と言った時には、朱里が杖を適当に振って「幻惑」と言い、ルーファス達が人型に戻る。
「うわっ・・・凄いですね・・・」
「ふふっ。では」
ルーファスが朱里を抱き上げると裏口のドアから先にリュエールとシュトラールが冒険者ギルドを出る。
少し時間をおいてから、朱里とルーファスも出ていく。
「ルーファス、結構ドキドキしますね」
「クククッ。どうせならオレと一緒の時にだけドキドキしておけ」
「それはいつでもしていますよ。ふふーっ」
「んーっ。オレの番が可愛い」
ルーファスに猫可愛がりされながら人気のない公園に行くと、リュエールとシュトラールがどこで買ったのか大きな串焼きソーセージを食べて待っていた。
「あ、シューそっち頂戴。」
「じゃ、リューのも一口頂戴」
一口ずつ食べあいっこをして、朱里達に気付くと「遅いよー」とソーセージを一気に串から引き抜いて食べて、串を公園のゴミ箱へ投げ入れると、満足そうな顔をして2人に駆け寄る。
「いつの間にソーセージなんて買ったの?」
「ギルドの前にいつの間にか露店が出来てた」
「冒険者が集まると商魂たくましい人は露店出すからね」
朱里が「ギルドから離れる為に出たのに、入り口前に舞い戻るとは肝が据わった子供達だわ」と苦笑いしながら、朱里の髪をマフラーの様に首に巻き付けていたグリムレインに移動を告げると、辺り一面に真っ白な雪を降らせて視界を遮ると、体を大きくしてコーデンの街を飛び立った。
「ミンクさんの奥さんのお店楽しみだね」
「お菓子食べれるかな?」
「お菓子の種類にもよるね」
朱里と子供達2人がお菓子を楽しみにしながらはしゃいでいるのを見てルーファスも自然と笑みが零れる。
うちの番も子供達2人もとても可愛い。家で待っている2人の子供も可愛いし、今度お菓子の詰め合わせでも用意してみようか?しかし、お菓子なら可愛い番が作った物が一番美味いから他の国から珍しいお菓子の材料でも取り寄せて作ってもらうのも良いかもしれない。
「ルーファスどうかしましたか?」
「いや、アカリに帰ったら何を作ってもらうかなと考えていた」
「今回は迷惑を掛けちゃった分いっぱい腕を振るって作りますよ!」
ふんすっと言いながら小さくガッツポーズをする朱里にリュエールとシュトラールが「ジャガイモをお肉で包み込んでパリパリに焼いたやつ!」「パイ包みのミンチ肉が入ってたやつ!」と言ってグリムレインが「我はとろとろに煮込んだ角煮が良い!肉は嫁と一緒に獲りに行く!」と騒ぎ、狩りに行くなら自分達もついていく!と子供達が騒いだ。
騒いでいるうちに隣り街のエクルドが見え、道の途中でグリムレインが降り立つと、他の街にもミヤをスカウトに来た冒険者が居るといけないので人型のまま5人で歩いてエクルドの街へ入る。
ミンクの妻が経営しているというお菓子屋『ピーナ』は街の中央にある噴水通りにある店の1つで、ギモーヴ専門店だった。
ギモーヴはマシュマロに似ているお菓子で生マシュマロと言われていて、マシュマロがメレンゲ入りならギモーヴはメレンゲの入っていない物で、マシュマロよりもっちゃりしてフルーツピューレを使う事からフルーツの味わいが濃厚なもの。
作り方としてはジャムかフルーツピューレ、砂糖に水飴に粉ゼラチンにコーンスターチに水くらいなもので、湯煎しながらボウルの中で泡立てて型に流し込むだけ。一晩常温で寝かして、切り分けたらコーンスターチをまぶすだけ。
簡単な物だけど、ジャムの種類やフルーツピューレの多さを考えれば種類はとても多くなる。
異世界にもオシャレなお菓子があるんだーと、朱里が『ピーナ』の扉を開くと中に居た店員が「いらっしゃいませ」と振り返る。
振り返った女性の顔を見て朱里が少し目を丸くする。
「日本人・・・?」
50
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。