黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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13章

リューの魔法

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「魔法はどうした?アハハ!弱者が怯える様は愉快だ!」
「全然怯えてないんですけど!」
「ウォン!(誰が弱者だよ!)」

 グレムレインの氷結で下半身を凍り付かせて身動きを封じて、シューと2人で「どうだ?」と様子を見れば上半身だけ凄い動きで暴れている。

「デンシャクさん、そろそろ大人しくしてもらわないと、こっちも本気を出すよ?」
「本気?私も本気を出させてもらおう!」

 ピキピキと音がして氷がバーンと割れると竜化したデンシャクさんが「アハハハ」と楽し気な声を上げた。

「我は我慢の限界だぞ」
「仕方がないなぁ。シュー、グリムレインが少し暴れるから、ミンクさんの所に行ってミンクさんをこれで眠らせといて」

 母上のポーションホルダーから揮発性の睡眠ポーションをシューに渡すとシューが尻尾を振りながら「ウォン!(了解)」とミンクさんの元へ走って行った。

 馬車の横でミンクさんが倒れたのを目視して、シューがポーションを吸い込まない様に勢いよく戻ってくる。

「グリムレイン、思う存分やっちゃえ!」
「我らドラゴンを侮辱するあの姿・・・絶対に叩き潰す!」

 僕の肩から降りるとグリムレインが6メートルのドラゴンの姿に戻り、尻尾でデンシャクさんを薙ぎ払うと、流石にグリムレインの出現に驚いたらしいが、直ぐにグリムレインに突進してきた。
パワー頼りな攻撃だなぁ・・・。

「ドラゴンの肉を食らえばどんな力が得られるのだろうな!アハハハ!」
「誰がお前なんぞの血肉になるか!この紛い者!!」
 
 グリムレインが口から冷気を吐いてデンシャクさんを威嚇するが、デンシャクさんは気にせずに拳を振り上げてグリムレインの体に打ち付ける。
 ゴツゴツと音が響き、デンシャクさんの拳に血が滲むけど、グリムレインも少し顔を歪めているから、打撃ダメージが長引くといけないかもしれない。

「シュー、グリムレインに回復魔法!僕も久々に魔法使うよ!」
「リューあんまり無茶しないで!」
「ハガネには内緒だからね!」
「それは良いけど、本当に無茶しちゃ駄目だからね?!」

 シューが心配する程、僕は自分の力量は見誤ったりはしないんだけどな。
シューがグリムレインに回復魔法を唱えている間に、デンシャクさんに近付いて、地面を蹴ってデンシャクさんの腕を掴もうとしたら、デンシャクさんのもう片方の手に捕まった。

「奇襲ならばもっと上手くやるのだな!フハハハ」
「いえ、これで良いんですよ」

 デンシャクさんの腕に手を掛けて魔法を口にする。
使うとハガネに怒られるし、治せるのはシューだけだから使うの禁止されてるんだけど、こういう人には使うべきだと僕は思う。

「とっておきの魔法だから受け取ってよ【破壊ブレイク】」

 手に広がる感覚で自分の魔法が相手に与えているダメージの音が耳にうるさく響く。
ペキペキミシミシポキポキ・・・。

「う・・あ・・・っぎゃああああああああ!!」

 デンシャクさんの腕が力を無くし、崩れる様に倒れ、ビクビクと痙攣している。
僕の生まれつきの能力【破壊】は人体の破壊をしてしまう聖属性の禁忌技。
ハガネに改良されて、体に悪い病気が出来ると、その病気だけを破壊できるように練習させられたものだけど、改良してない方がすんなり使えて加減も要らないから、とても便利。
まぁ、悪い人にしか使わないから、滅多には使えないんだけどね。

グリムレインに親指を立てて「終わりー」と言うと、グリムレインが肩をすくめる。

「我の相手だぞ?まったく」
「いいじゃない。これでもう誰もこの人に傷つけられないんだし」

 これでデンシャクさんの笑い声を聞かないで良いのかと思うと僕も清々するし。
笑い声、うるさかったんだよね。

「よし、ミンクさんが目を覚ます前に馬車ごとグリムレイン、コーデンの近くまで運んで母上の所に早く帰ろうよ」
「そうだな。嫁が心配だ」

 デンシャクさんを馬車に縄でぐるぐるに縛り付けて、寝ているミンクさんと一緒に運び、コーデンの街に着くとゆっくり馬車を運転して、コーデン支部へ着くと他の職員さんに事情を説明しておいた。

 僕らは明日話をしますという事で、母上の待つ宿へサッサッと帰って行った。
明日までに母上が治っていたらいいんだけど、治ってなかったらまた僕がこの格好かなぁ?

 宿に戻るとまだ微熱のある母上が「迷惑かけてごめんね」とぼろぼろ泣いて謝ってきて慰めるのに一苦労した。
母上が自分が行くと目が覚めてから騒いで宥めるのが大変だったんだぞ?と父上が苦笑いしてた。
怖いくせに必死に頑張ろうとする母上の気持ちだけで充分だから、無理はしないで欲しい。
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