黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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13章

リューの考察

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 「え?」という顔をミンクさんとデンシャクさんがして僕の顔を見る。
何故か双子の片割れのシューまで「え?」って顔してるけど・・・シューも甘ちゃんだなぁ。
そんなんじゃ悪い大人に騙されちゃうよ。兄としてはシューが心配になってしまうよ。

「私の采配に文句がありますか?」

「当たり前だ!ふざけるな!冒険者から冒険者資格を剥奪なんて横暴だろう!」
「ミヤ実技官、私もデンシャクさんの剥奪はどうかと思いますが・・・」

 デンシャクさん、少し表情が崩れてますよ?
ミンクさんはデンシャクさんの表情の崩れ方を見て冒険者の素顔をちゃんと見極めた方が良いです。
シューは首を傾げないでほしい・・・まったく。

「私が疑問に思ったのは、今までダンジョンで仲間の方は全員行方不明という扱いなのに、全員分の装備品がそこの仏像に供えてある事です。遺品を持ち帰るというのは解りますけど、遺体を一体も持ち帰れないのは5回中5回で1回も無いのに装備品だけ全部回収してこれるなんておかしいですよ」

「いや、これは彼らの装備品を模して私が作った物だ!勘違いしないで欲しい!仲間の遺体は魔獣に食われて遺品1つ持ち帰れなどしなかったのだ!」

 少し勝ち誇ったような顔をしているけど、デンシャクさんは咄嗟に嘘をついて首を絞めるタイプなのかな?

「それはおかしいですね。そこの装備品、1つずつ匂いが違いますよ?私の優秀な相棒がおかしいと気付いたぐらいですから、獣人の人に頼めばハッキリすると思いますけど?」

 シューが「え?オレ?」という顔をしているけど、ここは僕に話を合わせる様にポーカーフェイスを覚えて欲しい。帰ったらシューに色々教えないと駄目かもしれない。
まぁシューらしくてそこはシューの良い所だと大事にさせるべきかもしれないけど・・・。

「ハッ、そんな魔獣ごときで私を貶めようなどと・・・実技官という職を子供などに任せるなんてギルドもどうかと思いますよ?」

 デンシャクさんが鼻で笑い、ミンクさんに少しすごむような顔をしているけど、子供にバレる時点で遅かれ早かれデンシャクさんは捕まったと思うんだけどな。

「もう一つ言うと、デンシャクさんは人を目で追う時に急所ばかりを見ているんですよ。普通は急所なんて1回見れば目線は外しますけど、あんなにジーッと見てたら快楽殺人犯にしか見えないです」

 ミンクさんが「えっ?」て顔してるけど、急所は冒険者なら一番初めに相手を見て何所かを把握しておくものなのでカバンで身をガードしないでいただきたい。
デンシャクさんは人を睨むのを止めておかないとミンクさんでもそろそろ表情に気付くと思う。

「ヒッ!」
 
 ほら、気付いた。
殺気を出した時点でデンシャクさんは三流もいいとこだ。

「大方、上のランクではパーティーを組んでくれる人が居なくて人が殺せなくなったから、下のランクに入り込んで下のランクの人達を次はダンジョンで殺す気だったんでしょ?水で随分手を洗ったみたいだけど、貴方からは血の匂いが凄くする。誰を殺したの?」

「随分と鼻の利く実技官だ・・・。そうだ!お前の言う通りだ実技官!人の肉を引き裂くあの柔らかさと弾力、温かい肉が冷めていく感覚は最高ではないか!!」

 アハハハハと笑い声を上げながら人の好さげな仮面を外した獰猛な顔をしたデンシャクさんがそこには居た。

「残念だけど、貴方はもうミンクさんの前で罪を告白したんだから、冒険者でもなければ犯罪者でしかない。誰ももう殺せないよ」
「そんな者はここには来なかった。そうお前もここには来なかった!」

 デンシャクさんの振り上げる拳を交わして、ミンクさんの襟首を掴むと後ろに投げ飛ばす。
流石の竜人と言うべきかA+ランクと言うべきか、地面に下ろされた拳は地面を大きくえぐっていた。

「ミンクさん!ミンクさんは危ないから隠れてて!」
「は、はいっ!!」

 ミンクさんが滑ってコケそうになりながら、なんとか馬車の方へ逃げて心配そうにこっちを見ているが、出来たら余り見ててほしくないんだけどね。

「シュー、行くよ!竜人の力は強いから掴まれないで!レイン援護お願い!」
「ウォン!」
「フンッ」

 ダダダと地面を抉る様にデンシャクさんが真っ直ぐこちらに力強く大地を蹴って近付いてきて、左右に別れると、デンシャクさんの尻尾が目の前をブンッと音を立てて掠めていった。

「魔法使いごときが私に敵うと思っているのか!アハハハ!肉を裂いて冷たくなるまでこね回してやろう!」

「うわっ、趣味ワルッ!」

 シュー・・・喋らないでよ・・・まぁ、僕も趣味悪いとは思ったけど。
グリムレインが氷を尖らせたアイスニードルを吐き出しながら、デンシャクさんを攻撃するけど竜人の皮膚は固いのか中々致命傷になる様な大きな傷が付かず、グリムレインが「もっと鋭いのを出すか?」とイライラしている。
 流石に本気を出したら殺しちゃうから、生け捕りにしないと意味がない。

「レイン、足元を凍らせられる?」
「下半身全部凍らせてやるわ」
「任せた!」

 大きい図体のクセに動きが速いのがA+ランクだなぁっていうのはいい勉強になったかもしれない。
グリムレインが凍らせやすい様に注意を引き付ける為に、シューと一緒に攻撃を仕掛けてはバックステップで後ろに飛び退いてを繰り返しているけど、なかなかに攻撃は効かないし、素早いし、面倒くさい相手だなぁ。
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