黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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13章

ミヤ再び

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 ふるっと震えて朱里が涙目でルーファスに飛びついたのは全てが終わった後だった。

 冒険者ギルドから『Bランク冒険者へのお便り』という物があり、内容はギルドに関するお手伝い募集の様な内容で、ルーファスにも見てもらって、問題はなかった。
お手伝いに不参加の印を付けて書簡を出した。
その時はこれで無事に終わったと、そう思って冬の支度の為に『女将亭』の大掃除をしたり、新年の挨拶用の贈り物を選んだりと忙しく過ごしていた。

 そして暮れも差し掛かり、ようやく年越しの為の準備が終わり、【刻狼亭】の従業員達と一緒にお餅大会でお餅をついて、子供達に「もうお餅は当分見たくないかな?」と言われて「お餅はお正月からが本番なのに?!」と騒ぎながら笑い合っていた時、冒険者ギルドから『不備があったのでお近くの冒険者ギルドまでお立ち寄りください』という書簡が届き、お餅大会の帰り道に子供達を先に返して冒険者ギルドへ立ち寄った。


 朱里が騙された!!と、気付いた時には時すでに遅しだった。
ギルドの契約書にサインをして、ポイッと冒険者ギルドの外へ追い出された後だった。

「意義あり!詐欺ですかー!!!訴えますよ!!!」

 ドンドンドンとギルドの扉を激しく叩くも、『本日は終了しました』の看板を出されてしまうだけだった。


 確かに不備はあった。とは、言っても、不参加の場合は少額の寄付を払うかどうかの金額設定の所が無記名だっただけなのだけど、これは無記名の場合支払わないとされるはずが、他の人の書簡が朱里の物にくっついてしまい、インクが滲んで数字なのか文字なのかがぼんやりと移っていただけ。
これぐらいなら最初から無視するなり、支払わないという事にしてくれたら良いのにと思いつつ、書き直しをしていた。

 ルーファスに心配だから終わったら連絡するように言われていたので、この不備の事を話して、書き直したら帰る事を伝え腕輪の通信を切った。

 その時、3年前に朱里をミヤ試験官という架空の人物登録させた職員が現れた。
職員に「そういえばミヤとしての書簡を渡していませんでしたね。登録してしまったのでミヤの方の書簡にもサインしてもらいますね」と、言われたのだ。

 嫌な予感にルーファスに連絡しようと腕輪に魔力を通した時には、頭がぼんやりとして「あ、これ魅了状態だ。いけない・・・」と思った時には、もう意識が飛んでいた。
 朱里がサインした書類を手に職員は冒険者ギルドの受付に「本日は仕事終了です」とギルドを閉める様に言った。

「ミヤとしてはCランク冒険者でしたから、来年までにランクを上げられると良いですね」

 にっこり笑顔で言われ、ミヤの冒険者カードを手渡された。

「後日、お仕事内容は書簡で送らせていただきますので」

 そして、冒険者ギルドからポイっである。

 フラフラと騙された事にショックを受けながら、【刻狼亭】で正月飾りを業者と話し合っていたルーファスの所に行き、泣きついた。


「・・・なるほど、アカリとしては利用は出来ないが、ミヤとしてはCランクのままだった為に利用が出来る状態にされていたのか。ミヤとしてもランクを上げておくべきだったな・・・」
「ううっ・・・詐欺ですよ!あの人訴えたいです!」
「訴えたいのは山々だが、そうなると3年前のミヤの試験官をした時の事を持ち出されてこちらが詐欺扱いに持って行かれるだろうな」
「そんな!あんまりです!」
「ギルドは使う方はいいが、使われると厄介だと言っておいただろう?仕事内容が前回と同じなら問題は無いんだが、別件を頼まれていたら厄介だな」

 悔し涙を滲ませる朱里を膝の上に乗せながら、仕事の調整をしつつ朱里が落ち着くのを待っていたルーファスの元へ小鬼が書類を持ってやってくる。

 チマッとした2頭身の羽の生えた小鬼が小さな羽でルーファスの仕事机の上に乗ると、書類をルーファスに出す。

「旦那さん、ギルドから今こういう書類が来たんですけど・・・その様子だと女将さんはギルドに捕まっちゃったみたいですね」
「厄介なものに目を付けられたものだ。どれ・・・この書類は・・・オレか?」

 小鬼が渡してきた書類には、ミヤの相棒として登録された魔獣ルーの生態系の様な物が書かれている。
事細かに亜種の魔獣として・・・。

「ギルドから上手い具合に本当にこういった魔獣が居ると登録して情報を開示させるように言われたんです」
「どうやらギルドはオレも巻き込む気満々の様だな」
 ビクッと膝の上の朱里が震えてルーファスを見上げて、ルーファスがフッと笑って朱里の頭を撫でる。

「大丈夫だ。アカリがミヤとして何処かへ出向くならオレも一緒に行ってやるから安心しろ」
「ルーファス、ごめんなさい・・・。もしもの時は頼りにしています・・・」

 朱里の鼻に自分の鼻をつんと押し付けて「任せておけ」とルーファスが笑い、朱里も前回の試験官をした時はそれなりに面白かったから大丈夫かな?と、少し安心してルーファスに寄り掛かった。


 それから2日程して、冒険者ギルドからミヤへの依頼内容が届いた。


「上級ランクのランク剥奪実技官・・・?」 

 コテンと朱里が首を傾げ、ルーファスが眉間にしわを寄せた。
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