369 / 960
13章
ミヤ再び
しおりを挟む
ふるっと震えて朱里が涙目でルーファスに飛びついたのは全てが終わった後だった。
冒険者ギルドから『Bランク冒険者へのお便り』という物があり、内容はギルドに関するお手伝い募集の様な内容で、ルーファスにも見てもらって、問題はなかった。
お手伝いに不参加の印を付けて書簡を出した。
その時はこれで無事に終わったと、そう思って冬の支度の為に『女将亭』の大掃除をしたり、新年の挨拶用の贈り物を選んだりと忙しく過ごしていた。
そして暮れも差し掛かり、ようやく年越しの為の準備が終わり、【刻狼亭】の従業員達と一緒にお餅大会でお餅をついて、子供達に「もうお餅は当分見たくないかな?」と言われて「お餅はお正月からが本番なのに?!」と騒ぎながら笑い合っていた時、冒険者ギルドから『不備があったのでお近くの冒険者ギルドまでお立ち寄りください』という書簡が届き、お餅大会の帰り道に子供達を先に返して冒険者ギルドへ立ち寄った。
朱里が騙された!!と、気付いた時には時すでに遅しだった。
ギルドの契約書にサインをして、ポイッと冒険者ギルドの外へ追い出された後だった。
「意義あり!詐欺ですかー!!!訴えますよ!!!」
ドンドンドンとギルドの扉を激しく叩くも、『本日は終了しました』の看板を出されてしまうだけだった。
確かに不備はあった。とは、言っても、不参加の場合は少額の寄付を払うかどうかの金額設定の所が無記名だっただけなのだけど、これは無記名の場合支払わないとされるはずが、他の人の書簡が朱里の物にくっついてしまい、インクが滲んで数字なのか文字なのかがぼんやりと移っていただけ。
これぐらいなら最初から無視するなり、支払わないという事にしてくれたら良いのにと思いつつ、書き直しをしていた。
ルーファスに心配だから終わったら連絡するように言われていたので、この不備の事を話して、書き直したら帰る事を伝え腕輪の通信を切った。
その時、3年前に朱里をミヤ試験官という架空の人物登録させた職員が現れた。
職員に「そういえばミヤとしての書簡を渡していませんでしたね。登録してしまったのでミヤの方の書簡にもサインしてもらいますね」と、言われたのだ。
嫌な予感にルーファスに連絡しようと腕輪に魔力を通した時には、頭がぼんやりとして「あ、これ魅了状態だ。いけない・・・」と思った時には、もう意識が飛んでいた。
朱里がサインした書類を手に職員は冒険者ギルドの受付に「本日は仕事終了です」とギルドを閉める様に言った。
「ミヤとしてはCランク冒険者でしたから、来年までにランクを上げられると良いですね」
にっこり笑顔で言われ、ミヤの冒険者カードを手渡された。
「後日、お仕事内容は書簡で送らせていただきますので」
そして、冒険者ギルドからポイっである。
フラフラと騙された事にショックを受けながら、【刻狼亭】で正月飾りを業者と話し合っていたルーファスの所に行き、泣きついた。
「・・・なるほど、アカリとしては利用は出来ないが、ミヤとしてはCランクのままだった為に利用が出来る状態にされていたのか。ミヤとしてもランクを上げておくべきだったな・・・」
「ううっ・・・詐欺ですよ!あの人訴えたいです!」
「訴えたいのは山々だが、そうなると3年前のミヤの試験官をした時の事を持ち出されてこちらが詐欺扱いに持って行かれるだろうな」
「そんな!あんまりです!」
「ギルドは使う方はいいが、使われると厄介だと言っておいただろう?仕事内容が前回と同じなら問題は無いんだが、別件を頼まれていたら厄介だな」
悔し涙を滲ませる朱里を膝の上に乗せながら、仕事の調整をしつつ朱里が落ち着くのを待っていたルーファスの元へ小鬼が書類を持ってやってくる。
チマッとした2頭身の羽の生えた小鬼が小さな羽でルーファスの仕事机の上に乗ると、書類をルーファスに出す。
「旦那さん、ギルドから今こういう書類が来たんですけど・・・その様子だと女将さんはギルドに捕まっちゃったみたいですね」
「厄介なものに目を付けられたものだ。どれ・・・この書類は・・・オレか?」
小鬼が渡してきた書類には、ミヤの相棒として登録された魔獣ルーの生態系の様な物が書かれている。
事細かに亜種の魔獣として・・・。
「ギルドから上手い具合に本当にこういった魔獣が居ると登録して情報を開示させるように言われたんです」
「どうやらギルドはオレも巻き込む気満々の様だな」
ビクッと膝の上の朱里が震えてルーファスを見上げて、ルーファスがフッと笑って朱里の頭を撫でる。
「大丈夫だ。アカリがミヤとして何処かへ出向くならオレも一緒に行ってやるから安心しろ」
「ルーファス、ごめんなさい・・・。もしもの時は頼りにしています・・・」
朱里の鼻に自分の鼻をつんと押し付けて「任せておけ」とルーファスが笑い、朱里も前回の試験官をした時はそれなりに面白かったから大丈夫かな?と、少し安心してルーファスに寄り掛かった。
それから2日程して、冒険者ギルドからミヤへの依頼内容が届いた。
「上級ランクのランク剥奪実技官・・・?」
コテンと朱里が首を傾げ、ルーファスが眉間にしわを寄せた。
冒険者ギルドから『Bランク冒険者へのお便り』という物があり、内容はギルドに関するお手伝い募集の様な内容で、ルーファスにも見てもらって、問題はなかった。
お手伝いに不参加の印を付けて書簡を出した。
その時はこれで無事に終わったと、そう思って冬の支度の為に『女将亭』の大掃除をしたり、新年の挨拶用の贈り物を選んだりと忙しく過ごしていた。
そして暮れも差し掛かり、ようやく年越しの為の準備が終わり、【刻狼亭】の従業員達と一緒にお餅大会でお餅をついて、子供達に「もうお餅は当分見たくないかな?」と言われて「お餅はお正月からが本番なのに?!」と騒ぎながら笑い合っていた時、冒険者ギルドから『不備があったのでお近くの冒険者ギルドまでお立ち寄りください』という書簡が届き、お餅大会の帰り道に子供達を先に返して冒険者ギルドへ立ち寄った。
朱里が騙された!!と、気付いた時には時すでに遅しだった。
ギルドの契約書にサインをして、ポイッと冒険者ギルドの外へ追い出された後だった。
「意義あり!詐欺ですかー!!!訴えますよ!!!」
ドンドンドンとギルドの扉を激しく叩くも、『本日は終了しました』の看板を出されてしまうだけだった。
確かに不備はあった。とは、言っても、不参加の場合は少額の寄付を払うかどうかの金額設定の所が無記名だっただけなのだけど、これは無記名の場合支払わないとされるはずが、他の人の書簡が朱里の物にくっついてしまい、インクが滲んで数字なのか文字なのかがぼんやりと移っていただけ。
これぐらいなら最初から無視するなり、支払わないという事にしてくれたら良いのにと思いつつ、書き直しをしていた。
ルーファスに心配だから終わったら連絡するように言われていたので、この不備の事を話して、書き直したら帰る事を伝え腕輪の通信を切った。
その時、3年前に朱里をミヤ試験官という架空の人物登録させた職員が現れた。
職員に「そういえばミヤとしての書簡を渡していませんでしたね。登録してしまったのでミヤの方の書簡にもサインしてもらいますね」と、言われたのだ。
嫌な予感にルーファスに連絡しようと腕輪に魔力を通した時には、頭がぼんやりとして「あ、これ魅了状態だ。いけない・・・」と思った時には、もう意識が飛んでいた。
朱里がサインした書類を手に職員は冒険者ギルドの受付に「本日は仕事終了です」とギルドを閉める様に言った。
「ミヤとしてはCランク冒険者でしたから、来年までにランクを上げられると良いですね」
にっこり笑顔で言われ、ミヤの冒険者カードを手渡された。
「後日、お仕事内容は書簡で送らせていただきますので」
そして、冒険者ギルドからポイっである。
フラフラと騙された事にショックを受けながら、【刻狼亭】で正月飾りを業者と話し合っていたルーファスの所に行き、泣きついた。
「・・・なるほど、アカリとしては利用は出来ないが、ミヤとしてはCランクのままだった為に利用が出来る状態にされていたのか。ミヤとしてもランクを上げておくべきだったな・・・」
「ううっ・・・詐欺ですよ!あの人訴えたいです!」
「訴えたいのは山々だが、そうなると3年前のミヤの試験官をした時の事を持ち出されてこちらが詐欺扱いに持って行かれるだろうな」
「そんな!あんまりです!」
「ギルドは使う方はいいが、使われると厄介だと言っておいただろう?仕事内容が前回と同じなら問題は無いんだが、別件を頼まれていたら厄介だな」
悔し涙を滲ませる朱里を膝の上に乗せながら、仕事の調整をしつつ朱里が落ち着くのを待っていたルーファスの元へ小鬼が書類を持ってやってくる。
チマッとした2頭身の羽の生えた小鬼が小さな羽でルーファスの仕事机の上に乗ると、書類をルーファスに出す。
「旦那さん、ギルドから今こういう書類が来たんですけど・・・その様子だと女将さんはギルドに捕まっちゃったみたいですね」
「厄介なものに目を付けられたものだ。どれ・・・この書類は・・・オレか?」
小鬼が渡してきた書類には、ミヤの相棒として登録された魔獣ルーの生態系の様な物が書かれている。
事細かに亜種の魔獣として・・・。
「ギルドから上手い具合に本当にこういった魔獣が居ると登録して情報を開示させるように言われたんです」
「どうやらギルドはオレも巻き込む気満々の様だな」
ビクッと膝の上の朱里が震えてルーファスを見上げて、ルーファスがフッと笑って朱里の頭を撫でる。
「大丈夫だ。アカリがミヤとして何処かへ出向くならオレも一緒に行ってやるから安心しろ」
「ルーファス、ごめんなさい・・・。もしもの時は頼りにしています・・・」
朱里の鼻に自分の鼻をつんと押し付けて「任せておけ」とルーファスが笑い、朱里も前回の試験官をした時はそれなりに面白かったから大丈夫かな?と、少し安心してルーファスに寄り掛かった。
それから2日程して、冒険者ギルドからミヤへの依頼内容が届いた。
「上級ランクのランク剥奪実技官・・・?」
コテンと朱里が首を傾げ、ルーファスが眉間にしわを寄せた。
50
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。