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13章
お姫様
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「母上、かみの毛は『おひめさま』がいいのです」
「かわいく『おひめさま』みたいにしてほしいのです」
ミルアとナルアが自分の櫛とリボンを手に朱里とルーファスの寝室に朝の早くから起こしに来ていた。
ふぁ・・・と、欠伸をしながら朱里がミルアとナルアの髪を櫛で梳かし「はいはい。お姫様は騒がずにお利口さんにしようねー」と言いながら、お姫様の髪型ってどんなのだろう?と小さく首を傾げる。
「お姫様はポニーテールは嫌なの?」
「それはミルアだもん。『おひめさま』じゃないのです」
「こちらのお姫様はツインテールは駄目なの?」
「それはナルアだから『おひめさま』とちがうのです」
どうやらいつもの髪型はお姫様の髪型に向かないらしい。
「ん・・・。アカリ、どうした?ミルアとナルアか・・・」
ごそごそと眠そうにルーファスが布団から上半身を出すと、ミルアとナルアが「きゃー」と声を上げて目を手で隠す。
「父上、はれんちなのです!」
「父上、いかがわしいのです!」
上半身裸なだけで酷い言われようではある。
まぁ、下半身も裸ではあるが・・・。
朱里がくすくす笑いながら、「お姫様達は難しい言葉を使いますねぇ」とサイドに小さな編み込みを作り、後ろでリボンでまとめて1人目のお姫様を完成させると2人目のお姫様に取り掛かる。
「はい。2人共可愛いお姫様になりましたよ」
朱里が2人に櫛を返すと2人が朱里の鏡台を覗き込む。
「ミルア『おひめさま』に見える?」
「ナルア『おひめさま』になった?」
「うん。可愛いお姫様になったよ。ね?ルーファス」
「可愛いお嬢さんからお姫様になった。可愛いよ2人共」
にこーっとミルアとナルアが笑顔で「おひめさま」と騒いでトトトトと寝室を出て朝の稽古をしているリュエールとシュトラールに見せに階段を下りていく音がする。
「うちの子達は朝が早いんだから・・・ふぁぁ・・・」
「ハァ、それにしてもまさかミルアとナルアまでリリス化するとは思わなかった」
「ふふっ、女の子は早熟だからキッカケさえあれば、直ぐに女の子らしくなっちゃうよ」
「イルマールとリリスみたいな事にならねばいいが・・・」
「番は早々見つからないんでしょ?それに2人同時に1人を番にはできないでしょ?」
「番は1人1人と決まっている。だからそれは心配ないが・・・2人のうち1人の番だったらと思うと気が気じゃない」
髪を掻き上げながらルーファスが眉間にしわを寄せて「ハァー・・・」と深いため息を吐いてガクリと頭を項垂れさせる。
ミールが遊びに来てからミルアとナルアは、ミールが将来騎士になりたいという夢に自分達も騎士にはお姫様だと言って、今までいたずらっ子の悪い子だったところを直して、女の子らしく言葉遣いやオシャレに目覚めてしまったのである。
ミールの父親クイードが温泉大陸の続きの大陸側で宝石商の護衛騎士として任務に就くことになり、魔獣馬車で1日半の場所に引っ越してきたこともあり、ミールがクイードと共に温泉大陸への出入りが多くなりミルアとナルアと会うことが多くなった事も関係している。
ミールはリュエールとシュトラールに稽古を付けてもらうのを目的としているのだが、ミルアとナルアはミールが来るたびに朱里に料理を教えて!と、必死にミールを持て成そうと奮闘している。
稽古が終わる度に兄達にも自分達が作った物を渡すが、ミールに食べて欲しいというのがありありと見えている。
何故なら、一番見栄えのいいものをミールに渡しているから。
「ミールになら任せても大丈夫だと思うけど・・・」
「駄目だ。うちの可愛いお姫様達はどちらもやらん!」
「ふふっ、でもお姫様のピンチに騎士様が助けてくれて恋に落ちるのはセオリーじゃない?」
「牛蝉の抜け殻を取るだけならオレでも出来る」
「でも、ルーファスその時は居なかったから・・・残念でしたね」
ぐっ・・・と、その場に居なかった事を後悔しながら、余計な事をしてくれたシノリアを少し恨まずにはいられない。
シノリアはリリスが全寮制の学園に行ってしまうと、一時期は萎んだ風船の様になってしまったが、今はミールを見るたびに突っかかっていき、ミールに軽くいなされてリロノスに「リリス姉さんみたいにとーばつにつれていって!」と頼んで、ありすに「危ないから駄目ッしょ!!」と怒られている。
ミールに突っかかる度に「シノリアはさいていね!」「シノリアはきらいです!」とミルアとナルアにそっぽを向かれている事にもダメージを受けている。
シノリアが「ボクも『きし』になってみせる!」と言えば、ミルアとナルアに「『きし』はれいせつをおもんじるのです。しのりあにはそれが足りないからむりなのです!」と撃沈させられていた。
幼馴染ゆえに容赦のない2人の言葉にショゲるシノリアを見兼ねたリロノスがかつて王という立場に居た事からシノリアに礼節や所作を教えて、少しずつ、悪戯小僧は修正され始めている。
「アカリは娘達が他の男に取られても良いのか?」
「変な男じゃなきゃいいですよ?見ず知らずの如何にも危険な男を連れてきたら、初めにハガネをけしかけて、次にリューちゃんとシューちゃんをけしかけて、そしてルーファスをけしかけ、最後にグリムレインに氷漬けにしてもらいます」
「・・・アカリはオレより徹底してるな」
「ふふっ、だって大事な娘達だもの。勿論、リューちゃん達も変な女の子や、下手に女遊びをしようものなら・・・沈めちゃいます」
何処に沈める気なんだ?!とは、流石に聞けそうにないので、リュエールとシュトラールには女の子と付き合う時の注意をよくよく言い聞かせておかないと、朱里に笑顔で沈められると教え込んでおかなくては・・・と、ルーファスが父親の役目だと心の中で冷や汗を垂らした。
「かわいく『おひめさま』みたいにしてほしいのです」
ミルアとナルアが自分の櫛とリボンを手に朱里とルーファスの寝室に朝の早くから起こしに来ていた。
ふぁ・・・と、欠伸をしながら朱里がミルアとナルアの髪を櫛で梳かし「はいはい。お姫様は騒がずにお利口さんにしようねー」と言いながら、お姫様の髪型ってどんなのだろう?と小さく首を傾げる。
「お姫様はポニーテールは嫌なの?」
「それはミルアだもん。『おひめさま』じゃないのです」
「こちらのお姫様はツインテールは駄目なの?」
「それはナルアだから『おひめさま』とちがうのです」
どうやらいつもの髪型はお姫様の髪型に向かないらしい。
「ん・・・。アカリ、どうした?ミルアとナルアか・・・」
ごそごそと眠そうにルーファスが布団から上半身を出すと、ミルアとナルアが「きゃー」と声を上げて目を手で隠す。
「父上、はれんちなのです!」
「父上、いかがわしいのです!」
上半身裸なだけで酷い言われようではある。
まぁ、下半身も裸ではあるが・・・。
朱里がくすくす笑いながら、「お姫様達は難しい言葉を使いますねぇ」とサイドに小さな編み込みを作り、後ろでリボンでまとめて1人目のお姫様を完成させると2人目のお姫様に取り掛かる。
「はい。2人共可愛いお姫様になりましたよ」
朱里が2人に櫛を返すと2人が朱里の鏡台を覗き込む。
「ミルア『おひめさま』に見える?」
「ナルア『おひめさま』になった?」
「うん。可愛いお姫様になったよ。ね?ルーファス」
「可愛いお嬢さんからお姫様になった。可愛いよ2人共」
にこーっとミルアとナルアが笑顔で「おひめさま」と騒いでトトトトと寝室を出て朝の稽古をしているリュエールとシュトラールに見せに階段を下りていく音がする。
「うちの子達は朝が早いんだから・・・ふぁぁ・・・」
「ハァ、それにしてもまさかミルアとナルアまでリリス化するとは思わなかった」
「ふふっ、女の子は早熟だからキッカケさえあれば、直ぐに女の子らしくなっちゃうよ」
「イルマールとリリスみたいな事にならねばいいが・・・」
「番は早々見つからないんでしょ?それに2人同時に1人を番にはできないでしょ?」
「番は1人1人と決まっている。だからそれは心配ないが・・・2人のうち1人の番だったらと思うと気が気じゃない」
髪を掻き上げながらルーファスが眉間にしわを寄せて「ハァー・・・」と深いため息を吐いてガクリと頭を項垂れさせる。
ミールが遊びに来てからミルアとナルアは、ミールが将来騎士になりたいという夢に自分達も騎士にはお姫様だと言って、今までいたずらっ子の悪い子だったところを直して、女の子らしく言葉遣いやオシャレに目覚めてしまったのである。
ミールの父親クイードが温泉大陸の続きの大陸側で宝石商の護衛騎士として任務に就くことになり、魔獣馬車で1日半の場所に引っ越してきたこともあり、ミールがクイードと共に温泉大陸への出入りが多くなりミルアとナルアと会うことが多くなった事も関係している。
ミールはリュエールとシュトラールに稽古を付けてもらうのを目的としているのだが、ミルアとナルアはミールが来るたびに朱里に料理を教えて!と、必死にミールを持て成そうと奮闘している。
稽古が終わる度に兄達にも自分達が作った物を渡すが、ミールに食べて欲しいというのがありありと見えている。
何故なら、一番見栄えのいいものをミールに渡しているから。
「ミールになら任せても大丈夫だと思うけど・・・」
「駄目だ。うちの可愛いお姫様達はどちらもやらん!」
「ふふっ、でもお姫様のピンチに騎士様が助けてくれて恋に落ちるのはセオリーじゃない?」
「牛蝉の抜け殻を取るだけならオレでも出来る」
「でも、ルーファスその時は居なかったから・・・残念でしたね」
ぐっ・・・と、その場に居なかった事を後悔しながら、余計な事をしてくれたシノリアを少し恨まずにはいられない。
シノリアはリリスが全寮制の学園に行ってしまうと、一時期は萎んだ風船の様になってしまったが、今はミールを見るたびに突っかかっていき、ミールに軽くいなされてリロノスに「リリス姉さんみたいにとーばつにつれていって!」と頼んで、ありすに「危ないから駄目ッしょ!!」と怒られている。
ミールに突っかかる度に「シノリアはさいていね!」「シノリアはきらいです!」とミルアとナルアにそっぽを向かれている事にもダメージを受けている。
シノリアが「ボクも『きし』になってみせる!」と言えば、ミルアとナルアに「『きし』はれいせつをおもんじるのです。しのりあにはそれが足りないからむりなのです!」と撃沈させられていた。
幼馴染ゆえに容赦のない2人の言葉にショゲるシノリアを見兼ねたリロノスがかつて王という立場に居た事からシノリアに礼節や所作を教えて、少しずつ、悪戯小僧は修正され始めている。
「アカリは娘達が他の男に取られても良いのか?」
「変な男じゃなきゃいいですよ?見ず知らずの如何にも危険な男を連れてきたら、初めにハガネをけしかけて、次にリューちゃんとシューちゃんをけしかけて、そしてルーファスをけしかけ、最後にグリムレインに氷漬けにしてもらいます」
「・・・アカリはオレより徹底してるな」
「ふふっ、だって大事な娘達だもの。勿論、リューちゃん達も変な女の子や、下手に女遊びをしようものなら・・・沈めちゃいます」
何処に沈める気なんだ?!とは、流石に聞けそうにないので、リュエールとシュトラールには女の子と付き合う時の注意をよくよく言い聞かせておかないと、朱里に笑顔で沈められると教え込んでおかなくては・・・と、ルーファスが父親の役目だと心の中で冷や汗を垂らした。
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