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12章
ひだまりの笑顔
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クラッと目の前が回ると割れるような頭の痛さによろけると、ベッドの上で父上に抱かれたまま真っ白な蝋人形の様な母上が目に映る。
ごめんなさい、母上。
また目を開けたら蘇生を掛けるから、殺しちゃってごめんなさい。
直ぐに蘇らせるから、もう少し待っててね。
目の前が暗くなり意識がブツリと途切れると、最後に感じたのは自分が流した涙が温かくて、胸が痛かった事だけ。
さわさわとした風が髪を撫でて、目を開けると母上が桜の下で白い着物を着て薄桃色のリボンを髪にしていた。
こっちに気が付くと、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。
「母上、ごめんなさい。オレ、駄目だった」
そう言葉に出してしまうと涙が後から後から溢れて止まらなかった。
自信があったのに、全然駄目だった。
グリムレインに母上を生きて会わせると約束したのに、約束を破ってしまった。
『シューちゃん、泣かないの』
柔らかい声で頭を撫でてくる優しさにまた涙が溢れてくる。
ギュッと抱きしめてくれる温かさと匂いが、ああ、母上だと判る。
頭を撫でながら、膝に乗せてくれて、母上はこんなに大きかったっけ?と疑問も出る。
『シューちゃんは良い子だよ。よく頑張ったよ』
頭から背中を撫でられて、自分が獣化しているんだと気付いた。
どうりで母上が大きく見えるわけだ。
『シューちゃんが無事で母上は満足ですよ。シューちゃんがあの時死ななくて良かった』
オレがあの日、遊びに出なきゃ母上は今も笑って家族の中に居たのに・・・。
ミルアもナルアも母上を忘れる事なんてなかった。
父上にもリューにも申し訳が立たない。
エデンやハガネやグリムレインが今頃、主従の関係が切れてしまった事に泣いているかもしれない。
「ごめんなさい、母上」
母上が小首をかしげて陽だまりの様な笑顔を向けてくる。
オレを抱き上げて鼻先にキスをすると、母上は歩き出す。
『シューちゃん、皆、シューちゃんが目を覚ますの待ってるよ』
うん。母上を蘇らせないといけないからね・・・。
でも、まだ母上と一緒にこうして桜並木を歩いていたいな。
『父上もリューちゃんもミルアもナルアも待ってるよ。グリムレインもシューちゃんに約束したから早く目を覚ませって言ってたよ』
グリムレインとの約束早く果たしてあげないと、だよね。
母上、オレもう少し頑張ってみるから、少しの間、待っててもらっていい?
『シューちゃんが目を覚ましたらお花見に行こうか。桜がほら、こんなに綺麗だよ』
母上とお花見、楽しみだな・・・。
目を開けると、目に映ったのは薄い桃色の花びらが温泉街の道を桜色に染めている景色だった。
ポフッと頭に温かい手が乗せられて、耳にハッキリと声が聞こえる。
「シューちゃん、桜が綺麗だねぇ」
どうして目を覚ましたのに、母上の声がこんなに近くからするんだろう?
カラコロと鳴る下駄の音は母上の下駄の音だ。
「女将さん、お散歩ですか?」
「ええ。シューちゃんに桜を見せてあげたくて」
「坊ちゃんまだ目を覚まさないんですか?」
「シューちゃん、少しお寝坊さんだから」
「早く目を覚ますと良いですね」
「ええ。それじゃあ、また」
母上が頭を下げたのか、少し頭の上にふにっとした母上の胸が当たる。
ざぁっと風が吹いて、「くしゅんっ」とくしゃみが出ると、母上の足が止まる。
「シューちゃん?」
ズズッと鼻をすすって、尻尾を振るとギュッと母上が抱きしめてくる。
頭の上に温かい雫が落ちてきて、耳でパタパタと払うと母上の鼻をすする音が聞こえる。
「っ・・・良かった。シューちゃん、起きた・・・」
「母上。ごめんなさい」
「謝らなくていいよ。母上はシューちゃんに助けてもらったから大丈夫だからね」
母上に抱き直されて、母上の顔を見ると少し母上に違和感がある。
母上の涙をペロッと舐めると、母上が泣きながら笑って「変な所が父上に似るんだから」と困った顔をする。
「アカリ!出掛けるなら声を掛けろと言っておいただろう!」
父上の声がして、目を向けるとオレに気付いた父上がフッと笑顔になる。
「シュー、目が覚めたのか。お前のおかげでアカリが戻って来た。よく頑張ったな」
母上ごと父上に抱きしめられて、少し頭の中で「あれー?」と思いつつ、自分の蘇生魔法はちゃんと母上を蘇らせれたのかと肩の力が抜ける。
それにしても、母上もそうだけど、父上にもすごい違和感があったんだけど、何だろう?
「アカリ、オレがシューを抱こう。重いだろ?」
「ううん。シューちゃんを抱っこしてたいから平気」
父上が母上のおでこにキスをしながら頭をスリ寄せているけど、息子を挟んでイチャイチャしないで欲しい。
それにしても、気のせいだろうか・・・2人共若くないかな?
「父上、オレどうなったの?蘇生、成功した?」
「ああ。しっかりと蘇生は成功した。ただ、やり過ぎだ。オレを含めてテンとマグノリアとテッチとアカリとグリムレインが若返った。蘇生は体の中の時間を逆行させるらしいな」
「えーと・・・父上達どのくらい若返ったの?」
「大体10歳前後若返った感じだな。アカリの見立てではな」
ペシペシと母上が父上を叩き、顔を赤くしている。
それにしても、蘇生魔法って体内の時間を逆行させるのか・・・。
つまりは蘇生しまくれば、不老不死とかになるのかな?
「シュー、でも、もう蘇生魔法は禁止だぞ」
「え?なんで?」
「シューが蘇生魔法を使って獣化したまま1年経っているからだ」
「ええええ!!!」
「まだ使いこなすには未熟という事だ」
オレまた知らない間に誕生日迎えてたのか・・・。
顔を上げると父上と母上が笑っていて、2人が笑ってくれているなら良いかな・・・と、桜が風に舞うのを見ながら3人で『女将亭』へ帰って行った。
『女将亭』へ着くと、グリムレインが「やっと起きたのか。寝坊助坊主め」と鼻で笑い、ハガネには「良かったな。目が覚めるの待ってたんだぜ」と涙ぐまれ、リュエールには「シューは寝すぎだよ」と言われた。
ミルアとナルアには「シューちゃん、ははうえ、シューちゃんかえして」と、ぬいぐるみ扱いを受けた。
でも、2人が母上をちゃんと母上って呼んでいて、オレの蘇生魔法で1年寝てた甲斐はあるかな?って思った。
ごめんなさい、母上。
また目を開けたら蘇生を掛けるから、殺しちゃってごめんなさい。
直ぐに蘇らせるから、もう少し待っててね。
目の前が暗くなり意識がブツリと途切れると、最後に感じたのは自分が流した涙が温かくて、胸が痛かった事だけ。
さわさわとした風が髪を撫でて、目を開けると母上が桜の下で白い着物を着て薄桃色のリボンを髪にしていた。
こっちに気が付くと、いつもの優しい笑顔を向けてくれる。
「母上、ごめんなさい。オレ、駄目だった」
そう言葉に出してしまうと涙が後から後から溢れて止まらなかった。
自信があったのに、全然駄目だった。
グリムレインに母上を生きて会わせると約束したのに、約束を破ってしまった。
『シューちゃん、泣かないの』
柔らかい声で頭を撫でてくる優しさにまた涙が溢れてくる。
ギュッと抱きしめてくれる温かさと匂いが、ああ、母上だと判る。
頭を撫でながら、膝に乗せてくれて、母上はこんなに大きかったっけ?と疑問も出る。
『シューちゃんは良い子だよ。よく頑張ったよ』
頭から背中を撫でられて、自分が獣化しているんだと気付いた。
どうりで母上が大きく見えるわけだ。
『シューちゃんが無事で母上は満足ですよ。シューちゃんがあの時死ななくて良かった』
オレがあの日、遊びに出なきゃ母上は今も笑って家族の中に居たのに・・・。
ミルアもナルアも母上を忘れる事なんてなかった。
父上にもリューにも申し訳が立たない。
エデンやハガネやグリムレインが今頃、主従の関係が切れてしまった事に泣いているかもしれない。
「ごめんなさい、母上」
母上が小首をかしげて陽だまりの様な笑顔を向けてくる。
オレを抱き上げて鼻先にキスをすると、母上は歩き出す。
『シューちゃん、皆、シューちゃんが目を覚ますの待ってるよ』
うん。母上を蘇らせないといけないからね・・・。
でも、まだ母上と一緒にこうして桜並木を歩いていたいな。
『父上もリューちゃんもミルアもナルアも待ってるよ。グリムレインもシューちゃんに約束したから早く目を覚ませって言ってたよ』
グリムレインとの約束早く果たしてあげないと、だよね。
母上、オレもう少し頑張ってみるから、少しの間、待っててもらっていい?
『シューちゃんが目を覚ましたらお花見に行こうか。桜がほら、こんなに綺麗だよ』
母上とお花見、楽しみだな・・・。
目を開けると、目に映ったのは薄い桃色の花びらが温泉街の道を桜色に染めている景色だった。
ポフッと頭に温かい手が乗せられて、耳にハッキリと声が聞こえる。
「シューちゃん、桜が綺麗だねぇ」
どうして目を覚ましたのに、母上の声がこんなに近くからするんだろう?
カラコロと鳴る下駄の音は母上の下駄の音だ。
「女将さん、お散歩ですか?」
「ええ。シューちゃんに桜を見せてあげたくて」
「坊ちゃんまだ目を覚まさないんですか?」
「シューちゃん、少しお寝坊さんだから」
「早く目を覚ますと良いですね」
「ええ。それじゃあ、また」
母上が頭を下げたのか、少し頭の上にふにっとした母上の胸が当たる。
ざぁっと風が吹いて、「くしゅんっ」とくしゃみが出ると、母上の足が止まる。
「シューちゃん?」
ズズッと鼻をすすって、尻尾を振るとギュッと母上が抱きしめてくる。
頭の上に温かい雫が落ちてきて、耳でパタパタと払うと母上の鼻をすする音が聞こえる。
「っ・・・良かった。シューちゃん、起きた・・・」
「母上。ごめんなさい」
「謝らなくていいよ。母上はシューちゃんに助けてもらったから大丈夫だからね」
母上に抱き直されて、母上の顔を見ると少し母上に違和感がある。
母上の涙をペロッと舐めると、母上が泣きながら笑って「変な所が父上に似るんだから」と困った顔をする。
「アカリ!出掛けるなら声を掛けろと言っておいただろう!」
父上の声がして、目を向けるとオレに気付いた父上がフッと笑顔になる。
「シュー、目が覚めたのか。お前のおかげでアカリが戻って来た。よく頑張ったな」
母上ごと父上に抱きしめられて、少し頭の中で「あれー?」と思いつつ、自分の蘇生魔法はちゃんと母上を蘇らせれたのかと肩の力が抜ける。
それにしても、母上もそうだけど、父上にもすごい違和感があったんだけど、何だろう?
「アカリ、オレがシューを抱こう。重いだろ?」
「ううん。シューちゃんを抱っこしてたいから平気」
父上が母上のおでこにキスをしながら頭をスリ寄せているけど、息子を挟んでイチャイチャしないで欲しい。
それにしても、気のせいだろうか・・・2人共若くないかな?
「父上、オレどうなったの?蘇生、成功した?」
「ああ。しっかりと蘇生は成功した。ただ、やり過ぎだ。オレを含めてテンとマグノリアとテッチとアカリとグリムレインが若返った。蘇生は体の中の時間を逆行させるらしいな」
「えーと・・・父上達どのくらい若返ったの?」
「大体10歳前後若返った感じだな。アカリの見立てではな」
ペシペシと母上が父上を叩き、顔を赤くしている。
それにしても、蘇生魔法って体内の時間を逆行させるのか・・・。
つまりは蘇生しまくれば、不老不死とかになるのかな?
「シュー、でも、もう蘇生魔法は禁止だぞ」
「え?なんで?」
「シューが蘇生魔法を使って獣化したまま1年経っているからだ」
「ええええ!!!」
「まだ使いこなすには未熟という事だ」
オレまた知らない間に誕生日迎えてたのか・・・。
顔を上げると父上と母上が笑っていて、2人が笑ってくれているなら良いかな・・・と、桜が風に舞うのを見ながら3人で『女将亭』へ帰って行った。
『女将亭』へ着くと、グリムレインが「やっと起きたのか。寝坊助坊主め」と鼻で笑い、ハガネには「良かったな。目が覚めるの待ってたんだぜ」と涙ぐまれ、リュエールには「シューは寝すぎだよ」と言われた。
ミルアとナルアには「シューちゃん、ははうえ、シューちゃんかえして」と、ぬいぐるみ扱いを受けた。
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