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12章
蘇生魔法実験
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冬場の討伐は危険という事もあり、温泉大陸へ戻っていたイルマールが【刻狼亭】の従業員に捕まったのは早朝の事だった。
寝ぼけた頭で何がどうなっているんだ???と、騒ぐ暇も無く布団に簀巻きされて担いで【刻狼亭】の製薬室に運ばれていた。
「えーと、これは何なんですか?」
イルマールが片方しかない耳をピクピク動かすと、シュトラールが「イル!久しぶり!」と顔を出す。
「シュトラール。久しぶり。目が覚めたんだね・・・って、これはもしかして君の仕業だったりする?」
「あはは。丁度いい怪我人が見つからなくて」
イルマールが眉尻を下げて周りに居る【刻狼亭】の製薬部隊のマグノリアとテッチを見て、杖を構えたシュトラールを見る。
「おれは怪我はしてないんだけど?」
「うん。でも片耳に尻尾ないでしょ?それを再生させようと思って。実験だよ」
古い医学書と魔法書を広げてシュトラールがマグノリアとテッチと一緒に「先にこの術式を組んだらどうかな?」「なら展開術式に使うなら、こっちの魔道具がいいのでは?」「俺的に蘇生術式ならこっちの書物を新しく組み替えて回復魔法と同時に展開した方が良いと思う」と、イルマールを無視して話を始めている。
「おい!待て!おれは承諾してないんだが?!」
「承諾なら、ダリドアさんとエスタークさんが『主を宜しく』って言ってたよ」
イルマールと主従契約をした2人はアッサリと主君のイルマールを見捨てたらしい。
シュトラールが「少し痛いかもしれないから、暴れられると面倒だからそのままね」と、杖を握りしめ詠唱を始めると、マグノリアは魔道具を設置し、テッチも詠唱を始める。
シュトラールが詠唱すればする程、持っている杖はガタガタと揺れ、シュトラールの詠唱が終わると同時にパンッと音を立てて杖が二つに割れ、魔道具は白い煙を吐いていた。
イルマールは頭蓋骨と尾骶骨を金づちで打ち付けられるような痛みに布団ごとのたうち回る。
「にぎゃああああ!!!」
「イル!暴れないで!マグノリアさん、テッチさん押さえて!」
3人がかりでイルマールを押さえ込み、叫ぶイルマールの口に睡眠ポーションを流し込む。
「・・・」
「大丈夫かな?」
「結構、暴れましたね」
「俺達には無い部位だから想像つきませんね。耳は判るけど」
3人でシーンとしたイルマールを見下ろし、折れた杖と煙を吹く魔道具を見て「あちゃー」と声を上げる。
ルーファスから死蔵品の魔力増幅の杖と魔道具を出してもらったが、使った魔法が悪かったのか、ものの見事に壊れてしまっている。
「蘇生魔法はかなり強力な魔力を使うんだね」
「魔力ポーション要りますか?」
「味の改良はしてあるから飲みやすい筈、あくまで筈ね」
「いや、まだ魔力残ってるから大丈夫だよ」
シュトラールに「残念」という顔でマグノリアとテッチが魔力ポーションを振って見せる。
味の改良をしたところで不味い物は不味いんだろうなと半目で見た後で、杖1本と魔道具1個壊して得られたのはイルマールの騒ぐ姿だけかー・・・と、ため息を吐く。
シュトラールの回復魔法の向上にはどうしても上位魔法のその上を目指せる、死者をも蘇生させる回復魔法を物にしたいのだが、死に立てほやほやの人間が都合よくいるわけもなく、蘇生魔法の1つに欠損部位を蘇らせるという魔法があるのだが、時間が経てばたつほど蘇らせる事が難しくなる。
シュトラールも足が千切れたてならば蘇生は可能なので、それ以上のものを求める為にイルマールを実験台にしたというわけである。
「まだまだ改良の余地ありだね」
「そうですね。杖も魔道具も少し改良を加えないとですね」
「ああ、だったらドワーフの鍛冶屋なんてどうです?」
「ドワーフの知り合いなんて年末に来るお爺ちゃん達しかいないじゃない?」
「旦那様に頼んでみるのがいいのでは?」
「旦那なら色々伝手があるでしょうしね。ああ、でもドワーフは女将の知り合いでしたね」
ドワーフは4年前の襲撃事件の時に偶然、老人会で温泉大陸に来ていた老人で朱里と知り合い温泉街の復興に一役買い、毎年温泉大陸へ招待している老人達だ。
ドワーフは物づくりの得意な種族で武器屋防具もさることながら建物なども簡単に作ってしまう器用な事が売りの種族。
「すいませーん。うちの主回収に来ました」
「主は大丈夫か?」
イルマールの従者エスタークとダリドアが製薬室を訪れ、簀巻き状態のイルマールを回収して出ていく。
イルマールには苦痛を与えただけで申し訳ないと思いつつも、蘇生魔法の難しさにシュトラールが、朱里を助ける為にも、もっと力を付けなくてはと手を握りしめる。
もしもの時、朱里が死んでしまった時に蘇生できる魔法があれば、チャンスは2回になる。
シュトラールに肩に朱里の命が掛かっている今、中途半端な事は出来なかった。
朱里を忘れてしまっている幼い妹達の為にも早く朱里を2人の元へ自分が奪ってしまった母親と過ごせる時間を返す為にも、やれることはやらなくてはいけない。
寝ぼけた頭で何がどうなっているんだ???と、騒ぐ暇も無く布団に簀巻きされて担いで【刻狼亭】の製薬室に運ばれていた。
「えーと、これは何なんですか?」
イルマールが片方しかない耳をピクピク動かすと、シュトラールが「イル!久しぶり!」と顔を出す。
「シュトラール。久しぶり。目が覚めたんだね・・・って、これはもしかして君の仕業だったりする?」
「あはは。丁度いい怪我人が見つからなくて」
イルマールが眉尻を下げて周りに居る【刻狼亭】の製薬部隊のマグノリアとテッチを見て、杖を構えたシュトラールを見る。
「おれは怪我はしてないんだけど?」
「うん。でも片耳に尻尾ないでしょ?それを再生させようと思って。実験だよ」
古い医学書と魔法書を広げてシュトラールがマグノリアとテッチと一緒に「先にこの術式を組んだらどうかな?」「なら展開術式に使うなら、こっちの魔道具がいいのでは?」「俺的に蘇生術式ならこっちの書物を新しく組み替えて回復魔法と同時に展開した方が良いと思う」と、イルマールを無視して話を始めている。
「おい!待て!おれは承諾してないんだが?!」
「承諾なら、ダリドアさんとエスタークさんが『主を宜しく』って言ってたよ」
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シュトラールが「少し痛いかもしれないから、暴れられると面倒だからそのままね」と、杖を握りしめ詠唱を始めると、マグノリアは魔道具を設置し、テッチも詠唱を始める。
シュトラールが詠唱すればする程、持っている杖はガタガタと揺れ、シュトラールの詠唱が終わると同時にパンッと音を立てて杖が二つに割れ、魔道具は白い煙を吐いていた。
イルマールは頭蓋骨と尾骶骨を金づちで打ち付けられるような痛みに布団ごとのたうち回る。
「にぎゃああああ!!!」
「イル!暴れないで!マグノリアさん、テッチさん押さえて!」
3人がかりでイルマールを押さえ込み、叫ぶイルマールの口に睡眠ポーションを流し込む。
「・・・」
「大丈夫かな?」
「結構、暴れましたね」
「俺達には無い部位だから想像つきませんね。耳は判るけど」
3人でシーンとしたイルマールを見下ろし、折れた杖と煙を吹く魔道具を見て「あちゃー」と声を上げる。
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「蘇生魔法はかなり強力な魔力を使うんだね」
「魔力ポーション要りますか?」
「味の改良はしてあるから飲みやすい筈、あくまで筈ね」
「いや、まだ魔力残ってるから大丈夫だよ」
シュトラールに「残念」という顔でマグノリアとテッチが魔力ポーションを振って見せる。
味の改良をしたところで不味い物は不味いんだろうなと半目で見た後で、杖1本と魔道具1個壊して得られたのはイルマールの騒ぐ姿だけかー・・・と、ため息を吐く。
シュトラールの回復魔法の向上にはどうしても上位魔法のその上を目指せる、死者をも蘇生させる回復魔法を物にしたいのだが、死に立てほやほやの人間が都合よくいるわけもなく、蘇生魔法の1つに欠損部位を蘇らせるという魔法があるのだが、時間が経てばたつほど蘇らせる事が難しくなる。
シュトラールも足が千切れたてならば蘇生は可能なので、それ以上のものを求める為にイルマールを実験台にしたというわけである。
「まだまだ改良の余地ありだね」
「そうですね。杖も魔道具も少し改良を加えないとですね」
「ああ、だったらドワーフの鍛冶屋なんてどうです?」
「ドワーフの知り合いなんて年末に来るお爺ちゃん達しかいないじゃない?」
「旦那様に頼んでみるのがいいのでは?」
「旦那なら色々伝手があるでしょうしね。ああ、でもドワーフは女将の知り合いでしたね」
ドワーフは4年前の襲撃事件の時に偶然、老人会で温泉大陸に来ていた老人で朱里と知り合い温泉街の復興に一役買い、毎年温泉大陸へ招待している老人達だ。
ドワーフは物づくりの得意な種族で武器屋防具もさることながら建物なども簡単に作ってしまう器用な事が売りの種族。
「すいませーん。うちの主回収に来ました」
「主は大丈夫か?」
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もしもの時、朱里が死んでしまった時に蘇生できる魔法があれば、チャンスは2回になる。
シュトラールに肩に朱里の命が掛かっている今、中途半端な事は出来なかった。
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