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12章
赤い氷
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黒髪のふわふわロングの双子の小さな子達は何処かで見た顔をして嬉しそうに尻尾をパタパタさせている。
三角耳がピコピコ動きながら、シュトラールの足にしがみ付く。
「ちちうえー。にいさまおきたのー」
「にーさまおきたのー」
シュトラールがルーファスの顔を見れば、少し困った顔をして2人をシュトラールから引きはがすと両腕に抱き上げる。
「父上・・・」
「ミルアとナルアだ。少しばかりシューが寝ている間に大きくなってな」
少し寝ている間に大きくなるものだろうか・・・?
2人を見れば、くりくりした大きな目をシュトラールに向けて好奇心いっぱいという感じだ。
朱里にそっくりな顔立ちに金と黒のオッドアイはトリニア家の4人の子供達の証拠だ。
「父上、オレ、どのくらい寝てた・・・?」
「・・・2年と2ヶ月だ」
「そん、なに?」
シュトラールの指先が冷たくなり、胃の中が冷たくなっていく感覚に襲われる。
2年という重さに少し気が遠くなる。
ルーファスがシュトラールを見て眉を下げる。
「シュー、大丈夫か?もう少し休んでおくか?」
「だい、じょーぶ。父上、母上は、大丈夫だったの?」
「・・・お前は何処まで覚えている?」
「ベアーウォールに襲われて、死ぬかもって思ってたら、母上が目の前に現れて泣いてた・・・あとは覚えてない」
「そうか。アカリはあの日、立ち入り禁止区域にベアーウォールが出ているという話を土産を渡しに行った先で聞いて、家に戻った時にリューにシューの居所を聞いて、もしかしたらシューは立ち入り禁止区域に居るかもしれないと聞いて、グリムレインと一緒に飛び出していった」
あの時に見た母上はやはり母上だったのだとシュトラールが思って、一番来なさそうな人なんだけどなぁと自分の予想が外れた事にぼんやりと思いながら、グリムレインが居たのならあの戦闘音はグリムレインだったのかと安堵する。
流石に母上に戦闘は無理そうだから、というのがある。
「シューを襲ったベアーウォールはグリムレインが倒したんだが、その最中に2体目が現れてな・・・アカリは重傷を負って助かりそうもなかった。だからグリムレインの氷で今も眠ったまま冷凍されている」
ゴキュンと喉が鳴り、シュトラールの足が止まる。
「ウソ・・・でしょ?オレのせいで、母上・・・」
「ああ、お前のせいだ。だからこそ、お前がアカリを治して助けてやってくれ」
少しだけ悲しそうな目をしたルーファスがシュトラールに微笑んで「行くぞ」と、先を歩く。
沈んだ心に響くのは朱里の「シューちゃん」と優しく呼ぶ声だ。
唇を噛みしめて涙をこらえながらルーファスの後をシュトラールが付いて歩く。
廊下に響くのは何もわかっていないミルアとナルアの無邪気な声だけ。
「ちちうえ。おやつはねー、ふしゅふしゅしたのー」
「だめー。しゅわしゅわのがいいのー」
「両方作ってもらえばいいだろう?」
「だめー、ふしゅふしゅだけがいいのー」
「もぉー、ちちうえ、まじめにかんがえてー」
「オレ的にはフワフワしたので良いと思うが?駄目なのか?」
「ふわふわー・・・うん。それにしよー」
「ふわふわつくってもらおー」
ルーファスの腕の中でミルアとナルアは和解をしたのか2人で「ふわふわー」と即興の歌を歌いながら足をパタパタさせている。
長い廊下を歩いて行くと窓の外を覗けば、雪で外の様子は見れない。
グリムレインが居る温泉大陸はドームで守られていてこんなに吹雪く事はないが、朱里が冷凍状態のままになってからはずっと吹雪いている状態が続いている。
ルーファスが診療所の待合室に出ると、待合室でソファに座っていたハガネがシュトラールを見ていつもは閉じたままの糸目を見開く。
「シュー、目ぇ覚めたのかよ!良かったな」
「ハガネ・・・は、変わらないね」
「あ?まぁ、俺はミルアやナルアみたいな成長多感な時期じゃねぇからな」
白い歯を見せて笑うハガネに少しだけつられて口元が笑う。
「ハガネ、ミルアとナルアを頼めるか?アカリを起こしに行こうと思う」
「わかった。俺も一緒に行きてぇけど、ミルアとナルアには見せらんねぇからな」
ルーファスがミルアとナルアをハガネに渡して、2人が「ちちうえー」と声を揃えて不満そうな声を上げる。
「ハガネがフワフワなおやつを用意してくれるぞ」
「ふわふわ!はがね!ふわふわ!」
「ふわふわなおやつー!」
「へいへい。フワフワでも何でも作ってやるよ。期待してろ」
ハガネが2人を抱えて診療所を出ていくと、ルーファスが元気な娘二人に目を細めて見送る。
朱里の居ない間、ルーファスを支えていたのは娘達2人の成長が一番大きい所だ。
「アカリの状態は酷い。お前でも助けられるかは五分五分かもしれない。ミルアとナルアには一度もアカリを見せていない。あの子達がお前みたいに回復魔法を使えたら良かったんだが、あの子達はオレの母親、お前達の祖母の能力の火属性が強く出て、結局、シュトラール、お前に全てを委ねるしかない」
ルーファスが一番奥にある冷え冷えとした部屋のドアを開けると薄暗い部屋にグリムレインが赤く染まった氷を抱きしめて眠っていた。
赤く染まった氷の中であの日シュトラールが見た朱里が氷漬けのまま眠っていた。
三角耳がピコピコ動きながら、シュトラールの足にしがみ付く。
「ちちうえー。にいさまおきたのー」
「にーさまおきたのー」
シュトラールがルーファスの顔を見れば、少し困った顔をして2人をシュトラールから引きはがすと両腕に抱き上げる。
「父上・・・」
「ミルアとナルアだ。少しばかりシューが寝ている間に大きくなってな」
少し寝ている間に大きくなるものだろうか・・・?
2人を見れば、くりくりした大きな目をシュトラールに向けて好奇心いっぱいという感じだ。
朱里にそっくりな顔立ちに金と黒のオッドアイはトリニア家の4人の子供達の証拠だ。
「父上、オレ、どのくらい寝てた・・・?」
「・・・2年と2ヶ月だ」
「そん、なに?」
シュトラールの指先が冷たくなり、胃の中が冷たくなっていく感覚に襲われる。
2年という重さに少し気が遠くなる。
ルーファスがシュトラールを見て眉を下げる。
「シュー、大丈夫か?もう少し休んでおくか?」
「だい、じょーぶ。父上、母上は、大丈夫だったの?」
「・・・お前は何処まで覚えている?」
「ベアーウォールに襲われて、死ぬかもって思ってたら、母上が目の前に現れて泣いてた・・・あとは覚えてない」
「そうか。アカリはあの日、立ち入り禁止区域にベアーウォールが出ているという話を土産を渡しに行った先で聞いて、家に戻った時にリューにシューの居所を聞いて、もしかしたらシューは立ち入り禁止区域に居るかもしれないと聞いて、グリムレインと一緒に飛び出していった」
あの時に見た母上はやはり母上だったのだとシュトラールが思って、一番来なさそうな人なんだけどなぁと自分の予想が外れた事にぼんやりと思いながら、グリムレインが居たのならあの戦闘音はグリムレインだったのかと安堵する。
流石に母上に戦闘は無理そうだから、というのがある。
「シューを襲ったベアーウォールはグリムレインが倒したんだが、その最中に2体目が現れてな・・・アカリは重傷を負って助かりそうもなかった。だからグリムレインの氷で今も眠ったまま冷凍されている」
ゴキュンと喉が鳴り、シュトラールの足が止まる。
「ウソ・・・でしょ?オレのせいで、母上・・・」
「ああ、お前のせいだ。だからこそ、お前がアカリを治して助けてやってくれ」
少しだけ悲しそうな目をしたルーファスがシュトラールに微笑んで「行くぞ」と、先を歩く。
沈んだ心に響くのは朱里の「シューちゃん」と優しく呼ぶ声だ。
唇を噛みしめて涙をこらえながらルーファスの後をシュトラールが付いて歩く。
廊下に響くのは何もわかっていないミルアとナルアの無邪気な声だけ。
「ちちうえ。おやつはねー、ふしゅふしゅしたのー」
「だめー。しゅわしゅわのがいいのー」
「両方作ってもらえばいいだろう?」
「だめー、ふしゅふしゅだけがいいのー」
「もぉー、ちちうえ、まじめにかんがえてー」
「オレ的にはフワフワしたので良いと思うが?駄目なのか?」
「ふわふわー・・・うん。それにしよー」
「ふわふわつくってもらおー」
ルーファスの腕の中でミルアとナルアは和解をしたのか2人で「ふわふわー」と即興の歌を歌いながら足をパタパタさせている。
長い廊下を歩いて行くと窓の外を覗けば、雪で外の様子は見れない。
グリムレインが居る温泉大陸はドームで守られていてこんなに吹雪く事はないが、朱里が冷凍状態のままになってからはずっと吹雪いている状態が続いている。
ルーファスが診療所の待合室に出ると、待合室でソファに座っていたハガネがシュトラールを見ていつもは閉じたままの糸目を見開く。
「シュー、目ぇ覚めたのかよ!良かったな」
「ハガネ・・・は、変わらないね」
「あ?まぁ、俺はミルアやナルアみたいな成長多感な時期じゃねぇからな」
白い歯を見せて笑うハガネに少しだけつられて口元が笑う。
「ハガネ、ミルアとナルアを頼めるか?アカリを起こしに行こうと思う」
「わかった。俺も一緒に行きてぇけど、ミルアとナルアには見せらんねぇからな」
ルーファスがミルアとナルアをハガネに渡して、2人が「ちちうえー」と声を揃えて不満そうな声を上げる。
「ハガネがフワフワなおやつを用意してくれるぞ」
「ふわふわ!はがね!ふわふわ!」
「ふわふわなおやつー!」
「へいへい。フワフワでも何でも作ってやるよ。期待してろ」
ハガネが2人を抱えて診療所を出ていくと、ルーファスが元気な娘二人に目を細めて見送る。
朱里の居ない間、ルーファスを支えていたのは娘達2人の成長が一番大きい所だ。
「アカリの状態は酷い。お前でも助けられるかは五分五分かもしれない。ミルアとナルアには一度もアカリを見せていない。あの子達がお前みたいに回復魔法を使えたら良かったんだが、あの子達はオレの母親、お前達の祖母の能力の火属性が強く出て、結局、シュトラール、お前に全てを委ねるしかない」
ルーファスが一番奥にある冷え冷えとした部屋のドアを開けると薄暗い部屋にグリムレインが赤く染まった氷を抱きしめて眠っていた。
赤く染まった氷の中であの日シュトラールが見た朱里が氷漬けのまま眠っていた。
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