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12章
温泉街の花魁道中
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年末の年越し用の買い物で賑わう露店街をルーファスと朱里が手を繋ぎながら歩き、後ろにはモコモコに着込んだミルアとナルアを抱きかかえたグリムレインが付いて歩いて、リュエールとシュトラールはその後を露店で買ってもらった焼き餅を食べながら歩いている。
「旦那様、今年も買っていきますか?」
ルーファスに声を掛けてきた露店は毎年恒例の【刻狼亭】の製薬部隊の露店でマグノリアとピルマーだった。
今年も色々と新商品を開発した様で種類が増えている。
「またあなた達はー・・・あっ、コレ。コレは買いましょう」
朱里が指さした商品は1度ルーファスが朱里に試しに使ったところ、疲労回復とお肌と髪の艶が良くなった商品でいつもならば体力お化けのルーファスが逆に朱里に吸い取られた感じになり次の日に腰痛になったものだ。
「アカリ・・・」
「駄目ですか?いっぱい出来ますよ・・・?うふっ」
小声でルーファスに朱里が言って笑うとルーファスが「これを後で家に届けてくれ」と商品を買い上げ、マグノリア達に「毎度ありー」と元気に言われて、ついでに何個か新商品も購入しておいた。
「父上、マグノリアさん達は何を売ってる店だったの?」
「何かお金が高い露店だったね。ぼったくり?」
左右に首をかしげるリュエールとシュトラールにルーファスが苦笑いしながら「大人になればわかる店だ」と何とも言えない誤魔化しをして、グリムレインがニヤニヤと意味深な笑いをルーファスに向けていた。
リュエールとシュトラールも大人になればとは思う物の、子供のままでいてくれたらとも思う。
子供の成長はあっという間だというのも少し感じている。ほんの少し前まで「ちちえー」と言いながら甘えてヨタヨタ歩いていた子供達が、今では走り回り身長も伸びて、朱里が「私が抜かされる予感が凄くしますー」と30cm未満になり始めた身長の差に危機感を覚えているぐらいだ。
特にシュトラールが身長の伸びるのが早く、リュエールと6cmほどの差が出てしまっている。
ミルアとナルアはまだ掴まり立ちではあるが、母乳から離乳食になり最近はパンを頬張る様になっている。
まぁ、詰め込み過ぎてよく口から出して朱里に「メッ!」と怒られてはいるが。
そのうちミルアとナルアも大きくなって、こういう店の商品を・・・と、そこまで考えて、真面目にこの露店を裏商売させて露店では出回らない様にしようかと思ったのは内緒だ。
「ルーファス、眉間にしわが寄ってますよ?」
朱里が握った手を少し振りながら小首をかしげて笑う。
相変わらず朱里が可愛いと思いながら、ルーファスが思うのは子供達にも朱里の様に笑いかけてくれる相手が見つかれば良いと願う事だけだ。
「少し色々考えていたが、アカリの笑顔でどうでもよくなった」
「ん~?何でしょう?気になりますね。ふふっ」
「考えても仕方がない事だから気にするな。それよりアカリの好きな揚げ菓子が売ってるぞ」
「ふぁっ!是非買いましょう!リューちゃんシューちゃんも揚げ菓子食べますか?」
朱里が揚げ菓子の売っている露店を指さすとリュエールとシュトラールが「いるー!」と元気に答えて、朱里が露店にルーファスを引っ張りながら行き、揚げ菓子露店で売っている8個入りの袋を4つ買い、グリムレインとリュエールとシュトラールに1袋ずつ渡す。
ルーファスが両手の塞がってしまう朱里と手を繋ぐのは無理だと判断し、朱里を抱き上げると、小さな竹串で揚げ菓子を刺してルーファスに「あーん」と1つ食べさせると、自分の口にも入れて「出来立て美味しい!」とニコニコしながら食べ始める。
グリムレインは食べようとしている所をミルアとナルアに横から揚げ菓子を齧られ「チビッ子、我のだぞ?」と良いながらも3人で仲良く食べ合っていた。
リュエールとシュトラールはペロッと食べて次の食べ物露店を探している。
少し歩いて飲み物を売っている露店に行き飲み物を買っていると、ザワッと人々が騒ぎ、道を左右に分けて真ん中を開けている。
何事かとルーファスがざわつく街道を覗けば、今年もやってきていた『踊り子』達一行が綺麗に着物で着飾り、テルトワイトがその一行を引き連れて歩いている所だった。
彼らが歩くとおひねりと魔法で作られた花が飛び交っている。
テルトワイトも今年は少し華やかな着物で歩いているのは、朱里とありすのせいだろう。
『花魁道中』を2人が説明し、テルトワイトが冗談半分で「踊り子さん達とやれたらやってみますよ」と言っていたが、本当に実行してしまったらしい。
「わぁ。凄いですね。うちの温泉街の風物詩になれば良いんですけど」
「アカリ・・・アレで良いのか?」
「ふふっ。『踊り子』さん達も楽しそうですし、いろんな場所に勝手に歩き回られるより、こうしたイベントみたいに堂々と「ここに踊り子さんいますよー」って宣伝してくれた方が、被害が出なくていいじゃないですか」
随分と逞しくなったものだと朱里を見れば、朱里が小さな包み紙の中に硬貨を入れておひねりを作ると、ルーファスの肩の上に抱き上げてもらい、勢いを付けておひねりを放り投げる。
ストンと『踊り子』の着物の胸元に入り、『踊り子』が「あんっ」と声を出しておひねりを少し着物の胸元を広げて出すと、色香にやられた若者が倒れたり前かがみになったりしていた。
我も我もとおひねりを作り放り投げる者も続出して、少しカオスな状態になり【刻狼亭】から警備の従業員が出てきて騒ぎを鎮静化させる事になり、次の日からはおひねりを入れる籠と大きな番傘でおひねりが人にあたらない様にガードをする警護がついたのだった。
温泉大陸の冬の『花魁道中』が風物詩になるのはもうしばらく後の年の話。
テルトワイトの人気もあり、冬場に若い女性や貴婦人の客入りも多くなり、温泉街の『花魁道中』で番を見付ける人々も出て、『運命の花魁道中』とも呼ばれるようになる。
テルトワイトの息子のイルマールはこの時期は「頭痛がする」と騒いでいるが、イルマールにも参加要請がきて逃げ回る様になるのも風物詩の1つになる。
「旦那様、今年も買っていきますか?」
ルーファスに声を掛けてきた露店は毎年恒例の【刻狼亭】の製薬部隊の露店でマグノリアとピルマーだった。
今年も色々と新商品を開発した様で種類が増えている。
「またあなた達はー・・・あっ、コレ。コレは買いましょう」
朱里が指さした商品は1度ルーファスが朱里に試しに使ったところ、疲労回復とお肌と髪の艶が良くなった商品でいつもならば体力お化けのルーファスが逆に朱里に吸い取られた感じになり次の日に腰痛になったものだ。
「アカリ・・・」
「駄目ですか?いっぱい出来ますよ・・・?うふっ」
小声でルーファスに朱里が言って笑うとルーファスが「これを後で家に届けてくれ」と商品を買い上げ、マグノリア達に「毎度ありー」と元気に言われて、ついでに何個か新商品も購入しておいた。
「父上、マグノリアさん達は何を売ってる店だったの?」
「何かお金が高い露店だったね。ぼったくり?」
左右に首をかしげるリュエールとシュトラールにルーファスが苦笑いしながら「大人になればわかる店だ」と何とも言えない誤魔化しをして、グリムレインがニヤニヤと意味深な笑いをルーファスに向けていた。
リュエールとシュトラールも大人になればとは思う物の、子供のままでいてくれたらとも思う。
子供の成長はあっという間だというのも少し感じている。ほんの少し前まで「ちちえー」と言いながら甘えてヨタヨタ歩いていた子供達が、今では走り回り身長も伸びて、朱里が「私が抜かされる予感が凄くしますー」と30cm未満になり始めた身長の差に危機感を覚えているぐらいだ。
特にシュトラールが身長の伸びるのが早く、リュエールと6cmほどの差が出てしまっている。
ミルアとナルアはまだ掴まり立ちではあるが、母乳から離乳食になり最近はパンを頬張る様になっている。
まぁ、詰め込み過ぎてよく口から出して朱里に「メッ!」と怒られてはいるが。
そのうちミルアとナルアも大きくなって、こういう店の商品を・・・と、そこまで考えて、真面目にこの露店を裏商売させて露店では出回らない様にしようかと思ったのは内緒だ。
「ルーファス、眉間にしわが寄ってますよ?」
朱里が握った手を少し振りながら小首をかしげて笑う。
相変わらず朱里が可愛いと思いながら、ルーファスが思うのは子供達にも朱里の様に笑いかけてくれる相手が見つかれば良いと願う事だけだ。
「少し色々考えていたが、アカリの笑顔でどうでもよくなった」
「ん~?何でしょう?気になりますね。ふふっ」
「考えても仕方がない事だから気にするな。それよりアカリの好きな揚げ菓子が売ってるぞ」
「ふぁっ!是非買いましょう!リューちゃんシューちゃんも揚げ菓子食べますか?」
朱里が揚げ菓子の売っている露店を指さすとリュエールとシュトラールが「いるー!」と元気に答えて、朱里が露店にルーファスを引っ張りながら行き、揚げ菓子露店で売っている8個入りの袋を4つ買い、グリムレインとリュエールとシュトラールに1袋ずつ渡す。
ルーファスが両手の塞がってしまう朱里と手を繋ぐのは無理だと判断し、朱里を抱き上げると、小さな竹串で揚げ菓子を刺してルーファスに「あーん」と1つ食べさせると、自分の口にも入れて「出来立て美味しい!」とニコニコしながら食べ始める。
グリムレインは食べようとしている所をミルアとナルアに横から揚げ菓子を齧られ「チビッ子、我のだぞ?」と良いながらも3人で仲良く食べ合っていた。
リュエールとシュトラールはペロッと食べて次の食べ物露店を探している。
少し歩いて飲み物を売っている露店に行き飲み物を買っていると、ザワッと人々が騒ぎ、道を左右に分けて真ん中を開けている。
何事かとルーファスがざわつく街道を覗けば、今年もやってきていた『踊り子』達一行が綺麗に着物で着飾り、テルトワイトがその一行を引き連れて歩いている所だった。
彼らが歩くとおひねりと魔法で作られた花が飛び交っている。
テルトワイトも今年は少し華やかな着物で歩いているのは、朱里とありすのせいだろう。
『花魁道中』を2人が説明し、テルトワイトが冗談半分で「踊り子さん達とやれたらやってみますよ」と言っていたが、本当に実行してしまったらしい。
「わぁ。凄いですね。うちの温泉街の風物詩になれば良いんですけど」
「アカリ・・・アレで良いのか?」
「ふふっ。『踊り子』さん達も楽しそうですし、いろんな場所に勝手に歩き回られるより、こうしたイベントみたいに堂々と「ここに踊り子さんいますよー」って宣伝してくれた方が、被害が出なくていいじゃないですか」
随分と逞しくなったものだと朱里を見れば、朱里が小さな包み紙の中に硬貨を入れておひねりを作ると、ルーファスの肩の上に抱き上げてもらい、勢いを付けておひねりを放り投げる。
ストンと『踊り子』の着物の胸元に入り、『踊り子』が「あんっ」と声を出しておひねりを少し着物の胸元を広げて出すと、色香にやられた若者が倒れたり前かがみになったりしていた。
我も我もとおひねりを作り放り投げる者も続出して、少しカオスな状態になり【刻狼亭】から警備の従業員が出てきて騒ぎを鎮静化させる事になり、次の日からはおひねりを入れる籠と大きな番傘でおひねりが人にあたらない様にガードをする警護がついたのだった。
温泉大陸の冬の『花魁道中』が風物詩になるのはもうしばらく後の年の話。
テルトワイトの人気もあり、冬場に若い女性や貴婦人の客入りも多くなり、温泉街の『花魁道中』で番を見付ける人々も出て、『運命の花魁道中』とも呼ばれるようになる。
テルトワイトの息子のイルマールはこの時期は「頭痛がする」と騒いでいるが、イルマールにも参加要請がきて逃げ回る様になるのも風物詩の1つになる。
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