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11章
ケンジの日記2
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ケンジの日記はリルの想像以上に有り得ない出来事ばかりが書かれている。
日記に書いていることはリルの知っている歴史の教科書に載っていた出来事もある。
読み進めれば読み進める程、ケンジという男がよくわからなくなる。
「不思議な男ですよね。でも異世界人の特殊能力は我々には考えが及ばない物もありますからね。異世界人だからの一言で片づけてしまう事も出来ますね」
ギルがリルの横で日記を覗き込みながら、最後の方のページを指でめくってみせる。
『何度時間を移動してもリルが21歳を超えられない。
調べる為の時間が必要なのに、リルの存在が消えかける。
むしろ【刻狼亭】自体が消滅する時もある。
消えるような財力の無い【刻狼亭】にした覚えはないのに・・・。
リルを未来から連れ去り過去に閉じ込めた。
存在は不安定だけど、これなら消えることはない。
原因は何だろう?
リルより前の時代を1つずつ検証していくしかない』
リルは21歳を超えられない・・・?
それは今現在の21歳のリルはもう命の期限が底をつき始めているのだろうか?
やはりというべきか、リルを過去へ連れ去ったのはケンジだった。
最後のリルの記憶はあいまいだが、ケンジと一緒に居たのは覚えている。
またページを1枚めくると数字の羅列と×印が幾つも書かれているページが続く。
たまにリルを助けたいと書きなぐる様に書いてある。
これはケンジの優しさだろうか?それとも執念だろうか?
『 始まりのあの子がリルに繋がる軸だった。
同じ日本人、異世界人。
そうじゃないかとは思ったけど、あの子の動きで後の【刻狼亭】が変わる。
あの子はこの世界に来る時と来ない時がある。
現れても人族の国に捕らわれ2週間で死んでしまう。
助け出して【刻狼亭】へ連れて行かせても2ヶ月程で死んでしまう。
あの子の動きをこちらが誘導すると、新しい問題があの子の前に立ちふさがる。
まずはこの子をどうにかしないとリルの誕生まで繋がらない。
●この世界に確実に来るようにするにはどうしたらいいだろう?
●召喚をさせるにしても、人族の国がポイッと価値無しと手放してくれるには?
病弱で直ぐに死んでしまうのもどうにかしないと不味い。
リルも問題が色々あるけど、この子の問題の方が厄介かもしれない 』
また何ページにも渡って数字と×印が日記を埋めていく。
リルに似ている『あの子』とは先程までリルの横で『女将亭』を案内してくれた朱里だろうか?
【刻狼亭】15代目の女将は異世界人だったはず。
たまに黒狼族なのに耳や尻尾がない子供が生まれるのは、その女将の血が混じっているせいだと聞いた事がある。
従妹のアニアがそれに当てはまる。朱里をアニアだと思ったのもそこが原因だ。
日記の書き込みは突然終わっていた。
『 オレの嫁計画完了!!
ようやくリルが誕生するまでのルート確保を完遂させた!
ちょっと色々しすぎて温泉大陸に簡単に侵入出来なくなったけど、これでオレがリルと出会って過去にリルを連れ去るまでは眠らせているリルを安全な場所に隠しておけばいい。
リルが眠っている場所はオレの秘密基地だし、警備兵も用意した。
暗証番号も暗号も異世界人なら判るだろうけど、扉はオレかリルの血縁者しか開かない様にしたから、暗号の判る異世界人はあの子だけだし、開くことはないだろうから安全安心!
リルの為に服も下着も大量に用意した!
これは嫁に着て欲しい夢とロマンが詰まったオレの集大成!
早くリルに会いたいけど、時間移動に金使いすぎて貯金が無い・・・。
600年くらい軽く寝れば金も貯まって新しい発明品も作れるだろうし、オレの能力金かかりすぎぃ!
リルの体を治すのに必要な特殊ポーションも手に入ったし、【黄土病】を【病魔】に進化させて人類の対応を実験的に繰り返したのはやっぱり間違えてなかったな。
リルに繋がる初めのあの子が死にやすいのは世界があの子を排除しようとしてるのか?!とか、漫画みたいな事思ってたけど、【聖域】の特殊体だからとはね。
すぐに死んじゃうわけだよね。
でもあの子の作る特殊ポーションでリルが助かるんだから、オレが色々やったことは無駄じゃなかった。
オレ頑張ったー!!
これ以上はリルと年齢が離れすぎちゃうからオレもしばらく寝てお金を貯めなきゃな。
次にこの日記を書く時はリルとの甘い日々が書けるといいな 』
パラパラと日記を見てもそれ以上は書いてはいなかった。
性質の悪い創作話にも思える日記に書かれていたことはリル1人の為に何をしたのだろう?
やはりこれはイタズラじゃないのか?
リルを揶揄ってヒョッコリそこら辺からうっとおしい前髪に口元だけヘラっと笑ってみせるケンジが出てくるんじゃないだろうか?
ドラゴンの上で見渡せるのは上空の澄んだ空と地上に見える白く大きな木にリルの知っている『女将亭』より小さな建物。
しかし温泉大陸の地形はリルの知っている大陸そのものだ。
日記を胸にギュッと抱きしめてリルが目をつぶると、ギルが大きく両手を伸ばして伸びをする。
「貴女1人の為に随分と歴史や人を動かしたみたいですよね?私もそういう壮大なロマンティックなのは嫌いじゃないです。まぁ、最後は詰めが甘い様ですけど・・・んーっ、お腹すきましたね。アカリに何か食べさせてもらいましょうか」
「結局、その日記は何が書いてあったのさギル」
ギルに顔を近づけながらアルビーが首をかしげると指で鼻先をツンっと押され「駄目ですよ」とギルに静かに怒られる。
「これは私はともかく、君達ドラゴンも読まない方がいい。リルと私の胸にしまっておきましょう。未来も過去も知らない方がいいのはドラゴンも一緒ですよ。私は自分の家族を持つ気はないので未来に影響がありませんから、未来の無い私に任せて君達は、また何事も知らない明日を生きていきなさい」
「それ、余計に気になるんだけど?」
ギルがクスクス笑って「さぁ、帰りますよ」と言って渋るドラゴン達に「ほらご飯食べに帰らないと!」と急かして地上に帰って行った。
日記に書いていることはリルの知っている歴史の教科書に載っていた出来事もある。
読み進めれば読み進める程、ケンジという男がよくわからなくなる。
「不思議な男ですよね。でも異世界人の特殊能力は我々には考えが及ばない物もありますからね。異世界人だからの一言で片づけてしまう事も出来ますね」
ギルがリルの横で日記を覗き込みながら、最後の方のページを指でめくってみせる。
『何度時間を移動してもリルが21歳を超えられない。
調べる為の時間が必要なのに、リルの存在が消えかける。
むしろ【刻狼亭】自体が消滅する時もある。
消えるような財力の無い【刻狼亭】にした覚えはないのに・・・。
リルを未来から連れ去り過去に閉じ込めた。
存在は不安定だけど、これなら消えることはない。
原因は何だろう?
リルより前の時代を1つずつ検証していくしかない』
リルは21歳を超えられない・・・?
それは今現在の21歳のリルはもう命の期限が底をつき始めているのだろうか?
やはりというべきか、リルを過去へ連れ去ったのはケンジだった。
最後のリルの記憶はあいまいだが、ケンジと一緒に居たのは覚えている。
またページを1枚めくると数字の羅列と×印が幾つも書かれているページが続く。
たまにリルを助けたいと書きなぐる様に書いてある。
これはケンジの優しさだろうか?それとも執念だろうか?
『 始まりのあの子がリルに繋がる軸だった。
同じ日本人、異世界人。
そうじゃないかとは思ったけど、あの子の動きで後の【刻狼亭】が変わる。
あの子はこの世界に来る時と来ない時がある。
現れても人族の国に捕らわれ2週間で死んでしまう。
助け出して【刻狼亭】へ連れて行かせても2ヶ月程で死んでしまう。
あの子の動きをこちらが誘導すると、新しい問題があの子の前に立ちふさがる。
まずはこの子をどうにかしないとリルの誕生まで繋がらない。
●この世界に確実に来るようにするにはどうしたらいいだろう?
●召喚をさせるにしても、人族の国がポイッと価値無しと手放してくれるには?
病弱で直ぐに死んでしまうのもどうにかしないと不味い。
リルも問題が色々あるけど、この子の問題の方が厄介かもしれない 』
また何ページにも渡って数字と×印が日記を埋めていく。
リルに似ている『あの子』とは先程までリルの横で『女将亭』を案内してくれた朱里だろうか?
【刻狼亭】15代目の女将は異世界人だったはず。
たまに黒狼族なのに耳や尻尾がない子供が生まれるのは、その女将の血が混じっているせいだと聞いた事がある。
従妹のアニアがそれに当てはまる。朱里をアニアだと思ったのもそこが原因だ。
日記の書き込みは突然終わっていた。
『 オレの嫁計画完了!!
ようやくリルが誕生するまでのルート確保を完遂させた!
ちょっと色々しすぎて温泉大陸に簡単に侵入出来なくなったけど、これでオレがリルと出会って過去にリルを連れ去るまでは眠らせているリルを安全な場所に隠しておけばいい。
リルが眠っている場所はオレの秘密基地だし、警備兵も用意した。
暗証番号も暗号も異世界人なら判るだろうけど、扉はオレかリルの血縁者しか開かない様にしたから、暗号の判る異世界人はあの子だけだし、開くことはないだろうから安全安心!
リルの為に服も下着も大量に用意した!
これは嫁に着て欲しい夢とロマンが詰まったオレの集大成!
早くリルに会いたいけど、時間移動に金使いすぎて貯金が無い・・・。
600年くらい軽く寝れば金も貯まって新しい発明品も作れるだろうし、オレの能力金かかりすぎぃ!
リルの体を治すのに必要な特殊ポーションも手に入ったし、【黄土病】を【病魔】に進化させて人類の対応を実験的に繰り返したのはやっぱり間違えてなかったな。
リルに繋がる初めのあの子が死にやすいのは世界があの子を排除しようとしてるのか?!とか、漫画みたいな事思ってたけど、【聖域】の特殊体だからとはね。
すぐに死んじゃうわけだよね。
でもあの子の作る特殊ポーションでリルが助かるんだから、オレが色々やったことは無駄じゃなかった。
オレ頑張ったー!!
これ以上はリルと年齢が離れすぎちゃうからオレもしばらく寝てお金を貯めなきゃな。
次にこの日記を書く時はリルとの甘い日々が書けるといいな 』
パラパラと日記を見てもそれ以上は書いてはいなかった。
性質の悪い創作話にも思える日記に書かれていたことはリル1人の為に何をしたのだろう?
やはりこれはイタズラじゃないのか?
リルを揶揄ってヒョッコリそこら辺からうっとおしい前髪に口元だけヘラっと笑ってみせるケンジが出てくるんじゃないだろうか?
ドラゴンの上で見渡せるのは上空の澄んだ空と地上に見える白く大きな木にリルの知っている『女将亭』より小さな建物。
しかし温泉大陸の地形はリルの知っている大陸そのものだ。
日記を胸にギュッと抱きしめてリルが目をつぶると、ギルが大きく両手を伸ばして伸びをする。
「貴女1人の為に随分と歴史や人を動かしたみたいですよね?私もそういう壮大なロマンティックなのは嫌いじゃないです。まぁ、最後は詰めが甘い様ですけど・・・んーっ、お腹すきましたね。アカリに何か食べさせてもらいましょうか」
「結局、その日記は何が書いてあったのさギル」
ギルに顔を近づけながらアルビーが首をかしげると指で鼻先をツンっと押され「駄目ですよ」とギルに静かに怒られる。
「これは私はともかく、君達ドラゴンも読まない方がいい。リルと私の胸にしまっておきましょう。未来も過去も知らない方がいいのはドラゴンも一緒ですよ。私は自分の家族を持つ気はないので未来に影響がありませんから、未来の無い私に任せて君達は、また何事も知らない明日を生きていきなさい」
「それ、余計に気になるんだけど?」
ギルがクスクス笑って「さぁ、帰りますよ」と言って渋るドラゴン達に「ほらご飯食べに帰らないと!」と急かして地上に帰って行った。
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