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11章
ダンジョン①
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温泉大陸にある小高い丘の上にあるギルの屋敷はここ数週間もぬけの殻のまま閑散としている。
冒険者として活動していたギルにとって、4年半のブランクはそれなりの物がある。
冷凍されていた間は一瞬のような物なのでギル自身はどうという事は無いが、ダンジョンや魔獣の生態は4年半で大きく変わってしまうので情報屋で調べられるところは調べ、自分の足で調べるところは調べるのである。
ギルが地図を片手にダンジョンをサクサクと歩く後ろをムスッとしながら歩くのは大甥にあたるリュエールとシュトラールの双子兄弟だ。
「ねぇギル大叔父さん、このダンジョン何も出ないよ?」
「面白味が何も無いよ」
ギルに「ダンジョンに一緒に行ってみませんか?」と誘われ、「行くー!」と元気に答えた2人ではあったが、魔獣1匹出ないダンジョンなのである。
それもそのはずで、4年半の間に1度モスタンピードを起こし、ダンジョンの外に出た魔獣もダンジョンの中に居た魔獣も全て冒険者ギルドの手により討伐されたからだ。
「魔獣達が群れを成して狂行軍してくることは習ったかい?」
ギルが2人にそう聞いて2人が頷く。
「人為的に魔獣を巻き込んで起こしてしまう物と、突然変異した魔獣が核になって起きる2つがあるって父上が言ってたよ」
「対処は冒険者ギルドに登録してたら全員に通知が行くって、規模は大小様々だけど放置すると森や村が更地になるって言ってた」
「そうだよ。このダンジョンはそのスタンピードが起きた後だから、魔獣が居ない。だからこそ、魔獣の居ない間にダンジョンを探索してマッピングされていない隠し通路がないかを調べておくんだ。そのうちまた魔獣はダンジョンをねぐらにするからね」
ギルが壁の一部を蹴り上げて隠し通路が姿を現すと2人が「ワァ!」と声を上げる。
「ギル大叔父さんよくこの隠し通路分かったね」
「すごーい!」
「この壁の前を歩いた時に足音の反響がココだけ違ったからね。狼族ならダンジョンの中では自分の足音にも耳を澄ませると良いよ」
2人が「うん!」と答えながら隠し通路の中に入ると広がる通路は金属製のツルツルした通路の様で歩くたびにカツンカツンと音が響く。
リュエールがピタッと立ち止まると自分の腕に手を当てる。
リュエールの腕には銀と黒の腕輪に薄いピンクの宝石が付いている物が光る。
『どうだ?そろそろダンジョンは見て回れたか?』
ルーファスの声が腕輪からして、後ろでは朱里が「無茶してない?大丈夫?」と心配そうに喋る声が聞こえている。
「今ね、隠し通路をギル大叔父さんが見付けて入ったところ」
『未開領域か・・・ギル叔父上の後ろについて歩いて、余計な物に触るんじゃないぞ?』
「大丈夫だよ。魔獣も居ないし」
『未開領域はスタンピードが起きても中には魔獣が残っている場合もある。油断はするな』
「そうなんだ。特に何もいない感じだけど・・・」
ビーンビーンビーン。
『何の音だ?』
「わかんない!隠し通路が赤く光ってる!」
『リュエール?大丈夫なのか?!』
「ちょっとうるさくて聞こえないから切るね!」
ブツンと魔法通信を切るとリュエールが耳を手で押さえる。
隠し通路の床と天井が赤く光り、ビーンという音がけたたましく鳴り響く。
目の前を歩くギルは音のうるささに少し耳を下げて片目を閉じると少し身構えながら辺りを見回すと、奥にある部屋から鉄で出来た四角い物がガチャガチャと音を立てて3人の方へ向かってくる。
「機械兵でしょうか・・・随分単純な形をしていますけど」
「ギル大叔父さん!悠長にしてないで!」
「ギル大叔父さん!逃げるの?戦うの?どっち?!」
「まぁまぁ、2人共落ち着いて。ダンジョンではパニックになった者から死んでいくんですよ」
「怖い事言わないで!」
「とりあえずどうするのかだけ教えてよ!」
2人が尻尾をブワッと膨らませてギルにワーッと文句を言えば、ギルがやれやれと2人を両脇に抱えると機械兵の所まで行くと機械兵の頭の上にヒョイと飛び乗り、そのまま踏み台にして奥へと走って行く。
「え?ギル大叔父さん戦わないの?!」
「機械兵無視するのー?!」
「資料にもなるかもしれませんから、ああいうのは後で回収するんですよ」
奥に行くと行き止まりになり、行き止まりの前に黒い台がある。
『暗証番号と暗号をお願いします。『イイクニツクロウ』になります』
「何でしょうね?『イイクニツクロウ』って・・・」
「暗号ってなぞなぞ?」
「あっ!機械兵が来たよ!」
機械兵が変形し、光る剣を振り回し始めるとギルも慌てて避け、再び機械兵の頭を踏みつけて後ろに回り、来た道を疾走する。
「戦わないのー?!」
「あいつ1体だけだよ?」
「バカ言うんじゃありません!あの武器は原理はよくわかりませんが触れただけで骨ごと肉を斬られます!私も数回見た事があるだけですけど、危ない武器なんです。あなた達2人を巻き込んだらルーファスに殺されるじゃないですか!」
ギルが隠し通路の入り口まで出ると音は鳴りやみ、機械兵も奥へと帰って行った。
冒険者として活動していたギルにとって、4年半のブランクはそれなりの物がある。
冷凍されていた間は一瞬のような物なのでギル自身はどうという事は無いが、ダンジョンや魔獣の生態は4年半で大きく変わってしまうので情報屋で調べられるところは調べ、自分の足で調べるところは調べるのである。
ギルが地図を片手にダンジョンをサクサクと歩く後ろをムスッとしながら歩くのは大甥にあたるリュエールとシュトラールの双子兄弟だ。
「ねぇギル大叔父さん、このダンジョン何も出ないよ?」
「面白味が何も無いよ」
ギルに「ダンジョンに一緒に行ってみませんか?」と誘われ、「行くー!」と元気に答えた2人ではあったが、魔獣1匹出ないダンジョンなのである。
それもそのはずで、4年半の間に1度モスタンピードを起こし、ダンジョンの外に出た魔獣もダンジョンの中に居た魔獣も全て冒険者ギルドの手により討伐されたからだ。
「魔獣達が群れを成して狂行軍してくることは習ったかい?」
ギルが2人にそう聞いて2人が頷く。
「人為的に魔獣を巻き込んで起こしてしまう物と、突然変異した魔獣が核になって起きる2つがあるって父上が言ってたよ」
「対処は冒険者ギルドに登録してたら全員に通知が行くって、規模は大小様々だけど放置すると森や村が更地になるって言ってた」
「そうだよ。このダンジョンはそのスタンピードが起きた後だから、魔獣が居ない。だからこそ、魔獣の居ない間にダンジョンを探索してマッピングされていない隠し通路がないかを調べておくんだ。そのうちまた魔獣はダンジョンをねぐらにするからね」
ギルが壁の一部を蹴り上げて隠し通路が姿を現すと2人が「ワァ!」と声を上げる。
「ギル大叔父さんよくこの隠し通路分かったね」
「すごーい!」
「この壁の前を歩いた時に足音の反響がココだけ違ったからね。狼族ならダンジョンの中では自分の足音にも耳を澄ませると良いよ」
2人が「うん!」と答えながら隠し通路の中に入ると広がる通路は金属製のツルツルした通路の様で歩くたびにカツンカツンと音が響く。
リュエールがピタッと立ち止まると自分の腕に手を当てる。
リュエールの腕には銀と黒の腕輪に薄いピンクの宝石が付いている物が光る。
『どうだ?そろそろダンジョンは見て回れたか?』
ルーファスの声が腕輪からして、後ろでは朱里が「無茶してない?大丈夫?」と心配そうに喋る声が聞こえている。
「今ね、隠し通路をギル大叔父さんが見付けて入ったところ」
『未開領域か・・・ギル叔父上の後ろについて歩いて、余計な物に触るんじゃないぞ?』
「大丈夫だよ。魔獣も居ないし」
『未開領域はスタンピードが起きても中には魔獣が残っている場合もある。油断はするな』
「そうなんだ。特に何もいない感じだけど・・・」
ビーンビーンビーン。
『何の音だ?』
「わかんない!隠し通路が赤く光ってる!」
『リュエール?大丈夫なのか?!』
「ちょっとうるさくて聞こえないから切るね!」
ブツンと魔法通信を切るとリュエールが耳を手で押さえる。
隠し通路の床と天井が赤く光り、ビーンという音がけたたましく鳴り響く。
目の前を歩くギルは音のうるささに少し耳を下げて片目を閉じると少し身構えながら辺りを見回すと、奥にある部屋から鉄で出来た四角い物がガチャガチャと音を立てて3人の方へ向かってくる。
「機械兵でしょうか・・・随分単純な形をしていますけど」
「ギル大叔父さん!悠長にしてないで!」
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「怖い事言わないで!」
「とりあえずどうするのかだけ教えてよ!」
2人が尻尾をブワッと膨らませてギルにワーッと文句を言えば、ギルがやれやれと2人を両脇に抱えると機械兵の所まで行くと機械兵の頭の上にヒョイと飛び乗り、そのまま踏み台にして奥へと走って行く。
「え?ギル大叔父さん戦わないの?!」
「機械兵無視するのー?!」
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「バカ言うんじゃありません!あの武器は原理はよくわかりませんが触れただけで骨ごと肉を斬られます!私も数回見た事があるだけですけど、危ない武器なんです。あなた達2人を巻き込んだらルーファスに殺されるじゃないですか!」
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