300 / 960
11章
ひな祭り①
しおりを挟む
朝から【刻狼亭】の料亭は華やかな彩で埋まっていた。
桜色と薄い鶯色の色彩がフロントロビーの絨毯から始まり、飾ってある花も薄いピンク色の物になっている。
全体的に店の中が薄い桃色の物が多く、いつもの高級感溢れる重厚感はない。
フロントロビーには朱里がデザインし【風雷商】経由でガルドアス領が人形を作り、東国の職人に人形に着せる十二単等衣装を作らせ、ひな壇や小物も東国の漆細工の職人に作らせた細かい細工の物が飾られている。
『女性限定☆ひな祭りフェア』
●女の子の健やかな成長を祝う行事を「ひな祭り」と言います。
●女性であれば本日のひな祭りフェアの特別お料理半額となります。
●プレゼントもございますので楽しんで行ってくださいませ。
*詳しく知りたい方はチラシがありますのでお持ちください。
ポスターも張られ、女性従業員のお仕着せも薄い桃色と白と鶯色のグラデーションの物になり、可愛らしい物になっている。男性従業員は鶯色のお仕着せになっている。
相変わらずルーファスは黒い着物で朱里は白い着物ではあるが、朱里の物は帯が桃色に帯留めの玉飾りが桜の形をした白い石を付けてアクセントを持たせている。
「アカリ、今日は紅の色も薄桃色なんだな」
「ふふ。髪留めの花飾りも桃色ですよ。ミルアとナルアもお揃いの花飾りなんです」
ルーファスに頬を触られながら朱里が髪留めを見せて、着物の袖を手でつまんで「どうですか?」とクルッと回って子供の様にはしゃいでいる姿は4児の母親には見えない。
「16の時のアカリみたいだ」
「私が若作りしていると?」
「いや、出会った頃みたいにドキッとさせられるなと」
「ルーファスったら、もう、おだてても何も出ないですよ」
「それは残念だ。キスの1つでも貰おうと思っていたのに」
「ふふっ。しゃがんでください」
ルーファスをしゃがませると手で前髪をかき上げてキスを落とすと髪から手を離す。
「これでルーファスにも桃色が1個付きましたよ」
くくくっとルーファスが笑い朱里がふふふっと声を出して笑っていると、暖簾をくぐり女性客が料亭へ入ってくる。
「いらっしゃいませ。【刻狼亭】へようこそ」
「本日は『ひな祭り』フェア実施中ですので楽しんでいってください」
朱里が女性客を席に案内して、ひな祭りの行事説明のチラシを渡し、着物の裾から小さな手の平サイズのケースに入ったひな人形をテーブルに置く。
温泉鳥のお内裏様とお雛様で、小さな屏風と壇があるだけのシンプルな物。
【風雷商】に作らせた物で女性客にプレゼントとして配布するために作った物である。
「こちら『ひな祭り』限定のプレゼントになります。ぜひお持ち帰りくださいませ。メニューもひな祭り限定の物がありますのでご賞味下さればと思います」
女性客がひな祭り限定のメニューを見ながらメニュー表が写真を付けて出来ている事にも驚いた顔をする。
【刻狼亭】のメニューは全ての料理を写真で表示しているので、この世界では珍しいメニュー表ともいえる。
これもありすと【風雷商】のアシュレイのプリンターの成せる技である。
次々と来店するお客に対応しつつ、たまに「家で待っている娘にも貰えるだろうか?」という男性客にも「娘さんの健やかな成長を【刻狼亭】一同お祈りします」と言ってプレゼントを配ったりもしていた。
たまにお客さんの連れてくる小さな子供が「あれ欲しいー」とフロントロビーに飾ってある雛人形【刻狼亭】バージョンを欲しがってロビーで駄々をこねていたりもしたが、プチひな祭り人形を作り臨時売店をフロントに作って販売している辺りは商魂たくましいとしか言いようがなかった。
プチひな人形の売れ行きが良かったのは、ひとえに【病魔】の後で人が亡くなった分、生まれてくる子供も多く、5,6歳の子供がそれなりに居るという事だろう。
プチひな人形に関しては自分の家でもオリジナルの物を作りたいと言う人へは『女将亭』を紹介し、『女将亭』から【風雷商】とガルドアス領へと注文が行き、仕上げの服作りは『女将亭』から東国の職人へと注文はぐるぐる回っていく。
東国の職人は以前、ルーファスが東国の【病魔】への対策ポーションを売りつけた契約で職人は【刻狼亭】の物となっている為に、職人も使わなければ職人が食いっぱぐれてしまうので、こういう時こそ出番だと使っている。
今回のお仕着せの着物などもその関係で作った物である。
食器類も東国の陶器職人に『ひな祭り』限定に使う物を作らせたので陶器職人たちにもお金が回り、とにかく今回は色々な物にお金が回った分、力も入っているのである。
「アパー」
リンリンと鈴の音をさせながらササマキが桃色の飾り紐と鈴をつけて料亭を走り回り、朱里を見付けると飛び込んでくる。
「あら、ササマキちゃんどうしたの?」
「アパパパ」
ササマキが朱里の頭をタシタシ足で叩き、床に降りると大広間の方へ向かっていく。
「もう皆の準備が出来たのね」
朱里が小さな呼び付け係りに「呼びに来てくれてありがとうね」と言えば、ササマキは少し首を振り向かせて「アパー」と鳴き、トテトテ先導するように歩いて行く。
桜色と薄い鶯色の色彩がフロントロビーの絨毯から始まり、飾ってある花も薄いピンク色の物になっている。
全体的に店の中が薄い桃色の物が多く、いつもの高級感溢れる重厚感はない。
フロントロビーには朱里がデザインし【風雷商】経由でガルドアス領が人形を作り、東国の職人に人形に着せる十二単等衣装を作らせ、ひな壇や小物も東国の漆細工の職人に作らせた細かい細工の物が飾られている。
『女性限定☆ひな祭りフェア』
●女の子の健やかな成長を祝う行事を「ひな祭り」と言います。
●女性であれば本日のひな祭りフェアの特別お料理半額となります。
●プレゼントもございますので楽しんで行ってくださいませ。
*詳しく知りたい方はチラシがありますのでお持ちください。
ポスターも張られ、女性従業員のお仕着せも薄い桃色と白と鶯色のグラデーションの物になり、可愛らしい物になっている。男性従業員は鶯色のお仕着せになっている。
相変わらずルーファスは黒い着物で朱里は白い着物ではあるが、朱里の物は帯が桃色に帯留めの玉飾りが桜の形をした白い石を付けてアクセントを持たせている。
「アカリ、今日は紅の色も薄桃色なんだな」
「ふふ。髪留めの花飾りも桃色ですよ。ミルアとナルアもお揃いの花飾りなんです」
ルーファスに頬を触られながら朱里が髪留めを見せて、着物の袖を手でつまんで「どうですか?」とクルッと回って子供の様にはしゃいでいる姿は4児の母親には見えない。
「16の時のアカリみたいだ」
「私が若作りしていると?」
「いや、出会った頃みたいにドキッとさせられるなと」
「ルーファスったら、もう、おだてても何も出ないですよ」
「それは残念だ。キスの1つでも貰おうと思っていたのに」
「ふふっ。しゃがんでください」
ルーファスをしゃがませると手で前髪をかき上げてキスを落とすと髪から手を離す。
「これでルーファスにも桃色が1個付きましたよ」
くくくっとルーファスが笑い朱里がふふふっと声を出して笑っていると、暖簾をくぐり女性客が料亭へ入ってくる。
「いらっしゃいませ。【刻狼亭】へようこそ」
「本日は『ひな祭り』フェア実施中ですので楽しんでいってください」
朱里が女性客を席に案内して、ひな祭りの行事説明のチラシを渡し、着物の裾から小さな手の平サイズのケースに入ったひな人形をテーブルに置く。
温泉鳥のお内裏様とお雛様で、小さな屏風と壇があるだけのシンプルな物。
【風雷商】に作らせた物で女性客にプレゼントとして配布するために作った物である。
「こちら『ひな祭り』限定のプレゼントになります。ぜひお持ち帰りくださいませ。メニューもひな祭り限定の物がありますのでご賞味下さればと思います」
女性客がひな祭り限定のメニューを見ながらメニュー表が写真を付けて出来ている事にも驚いた顔をする。
【刻狼亭】のメニューは全ての料理を写真で表示しているので、この世界では珍しいメニュー表ともいえる。
これもありすと【風雷商】のアシュレイのプリンターの成せる技である。
次々と来店するお客に対応しつつ、たまに「家で待っている娘にも貰えるだろうか?」という男性客にも「娘さんの健やかな成長を【刻狼亭】一同お祈りします」と言ってプレゼントを配ったりもしていた。
たまにお客さんの連れてくる小さな子供が「あれ欲しいー」とフロントロビーに飾ってある雛人形【刻狼亭】バージョンを欲しがってロビーで駄々をこねていたりもしたが、プチひな祭り人形を作り臨時売店をフロントに作って販売している辺りは商魂たくましいとしか言いようがなかった。
プチひな人形の売れ行きが良かったのは、ひとえに【病魔】の後で人が亡くなった分、生まれてくる子供も多く、5,6歳の子供がそれなりに居るという事だろう。
プチひな人形に関しては自分の家でもオリジナルの物を作りたいと言う人へは『女将亭』を紹介し、『女将亭』から【風雷商】とガルドアス領へと注文が行き、仕上げの服作りは『女将亭』から東国の職人へと注文はぐるぐる回っていく。
東国の職人は以前、ルーファスが東国の【病魔】への対策ポーションを売りつけた契約で職人は【刻狼亭】の物となっている為に、職人も使わなければ職人が食いっぱぐれてしまうので、こういう時こそ出番だと使っている。
今回のお仕着せの着物などもその関係で作った物である。
食器類も東国の陶器職人に『ひな祭り』限定に使う物を作らせたので陶器職人たちにもお金が回り、とにかく今回は色々な物にお金が回った分、力も入っているのである。
「アパー」
リンリンと鈴の音をさせながらササマキが桃色の飾り紐と鈴をつけて料亭を走り回り、朱里を見付けると飛び込んでくる。
「あら、ササマキちゃんどうしたの?」
「アパパパ」
ササマキが朱里の頭をタシタシ足で叩き、床に降りると大広間の方へ向かっていく。
「もう皆の準備が出来たのね」
朱里が小さな呼び付け係りに「呼びに来てくれてありがとうね」と言えば、ササマキは少し首を振り向かせて「アパー」と鳴き、トテトテ先導するように歩いて行く。
50
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。