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11章
鬼払い①
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冬の風物詩の様な氷竜グリムレインが朱里とミルアとナルアを背に乗せて、『鬼払いの鈴』を長い布に大量に付けて体に巻いている。
『鬼払い』、朱里の世界でいう所の『節分』の事である。
7つの鈴を鬼役の人間が体に付けて、それを人々が奪い取って鬼払いの鈴を手に入れるというルールがある。
鈴には1つずつ意味があり、金が金運。銀が健康。赤が恋愛。青が力強さ。緑が豊穣。白が美貌。黒が繁栄。
鈴を持っていると鬼がその意味のある物を奪って行かないという事らしい。
【刻狼亭】恒例の行事であり、毎年鬼役は変わっているのだが、今年はグリムレインが鬼役。
毎年、地面がえぐれたり少し地形が変わっても気にしない程度の大暴れをする行事なので、いつものごとく平地の何もないところで行われる。
しっかりと、救護班もテントを立てて万全を期している。
しかし、今年の鬼は一筋縄ではいきそうにない。
背中に女将の朱里と赤ん坊のミルアとナルアまで居るので、下手をしたら弱者代表の朱里と赤ん坊がコロッと逝きかねないのである。
曲がりなりにもドラゴン相手なので本気を出さなければいけないのも悩みどころである。
「ふははは!我は準備万端だ!来るならこい!」
声高らかに笑いグリムレインが8メートルのドラゴンの姿で尻尾を地面に叩きつけると、地面がグラッと揺れる。
「やっちゃえー!グリムレイン!グリムレインの力を見せつけましょう!」
朱里も楽しそうにグリムレインを背中の上で応援している。
「わーう!」
「はーう!」
ミルアもナルアも楽しそうな朱里に嬉しそうに声を上げる。
「旦那様!女将が鬼役なんて聞いてませんよ?!」
「しかもお嬢さん2人も連れてるじゃないですか!無理ですよ!」
「怪我させたらヤバい代表ワンツースリーがそろってるじゃないですかぁああ!」
阿鼻叫喚したのは従業員でルーファスに詰め寄り「どうするの?!」状態でワッと騒ぎ立てる。
「グリムレインいわく、『学ぶ事は大切だ。知略を巡らし、自分達の今まで学んだことを総動員させて窮地を切り抜けて見せよ。新たな知恵が生まれればそれもまた財産』と、いう事らしい」
ルーファスが朱里と『学校』で学ぶという事について子供に必要な物は何かを話し合っていると、グリムレインが今回の『鬼払い』を提案し、学んだことを自分に見せて見ろと言ったのだった。
そして何が大人にも子供にも足りないかを見極めると言い、子供達も参加させるように言われた。
「意味が解りませんよ!女将とお嬢さん達が居る時点で手が出ないじゃないですか!」
朱里やミルア、ナルアに怪我をさせたら確実に怒りそうなのがルーファスなので従業員も必死である。
「今回の『鬼払い』は少し趣向を凝らしたらしくてな。朱里達をどうグリムレインから引き離すかもあるし、グリムレインの攻撃にどう対処するかもあるんだが、朱里がばら撒く『問題』に答えられたら、問題の色の鈴がもらえると言う物でもあるらしいんだ」
ルーファスがそういうと、早速グリムレインが空に飛び、朱里が少し重さのある7色に色を塗った木の板に『問題』が掛かれたものを空から地面に投げ落とす。
「さぁ、皆さん『問題』に答えてくださいね!ただし、早く答えないと木の板はグリムレインが真っ二つにして美味しいお芋を焼く為の燃料になりまーす!」
朱里が声高らかにそういうと、救護班のテントの横で芋を焼く準備をしているテンと小鬼が手を振る。
「小鬼と一緒に『問題』書きましたからぁ、皆さん頑張って下さいねぇ」
「冒険者試験の過去問題もあります!僕ら頑張りました!」
テンが穏やかに笑いながら手をヒラヒラとさせ、小鬼は両手で指で輪っかを作り「お金次第で答えます」と騒いでいる。
「う・・・裏切り者がいるぞ!」
「テン!お前こないだから何か木の板持ち歩いてると思ったら!」
「女将、オレにも声を掛けてくれたら手伝ったのにー!」
従業員が騒ぐとテンが「アカリさーん!お芋いれていきますよぉー」と声を出し、朱里が両手で丸を作り「戦闘開始でーす!」と声を上げる。
空からグリムレインが下りて、小さく口から息を吐くと白い雪が空から降ってくる。
「皆さん、早くしないとぉ、全部火にくべられてぇグリムレインと戦う道しか残りませんよぉ?」
テンが早く行けとニコニコしながら手でシッシッと従業員達を追い払う。
「大人はともかく、僕らは簡単だと思うよ」
「何だかんだでグリムレインは子供に甘いしね」
リュエールとシュトラールが他の子供達に「行くよ」と声を掛けて走り出す。
リュエールとシュトラールが軽いフットワークでグリムレインに近付くと朱里がニッコリ笑う。
「リューちゃん達に『問題』です。温泉大陸と東国の間に島は何個あるでしょう?」
「えーと、島の数・・・」
「そんな大陸の外の島数なんて覚えてないよ!」
リュエールとシュトラールが立ち止まって考えると他の子供達も「えー」と声を上げる。
朱里がニコッと笑ってカウントダウンを始める。
「待ってよ!母上!時間制限あるの?!」
「ずるい!母上!」
「お勉強は大事でしょ?ふふふ。9・8・7・・・」
朱里が「0!残念!また挑戦してね!」と、言うとポーンと子供達は寒さ対策に置かれている毛布の山にグリムレインの尻尾で飛ばされる。
「答えは『5つ』です。リューくんとシューくんは狩りで行った事がある島ですからぁ、答え知ってるはずだったんですけどねぇ?」
テンがリュエールとシュトラールに地図を見せて「島の名前5つ書き取りしたら参加に復帰していいですよぉ」とニコリと笑う。
「ええええーっ!」
「そんなの聞いてないよー!」
『鬼払い』、朱里の世界でいう所の『節分』の事である。
7つの鈴を鬼役の人間が体に付けて、それを人々が奪い取って鬼払いの鈴を手に入れるというルールがある。
鈴には1つずつ意味があり、金が金運。銀が健康。赤が恋愛。青が力強さ。緑が豊穣。白が美貌。黒が繁栄。
鈴を持っていると鬼がその意味のある物を奪って行かないという事らしい。
【刻狼亭】恒例の行事であり、毎年鬼役は変わっているのだが、今年はグリムレインが鬼役。
毎年、地面がえぐれたり少し地形が変わっても気にしない程度の大暴れをする行事なので、いつものごとく平地の何もないところで行われる。
しっかりと、救護班もテントを立てて万全を期している。
しかし、今年の鬼は一筋縄ではいきそうにない。
背中に女将の朱里と赤ん坊のミルアとナルアまで居るので、下手をしたら弱者代表の朱里と赤ん坊がコロッと逝きかねないのである。
曲がりなりにもドラゴン相手なので本気を出さなければいけないのも悩みどころである。
「ふははは!我は準備万端だ!来るならこい!」
声高らかに笑いグリムレインが8メートルのドラゴンの姿で尻尾を地面に叩きつけると、地面がグラッと揺れる。
「やっちゃえー!グリムレイン!グリムレインの力を見せつけましょう!」
朱里も楽しそうにグリムレインを背中の上で応援している。
「わーう!」
「はーう!」
ミルアもナルアも楽しそうな朱里に嬉しそうに声を上げる。
「旦那様!女将が鬼役なんて聞いてませんよ?!」
「しかもお嬢さん2人も連れてるじゃないですか!無理ですよ!」
「怪我させたらヤバい代表ワンツースリーがそろってるじゃないですかぁああ!」
阿鼻叫喚したのは従業員でルーファスに詰め寄り「どうするの?!」状態でワッと騒ぎ立てる。
「グリムレインいわく、『学ぶ事は大切だ。知略を巡らし、自分達の今まで学んだことを総動員させて窮地を切り抜けて見せよ。新たな知恵が生まれればそれもまた財産』と、いう事らしい」
ルーファスが朱里と『学校』で学ぶという事について子供に必要な物は何かを話し合っていると、グリムレインが今回の『鬼払い』を提案し、学んだことを自分に見せて見ろと言ったのだった。
そして何が大人にも子供にも足りないかを見極めると言い、子供達も参加させるように言われた。
「意味が解りませんよ!女将とお嬢さん達が居る時点で手が出ないじゃないですか!」
朱里やミルア、ナルアに怪我をさせたら確実に怒りそうなのがルーファスなので従業員も必死である。
「今回の『鬼払い』は少し趣向を凝らしたらしくてな。朱里達をどうグリムレインから引き離すかもあるし、グリムレインの攻撃にどう対処するかもあるんだが、朱里がばら撒く『問題』に答えられたら、問題の色の鈴がもらえると言う物でもあるらしいんだ」
ルーファスがそういうと、早速グリムレインが空に飛び、朱里が少し重さのある7色に色を塗った木の板に『問題』が掛かれたものを空から地面に投げ落とす。
「さぁ、皆さん『問題』に答えてくださいね!ただし、早く答えないと木の板はグリムレインが真っ二つにして美味しいお芋を焼く為の燃料になりまーす!」
朱里が声高らかにそういうと、救護班のテントの横で芋を焼く準備をしているテンと小鬼が手を振る。
「小鬼と一緒に『問題』書きましたからぁ、皆さん頑張って下さいねぇ」
「冒険者試験の過去問題もあります!僕ら頑張りました!」
テンが穏やかに笑いながら手をヒラヒラとさせ、小鬼は両手で指で輪っかを作り「お金次第で答えます」と騒いでいる。
「う・・・裏切り者がいるぞ!」
「テン!お前こないだから何か木の板持ち歩いてると思ったら!」
「女将、オレにも声を掛けてくれたら手伝ったのにー!」
従業員が騒ぐとテンが「アカリさーん!お芋いれていきますよぉー」と声を出し、朱里が両手で丸を作り「戦闘開始でーす!」と声を上げる。
空からグリムレインが下りて、小さく口から息を吐くと白い雪が空から降ってくる。
「皆さん、早くしないとぉ、全部火にくべられてぇグリムレインと戦う道しか残りませんよぉ?」
テンが早く行けとニコニコしながら手でシッシッと従業員達を追い払う。
「大人はともかく、僕らは簡単だと思うよ」
「何だかんだでグリムレインは子供に甘いしね」
リュエールとシュトラールが他の子供達に「行くよ」と声を掛けて走り出す。
リュエールとシュトラールが軽いフットワークでグリムレインに近付くと朱里がニッコリ笑う。
「リューちゃん達に『問題』です。温泉大陸と東国の間に島は何個あるでしょう?」
「えーと、島の数・・・」
「そんな大陸の外の島数なんて覚えてないよ!」
リュエールとシュトラールが立ち止まって考えると他の子供達も「えー」と声を上げる。
朱里がニコッと笑ってカウントダウンを始める。
「待ってよ!母上!時間制限あるの?!」
「ずるい!母上!」
「お勉強は大事でしょ?ふふふ。9・8・7・・・」
朱里が「0!残念!また挑戦してね!」と、言うとポーンと子供達は寒さ対策に置かれている毛布の山にグリムレインの尻尾で飛ばされる。
「答えは『5つ』です。リューくんとシューくんは狩りで行った事がある島ですからぁ、答え知ってるはずだったんですけどねぇ?」
テンがリュエールとシュトラールに地図を見せて「島の名前5つ書き取りしたら参加に復帰していいですよぉ」とニコリと笑う。
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「そんなの聞いてないよー!」
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