295 / 960
11章
真冬のアイス
しおりを挟む
「そっかー・・・やっぱ難しいかー・・・」
少し残念そうな口調でありすがリリスと朱里に苦笑いする。
「私達の世界みたいに学校って当たり前の物じゃないんだね。考え方とか全然違うの」
朱里もふぅっとため息交じり言って眉尻を下げて笑う。
そんな朱里の横でミルアとナルアが朱里のテーブルの上のアイスを寄越せと手を伸ばして騒いでいる。
何でも欲しがるお年頃なのか、とにかく人の物を欲しがるのがこの2人である。
「あーん」
「ぬーん」
朱里が自分の注文したアイスをミルアとナルアの口にスプーンですくって入れると、2人は自分でもスプーンを持つのだと朱里にスプーンを寄越せと手をバタつかせている。
「ぬーぬー」
「なーなー」
「だーめ。スプーンはまだ早いです」
「なーなー」
「ぬーぬー」
朱里が2人に首を振ると2人も首を振って目を閉じて眉間にしわを寄せる。
「まぁ、不細工ちゃんになってますよー」
2人の眉間のしわを指でぐいーっと広げて朱里が笑っていると、リリスがありすの顔を見上げる。
「なんっしょ?リリちゃん」
「私も妹とかいれば寂しくないかな?」
リリスの言葉にありすが困った顔で「うーん」と唸っている。
ありすとしてもリリス1人だけでは可哀想だと思って居るし、今の現状が自分の両親の様に子供を一人にさせている状態に罪悪感がある。
ただ、この世界に残業は無く、融通の利く時間で仕事が終わらせられるし、リロノスが休みの日は家族を色々連れて行ってくれているので大きな問題になっていないのもある。
次の子を考えなかった事は無いが、リリスの時の様にまた問題が起きてしまうのは、ありすもリロノスも避けたい所でもある。
リリスの時の原因はありすが妊娠中に栄養を摂りすぎてリリスがお腹で大きくなりすぎ、魔力が角に宿る魔族にとって栄養は角に行くために角が成長し過ぎたのが原因という事らしい。
「前の様になるのが問題なら我が『祝福』をかけて安産にしてやっても良いぞ」
グリムレインが何個目かのアイスをペロリと食べながら追加の注文をしつつ、ありすに『祝福』の提案をする。
【もんふぇ】の主人リグリスが大急ぎでアイスの追加を器に盛りつけて、残り少なくなったアイスに少し冷や汗をかきながら追加のアイスを作るか悩み始めていた。
「グリっち達の『祝福』って前の時貰えなかったのはなんで?」
「『祝福』は妊娠初期でないと腹の子の魔力に馴染まない。魔力に干渉して安産に導いているようなものだからな」
「そっか。ならリロっちと相談してみよっかな。うちも家族は多い方がいいし」
「本当ママ!」
「リリちゃん、でも赤ちゃんは授かりものだからうちらのとこに来てくれるかはわかんないよ?」
「うん。でも妹がほしいな!」
嬉しそうに笑ってリリスが溶けかけたパフェを急いで口に入れてエへッと笑う。
その様子を見てありすが優しい目でリリスを見ると、朱里がそれを見て微笑ましそうに目を細めた後でグリムレインに親指を立てる。
グリムレインが気にするなと片手を軽く振りながら、追加のアイスが届いたのを受け取り口に運ぶ。
「あんなー」
「なんなー」
グリムレインのアイスを指さし双子が騒ぎ、グリムレインに「やらんぞ?」と言われ、首を振って眉間にしわを寄せて、また朱里に「不細工ちゃんになってるー」と笑いながらしわを伸ばされていた。
その様子を隅の席でぐぬぬっと唇を噛みしめて見つめているのは温泉大陸の領主【刻狼亭】の主ルーファスだ。
朱里が双子とグリムレインを連れてリリスと手芸店で買い物をしたり、小物屋で買い物をしているのを遠目で見守りながら、【もんふぇ】に先回りしていたのである。
折角の休日だというのに、番の朱里の機嫌を損ねて娘二人も連れて行かれ、ルーファスとしては耳も尻尾も下がる思いだ。
「父上、女の子の気持ちはわかんないけど、とりあえず真冬にアイスとか食べるのは凄いってのだけはわかった」
「オレ、見てるだけで鳥肌出そう・・・冷凍ミッカくらいなら判るけど、アイスとかパフェはないよね」
ブルッと体を震わせてリュエールとシュトラールが首を振る。
そんな二人の注文したものは栗ぜんざいと白玉ぜんざいでルーファスはミッカの皮と梅の粉で出来た温かいお茶を飲んでいる。
「ハァー・・・アカリはいつ頃帰るんだか・・・」
「女の人っておしゃべり長いからね」
「母上が道で話し始めると長いしね」
2人は「あれはないよねー」とうんざりした顔をしてみせる。
「まぁ、女性は会話の中で自分のテリトリー内の事を把握して戦術を巡らせているようなものだからな」
「でも意味のない内容の方が多くない?」
「役に立つのなんて買い物の情報くらいじゃない?」
「まぁ、意味のない事でも、小さなキッカケで物事を紐解くヒントになったりはするから、女性のお喋りはあながちバカには出来ん」
「父上は何だかんだで女の人に甘いよね」
「どうせ今回の学校も母上の言う通りにしようとか思ってるんでしょ?」
リュエールとシュトラールが肩をすくめておどけて見せると、ルーファスが眉尻を下げながらお茶を飲んで「どうしたものかな・・・」と小さくぼやく。
少し残念そうな口調でありすがリリスと朱里に苦笑いする。
「私達の世界みたいに学校って当たり前の物じゃないんだね。考え方とか全然違うの」
朱里もふぅっとため息交じり言って眉尻を下げて笑う。
そんな朱里の横でミルアとナルアが朱里のテーブルの上のアイスを寄越せと手を伸ばして騒いでいる。
何でも欲しがるお年頃なのか、とにかく人の物を欲しがるのがこの2人である。
「あーん」
「ぬーん」
朱里が自分の注文したアイスをミルアとナルアの口にスプーンですくって入れると、2人は自分でもスプーンを持つのだと朱里にスプーンを寄越せと手をバタつかせている。
「ぬーぬー」
「なーなー」
「だーめ。スプーンはまだ早いです」
「なーなー」
「ぬーぬー」
朱里が2人に首を振ると2人も首を振って目を閉じて眉間にしわを寄せる。
「まぁ、不細工ちゃんになってますよー」
2人の眉間のしわを指でぐいーっと広げて朱里が笑っていると、リリスがありすの顔を見上げる。
「なんっしょ?リリちゃん」
「私も妹とかいれば寂しくないかな?」
リリスの言葉にありすが困った顔で「うーん」と唸っている。
ありすとしてもリリス1人だけでは可哀想だと思って居るし、今の現状が自分の両親の様に子供を一人にさせている状態に罪悪感がある。
ただ、この世界に残業は無く、融通の利く時間で仕事が終わらせられるし、リロノスが休みの日は家族を色々連れて行ってくれているので大きな問題になっていないのもある。
次の子を考えなかった事は無いが、リリスの時の様にまた問題が起きてしまうのは、ありすもリロノスも避けたい所でもある。
リリスの時の原因はありすが妊娠中に栄養を摂りすぎてリリスがお腹で大きくなりすぎ、魔力が角に宿る魔族にとって栄養は角に行くために角が成長し過ぎたのが原因という事らしい。
「前の様になるのが問題なら我が『祝福』をかけて安産にしてやっても良いぞ」
グリムレインが何個目かのアイスをペロリと食べながら追加の注文をしつつ、ありすに『祝福』の提案をする。
【もんふぇ】の主人リグリスが大急ぎでアイスの追加を器に盛りつけて、残り少なくなったアイスに少し冷や汗をかきながら追加のアイスを作るか悩み始めていた。
「グリっち達の『祝福』って前の時貰えなかったのはなんで?」
「『祝福』は妊娠初期でないと腹の子の魔力に馴染まない。魔力に干渉して安産に導いているようなものだからな」
「そっか。ならリロっちと相談してみよっかな。うちも家族は多い方がいいし」
「本当ママ!」
「リリちゃん、でも赤ちゃんは授かりものだからうちらのとこに来てくれるかはわかんないよ?」
「うん。でも妹がほしいな!」
嬉しそうに笑ってリリスが溶けかけたパフェを急いで口に入れてエへッと笑う。
その様子を見てありすが優しい目でリリスを見ると、朱里がそれを見て微笑ましそうに目を細めた後でグリムレインに親指を立てる。
グリムレインが気にするなと片手を軽く振りながら、追加のアイスが届いたのを受け取り口に運ぶ。
「あんなー」
「なんなー」
グリムレインのアイスを指さし双子が騒ぎ、グリムレインに「やらんぞ?」と言われ、首を振って眉間にしわを寄せて、また朱里に「不細工ちゃんになってるー」と笑いながらしわを伸ばされていた。
その様子を隅の席でぐぬぬっと唇を噛みしめて見つめているのは温泉大陸の領主【刻狼亭】の主ルーファスだ。
朱里が双子とグリムレインを連れてリリスと手芸店で買い物をしたり、小物屋で買い物をしているのを遠目で見守りながら、【もんふぇ】に先回りしていたのである。
折角の休日だというのに、番の朱里の機嫌を損ねて娘二人も連れて行かれ、ルーファスとしては耳も尻尾も下がる思いだ。
「父上、女の子の気持ちはわかんないけど、とりあえず真冬にアイスとか食べるのは凄いってのだけはわかった」
「オレ、見てるだけで鳥肌出そう・・・冷凍ミッカくらいなら判るけど、アイスとかパフェはないよね」
ブルッと体を震わせてリュエールとシュトラールが首を振る。
そんな二人の注文したものは栗ぜんざいと白玉ぜんざいでルーファスはミッカの皮と梅の粉で出来た温かいお茶を飲んでいる。
「ハァー・・・アカリはいつ頃帰るんだか・・・」
「女の人っておしゃべり長いからね」
「母上が道で話し始めると長いしね」
2人は「あれはないよねー」とうんざりした顔をしてみせる。
「まぁ、女性は会話の中で自分のテリトリー内の事を把握して戦術を巡らせているようなものだからな」
「でも意味のない内容の方が多くない?」
「役に立つのなんて買い物の情報くらいじゃない?」
「まぁ、意味のない事でも、小さなキッカケで物事を紐解くヒントになったりはするから、女性のお喋りはあながちバカには出来ん」
「父上は何だかんだで女の人に甘いよね」
「どうせ今回の学校も母上の言う通りにしようとか思ってるんでしょ?」
リュエールとシュトラールが肩をすくめておどけて見せると、ルーファスが眉尻を下げながらお茶を飲んで「どうしたものかな・・・」と小さくぼやく。
50
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。