黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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11章

学ぶ

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「学舎のこと?」
「学校・・・?」
 リュエールとシュトラールが左右に首を捻り、お互いに頭をコツンとぶつけてキョトンとした顔をする。
リリスが2人にコクコクと首を縦に振る。

「あのね、冒険者登録できるのは12歳からでしょ?その間までに色々お勉強して知識を付けるの。薬草学や魔法や計算とかって冒険者には必要な事だから、そういった事を学ぶの」
 リリスの言葉に2人は「うーん」と難色を示す。

「でも、僕は父上や従業員の人達に教わっちゃってるしなぁ」
「オレはハガネに魔法教えてもらってるから困る事無いし」
 3人共特殊能力持ちなので親や周りが教え込んでいた事もあり、今更学ぶことは少ないのである。
リリスもリロノスに討伐に連れて行って貰っていた為に冒険者の知識は身に付けてはいる。

「でもでも、他の子達は学んでないから一緒にお勉強したらきっと楽しいよ?」
 テーブルに頬づえをついてリュエールとシュトラールが幼馴染のリリスを困った子を見る目で見て眉を下げる。

「これ!テーブルに頬づえつくなんてお行儀悪いです!」
 朱里が2人に「メッ!」と叱ると2人はサッと頬づえを止めて両膝の上に手を置く。
それを見てリリスがくすくす笑うと2人は少し口を尖らせる。

「アカリちゃん、学校って面白い所なんでしょ?ママがねすっごく面白いよって」
「学校は面白いよ。お友達と一緒にお勉強したり、運動したり、遊んだり出来るよ」
 朱里の言葉にリリスが2人に「どう?」と目を輝かせるが、2人は頬をポリポリ掻いてまだ難色を示す。

「僕ら遊びながら、薬草とか教え合ったり体術とか魔法とかで遊んでるから毎日勉強教え合ってるようなもんだし」
「オレら遊ぶときは本気でやってるから、回復魔法使ってるぐらいだからね」
 2人がお互いに「なー」と言い合うと、朱里がおでこに手を当ててこめかみをぴくぴく動かす。

「あーなーたーたーちーはぁぁ、危ない遊びしちゃ駄目!大怪我して回復魔法も魔力切れで使えなくなったりした最悪な状況になったらどうするの!」
 2人が両手を上げて降参ポーズをとりながらも、耳をピコピコ動かして朱里を見上げる。

「そうならない為に毎日遊びの中で加減を覚えてるんだよ」
「それに父上もそうやってたって言ってたし、だからオレらも真似てるだけ」

 そろりそろりとミルアとナルアを抱きかかえてリビングから逃げ出そうとしていたルーファスに朱里がキッと顔を向ける。
「ルーファス!」
「いや、まぁ、アカリそう怒るな」
 ズイズイと朱里に詰め寄られルーファスの耳が下げてたじろぐと、双子が顔を見合わせる。
「もう!子供達に何かあったらどうするの!」
「その為に子供のうちから遊びの中で危険を覚えていっているんだ」
「万が一があったらどうするの!」
「そうならない様に基礎は親が教えて、後は子供が自分で覚えていくものなんだ」
「ならミルアとナルアもそういう風に育って行けって言うの?!」
「いや、この子達は女の子なんだから基礎は教えるが、あとは母親のアカリが女の子らしい事を教えて育ってていくのが普通だろう?」
「ハァー・・・何となくわかったかも・・・」
 朱里がガクリと肩を落とし、眉間に指でしわを伸ばして首を振る。

「異世界の常識とこっちの常識はそもそもが違うのよね・・・」
「まぁ、そうなるとは思う・・・しかしそれで今まで何とかなって来たからな。いきなりは変わらないだろう?」
 それを今変えようとしているのが伝わっていない・・・。
朱里がリリスを見れば困った顔で笑って首を振る。
ありすもリロノスも仕事でリリスを1人にしている事が多いので朱里としてはそこら辺も改善してあげたい所でもある。

「わかりました。私とありすさんで少し相談してみます。異世界人にしかわからない事もあるので・・・」
「なるべくアカリやアリスのいう様な物をやってやりたいんだがな、なかなか上手くいくものではないしな」
「もう、いいですよ。ふぅ・・・さて、リリスちゃん。今日は私と一緒にお買い物行こうか?」
「良いの?」
「うん。リロノスさんも忙しそうだし、ありすさんもお仕事でしょ?私と女子トークしましょう。帰りに【もんふぇ】で甘味でも食べようか?」
 ニコッと笑ってリリスにコートを着る様に言い、ルーファスからミルアとナルアを受け取りグリムレインを呼ぶと朱里がルーファスと双子を半目で見つめ、ハァとため息を吐く。

「そんなんじゃあなた達女の子にモテませんからね!」

 プイッと顔を背けると朱里がリリスを連れてリビングを出て行き、グリムレインがミルアとナルアにケープを着せて毛布で包むとルーファスに肩をすくめる。

「嫁も嫁だが婿達も頭が固いな。知識とは宝だぞ?無くて困るものではないからな。我らドラゴンはむしろ学校に興味がある。学ぶ事で得られる物は多いからな」

 グリムレインはそれだけ言うと朱里の後を追ってリビングを出ていく。

「父上、母上怒っちゃいましたね」
「でも、オレら学ぶこと無いと思う・・・」
「ハァ・・・女心と言うべきなのか、わからんもんだな」

 トリニア家の男3人がリビングで項垂れ、こういう時にハガネが居たらいい案出してくれそうだな・・・と、冬眠から起こすべきか本気で思ったのだった。 
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