黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
291 / 960
11章

お正月②

しおりを挟む
 今年のお正月用のご馳走は立食形式で皆立っている為、小柄な朱里は見つけ辛い。
なので、グリムレインの長身を目印に皆挨拶に来る感じだ。

「旦那様、女将さん、今年もお願いいたします。これ、ミルアちゃんとナルアちゃんに坊ちゃん達の年袋です」
「まぁ、ありがとうございます。私達からもシレーヌちゃんに年袋用意したんです。どうぞ」
 キリヒリとフリウーラから子供達の年袋を受け取り、2人の子供シレーヌへの年袋を渡す。
年袋はその年の一番年若い者へ、お金が困らない様にと渡す・・・お年玉の様な物で、何だかんだで子供には皆あげている感じだ。
 ルーファスに関しては従業員一人一人に渡しているので、冬のチョイ足しボーナス的な感じである。

 従業員達から挨拶と共に子供達への年袋を受け取り、ハガネが居ない為に年袋を回収し大きな袋に入れる役目はグリムレインだ。

「嫁にコキ使われている。ドラゴン使いが荒い嫁だ」
「あとでお酒飲み放題なんだから少しくらい手伝ってください」

 むぅーと口を尖らせつつもグリムレインがお酒と聞いて頬を緩める。
これで竜化していたら尻尾をパタパタさせている事だろう。

「父上、母上!」
 シュトラールが人垣をかき分けて朱里達の所へ現れると、後ろを振り向きピョンピョンと飛んで手を振って「皆こっちー!」と元気に声を上げている。
 奥の方からリュエールと一緒に去年温泉大陸が襲撃に遭った時に出会った子供達が歩いてくる。

「父上、母上、僕らの友達のジークにキャンベルシーにゼファートにシセルだよ」
 リュエールが端から紹介していくと、1人1人が前に出て挨拶をしていく。

「ジークです。招待してくれてありがとうございます。小物屋『シリウス』の息子です」
「まぁ、『シリウス』の小物は細かい細工が人気の所ね」
「『シリウス』という事は、冒険者シリウスの息子か。うちの子達を宜しくな」
 黒髪にアイスブルーの豹獣人の子供、ジークはこの子供達の中では7歳で1番上との事。

「キャンベルシーです。肉屋『どんてき』の息子です。お招き有り難うございます」
「よくお買い物で行くわ。あそこの息子さんなのね」
「確か前に行った魔牛の焼き肉屋も『どんてき』の経営店だったな。今日は来てくれてありがとう」
 緑の髪に琥珀の瞳の蛇亜人の子供、キャンベルシーは5歳だが身長は一番高い。

「ゼファートです。温泉街の薬問屋『卯』の息子です。今日はありがとうございます」
「何度か製薬室で会った事があるわ」
「うちの製薬室にも薬草の仕入れで出入りしている所だな。いつもうちの子と仲良くしてくれてありがとう」
 灰色の髪にこげ茶の目をした兎獣人の子供、ゼファートは一番物知りらしい。

「シセルです。手芸屋『ロート』の息子です。招待有り難うございます」
「私のお気に入りの手芸屋さんだわ。いつもお世話になっているの」
「うちの従業員も御用達の手芸店だな。これからも2人を宜しくたのむ」
 ピンク髪に水色の瞳、そして赤い角の魔族の子供、シセルは一番器用との事。

「他にも友達居るんだけど、今日来れたのは4人だけ」
「そうなの。そのうち紹介してね」
 朱里が少ししゃがんで4人に年袋を渡しながらニコリと笑う。

「皆、今年も仲良く元気に過ごしてね。まだ一緒には遊べないけど、娘達も大きくなったら遊んであげてね」
「寝てしまっているが、リュエールとシュトラールの妹のミルアとナルアだ。仲良くしてくれたら嬉しい」
 朱里とルーファスが子供達にミルアとナルアを紹介しながら微笑む。 

「はい。こちらこそ!よろしくお願いします」
「年袋ありがとうございます!」
「今年もよろしくお願いします!」
「お世話になってるのぼくらなのにいいのかなぁ」
 4人は朱里達を見上げながら少し緊張した顔でミルアとナルアの顔を見て顔を緩める。赤ん坊の顔は子供達の緊張をほぐせたようで、朱里がルーファスに微笑んで顔を上げる。

「まだ挨拶が残っているからリュエール、シュトラール、友達の相手をしてあげるんだぞ。皆も楽しんで行ってくれ」
「またね、皆。今度は家の方にも遊びに来てね」
 朱里とルーファスが連れ添って歩きながら他の人間と挨拶を交わしているのを見て、4人の子供達がリュエールとシュトラールを見る。

「若達ってオレ等と世界違うよな」
「そんな訳ないだろ?僕らは同じ世界に生きてて、親がココじゃ有名なだけ」
「そそ。オレもリューも皆と変わらないしね。それより、ご飯食べようよ」
「でもさ・・・なんかぼくら場違いじゃない?」
「なんかとまどう・・・」
「うん。身分ちがうってかんじる」
 4人が少ししょんぼりとした顔をすると、リュエールが首をひねる。

「バカ言わないの。さっき父上が言ってただろ?皆どこかしら親同士や店とかつながりがあるんだから、持ちつ持たれつ皆やってんの。気にする事なんか無いだろ?」
「そうだよ。それに皆、去年の温泉街が大変だった時いっしょに戦った仲間だろ?オレとリューをその仲間から外す気?まぁ、オレはその時は別のとこに居たけどさ」
 4人が首を振ると、リュエールとシュトラールが「なら、行こう」と手を差し伸べて笑顔で子供達は立食のご馳走の所に行き、皿を山盛りにして元気な声を上げていた。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。