黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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10章

双子と両親

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 新年を迎える頃には、年末の忙しさの中でミールの居ない寂しさを感じる暇も無く過ぎて行っていた。
ドラゴン達は再び冬眠に入り、ハガネは朱里を心配していたが冬眠に入り、賑やかさが半減した家の中で騒いでいるのは朱里とルーファスだった。

「黒地に黄色のやつでルーファスとお揃いが良いです!」
「いや、ここは白地ベースの方で朱里と揃いにした方がいいだろ?」
 ミルアとナルアに着物を合わせながら朱里とルーファスがお互いに言い合っている。

「何あれ?」
「母上と父上がミルアとナルアの正月の着物を決めてる」
「ふぅーん?なんであんな白熱してるの?」
「さぁ?僕にもサッパリだよ」
 リビングで両親の譲らない攻防を見ながらリュエールとシュトラールがミッカの皮を剥き筋と中皮も取り除き中身を皿の上に乗せていく。
全て向き終わると、グリムレインに差し出して、グリムレインが息を吹きかけると少し凍り付き、シャーベット状になったミッカを3人でシャリシャリといわせて食べつつ、相変わらずどっちとお揃いにするかで譲らない2人を見守っている。

「リューちゃん、シューちゃん。あなた達も父上とお揃いの着物の方がミルアとナルアは可愛いと思うよね?」
「リュー、シュー。母娘揃っての着物の方が映えると思うだろ?」
 ついに息子2人にも意見を出す様に朱里とルーファスが声を掛け、2人が「あ、早く自分達の部屋に逃げとけばよかった」とお互いに目線で「あーあー」と言い合っていた。

「なら、僕らみたいに半々で真ん中から黒と白に分けたらいいじゃない?」
「駄目よ。正月に半々は縁起が悪いの。あなた達もお正月は半々じゃない着物にしてるんだから」
 朱里がぷくっと頬を膨らませてリュエールを叱る。

「んーっ、ならミルアに黒ベース着せてナルアに白ベース着せたら?」
「それだと何だか長女をルーファスが贔屓してて次女を私が贔屓しているみたいなイメージ付きそうで・・・」
「母上・・・そこまで皆考えないよ」
「もう!リューちゃんもシューちゃんも真面目に考えて!大事な妹達の初のお正月の着物なんだよ!」
 朱里が八つ当たりの様に2人に文句を言うが、2人としては「どっちでもいいです」なのだ。
父親のルーファスに目を向ければ、小さく両手を上にあげて降参している。
つまりは、ルーファスも朱里に「真面目に考えて」と言われ、そのまま巻き込まれてしまったクチなのだろう。

「のう。嫁がよく作っている蜘蛛の巣をチビ共の着物の上に掛けて色違いにすれば余り問題なくないか?」
 グリムレインが呆れながらそう言って、朱里の編み物道具を指さす。

「もしかして、蜘蛛の巣ってレース編みの事?」
 コクリとグリムレインが頷き、朱里が編み物道具から黒と白の糸を取り出す。

「白いショールと黒いショールを着物の上に掛けてあげたら可愛いかも。うん。そうしよう!」
「ついでに頭にも蜘蛛の巣でリボンでもしてやれば良かろう?」
「グリムレイン~。あなたが一番良い意見を出してくれる!」
 上機嫌で朱里がかぎ針でレース編みを始めると、ルーファスが着物を桐箱に仕舞い直してミルアとナルアを抱きかかえるとソファに座る。

「ちぃー」
「おーぉ」
「んー、なんだミルアもナルアも父上と遊んでくれるのか?」
 娘達に服を引っ張られルーファスが娘達にとろける笑顔をで接していると、兄の双子は「父上がデレデレだ」と、何とも言えない目で見ている。
母親の朱里そっくりの妹達は『ちび女将』と【刻狼亭】で言われるくらいには似ていて、ルーファスが溺愛しているのだ。

「父上に狼さんになって欲しいんだよねーミルア、ナルア」
 朱里がにこっと笑顔で言えば、ルーファスが「そうか?」と獣化してみせ、ミルアとナルアが「きゃー」と声を上げてルーファスの毛を手で握りお腹に顔を埋めて喜んでいる。

「あー、しっぽを握るのはやめてくれ」
 ルーファスが尻尾を取り合う2人の手から尻尾をバタつかせて払うと、ミルアとナルアがくしゃっと顔を歪める。
「「あっ」」
 リュエールとシュトラールが声を合わせて耳をふさぐと、ミルアとナルアが泣き始め、ルーファスも耳を下げる。
「あらら。ミルア、ナルア泣いても駄目よ~」
 朱里が立ち上がってミルアとナルアを抱き上げるとふふふっと笑う。

「父上の尻尾は母上のものなので、ミルアもナルアも諦めなさいね~」
 ミルアとナルアの頬っぺたに自分の頬を擦り付けながら朱里がふふーんと笑ってルーファスの前に座る。
「アカリは大人げないな」
 ルーファスがフッと笑いペロペロとミルアとナルアの顔を舐め、仕上げとばかりに朱里の頬も舐める。
「ルーファス、犬みたい」
「オレは狼だが?」
「知ってるーふふふ」

 リュエールとシュトラールがお互いに目を合わせて「撤退」「そうしよ」と頷き、そそくさとリビングを後にする。
「父上も母上も僕らの事忘れていちゃつかないで欲しい」
「まぁ、母上が元気になったからいいじゃない?」
「まぁーねー」
 ミールが居ない寂しさもミールが元気に暮らしていると手紙が来て以来、元気にしているならまた会いに行けばいいと、そう考えるようになり、生活は落ち着いて行った。
たまにリビングに飾ってある写真を見て7人家族だった半年間を懐かしく思う時もあるが、今は6人家族に賑やかな周りのドラゴンや従業員達に囲まれている生活で毎日は忙しく過ぎて行っているのに身を任せていくだけである。
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