黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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10章

ミールとの別れ

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 トリニア家の3男として過ごしていたミールとの別れをそれぞれが寂しくも思いながら、海岸でミールを抱くアンナニーナとクイードに別れを口にする。

「ミール、僕らは離れてても兄弟だからな」
「ミール、オレらの所にまた遊びに来いよ」
 リュエールとシュトラールがミールの頭を撫でてアンナニーナが小さく頭を下げる。
ミールのおかげで男の子の弟という存在に兄としての見栄も張るようになった2人は最後まで兄として声を掛ける。

「ミールに関しての書類は直ぐに送るから手続きは早めにしてやってくれ」
「はい。お手数をお掛けいたします」
 ルーファスがミールの顔を見ながら微笑むと朱里の肩を抱く。
今にも泣き出しそうな朱里はアンナニーナとクイードに深く頭を下げると、ルーファスに促されるように歩き出す。

 ニクストローブとローランドとグリムレインが元の大きさに戻ると背中に荷物を乗せ始める。
「さぁ、温泉大陸に帰ろう」
「・・・はい」
 ルーファスに抱き上げられ朱里がニクストローブの上に乗ると、ニクストローブが空に浮上すると、アンナニーナの腕に抱かれたミールが火が付いたように泣き声を上げると、朱里も涙を流して手を伸ばす。

「ミール!幸せになって!可愛がって貰ってね!ミール・・・っ大好きよ!・・・ぁあああああ!」

 朱里が声を上げて泣き、ルーファスが朱里を抱きしめると伸ばした手を握りしめて、アンナニーナとクイードが最後まで頭を下げていた。


 ユリアは心が何処か壊れてしまっているため、療養の後、修道院に行くことが決まった。
アンナニーナとクイードはユリアの父親の屋敷の方で雇われることになり、落ち着き次第、結婚するそうだ。

 詐欺師の男は余罪と言う余罪をテンが洗い出し、朱里に抱きついた際の罪を婦女暴行として2件追加した。
ナルアも婦女暴行に含まれるという扱いに騎士団が難色を示したが、テンに逆らえず受理した。

 詐欺師の男は穏やかな気候の囚人にとって天国の様な場所と呼ばれる監獄に入れられる事になった。
軽犯罪者で余罪が多い者が入る場所、詐欺師の男はそれを聞いて初めは喜んでいた。
しかし、収容されて1日で怯えて「別の収容所にしてくれ」と叫ぶことになるが、この男はココに収容するように上から言われている為に移動は受理されなかった。
 この収容所は『鳥の収容所』とも言われているほど、鳥がよく来る。
その羽音は詐欺師の男に植え付けられたテンの羽ペンが空を切る音を思い起こさせ、男を恐怖に陥れる音となった。



 タルアニ国の騎士団の騎士ローディルとミロルドはテンの紹介で軍に入団させられ、脱走を繰り返し、脱走の多さについには脱獄不可能の監獄島の囚人を取り締まる軍事施設へ勤務する事になり、数年のち彼らは立派な規則と規律にうるさい軍人になり、軍を退役後はタルアニ国へ戻り、騎士団の規律を厳しく取り締まる2頭の鬼狼と呼ばれるようになる。
 彼らは言う「舐めた仕事をしていたら本物の『鬼』が出る」と・・・。




*・。・*・。・*・。・

 夕日の中を泣きつかれた朱里を腕の中で寝かせながら、ルーファスが2人の息子に笑顔を見せる。

「リュエール、シュトラール2人共偉かったぞ」
 2人が笑顔からクシャッと顔を歪ませるとルーファスに抱きつく。

「父上、ミールが、僕たちの弟なのに・・・っ」
「うわぁぁん。ミールが、ミールがぁ・・・」

 2人共、朱里の手前泣くことが出来ず我慢してミールとの別れを耐えていた。

「またミールに会いに来よう。お前達の初めての弟なのだから」
 2人はルーファスにしがみつきながら頷き、ミールとの別れに声を上げて泣いた。
行きは7人家族の旅行の様な物だと思って居ただけに、帰りが6人になるのは寂しいものだとルーファスも思う。
 ただ、ルーファスはミールの未来を思えば手放す事を考えていたのもあって朱里や双子の様に泣き叫んだりは出来ない。

「家の中が少し寂しくなるな・・・」
 
 いつかこの寂しさは無くなるだろうが、当分は1つ消えてしまった泣き声を思い、それぞれが何を思うか。
自分はいつでも家族の為に両腕を開けておこう。
誰が泣いて飛び込んできても良い様に。

 ルーファスが腕の中で眠る朱里の髪を撫でながら、ミールの居ない日常に朱里が笑顔を取り戻せるように祈るばかりだ。両脇にしがみついている息子達にも同じことを思う。 
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