黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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10章

騎士団と刻狼亭の人々

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 冬でも少し暖かい気温のタルアニ国の海岸。

 白い砂浜でリュエールとシュトラールが騎士を相手に先程から立ち上がる騎士をコケさせてを繰り返している。

「ほら、何度くりかえしてるの?そんなんじゃ騎士失格だよ」
「起き上がる時にどうかわすか考えなよ」
 双子は大人相手に「なさけないなぁ」とブツブツ文句を言いながら相手をしている。

 詐欺師の男の取り調べを行っている間、おもてなしという名目で駆り出された騎士団員は双子に「騎士は強いんでしょ?少し稽古つけてー」と、言われ相手をすることになったところ・・・。
接待みたいなものだと手加減をして2人に負けたふりをしようしたところ、2人に「立ち上がる時に相手をどうやって避けるかを考える訓練だよ!」と、コケさせられていた。

 この避ける訓練が意外と難しく、双子に良い様に翻弄されている状態が1時間続いている。
流石に双子も飽きてきている状態である。
 
 双子のお守りに怪我に対応出来るように製薬部隊のテッチも一緒に来ているが、双子に怪我がないので逆に怪我をしている騎士に実験で作ったポーションを飲ませては経過をメモしている。
テッチにとっては有難い実験体にホクホクである。


 取調室の方ではテンが騎士と詐欺師の男にダメ出しをしてはニコニコと羽ペンで空を切っていた。
シュッと羽ペンから出るとは思えない音がする度に頬にうっすら血が滲むのである。

「ほら、ここの調書の書き方おかしいですよぉ。やり直しです」
「あの、我々には我々のやり方が・・・」
シュッ
「調書作成なんて何処でも同じですよぉ?なんなら軍式で教えましょうかぁ?」
 テンが笑顔で騎士に羽先を向けると騎士が「直ぐやり直します!」と調書を書き始める。

「さて、もう一度名前からいこうか?」
ニコッと詐欺師の男にテンが笑い、何十回と繰り返した事情聴取のやり直しを告げる。
「もう勘弁してくれ」
シュッ
「はい。そんな事は聞いてないんですよぉ?【刻狼亭】の取り調べ室なら勝手が出来るんですけどぉ、他国ですからぁ、こっちだって付き合ってあげてるんですからぁ、協力してくださいねぇ?」
 取調室はテンの出す羽ペンの音と騎士と詐欺師の男の悲鳴が上がっていた。


 騎士団の資料室では小鬼が資料をパラパラと見ながら鼻歌を歌っている。
あまり事件と言う事件がないの小国の騎士団なので実りは少ないが情報として取り込むのは小鬼の本分なので元気に資料を片っ端から見ているのである。
 小鬼の資料を読むスピードは速く、次から次に山積みされる資料を流し見していき、たまに「この事件とこの事件は犯行手口がこちらの事件と一致しています」と、指摘して事件を見直す様に言ってくるので仕事を増やされていくのである。

「こんな小さな事件ですから、今更事件を洗いなおしても仕方が無いと・・・」
 騎士が苦笑いで言えば、小鬼は笑顔で答える。
「僕ら小鬼は全ての小鬼に情報を流しているのでいい加減な仕事をしていると、この騎士団の仕事のいい加減さも情報として流出しますが良いのですか?」
 小鬼に悪気はなく、あくまで情報を正確に伝えているだけである。
騎士達はガクリと項垂れながら資料を自分達の机に運び、小鬼の指摘した事件を調べなおしている。


 騎士団の隊長エインズは部下を連れ、ルーファス達の警護の為に街に来ている。
詐欺事件が解決したと言っても、黒狼族のルーファスを警戒している人々もいるので呼び出してしまった手前、警護しないわけにはいかない。 

 タルアニ国で有名な観光スポットの寺院を朱里とルーファスがミルアとナルアを抱きながら歩き、ドラゴン達7匹も2人の肩や頭の上に居る為によく目立っている。
警護にハガネとプリシーもいるが、ドラゴン達がフラフラと食べ物屋に行こうとしたり寺院の飾りを突いたりと何かしらやるので、そのたびに追いかけて回っている。

「アカリ、少しは気分転換になったか?」
「ん・・・。本当の両親が見つかったんだから喜んであげないとね・・・」
 ふぅ・・・と、朱里がため息を吐けば、ドラゴン達が一斉に寺院のあちらこちらに飛んで行き、ハガネとプリシーが追い、騎士団にも「お前はエデン」「お前はケルチャ」「お前はスピナ」「お前はローランド」「お前はニクストローブ」と指示を出してくる。
 騎士団がドラゴンを見失わない様に走り回り、店の前でドラゴンが「これお金払っといてね」と言い残し、また飛んでいく。
お金を払っている間に見失い、戻ってみれば、ドラゴン達は朱里にそれぞれお菓子や飲み物や小物と色々お土産を手にして、朱里を元気づけようとしていた。

「皆、ありがとう」
 朱里が少し困った顔で笑いながら「ごめんね。元気出すよ」とドラゴン達を抱きしめてミールの居なくなる寂しさを乗り越えようとしていた。

「まー、あー」
「あー、んー」
 ミルアもナルアも朱里に小さな手を伸ばすので朱里が「うん。母上は大丈夫だよ」と娘達を抱きしめる。
そんな朱里をルーファスが抱きしめながら、寂しさを紛らわせて過ごして観光をしている感じだった。

 振り回されていたのは騎士団で、とにかくドラゴンがよく動き回る為に疲労困憊という感じで終始終わった感じだった。

「明日は息子達とお土産を買いに行きたいので警護お願いしますね」

朱里の言葉に騎士団のエインズは財布と胃が痛くなる思いだった。
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