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10章
メイドの告白
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ロキシー邸へ騎士団が到着し、男が引き渡された瞬間ユリアが泣き叫んだ。
「待ってください!この人の赤ちゃんがあの部屋に居るの!父親を取り上げないで!」
ユリアの泣き叫ぶ声にメイドのアンナニーナの手が上がる。
パシンとユリアの頬をアンナニーナが打ち据えて、自分の手を押さえながら唇を噛みしめる。
「いい加減になさいませお嬢様!お嬢様のお子様はこの世に1人だって居ないのです!キスしたぐらいで子供は出来ないのですよ!」
「そんな事ないわ!だって、わたしは子供を産んだもの!」
「お嬢様がそう思い込んでいるだけです!産んだのは私です!」
「違う!違うわ!わたしのわたしの赤ちゃんなのよぉおお!!赤ちゃんがいれば彼はわたしと結婚するの!」
暴れるユリアをハガネが取り押さえて、男が騎士団へ連れて行かれるとテンが楽しそうに小鬼とローランドを連れて騎士団について行った。
屋敷では興奮したユリアにテッチが安定剤を出し寝せると、アンナニーナに話を聞くことになった。
ユリアとの言い合いで子供を産んだと発言したことで事情を知っているのはこのメイドだという事になったからだった。
朱里がプリシーとテッチに子供達を任せて話し合いの席に着く。
「アカリ、ナルアは大丈夫だったか?」
「ええ。泣きすぎてひきつけを起こしただけだから直ぐに治ったから大丈夫」
ルーファスにナルアの症状を報告して朱里が隣りに座り、朱里の肩にグリムレインとエデンが乗る。
ルーファスの肩にはニクストローブとスピナが乗っている。
ケルチャとアルビーはハガネの肩に止まって少し眠そうな顔で椅子に座るアンナニーナを見つめる。
椅子に座るアンナニーナの後ろにはクイードが立ち、向かい合う様にルーファスと朱里が座り、ハガネは立ったまま話し合いに立ち会っている。
「さて、アンナニーナだったな。君の知っていることを話してもらおう」
ルーファスに睨みつけられアンナニーナが頭を下げる。
「あの詐欺師の男がどこの誰かは私は存じ上げておりません。【刻狼亭】のルーファス・トリニアだと言われ、半年ほど前に確かめる為にお嬢様と私は2人で旦那様の紹介で温泉大陸へ渡りました」
「成程、出身地が此処ではないから我々の方でも君達が除外されてしまったようだな」
ミールの親を探すのにこの国の出身の者に重点を置いたのがそもそもの間違いだった様だ。
「そして、あの男が【刻狼亭】の当主様ではない事を知り、お嬢様はショックで記憶が錯乱したのです。私はその時妊娠していて、産気づいた時には子供をお嬢様が何処かへ連れ去り、お嬢様は子供を何処へやったのかも記憶になかったのです。帰国の時間も迫り、使用人の私は諦めるより他なかったのです」
朱里がルーファスの手を握りしめると、ルーファスが手を握り返してくる。
アンナニーナがクイードの方へ顔上げ、涙を流すとクイードがアンナニーナの肩へ手を乗せる。
「お嬢様は貴方々のお子さんを見た瞬間自分の産んだ子だと言い、思い込んでしまったのです。何度も説得したのですが、お嬢様は聞き入れてくれずご迷惑をお掛けいたしました」
アンナニーナが頭を下げるとクイードも頭を下げる。
「そちらの事情は分かったが、だとすると君はあの詐欺師の男と肉体関係があったという事か?」
ルーファスの言葉にアンナニーナが怪訝な顔をして首を振る。
「何故私があんなお嬢様を騙している男と関係を持たなければならないのです!」
アンナニーナが吐き捨てるように言うとルーファスと朱里が顔を見合わせてアンナニーナを見つめる。
「でも、ミールは黒狼の子供です・・・よ?」
朱里がミールの事を口に出せば、アンナニーナは首を傾げる。
「何故、奥様のお子様の子供が関係あるのです?」
ますます困惑する朱里にルーファスも頭の中は疑問でいっぱいになる。
「君が産んだ子供の父親は誰なんだ?」
「ここに居るクイードが父親でした。子供が生まれたら結婚するつもりでした」
アンナニーナとクイードが目を伏し目がちにお互いに顔を合わせずにいると、ルーファスが「ふむ」とクイードを見つめる。
「クイード、君は黒狼族なのか?」
ルーファスの言葉にクイードの肩がビクッと震える。
「私は見ての通りですよ。黒狼族の拾われ者です」
「いや、君の場合は先祖のどこかで赤毛の者が混じった為に先祖返りしただけだろう。現に君の子供は黒狼族の毛並みで生まれているのだからな」
朱里がすがる様な目でルーファスを見つめると、ルーファスが静かに首を振る。
「私達の子供を知っているのですか?」
「私達の子供は何処に?」
アンナニーナとクイードの必死な顔に朱里が下唇を小さく噛みながら涙を目に貯めて下をうつむく。
「ハガネ、ミールを連れて来てくれ」
「ああ、わかった・・・」
ハガネが朱里の姿を見て眉尻を下げながら部屋を出ていく。
朱里もハガネもルーファスも予想していなかったミールの母親と父親に落胆していた。
詐欺師とユリアの子供ならばミールをこのまま手元に置いておけばいいと思って居ただけに、子供を奪われた母親と父親が居るとは思って居なかった。
手放しがたくなっていた子供になっていただけに喜ぶべき事に喜べずにいる。
ハガネがミールを連れてくると朱里が伸ばしかけた手をルーファスに掴まれ声を震わせて泣き始める。
「すまない。アカリ、ミールを親元へ返してやろう?」
「ううっ・・・うあぁぁぁん」
朱里を抱きしめながらルーファスがアンナニーナとクイードに「君たちの子供だ」と告げると2人がハガネからミールを受け取り涙を流して顔を見合わせて喜んでいた。
「待ってください!この人の赤ちゃんがあの部屋に居るの!父親を取り上げないで!」
ユリアの泣き叫ぶ声にメイドのアンナニーナの手が上がる。
パシンとユリアの頬をアンナニーナが打ち据えて、自分の手を押さえながら唇を噛みしめる。
「いい加減になさいませお嬢様!お嬢様のお子様はこの世に1人だって居ないのです!キスしたぐらいで子供は出来ないのですよ!」
「そんな事ないわ!だって、わたしは子供を産んだもの!」
「お嬢様がそう思い込んでいるだけです!産んだのは私です!」
「違う!違うわ!わたしのわたしの赤ちゃんなのよぉおお!!赤ちゃんがいれば彼はわたしと結婚するの!」
暴れるユリアをハガネが取り押さえて、男が騎士団へ連れて行かれるとテンが楽しそうに小鬼とローランドを連れて騎士団について行った。
屋敷では興奮したユリアにテッチが安定剤を出し寝せると、アンナニーナに話を聞くことになった。
ユリアとの言い合いで子供を産んだと発言したことで事情を知っているのはこのメイドだという事になったからだった。
朱里がプリシーとテッチに子供達を任せて話し合いの席に着く。
「アカリ、ナルアは大丈夫だったか?」
「ええ。泣きすぎてひきつけを起こしただけだから直ぐに治ったから大丈夫」
ルーファスにナルアの症状を報告して朱里が隣りに座り、朱里の肩にグリムレインとエデンが乗る。
ルーファスの肩にはニクストローブとスピナが乗っている。
ケルチャとアルビーはハガネの肩に止まって少し眠そうな顔で椅子に座るアンナニーナを見つめる。
椅子に座るアンナニーナの後ろにはクイードが立ち、向かい合う様にルーファスと朱里が座り、ハガネは立ったまま話し合いに立ち会っている。
「さて、アンナニーナだったな。君の知っていることを話してもらおう」
ルーファスに睨みつけられアンナニーナが頭を下げる。
「あの詐欺師の男がどこの誰かは私は存じ上げておりません。【刻狼亭】のルーファス・トリニアだと言われ、半年ほど前に確かめる為にお嬢様と私は2人で旦那様の紹介で温泉大陸へ渡りました」
「成程、出身地が此処ではないから我々の方でも君達が除外されてしまったようだな」
ミールの親を探すのにこの国の出身の者に重点を置いたのがそもそもの間違いだった様だ。
「そして、あの男が【刻狼亭】の当主様ではない事を知り、お嬢様はショックで記憶が錯乱したのです。私はその時妊娠していて、産気づいた時には子供をお嬢様が何処かへ連れ去り、お嬢様は子供を何処へやったのかも記憶になかったのです。帰国の時間も迫り、使用人の私は諦めるより他なかったのです」
朱里がルーファスの手を握りしめると、ルーファスが手を握り返してくる。
アンナニーナがクイードの方へ顔上げ、涙を流すとクイードがアンナニーナの肩へ手を乗せる。
「お嬢様は貴方々のお子さんを見た瞬間自分の産んだ子だと言い、思い込んでしまったのです。何度も説得したのですが、お嬢様は聞き入れてくれずご迷惑をお掛けいたしました」
アンナニーナが頭を下げるとクイードも頭を下げる。
「そちらの事情は分かったが、だとすると君はあの詐欺師の男と肉体関係があったという事か?」
ルーファスの言葉にアンナニーナが怪訝な顔をして首を振る。
「何故私があんなお嬢様を騙している男と関係を持たなければならないのです!」
アンナニーナが吐き捨てるように言うとルーファスと朱里が顔を見合わせてアンナニーナを見つめる。
「でも、ミールは黒狼の子供です・・・よ?」
朱里がミールの事を口に出せば、アンナニーナは首を傾げる。
「何故、奥様のお子様の子供が関係あるのです?」
ますます困惑する朱里にルーファスも頭の中は疑問でいっぱいになる。
「君が産んだ子供の父親は誰なんだ?」
「ここに居るクイードが父親でした。子供が生まれたら結婚するつもりでした」
アンナニーナとクイードが目を伏し目がちにお互いに顔を合わせずにいると、ルーファスが「ふむ」とクイードを見つめる。
「クイード、君は黒狼族なのか?」
ルーファスの言葉にクイードの肩がビクッと震える。
「私は見ての通りですよ。黒狼族の拾われ者です」
「いや、君の場合は先祖のどこかで赤毛の者が混じった為に先祖返りしただけだろう。現に君の子供は黒狼族の毛並みで生まれているのだからな」
朱里がすがる様な目でルーファスを見つめると、ルーファスが静かに首を振る。
「私達の子供を知っているのですか?」
「私達の子供は何処に?」
アンナニーナとクイードの必死な顔に朱里が下唇を小さく噛みながら涙を目に貯めて下をうつむく。
「ハガネ、ミールを連れて来てくれ」
「ああ、わかった・・・」
ハガネが朱里の姿を見て眉尻を下げながら部屋を出ていく。
朱里もハガネもルーファスも予想していなかったミールの母親と父親に落胆していた。
詐欺師とユリアの子供ならばミールをこのまま手元に置いておけばいいと思って居ただけに、子供を奪われた母親と父親が居るとは思って居なかった。
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「すまない。アカリ、ミールを親元へ返してやろう?」
「ううっ・・・うあぁぁぁん」
朱里を抱きしめながらルーファスがアンナニーナとクイードに「君たちの子供だ」と告げると2人がハガネからミールを受け取り涙を流して顔を見合わせて喜んでいた。
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