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10章
戦々恐々
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タルアニ国にある騎士団事務所に響いた声に何事だと事務所に居た団員たちが何事かと隊長のエインズの方を向く。
「お前等なんて事してくれたんだーーーっ!!!」
ビョンとほんの少し床から足が浮き、怒髪天・・・まさに怒髪天と言わんばかりのエインズの怒りにローディルとミロルドが耳を下げながら「ヒィッ」と声を上げる。
バンッと、乱暴に机の上に置いた黒い書簡に金色の蝋封の物をエインズが、バンバンと音を立てながら2人の部下を怒鳴りながら書簡を叩く。
「これが何か分かっているのか?!【刻狼亭】からの正式な抗議文だ!!」
ローディルとミロルドが身を窄めてお互いに目線を合わせて「いや、でも・・・」と、声を出せばエインズに「ああ?」とドスの効いた声で脅され口をつぐむ。
結婚詐欺の立証に関する【刻狼亭】のルーファス・トリニアの入国がそちらにあり、被害女性の証言の容姿等がこちらと外見が一致しての事か?まさか黒狼族で名前を騙られたから鵜呑みにしてこちらを犯罪者リストに載せると脅してきたとは言わないだろうな?・・・と、簡単に訳せばこの様な事をネチネチと丁寧な文章で正式書簡として送って来たのである。
作成者のテン・サマードの丁寧な文章の中に見え隠れする脅すような文面がエインズを身震いさせた。
こんな弱小騎士団の事務所に温泉大陸の当主をどうこう出来るわけもなく、ましてや完全に白の相手を黒にしてやるぞとこちらが脅すような書簡を送ったのである。
目の前の2人の部下が結婚詐欺にあった女性に良い格好をしたいが為に・・・。
ここまで頭の足りない奴らだとは思って居なかったのである。
一応、こちらから詐欺師に名前を騙られているから、事情聴取に来て欲しいとは書簡を送った事はあるが、タルアニ国と温泉大陸は距離があり、こちらが呼び出しておいて相手に旅費だ宿だと持て成さないわけにはいかないが、温泉大陸の【刻狼亭】のトリニア一族といえば高級料亭と高級旅館を営んでいる一族だ。
そんな相手に用意する宿だ飯だはこんな安月給の騎士団でどうにか出来るわけが無い。
相手側から話を蹴飛ばしてくれてこちらとしてもホッとしていたところだったのに・・・。
「あの、隊長・・・それで僕らはどうなるんでしょう?」
「えと、結婚詐欺でそいつ来てくれるんでしょ?良かったじゃないですか?」
あはは・・・と、2人がへらっとヒクつきながら笑うと、スッ・・・と、エインズの顔から表情が消える。
「よし、お前等の給金半年分でこの国一番の宿を取ろう。おそらく足りないだろうからお前等、借金でもなんでもいいから金を借りて来い」
2人の顔が「えっ?」という間抜けな顔になるとエインズが「私も愛する妻が今まで必死に貯めてくれた貯金を使うんだ。お前等も出来るよな?」と、有無を言わさない怒気に2人が床に目線をやって「ヒィイイイ」と心の中で絶叫を上げた。
「でも、隊長~っ、この人、家族も連れてくるって・・・家族分は相手側で賄ってもらえるんですよね?」
「家族と従者とか結構人数多いですよ?」
「・・・番だよ。お前等、番の居る相手に喧嘩売ったんだ。お前等、番に自分の不貞を潔白にする意味で連れてくるって、それがどういう意味か分かってるか?」
2人は「全然」と首を振ると、エインズがため息を吐く。
「お前達は、女に良い格好がしたいが為に、罪もないむしろ名を騙られた被害者を罪人扱いした上に、番に不貞を働いたと疑いを掛けられた被害者に、いつもみたいに笑って誤魔化せるなんて思ってないよな?番を見付けていないお前等に番同士がどれだけ番に疑われる事が死刑宣告なのか・・・それを思えば、お前等が罪人扱いしてしまった相手の家族の分まで支払いをするのは当たり前だ」
「隊長、流石にそれは大袈裟でしょ?脅さないで下さいよ~」
「それに相手は金持ちのお偉いさんみたいなもんでしょう?ケチくさい事言いますかね?」
2人がへらっと笑うとエインズがハァーっと何度目かのため息を吐く。
「そうだよ。その金持ちのお偉いさんを相手にお前等が喧嘩を売ったんだよ。暗殺部隊を飼ってると言われる様な相手にな・・・こんな小国だから温泉大陸は観光地ぐらいのイメージしかないんだろうが・・・とにかく、ヤバい相手なんだよ」
2人が周りの仲間の騎士達を見れば、関わり合いたくないとばかりに目が合う先から目線を逸らしていく。
「お金を誰か貸してくれたりは・・・?」
「仲間だよな!皆!」
バッと一斉に音を立てて蜘蛛の子を散らす様に仲間の騎士たちが事務所から逃げ出すと、2人がエインズにすがる様な目を向ける。
「私もお前達のせいで今まで貯めていた貯金を出すんだから貸せるわけないだろう!」
「そんなぁ~」
「金なんて女の子以外に使いたくない~」
懲りていないのかと少し肩をガクリと落としながら、エインズは家に帰ったら愛妻に土下座をしながら貯金を下ろしてもらわなければならない事に胃を今からキリキリいわせていた。
エインズだって金を使うなら愛妻の為に花でも買って使いたい派だ。
「お前等なんて事してくれたんだーーーっ!!!」
ビョンとほんの少し床から足が浮き、怒髪天・・・まさに怒髪天と言わんばかりのエインズの怒りにローディルとミロルドが耳を下げながら「ヒィッ」と声を上げる。
バンッと、乱暴に机の上に置いた黒い書簡に金色の蝋封の物をエインズが、バンバンと音を立てながら2人の部下を怒鳴りながら書簡を叩く。
「これが何か分かっているのか?!【刻狼亭】からの正式な抗議文だ!!」
ローディルとミロルドが身を窄めてお互いに目線を合わせて「いや、でも・・・」と、声を出せばエインズに「ああ?」とドスの効いた声で脅され口をつぐむ。
結婚詐欺の立証に関する【刻狼亭】のルーファス・トリニアの入国がそちらにあり、被害女性の証言の容姿等がこちらと外見が一致しての事か?まさか黒狼族で名前を騙られたから鵜呑みにしてこちらを犯罪者リストに載せると脅してきたとは言わないだろうな?・・・と、簡単に訳せばこの様な事をネチネチと丁寧な文章で正式書簡として送って来たのである。
作成者のテン・サマードの丁寧な文章の中に見え隠れする脅すような文面がエインズを身震いさせた。
こんな弱小騎士団の事務所に温泉大陸の当主をどうこう出来るわけもなく、ましてや完全に白の相手を黒にしてやるぞとこちらが脅すような書簡を送ったのである。
目の前の2人の部下が結婚詐欺にあった女性に良い格好をしたいが為に・・・。
ここまで頭の足りない奴らだとは思って居なかったのである。
一応、こちらから詐欺師に名前を騙られているから、事情聴取に来て欲しいとは書簡を送った事はあるが、タルアニ国と温泉大陸は距離があり、こちらが呼び出しておいて相手に旅費だ宿だと持て成さないわけにはいかないが、温泉大陸の【刻狼亭】のトリニア一族といえば高級料亭と高級旅館を営んでいる一族だ。
そんな相手に用意する宿だ飯だはこんな安月給の騎士団でどうにか出来るわけが無い。
相手側から話を蹴飛ばしてくれてこちらとしてもホッとしていたところだったのに・・・。
「あの、隊長・・・それで僕らはどうなるんでしょう?」
「えと、結婚詐欺でそいつ来てくれるんでしょ?良かったじゃないですか?」
あはは・・・と、2人がへらっとヒクつきながら笑うと、スッ・・・と、エインズの顔から表情が消える。
「よし、お前等の給金半年分でこの国一番の宿を取ろう。おそらく足りないだろうからお前等、借金でもなんでもいいから金を借りて来い」
2人の顔が「えっ?」という間抜けな顔になるとエインズが「私も愛する妻が今まで必死に貯めてくれた貯金を使うんだ。お前等も出来るよな?」と、有無を言わさない怒気に2人が床に目線をやって「ヒィイイイ」と心の中で絶叫を上げた。
「でも、隊長~っ、この人、家族も連れてくるって・・・家族分は相手側で賄ってもらえるんですよね?」
「家族と従者とか結構人数多いですよ?」
「・・・番だよ。お前等、番の居る相手に喧嘩売ったんだ。お前等、番に自分の不貞を潔白にする意味で連れてくるって、それがどういう意味か分かってるか?」
2人は「全然」と首を振ると、エインズがため息を吐く。
「お前達は、女に良い格好がしたいが為に、罪もないむしろ名を騙られた被害者を罪人扱いした上に、番に不貞を働いたと疑いを掛けられた被害者に、いつもみたいに笑って誤魔化せるなんて思ってないよな?番を見付けていないお前等に番同士がどれだけ番に疑われる事が死刑宣告なのか・・・それを思えば、お前等が罪人扱いしてしまった相手の家族の分まで支払いをするのは当たり前だ」
「隊長、流石にそれは大袈裟でしょ?脅さないで下さいよ~」
「それに相手は金持ちのお偉いさんみたいなもんでしょう?ケチくさい事言いますかね?」
2人がへらっと笑うとエインズがハァーっと何度目かのため息を吐く。
「そうだよ。その金持ちのお偉いさんを相手にお前等が喧嘩を売ったんだよ。暗殺部隊を飼ってると言われる様な相手にな・・・こんな小国だから温泉大陸は観光地ぐらいのイメージしかないんだろうが・・・とにかく、ヤバい相手なんだよ」
2人が周りの仲間の騎士達を見れば、関わり合いたくないとばかりに目が合う先から目線を逸らしていく。
「お金を誰か貸してくれたりは・・・?」
「仲間だよな!皆!」
バッと一斉に音を立てて蜘蛛の子を散らす様に仲間の騎士たちが事務所から逃げ出すと、2人がエインズにすがる様な目を向ける。
「私もお前達のせいで今まで貯めていた貯金を出すんだから貸せるわけないだろう!」
「そんなぁ~」
「金なんて女の子以外に使いたくない~」
懲りていないのかと少し肩をガクリと落としながら、エインズは家に帰ったら愛妻に土下座をしながら貯金を下ろしてもらわなければならない事に胃を今からキリキリいわせていた。
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