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10章
暴れ熊
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生まれてこの方『暴れ熊』等という名称で呼ばれたことは無いが、本日めでたく(?)ギルから暴れ熊呼ばわりされたのは、咳が治りようやく子供達を抱きしめることが出来た朱里だった。
「リューちゃん、シューちゃん、塩!岩塩!ハーブソルトでもいいから持ってきて!もう怒りました!ギルさんはうちに出入り禁止です!!」
朱里がクッションをギルに投げつけながらリビングで吠えていると、朱里の手にひんやりした氷を握らせたのはグリムレインだった。
「嫁、氷ならいくらでも出すぞ?」
「あー、そこまでは望んでないんだけどね?うん。でも、気持ちは有難く、ね。さぁ、ギルさんミールは渡しませんから出て行って!」
ギルが「出産後の暴れ熊は怖いですね」と、グリムレインに氷を口から礫の様に投げられながら『竜の癒し木』をつたって外へ撤退していく。
「誰が暴れ熊ですか!」
朱里が遠ざかるギルに憤慨しながら、プリプリと怒りを露わにしながらソファにドカッと座り込む。
「母上、おちついて」
「母上が怒ると皆起きちゃうよ?」
リュエールとシュトラールにベビーベッドを指さされ、朱里が眉尻を下げる。
ベビーベッドの中では3人の子供達がすやすやと寝入っている。
最近は慣れたとばかりに、少しの喧騒では動じなくなってきた逞しい子供達である。
「ごめんね?だって、ギルさんがミールを物みたいに簡単にくれって言うから・・・」
「ギル大叔父なんて気にしなきゃいいのに」
「そうだよ母上。ミールはうちの子なんだし」
リュエールとシュトラールがベビーベッドを覗き込みながら「ねー」と声を合わせる。
ミルアとナルアの真ん中で眠るミールは周りがどう思っているかも関係なしに幸せそうだ。
「寝顔が3人共可愛い」
朱里もベビーベッドを覗き込んで口元に笑みを浮かべる。
3人でベビーベッドを覗き込みながら、まったりとしていると1階から階段を上がってリロノスが書簡手にを持ってくる。
「アカリさん、書簡が届いているのですが【刻狼亭】の旅館の方と間違えて届いたみたいです。どうもこの書簡『招集』の印がしてありますから急いだほうが良いと思いまして」
リロノスが朱里に書簡を手渡し、また1階の店へ戻っていく。
朱里が見ても書簡の印はただの蝋封に判子が押されているだけにしか見えないが、リロノスには違いが判るらしい。
「これ急ぎなのかしら?」
朱里が首をかしげるとリュエールが蝋封の右下を指さす。
「この右端のは騎士や憲兵とか犯罪を取り調べる人達が使うマーク。それで真ん中の下のマークが呼び出しのマークだよ。右のマークが所属のマークだから・・・これだと小国かな?ちゃんとした国だともう少しマークがこってるから」
リュエールにも判るらしいが朱里にはちんぷんかんぷんで分からない。シュトラールも朱里と同じ顔をして首を傾げている。
ぺりっと蝋封を開けて中の書簡を読むも朱里は首を捻るばかりだ。
リュエールが朱里から書簡を奪うと真剣な顔で読み始める。
「リューちゃん駄目だよ?父上に見せなきゃいけないんだから」
「・・・母上、これ父上が呼び出しに応じなければ犯罪者リストにのせるって書いてある」
「うそ!リュー見せて」
リュエールからシュトラールが書簡を奪い読むと困惑した顔をする。
「貸しなさい!ちょっと、母上は出掛けますから、ミルア達をお願いします!」
シュトラールの手から書簡を奪うように取ると朱里が上着も着ないままリビングを出て行き、リュエールとシュトラールが追おうとするも、妹達を放置も出来ずにリビングで「もう!」と声を上げるだけだった。
朱里が飛び出して出ていくと、朱里の後ろをグリムレインが追って飛んできてサイズを変えると朱里を腕に抱きしめて飛び始める。
「嫁、婿の所に行けばいいのか?」
「はい!お願いします!」
書簡が何を書いてあるかわからない不安で震えているのか寒さで震えているのかわからないまま、小刻みに震えながら【刻狼亭】の旅館へたどり着くと、フロントロビーで従業員が目を丸くして朱里を見る。
「女将、そんな恰好で出歩いてたら風邪ひきますよ!」
「大丈夫です、それよりルーファスは?」
「旦那様なら事務所の方に居ますよ」
「ありがとう!」
朱里が駆けだし、グリムレインがその後を追うと朱里が足をもつれさせて廊下にへたり込む。
「おい!嫁大丈夫か?!」
「大丈夫・・・。最近寝てばかりだったから、体力なくて・・・」
病み上がりに全力疾走はまだ無理があったと朱里が息を整えながら立ち上がると、グリムレインが人型になり朱里を抱き上げて事務所のドアを開ける。
「婿は居るか!」
事務所に突然現れたグリムレインに事務員たちがギョッとした顔をするが朱里を見てまたギョッとする。
「アカリさん大丈夫ですか?何かありましたか?」
テンが椅子から立ち上がると朱里がグリムレインに「下ろして」と言って下ろしてもらう。
「ルーファス何処に居るか知りませんか?」
「旦那様なら昼を食べに行くと言って出掛けましたよ。腕輪で通信はしないんですかぁ?」
テンに言われて朱里がハッと自分の腕輪に気が付く。
気が動転して腕輪で連絡を取るのを忘れていた朱里だった。
「とりあえず、これ着ておいた方が良いですよぉ。風邪ひきます」
朱里に椅子に掛けておいた自分のカーディガンを羽織らせるとテンが眉尻を下げながら笑う。
ブラウスとスカートだけで飛び出した朱里は髪も風で乱れて、何とも寒そうな恰好をしていたのである。
朱里がペコペコ頭を下げながら、腕輪に魔力を通そうとしていたら後ろから探し人の声がした。
「アカリ?何をしているんだこんな所で」
「ルーファス!」
「リューちゃん、シューちゃん、塩!岩塩!ハーブソルトでもいいから持ってきて!もう怒りました!ギルさんはうちに出入り禁止です!!」
朱里がクッションをギルに投げつけながらリビングで吠えていると、朱里の手にひんやりした氷を握らせたのはグリムレインだった。
「嫁、氷ならいくらでも出すぞ?」
「あー、そこまでは望んでないんだけどね?うん。でも、気持ちは有難く、ね。さぁ、ギルさんミールは渡しませんから出て行って!」
ギルが「出産後の暴れ熊は怖いですね」と、グリムレインに氷を口から礫の様に投げられながら『竜の癒し木』をつたって外へ撤退していく。
「誰が暴れ熊ですか!」
朱里が遠ざかるギルに憤慨しながら、プリプリと怒りを露わにしながらソファにドカッと座り込む。
「母上、おちついて」
「母上が怒ると皆起きちゃうよ?」
リュエールとシュトラールにベビーベッドを指さされ、朱里が眉尻を下げる。
ベビーベッドの中では3人の子供達がすやすやと寝入っている。
最近は慣れたとばかりに、少しの喧騒では動じなくなってきた逞しい子供達である。
「ごめんね?だって、ギルさんがミールを物みたいに簡単にくれって言うから・・・」
「ギル大叔父なんて気にしなきゃいいのに」
「そうだよ母上。ミールはうちの子なんだし」
リュエールとシュトラールがベビーベッドを覗き込みながら「ねー」と声を合わせる。
ミルアとナルアの真ん中で眠るミールは周りがどう思っているかも関係なしに幸せそうだ。
「寝顔が3人共可愛い」
朱里もベビーベッドを覗き込んで口元に笑みを浮かべる。
3人でベビーベッドを覗き込みながら、まったりとしていると1階から階段を上がってリロノスが書簡手にを持ってくる。
「アカリさん、書簡が届いているのですが【刻狼亭】の旅館の方と間違えて届いたみたいです。どうもこの書簡『招集』の印がしてありますから急いだほうが良いと思いまして」
リロノスが朱里に書簡を手渡し、また1階の店へ戻っていく。
朱里が見ても書簡の印はただの蝋封に判子が押されているだけにしか見えないが、リロノスには違いが判るらしい。
「これ急ぎなのかしら?」
朱里が首をかしげるとリュエールが蝋封の右下を指さす。
「この右端のは騎士や憲兵とか犯罪を取り調べる人達が使うマーク。それで真ん中の下のマークが呼び出しのマークだよ。右のマークが所属のマークだから・・・これだと小国かな?ちゃんとした国だともう少しマークがこってるから」
リュエールにも判るらしいが朱里にはちんぷんかんぷんで分からない。シュトラールも朱里と同じ顔をして首を傾げている。
ぺりっと蝋封を開けて中の書簡を読むも朱里は首を捻るばかりだ。
リュエールが朱里から書簡を奪うと真剣な顔で読み始める。
「リューちゃん駄目だよ?父上に見せなきゃいけないんだから」
「・・・母上、これ父上が呼び出しに応じなければ犯罪者リストにのせるって書いてある」
「うそ!リュー見せて」
リュエールからシュトラールが書簡を奪い読むと困惑した顔をする。
「貸しなさい!ちょっと、母上は出掛けますから、ミルア達をお願いします!」
シュトラールの手から書簡を奪うように取ると朱里が上着も着ないままリビングを出て行き、リュエールとシュトラールが追おうとするも、妹達を放置も出来ずにリビングで「もう!」と声を上げるだけだった。
朱里が飛び出して出ていくと、朱里の後ろをグリムレインが追って飛んできてサイズを変えると朱里を腕に抱きしめて飛び始める。
「嫁、婿の所に行けばいいのか?」
「はい!お願いします!」
書簡が何を書いてあるかわからない不安で震えているのか寒さで震えているのかわからないまま、小刻みに震えながら【刻狼亭】の旅館へたどり着くと、フロントロビーで従業員が目を丸くして朱里を見る。
「女将、そんな恰好で出歩いてたら風邪ひきますよ!」
「大丈夫です、それよりルーファスは?」
「旦那様なら事務所の方に居ますよ」
「ありがとう!」
朱里が駆けだし、グリムレインがその後を追うと朱里が足をもつれさせて廊下にへたり込む。
「おい!嫁大丈夫か?!」
「大丈夫・・・。最近寝てばかりだったから、体力なくて・・・」
病み上がりに全力疾走はまだ無理があったと朱里が息を整えながら立ち上がると、グリムレインが人型になり朱里を抱き上げて事務所のドアを開ける。
「婿は居るか!」
事務所に突然現れたグリムレインに事務員たちがギョッとした顔をするが朱里を見てまたギョッとする。
「アカリさん大丈夫ですか?何かありましたか?」
テンが椅子から立ち上がると朱里がグリムレインに「下ろして」と言って下ろしてもらう。
「ルーファス何処に居るか知りませんか?」
「旦那様なら昼を食べに行くと言って出掛けましたよ。腕輪で通信はしないんですかぁ?」
テンに言われて朱里がハッと自分の腕輪に気が付く。
気が動転して腕輪で連絡を取るのを忘れていた朱里だった。
「とりあえず、これ着ておいた方が良いですよぉ。風邪ひきます」
朱里に椅子に掛けておいた自分のカーディガンを羽織らせるとテンが眉尻を下げながら笑う。
ブラウスとスカートだけで飛び出した朱里は髪も風で乱れて、何とも寒そうな恰好をしていたのである。
朱里がペコペコ頭を下げながら、腕輪に魔力を通そうとしていたら後ろから探し人の声がした。
「アカリ?何をしているんだこんな所で」
「ルーファス!」
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