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10章
大叔父の帰還
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朱里が出産してから5ヶ月の月日が過ぎ、季節は秋から冬になろうとしていた。
ミールが産み落とされた時に温泉大陸に来ていたタルアニ国出身の者はおらず、タルアニ国から船で温泉大陸への船は元々出ていないので、別の国から船に乗って来たとすれば、探すのは難しくなる。
陸路の場合も然り、ミールの生みの親探しは難航し、ルーファスも少しミールの親探しを忘れて毎日の忙しさに忙殺されていた。
ルーファスの偽物の詐欺師に関しても、夏頃からすっかり話が出回らなくなっていた為にこちらも暗礁に乗り上げていた。
しかし、こちらについては、詐欺師として探している者達が居る為に、ダメ元でルーファスの元へも話がついに来たのである。
タルアニ国の騎士団の隊長エインズから書簡が届き、タルアニ国へ事情聴取に協力してもらえないかというものだった。
身に覚えのない事で他国へ行くのは本来ならばお断り案件ではあるが、ミールの事もあり行くかどうかを少し考えていた。
「ケホッ・・・ルーファス、悩み事?」
「いや、それより喉は大丈夫か?」
「大分、治りました・・・ケホッケホッ」
朱里の背中をさすりながら、ルーファスがまだ朱里を1人残して温泉大陸を留守にするのは無理だとタルアニ国の騎士団への返事を保留にしようと頭の中で片隅へ追いやる。
風邪を朱里が引き、いつもならばリュエールやシュトラールの能力で風邪など治るのだが、本人達も風邪を引いてしまい、ありすの特殊ポーションで治したのだが、風邪自体は良くなったが、喉を傷めてしまい咳だけが残っている朱里は風邪で体力が削られたのもあり、治りが遅い。
子供達はまた風邪を持ち込んだりしてはいけないと朱里とは接触禁止になっている。
ミルアとナルアとミールも鼻風邪を引いていたので、朱里との接触はさせていない。
哺乳瓶に朱里が母乳を搾乳して入れてはいるが、ぐずる事が多く、それもルーファスの悩みの種になっている。
「ごめんね?迷惑かけちゃって・・・」
「別に気にしなくていい。子供達の為にも早くよくなってくれ」
「うん。アルビーに喉飴有り難うって伝えておいてね」
「わかった。アカリが治るのを皆待っているからな」
コツンとおでこを合わせて目を閉じて、お互いのおでこの体温を感じながらしばらく過ごすと、リビングから泣き声がするとルーファスが苦笑いをして部屋を出ていく。
リビングに行くとリュエールとシュトラールが「ふしんしゃ!」と叫び窓から侵入しようとした男を追って窓から出ると『竜の癒し木』をつたって外へ飛び出していった。
「何事だ!?」
「いや、それがよぉ・・・ギルが窓から入ろうとしたのをリューとシューが追い出して行っちまった」
ハガネが泣いているミルアとナルアとミールをあやしながら肩をすくめる。
ミルアを抱っこしつつ、ゆりかごを足で揺らしながらナルアとミールもあやすハガネに手を貸し、ナルアを抱き上げてあやす。
「しかし、ようやくグリムレインの氷が溶けたのか」
「俺はギルの事すっかり記憶から忘れてたぜ?」
ルーファスも実のところギルの事を忙しさに忘れていた節はある。
息子達2人がギル相手にどこまで戦えるかも気になる所だが、ギルも逃げずに2人に話をすればいい物を・・・。
ミルアをあやし終えたハガネがミールをあやし始める。
グリムレイン以外のドラゴンは既に冬眠期間に入りつつあるのでウトウトと部屋の絨毯の上で丸くなっている。
数十分して双子が『竜の癒し木』をつたって戻ってくると、ルーファスが「玄関から戻ってこい」と2人をたしなめるが、2人は首を傾げて「玄関閉まってるもん」と肩をすくめる。
ギルが2階の窓から侵入を試みた理由もそれなのだろうと、ルーファスが1階へ降りて玄関を開けると、背の高い美女、黒竜のネルフィームに担ぎ上げられてギルを連れてルーファスに頭を下げる。
「久しいなネルフィーム。ギル叔父上はうちの坊主共にやられたのか?」
「久しぶりだルーファス。主は油断しすぎだ」
ネルフィームとギルを2階のリビングに通すとリュエールとシュトラールが眉間にしわを寄せる。
「父上、ふしんしゃですよ。普通はマドから来る人はいない」
「父上、その人父上の家族だって言ってたけど本当?」
疑いのまなざしでギルを睨みつける2人はミルアとナルアを抱っこして距離を置いている。
ハガネにもミールを連れてこっちに来いと言っているぐらいだ。
「ルーファス・・・リューもシューも大きくなったみたいだね?」
「ああ。ギル叔父上が氷漬けになってから4年半は立っているから、2人共6歳になっている」
ネルフィームにソファに下ろされるとギルが首をゴキゴキ鳴らしながら警戒心丸出しの2人を見つめる。
「それで、あの3人の赤ん坊は?」
「5ヵ月前に生まれた娘二人と、同じ日に生まれて縁あって預かっている子供だ」
ルーファスがリュエールとシュトラールに手招きをして近付く様に促すと2人は首を振る。
「どうやら私は2人に嫌われているのかな?」
「まぁ1歳頃の事とは言え、ギル叔父上にアカリを目の前で殺されかけたんだ心に残っているんだろうさ。ギル叔父上が悪いのだから、自然に2人が警戒心を解くのを待つしかないな」
少し残念そうにしながらギルが諦めると、ネルフィームが双子に近付いて行く。
2人の前まで行くと30cm程のドラゴンの姿に戻り、首をかしげる。
「私は黒竜ネルフィーム。覚えてはいないだろうから自己紹介だ」
「わぁ!アルビー達の仲間だね。僕はリュエールだよ」
「オレはシュトラール。リューが抱いてるのが妹のミルアでこっちがナルア。双子だよ。で、こっちのハガネが抱いてるのがミール」
ネルフィームが目を弓なりにして微笑みながら頷く。
ギルが「ネルフィームだけズルい!」と声を出すもネルフィームは「フフン」と鼻で笑い小さな赤ん坊に目を細めるばかりだった。
ミールが産み落とされた時に温泉大陸に来ていたタルアニ国出身の者はおらず、タルアニ国から船で温泉大陸への船は元々出ていないので、別の国から船に乗って来たとすれば、探すのは難しくなる。
陸路の場合も然り、ミールの生みの親探しは難航し、ルーファスも少しミールの親探しを忘れて毎日の忙しさに忙殺されていた。
ルーファスの偽物の詐欺師に関しても、夏頃からすっかり話が出回らなくなっていた為にこちらも暗礁に乗り上げていた。
しかし、こちらについては、詐欺師として探している者達が居る為に、ダメ元でルーファスの元へも話がついに来たのである。
タルアニ国の騎士団の隊長エインズから書簡が届き、タルアニ国へ事情聴取に協力してもらえないかというものだった。
身に覚えのない事で他国へ行くのは本来ならばお断り案件ではあるが、ミールの事もあり行くかどうかを少し考えていた。
「ケホッ・・・ルーファス、悩み事?」
「いや、それより喉は大丈夫か?」
「大分、治りました・・・ケホッケホッ」
朱里の背中をさすりながら、ルーファスがまだ朱里を1人残して温泉大陸を留守にするのは無理だとタルアニ国の騎士団への返事を保留にしようと頭の中で片隅へ追いやる。
風邪を朱里が引き、いつもならばリュエールやシュトラールの能力で風邪など治るのだが、本人達も風邪を引いてしまい、ありすの特殊ポーションで治したのだが、風邪自体は良くなったが、喉を傷めてしまい咳だけが残っている朱里は風邪で体力が削られたのもあり、治りが遅い。
子供達はまた風邪を持ち込んだりしてはいけないと朱里とは接触禁止になっている。
ミルアとナルアとミールも鼻風邪を引いていたので、朱里との接触はさせていない。
哺乳瓶に朱里が母乳を搾乳して入れてはいるが、ぐずる事が多く、それもルーファスの悩みの種になっている。
「ごめんね?迷惑かけちゃって・・・」
「別に気にしなくていい。子供達の為にも早くよくなってくれ」
「うん。アルビーに喉飴有り難うって伝えておいてね」
「わかった。アカリが治るのを皆待っているからな」
コツンとおでこを合わせて目を閉じて、お互いのおでこの体温を感じながらしばらく過ごすと、リビングから泣き声がするとルーファスが苦笑いをして部屋を出ていく。
リビングに行くとリュエールとシュトラールが「ふしんしゃ!」と叫び窓から侵入しようとした男を追って窓から出ると『竜の癒し木』をつたって外へ飛び出していった。
「何事だ!?」
「いや、それがよぉ・・・ギルが窓から入ろうとしたのをリューとシューが追い出して行っちまった」
ハガネが泣いているミルアとナルアとミールをあやしながら肩をすくめる。
ミルアを抱っこしつつ、ゆりかごを足で揺らしながらナルアとミールもあやすハガネに手を貸し、ナルアを抱き上げてあやす。
「しかし、ようやくグリムレインの氷が溶けたのか」
「俺はギルの事すっかり記憶から忘れてたぜ?」
ルーファスも実のところギルの事を忙しさに忘れていた節はある。
息子達2人がギル相手にどこまで戦えるかも気になる所だが、ギルも逃げずに2人に話をすればいい物を・・・。
ミルアをあやし終えたハガネがミールをあやし始める。
グリムレイン以外のドラゴンは既に冬眠期間に入りつつあるのでウトウトと部屋の絨毯の上で丸くなっている。
数十分して双子が『竜の癒し木』をつたって戻ってくると、ルーファスが「玄関から戻ってこい」と2人をたしなめるが、2人は首を傾げて「玄関閉まってるもん」と肩をすくめる。
ギルが2階の窓から侵入を試みた理由もそれなのだろうと、ルーファスが1階へ降りて玄関を開けると、背の高い美女、黒竜のネルフィームに担ぎ上げられてギルを連れてルーファスに頭を下げる。
「久しいなネルフィーム。ギル叔父上はうちの坊主共にやられたのか?」
「久しぶりだルーファス。主は油断しすぎだ」
ネルフィームとギルを2階のリビングに通すとリュエールとシュトラールが眉間にしわを寄せる。
「父上、ふしんしゃですよ。普通はマドから来る人はいない」
「父上、その人父上の家族だって言ってたけど本当?」
疑いのまなざしでギルを睨みつける2人はミルアとナルアを抱っこして距離を置いている。
ハガネにもミールを連れてこっちに来いと言っているぐらいだ。
「ルーファス・・・リューもシューも大きくなったみたいだね?」
「ああ。ギル叔父上が氷漬けになってから4年半は立っているから、2人共6歳になっている」
ネルフィームにソファに下ろされるとギルが首をゴキゴキ鳴らしながら警戒心丸出しの2人を見つめる。
「それで、あの3人の赤ん坊は?」
「5ヵ月前に生まれた娘二人と、同じ日に生まれて縁あって預かっている子供だ」
ルーファスがリュエールとシュトラールに手招きをして近付く様に促すと2人は首を振る。
「どうやら私は2人に嫌われているのかな?」
「まぁ1歳頃の事とは言え、ギル叔父上にアカリを目の前で殺されかけたんだ心に残っているんだろうさ。ギル叔父上が悪いのだから、自然に2人が警戒心を解くのを待つしかないな」
少し残念そうにしながらギルが諦めると、ネルフィームが双子に近付いて行く。
2人の前まで行くと30cm程のドラゴンの姿に戻り、首をかしげる。
「私は黒竜ネルフィーム。覚えてはいないだろうから自己紹介だ」
「わぁ!アルビー達の仲間だね。僕はリュエールだよ」
「オレはシュトラール。リューが抱いてるのが妹のミルアでこっちがナルア。双子だよ。で、こっちのハガネが抱いてるのがミール」
ネルフィームが目を弓なりにして微笑みながら頷く。
ギルが「ネルフィームだけズルい!」と声を出すもネルフィームは「フフン」と鼻で笑い小さな赤ん坊に目を細めるばかりだった。
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