黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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10章

瞳の色

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 生後2週間になり、ミルアとナルアとミールの瞳の色もハッキリとわかるようになった。
ミルアは右が金色左が黒色でナルアは右が黒色で左が金色。
リュエールとシュトラール同様片目ずつ色が違う。

 そしてミールは両目とも銀色をしていた。
その瞳の色にルーファスが北東の何処かに黒狼族で銀目を持つ一族が居たはずだと話し、調査を進めると言うと朱里が難色を示した。

「ミールはうちの子です!もう、うちの子なの!」
「いや、しかしだな・・・。一応調べてやるのが将来のミールの為になる」
「嫌です!ミールの親だと名乗り出ない時点で親じゃないもの!ミールは私の子です!」
 すっかりミールに情が移ってしまった朱里がルーファスにプイッと顔を背ける。
弱ったな・・・と、眉間に指を置いてルーファスが耳を下げるが、ルーファスもミールに少なからず情は沸いている。
 しかし、親を探して何があったのかを調べておかなければいけない。
それはミールの為でもあるし、親の為でもある。
理由如何では、ミールを親に返さない事もあれば、返すべき事になるかもしれない。
 とりあえずは、朱里が手放さないと騒いでいる以上、朱里に内緒で調査を進めていくしかない。

「アカリがそんなに言うなら、この1ヶ月に温泉大陸に入国した人物のリストだけは残しておく。将来ミールが本当の親を探したいと言った時に手がかりぐらいにはなるだろう」
「むぅ・・・それくらいなら許します・・・」
 チラッとルーファスに目線を上げて朱里が口を尖らせる。
母親として我が子を置き去りにして姿を消したミールの母親の事が許せずにいる朱里は、ミールに肩入れしすぎているところもある。

 リュエールとシュトラールを生んだ時にルーファスの叔父ギルから貰った出産祝いの卵型の椅子の中で朱里が「親なんか見つからなきゃいいのに」と小さく呟いたのをルーファスの耳はちゃんと拾い、朱里もミールを手放さなければいけない事は重々承知しているのだと小さくため息をついて笑う。
 
 ルーファスが赤ん坊部屋を出てリビングへ行くとミルアとナルアとミールのおしめの替え方をハガネがリュエールとシュトラールに教えていた。
しっかりお兄さんをしている姿に自然と笑みも零れるというもので、安心してルーファスは子供達に出掛ける旨を伝えて家を出ていく。

「婿殿何処か行くのか?」
「ルーあたしもついていく」
ニクストローブとスピナが『竜の癒し木』から降りてルーファスの周りを30cm程のサイズに姿を変えて飛び回る。
「少し【刻狼亭】の事務所に行くだけだぞ?」
「婿殿はしばらく育児休暇ではなかったのか?」
「ルー、休める時に休んどかないと夜中の合唱団に勝てないよ?」
「少し調べごとをしに行くだけだから直ぐに戻る」
 ニクストローブとスピナは直ぐに戻ると聞いてもルーファスについていき、【刻狼亭】の事務所に着くとルーファスはテンの所へ行く。

「おや育児休暇返上ですかぁ?」
「そういうわけでは無いんだが、少し小鬼を貸してもらえるか?」
 テンが机のボックス型になっている引き出しを開けると、光の魔石を灯りに小鬼が小さな机に向かって長い巻物を読みながら書き写していた。

「小鬼、お仕事みたいですよ?」
「旦那さん、僕に何かお仕事ですか?」
 テンが小鬼を手に乗せて机の上に置くと小鬼がぴょんと飛び跳ねて両手の指で輪を作り「お金次第」とキッチリ請求してくる。

「黒狼族で銀目の一族が北東の方に住んでいるんだが、それについて情報がないか調べてもらえるか?」
 金貨を2枚渡すと小鬼が金貨を大事そうに抱えて、目を左右にキョロキョロさせながら小鬼のネットワーク内の情報を探し回っている。

「んーっ、残念ながら銀目の黒狼族は【病魔】の時に村人全員亡くなっていますね。死亡報告書も村人の数と合ってますから確かですよ」
「ふむ。だとしたら【病魔】以前に村を出て行った者の子供・・・か」
 小鬼が金貨の1枚を頭の上に乗せ、もう1枚の上に乗ると器用に金貨に乗りながら机の上を移動して回る。

「小鬼、追加で黒狼族で銀目の有名な人物。ここ最近名が知れているような者が居ないか調べてくれ」
 金貨をまた2枚追加で渡すと小鬼が金貨4枚を重ねて上に座ると、また目を左右に忙しそうに動かす。

「おやー?あー、これはこれは。旦那様の偽物が居るようですよ?」
「は?何だそれは?」
 小鬼が追加料金を要求するように指で輪を作ると、ルーファスが面倒だと金貨を5枚渡す。

「毎度ありがとうございますっ!さてさて情報ですが、お貴族様が情報を握りつぶしていますので割高料金ですが、十分な料金ありがとうございます」
「いいから、早く情報を言え」

「黒い着物の黒狼の男性が【刻狼亭】の旦那様の名を騙り、お貴族様に投資話を持ち掛けたり偽の温泉大陸への通行証を出してお金を巻き上げたりと、派手にやっているみたいです」
「なんだと?!ふざけた奴だな・・・しかし、それなら何故オレのところに話が来ないんだ?」
「ですから、貴族様に情報が握りつぶされているからです。詐欺被害に合った事を知られるのは貴族の恥ですからね?旦那さんに『詐欺師!』なんて訴えたら逆にボコボコにされるのも目に見えているでしょうし」
「ったく、で、そいつは今どこに?」
「残念ながらその情報は無いですね。捕まったという話もないですし、最後に詐欺の話が出ていたのはタルアニ国ですね。情報的には以上です」
 
 ルーファスが額に手を当てながら深くため息を吐くと、テンと小鬼が肩をすくませる。

「これでは益々、アカリがミールを手放さなくなるな・・・」

 なるべく父親はそいつではない事を祈りたいが、黒狼族は数が少ないので早々居ない為に確率は高そうではある。
とにもかくにも、ルーファスがその詐欺師の男に会わなければいけない事は確かなようだ。
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