黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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9章

息子達の成長

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 温泉大陸の復興作業はドワーフの老人達と住民たちのおかげで思ったよりも早く片付き、今はのんびりと老人たちは温泉を満喫している。

 昼前には氷竜グリムレインが海岸沖に半分沈んでいた船を氷ごと退かし、港の船が入港しやすい様にすると、タイミングを見計らった様に冒険者ギルドの職員と冒険者達が入港し、大陸側に『かまくら』の牢獄に入れていた犯罪者の一群を連れて温泉街をゾロゾロと引き連れて港の船まで連行していく。

 賞金首の報奨金を朱里が受け取り、家を壊された住民や怪我人、復興作業を手伝った人間に配り、残りは対応にあたっていた従業員や泊り客などに迷惑料として包んでいった。

「まだ一杯余ってる・・・賞金首凄い・・・」
「闇ギルドでかなり賞金が跳ね上がってた奴が3人混じっていたからだろうな」
 
 朱里が自分と同じ背丈に積まれた金貨の入った袋を見ながら「うわぁー・・」と声を上げる。
見慣れたお金でもこうドンっと積まれると「凄いねぇ」としか言えないものである。
ルーファスがゆっくりとした動作で朱里を横抱きにして持ち上げるとモコモコとした布団の中に押し込まれる。

「ルーファス!私は大丈夫です!皆と一緒に復興作業します!」
「駄目だ。妊婦が夜中に起きてたのも体に悪いし、寒空に居たのも駄目だ。シュトラールと一緒にアカリは今日は休んでおけ」
 朱里の横にはシュトラールが獣化したまま、ぷぅぷぅと鼻から音を立てて寝ている。
回復魔法の使い過ぎで魔力ポーションも使い切り、魔力不足で力尽きているところだ。

「シューちゃん頑張ったんだよ。テキパキしてて、いつの間にこんなにお兄さんになっちゃったんだろうね」
 シュトラールの毛並みを撫でつけながら朱里が目を伏せる。
小さい小さいと思っていた子供達は気が付くと成長していて、嬉しい反面少しだけ寂しくもある。

「少し前までは服すら親の手を借りていたのに、今では自分で着られたり、あっという間だな」
「うん。いつの間にか「ちちちち」から「父上」だしね」
「まぁ、初夏にはまた言葉を1から教えていく生活だな」
「ふふふ。楽しみだねぇ。早く会いたいね」
「まぁ、そういうわけだ。その子の為にもアカリは大人しくしていろ」
 ちゅぅっと唇に吸い付くようなキスをされて、大人しくモコモコの布団に丸まると頭を軽く撫でられて、夕方にもならない中途半端な時間に寝る事になった。

 シュトラールを腕の中に抱き寄せて子供の体温の高さにウトウトし始めるとルーファスが金貨の入った袋を手の平から出した鍵で空間に押し込んで無くしてしまう。
なんて、便利な収納機能・・・と、思っていると額に柔らかい感触があったのでおでこにキスをしたんだなとわかる。
パタンと扉の閉まる音がして小さな足音もする。
ルーファスをリュエールが迎えに来たのだとその音が教えている。

 妊娠中は耳が良いから寝ていても何が起きているか把握できて便利だなと、思いつつ眠りの中に吸い込まれて意識を手放す。




「父上、母上はちゃんと休みましたか?」
「ああ。シューと寝かせておいたぞ」
「それなら良かった。母上もシューも昨日は大変だったから」
 リュエールが少し目を細めて笑いルーファスを見上げると小さく尻尾を振る。
ルーファスが手を差し伸べてリュエールが手を握り返すと2人は手を繋いだまま歩き出す。

 温泉街に出て街の人間から復興作業の様子を聞きながら指示を出していると、温泉街の子供達がリュエールを「若」と呼びながら手を振っている。
「僕は今日は仲間を使って子供視点から街のひがいを見てきますね」
「そうか。頼んだぞ」

 ルーファスに親指をグッと上げて、リュエールが子供達の所へ掛けていくと先程まで甘えた顔をしていたリュエールが少し真剣な顔で子供達に「街に変わった所がないか、ケガした温泉鳥が居ないか見て回る」と言って子供達も2人グループに別れて駆けだしていく。

「リューもいつの間にか成長してるもんだな」
 もう16代目を継ぐ用意をし始めている長男にルーファスも少し感慨深いものがある。
まだゆっくり跡継ぎの事を考えればいいと思って居たのに、リュエール自体が動き出したならば、こちらも跡目を継がせる為に準備をしていかなくてはいけない。
 小さくなる背中を見つめながら、忙しくなりそうだと微笑んでから家を壊された住民に家具等の購入は【風雷商】に無料提供させるから【風雷商】を使うよう話をしに向かう。
 
 ルーファスがアシュレイを勢いよく殴ってからミシリマーフ国から温泉街へ帰って来たので、余りアシュレイと話はしていないが、キッチリしっかり温泉街に出た被害は【風雷商】に肩代わりさせるつもりである。
賞金首のお金は話が別なので今後の温泉大陸での資金に回して街の住民にも利益になる様に使っていく為に使おうと思って居る。

 夕方を過ぎる頃には何事もなかったように温泉街はまたいつもの顔を見せ始める。
日が落ちるのが早いため、リュエールと子供達は明るいうちに怪我をした温泉鳥を連れて戻り、温泉街の住宅の何軒かに大砲の衝撃で小さなヒビや穴が開いていた事を報告してきた。
屋根にも大砲の衝撃でモロくなっている場所があると何人かの子供が言っていたので、そこら辺も賞金首のお金で賄う話を住民に話に出掛けたりして、気が付けば日は落ち、夜になっていた。

 深夜遅くに港に高速船【刻狼丸】が帰って来た。
フリウーラと生まれたばかりの娘シレーヌを心配した操舵士のキリヒリが全速力での帰還をして1日早く【刻狼亭】の戦力になる従業員の帰宅となった。
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