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9章
怒れる朱里
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「婿よ。我は一足先に帰るぞ」
船のマストの上で先程まで居眠りしていた筈のグリムレインがルーファスの横に降りてきて、手を伸ばしている。
手をクイクイと動かし、何かを寄越せと言っている。
「なんだ?」
「婿、帰る前に土産を買うから金をくれ」
「まったく、無駄遣いするなよ?そうだ。グリムレインお前の腕輪で朱里に連絡を取れるか?」
「今、婿が連絡していたではないか?・・・まぁいい」
ルーファスから硬貨の入った袋を受け取り、グリムレインが自分の腕輪で連絡を取ると眠そうな朱里の声が応答する。
『グリムレイン。どうしたの?』
「今から一足先に帰ろうと思ってな。嫁に連絡を取ろうと思ったところだ」
『グリムレインだと温泉大陸までどのくらいで着きそう?』
「今からだと急げば夜中だな。ゆっくりで明け方だな」
『じゃあ帰って早々疲れていると思うんだけど、お手伝いをお願いしたいから手を付けずに待ってるね』
「んー?どんな手伝いなんだ?」
『実は襲撃されちゃって、海に敵の船が3隻氷に刺さっちゃってルーファス達が帰ってくる前に退かしておきたいの。お願いできる?』
「ああ、わかった。直ぐに帰って手伝う。我はタダでは動かんから紫のジャムのサンドイッチだぞ」
『ありがとう。ブルーベリーサンドイッチ作っておくね」
グリムレインが腕輪から手を離しルーファスに目を向けると、耳をピンと立てたままルーファスが自分の腕輪で朱里に連絡を取ろうと魔力を送っている。
まぁ、いいかと歩き出そうとするグリムレインを手で静止させる。
「オレも事と次第では帰るから、そこに居ろ」
「婿・・・我は土産を買ったらココに戻るから離せ」
「チッ、絶対戻ってこい。いいな?」
「わかっておる。やれやれだの」
グリムレインが氷色の髪を揺らしながら歩き出すと、ルーファスの腕輪が振動する。
『ルーファス?もしもーし、ルーファスー?』
朱里に連絡をしたままグリムレインに対応していたので放置状態の朱里が呼び掛けてくる。
「アカリ、今のグリムレインとの会話はなんだ?何があった!」
『あらら、近くに居たんですね。こっそり始末したかったんだけどな』
「アカリ、いいから襲撃とはどういう事だ?」
ほんの少しだけ間があってから、朱里が諦めたようにため息をつく。
『奴隷船3隻と大陸側からの襲撃に遭って、島にある大砲で撃退したんです。今はその後始末中です』
「アカリは無事なのか?!怪我は?!」
『私を含めて皆大丈夫。怪我した人は治療し終わってますし、家を壊された人には旅館に泊まってもらってます。賞金首が多くて冒険者ギルド本部が明日のお昼には来ますから、ルーファス達が帰ってくるまでには全部終わってるよ。だから安心してね?』
船3隻に怪我人に家が無い人に賞金首が多いのワードにルーファスの尻尾がブワッと逆立ち、安心など出来るわけが無い!と怒鳴りたいのを堪える。
朱里が悪いわけでもなければ、怒鳴ったところで自分の不安が消えるわけでもない。
「今すぐ、帰るから待ってろ!」
『ルーファスはちゃんと従業員を船で安全に連れて帰ってきて。あと、アシュレイさんの奥さんと言うか恋人さんをこちらで捕縛しましたので、元凶のアシュレイさんを殴ってきてね?私、恋人さんを叩いて手が痛いのでアシュレイさんはルーファスに任せます!』
新たなアシュレイの恋人という言葉にルーファスの頭は「???」で埋め尽くされる。
朱里が何故アシュレイの元恋人を捕縛して叩いたのかがわからない。
「アカリ、元凶の意味が解らないんだが?」
『【刻狼亭】が手薄なのをアシュレイさんが恋人さんに言ってたらしくて、アシュレイさんが結婚しないと突っぱねたせいで、やけ酒をして酒場でペラペラ喋ってしまったらしいです。でも、同情もあるのでアシュレイさんには、女の敵!と殴ってきて!』
ぷりぷりと怒る朱里の口調にルーファスも「あのクズ男が自分の恋人の管理ぐらいちゃんとしとけ!」と心の中で悪態をついた。
「・・・わかった。でも、オレはグリムレインと一緒に先に帰るからな」
『もう、仕方がない人ですね?ではお夜食を作って帰りを待ってます』
朱里が明るく答えてルーファスは静かに「ああ」と言って通信を終わらせた。
ひらりと船から降りると、真っ直ぐアシュレイを殴りに行ったのは言うまでもない。
朱里と子供達に温泉大陸の住民を危険に晒した罪は重いのである。
船のマストの上で先程まで居眠りしていた筈のグリムレインがルーファスの横に降りてきて、手を伸ばしている。
手をクイクイと動かし、何かを寄越せと言っている。
「なんだ?」
「婿、帰る前に土産を買うから金をくれ」
「まったく、無駄遣いするなよ?そうだ。グリムレインお前の腕輪で朱里に連絡を取れるか?」
「今、婿が連絡していたではないか?・・・まぁいい」
ルーファスから硬貨の入った袋を受け取り、グリムレインが自分の腕輪で連絡を取ると眠そうな朱里の声が応答する。
『グリムレイン。どうしたの?』
「今から一足先に帰ろうと思ってな。嫁に連絡を取ろうと思ったところだ」
『グリムレインだと温泉大陸までどのくらいで着きそう?』
「今からだと急げば夜中だな。ゆっくりで明け方だな」
『じゃあ帰って早々疲れていると思うんだけど、お手伝いをお願いしたいから手を付けずに待ってるね』
「んー?どんな手伝いなんだ?」
『実は襲撃されちゃって、海に敵の船が3隻氷に刺さっちゃってルーファス達が帰ってくる前に退かしておきたいの。お願いできる?』
「ああ、わかった。直ぐに帰って手伝う。我はタダでは動かんから紫のジャムのサンドイッチだぞ」
『ありがとう。ブルーベリーサンドイッチ作っておくね」
グリムレインが腕輪から手を離しルーファスに目を向けると、耳をピンと立てたままルーファスが自分の腕輪で朱里に連絡を取ろうと魔力を送っている。
まぁ、いいかと歩き出そうとするグリムレインを手で静止させる。
「オレも事と次第では帰るから、そこに居ろ」
「婿・・・我は土産を買ったらココに戻るから離せ」
「チッ、絶対戻ってこい。いいな?」
「わかっておる。やれやれだの」
グリムレインが氷色の髪を揺らしながら歩き出すと、ルーファスの腕輪が振動する。
『ルーファス?もしもーし、ルーファスー?』
朱里に連絡をしたままグリムレインに対応していたので放置状態の朱里が呼び掛けてくる。
「アカリ、今のグリムレインとの会話はなんだ?何があった!」
『あらら、近くに居たんですね。こっそり始末したかったんだけどな』
「アカリ、いいから襲撃とはどういう事だ?」
ほんの少しだけ間があってから、朱里が諦めたようにため息をつく。
『奴隷船3隻と大陸側からの襲撃に遭って、島にある大砲で撃退したんです。今はその後始末中です』
「アカリは無事なのか?!怪我は?!」
『私を含めて皆大丈夫。怪我した人は治療し終わってますし、家を壊された人には旅館に泊まってもらってます。賞金首が多くて冒険者ギルド本部が明日のお昼には来ますから、ルーファス達が帰ってくるまでには全部終わってるよ。だから安心してね?』
船3隻に怪我人に家が無い人に賞金首が多いのワードにルーファスの尻尾がブワッと逆立ち、安心など出来るわけが無い!と怒鳴りたいのを堪える。
朱里が悪いわけでもなければ、怒鳴ったところで自分の不安が消えるわけでもない。
「今すぐ、帰るから待ってろ!」
『ルーファスはちゃんと従業員を船で安全に連れて帰ってきて。あと、アシュレイさんの奥さんと言うか恋人さんをこちらで捕縛しましたので、元凶のアシュレイさんを殴ってきてね?私、恋人さんを叩いて手が痛いのでアシュレイさんはルーファスに任せます!』
新たなアシュレイの恋人という言葉にルーファスの頭は「???」で埋め尽くされる。
朱里が何故アシュレイの元恋人を捕縛して叩いたのかがわからない。
「アカリ、元凶の意味が解らないんだが?」
『【刻狼亭】が手薄なのをアシュレイさんが恋人さんに言ってたらしくて、アシュレイさんが結婚しないと突っぱねたせいで、やけ酒をして酒場でペラペラ喋ってしまったらしいです。でも、同情もあるのでアシュレイさんには、女の敵!と殴ってきて!』
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「・・・わかった。でも、オレはグリムレインと一緒に先に帰るからな」
『もう、仕方がない人ですね?ではお夜食を作って帰りを待ってます』
朱里が明るく答えてルーファスは静かに「ああ」と言って通信を終わらせた。
ひらりと船から降りると、真っ直ぐアシュレイを殴りに行ったのは言うまでもない。
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