黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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9章

息子の伝言

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 ジャガール・リンデルの言葉にイルマールとエスタークとダリドアの3人が「「「はぁっ?!!?」と声を上げる。
ジャガールがイルマールを見て小さく笑い、自分の従者達にジャルドとミディリアを拘束させる。
ルーファスとジャガールが言葉を交わしてルーファスが【刻狼亭】の従業員に撤収を促す。

「【刻狼亭】の主人!引き上げるのですか?ジャガールを信用しても大丈夫なのですか?」
 イルマールが本人を目の前にルーファスに詰め寄ると、ルーファスがフッと笑い「問題ない」とイルマールの肩を叩いて踵を返して歩き出す。

 ルーファスの言葉にジャガールの部下達と交替するように従業員も撤収を開始して大広間から出ていく。

「主、我らも帰りましょう」
「主、バカ面下げてないでいきますよ」
 左右からエスタークとダリドアに突かれてイルマールがジャガールをひと睨みしてから、帰ってからテルトワイトに聞くしかないと諦めて帰る従業員の後を追っていく。

 テルトワイトの意味ありげな態度と言葉はこの事だったのかもしれないと思うものの、ジャガールがジス家というのが解せない。リンデル家の人間はジス家とは関係が無かったはずなのに・・・。

 イルマールの考えを他所に従者2人は「土産はどうする?」「父君の好きなアレ買って帰るか?」と土産の相談をしながら、イルマールを引っ張りながら歩いて行く。


 港に【刻狼亭】と【風雷商】の従業員が揃い、奴隷は全員アシュレイが責任を持って対応にあたる事になり、夜に追加で来る奴隷商人の船も【風雷商】が片を付ける事になった。

「あとの始末はジャガールが付ける。オレ達は後は帰るだけだ。皆、お疲れ様だった」

 ルーファスの言葉に従業員が「ボーナスよろしくお願いしますねー」と笑いながら声が上がり、「正月休みもよろしくお願いしまーす」と出ると、ルーファスが「わかったわかった」と笑いながら、軽くなった積み荷の代わりに朱里に頼まれたスパイスや居残り組の土産を船に積み込む作業を見守る。

 そろそろ朱里が心配しているかもしれないと、腕輪に魔力を通すと少し長い待ち時間に接客中かと思って待っていると、朱里ではなくリュエールの声が応答した。

『父上、母上は少し休んでいます。ようけんなら伝えますよ』
「そうなのか?リュエールそっちは変わりはないか?」
『数時間前と少し変わりましたけど、何とかなってます』
「ん?まぁ、何とかなっているなら良いが、今から帰るから2日後にはそっちに着く」
『父上、お土産おねがいしますね!』
「わかった。アカリにゆっくり休むように言ってくれ」
『あっ、母上が『アシュレイさんを全力でなぐっておいてね。なぐらないとあとで私がアシュレイさんをなぐります』って、言ってましたからなぐってから帰ってきてね』 
「リュエール、それはどういう事なんだ?」
『とりあえず母上も皆も怒ってるってことです』
 要領の得ないリュエールの言葉にルーファスが顔に手を当ててフゥと息を吐く。
朱里も皆も・・・の皆がどこまでの範囲の皆なのやら?
意外としっかりしてきたとはいえ5歳児に色々説明は難しいか?と、思いつつもリュエールは頭の回転が速い子なので何かあるのだろうと思う。

「リュエール、話を簡単に説明してくれないか?」
『んーっ、父上たちがぶじにかえって来てほしいからくわしいのはパス。でもね、大変だったんだよ。アシュレイさんはゼッタイなぐるべきだよ!父上!それじゃ僕は手伝いがあるから!またね父上』
「あっ!リュエール!・・・ったく」
ブツリと切れると、リュエールの声はしなくなる。

 こちらが無事に帰ってこれるように詳しくは話せない、しかも大変だった。朱里も皆も怒っている。
アシュレイが何か関わっている・・・?
情報過多なのか情報不足なのかも判断がつかない・・・が、自分が手を出して良い物か判断がつかない問題でもある。
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