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9章
凍る国
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ミシリマーフ国の城下町が白く凍り付き、道行く人々は氷の石造の様になり動かない。
上空では氷竜グリムレインが氷漬けにした南国産の長細いスイカをガリガリと音を立てながら食べている。
「嫁に土産に持って帰るか?でもこっちのパイナップルもシャキシャキしてて良いな」
呑気にグリムレインが南国フルーツに舌鼓を打っている下では魔術師を捕縛した【刻狼亭】の従業員と【風雷商】の従業員が南国に似つかわしくない冬装いでグリムレインの猛吹雪に耐えている。
ミシリマーフの王宮に潜入した部隊は城の兵士と交戦しながら地下を目指し、王宮のあちらこちらで悲鳴と破壊音が響き渡っている。
「さすがに王宮の中は暑かろうと寒かろうと空調が遮断する魔法が展開されているな」
「グリムレインの氷結が使えないのは面倒ですが、外からの増援はないだけ良しとしましょう」
「旦那様、タマホメの部隊が【風雷商】の『荷』の倉庫から解呪ポーションを持ち出しました。あとは地下の祭殿に捕らわれている奴隷の元へ急ぐだけです」
ルーファスと製薬部隊のマグノリアにシュテンが先陣を切りながら、ジャガールに見せてもらった王宮地図を思い出しながら地下を目指す。
追走しながらイルマールとエスタークにダリドアも王宮を走る。
「それにしてもジャガールが我々を助けようとしていたとはな・・・」
「主はずっとジャガールを敵と認識していたからな」
「主はもっと人を見る目を養うべきだな」
「お前等もジャガールを敵視してただろうが!」
「我らは主の意見に従っていただけだ」
「我らが主に付き合ってやったのだ。感謝しろ」
イルマールが自分を主と言いながらもコケにしてくる従者に眉間にしわを寄せながら、ドラゴン信仰を忌み嫌い神殿にほぼ寄り付かず、あからさまな態度をしていたジャガールが、この国の歪みにいち早く気付き裏で奔走しつつ、表では新しく『太陽神』を崇める宗教の神官の座に立ち王家からの信用を勝ち取り、この王宮の最深部までの悪事を調べていった事に驚きしかない。
イルマールの父テルトワイトはルーファスからジャガールの話が出た時に、訳知り顔で頷きながら微笑んでいた。
恐らくテルトワイトはジャガールという人物がどういう人物かを把握していたのだろう。
テルトワイトに聞けば「そのうち教えてあげます」と微笑むばかりで教えてはくれなかった。
「父上も父上で謎の人だ・・・」
「主、ブツブツ言ってないで手を動かす」
「主、キリキリ働いて下さい」
「あーもう!お前達はおれを少しは主扱いしろ!」
エスタークとダリドアが兵士の左右の腕に鞭を絡めて動きを止めると、イルマールが半曲刃のサーベルで兵士を切りつける。と、そんな役割分担なので3人の中で一番働いているのはイルマールなのだが、2人の従者はそんな事はお構いなしに「次、遅いですよ主!」と叱咤してくるのだった。
王宮地下に辿り着くと、悪臭と熱気が一気に立ち込め、鼻の良い獣人のルーファスとシュテンが顔を歪める。
マグノリアが【清浄】魔法を使うが、それでも悪臭は酷かった。
薄暗い地下祭殿で天井から鎖で吊り下げられている大きな赤い石の下で、奴隷印の入った手枷を付けた奴隷たちが呻き声をあげて、狭い祭壇広場の中をひしめき合っていた。
「あの赤い石に魔法陣が彫ってありますね」
マグノリアが丸眼鏡をずり上げながら天井の石を見上げ、シュテンが眉間にしわを寄せる。
「床も見てください。床にも魔法陣です」
シュテンがルーファスに指示を仰ぐように見ると、ルーファスはポーションフォルダーから3本ポーションを出しマグノリアとシュテンに渡し、残りの1本を自分の口に入れて飲み干す。
「既に呪詛が出始めている。お前等も飲んでおけ。奴隷が邪魔だな。天井の石も床も奴隷が居るから叩き割れん」
「それにしても、この祭壇広場は妙な形をしていますね。まるでアリスが企画で描いてきたプールの様です」
シュテンが祭壇へ降りる階段を下がりながらそう言い、ルーファスも違和感のある祭壇の形に不気味さを感じる。
3人が階段を降り切った時に、上の方から声がした。
「一体、あいつ等は何なのだ!妾の国にっ!早う呪詛の完成を急がせ外の氷竜を殺せ!!」
「しかし、まだ奴隷の数が足りません」
「いいから早くするのだ!妾の命が聞けぬのか!」
「ハッ!ミディリア様!」
煌びやかな服装と装飾をした褐色の肌の豊満な女が甲高い声で騒ぎ立て、白いローブの魔術師達が困った顔で女の命令に従い階段を降り始める。
「妾の国・・・?王族にミディリアなんて王女は居ないはずだが」
「旦那様、とりあえず今は隠れましょう」
ルーファスの袖を引っ張りながらマグノリアとシュテンが柱の後ろに隠れ様子を伺う。
白い魔術師達が呪文を唱え始めると、赤い石が鈍く光り始め、床の魔法陣も赤く光り始める。
奴隷たちの悲鳴が部屋中に響き渡り、ルーファスが右端の男を指さし、シュテンが左端の男を指さし、マグノリアは自分のポーションフォルダーから細長いポーションを両手に4本ずつ持つと顎を突き出し、残った魔術師を指す。
3人が一斉に飛び出し魔術師に攻撃を仕掛けようと駆けだした瞬間、2つの影が元気よく地下祭壇の扉を開け放った。
「お待たせー!ヒナちゃん参上!!!」
「お待たせー!タマちゃん参上!!!」
上空では氷竜グリムレインが氷漬けにした南国産の長細いスイカをガリガリと音を立てながら食べている。
「嫁に土産に持って帰るか?でもこっちのパイナップルもシャキシャキしてて良いな」
呑気にグリムレインが南国フルーツに舌鼓を打っている下では魔術師を捕縛した【刻狼亭】の従業員と【風雷商】の従業員が南国に似つかわしくない冬装いでグリムレインの猛吹雪に耐えている。
ミシリマーフの王宮に潜入した部隊は城の兵士と交戦しながら地下を目指し、王宮のあちらこちらで悲鳴と破壊音が響き渡っている。
「さすがに王宮の中は暑かろうと寒かろうと空調が遮断する魔法が展開されているな」
「グリムレインの氷結が使えないのは面倒ですが、外からの増援はないだけ良しとしましょう」
「旦那様、タマホメの部隊が【風雷商】の『荷』の倉庫から解呪ポーションを持ち出しました。あとは地下の祭殿に捕らわれている奴隷の元へ急ぐだけです」
ルーファスと製薬部隊のマグノリアにシュテンが先陣を切りながら、ジャガールに見せてもらった王宮地図を思い出しながら地下を目指す。
追走しながらイルマールとエスタークにダリドアも王宮を走る。
「それにしてもジャガールが我々を助けようとしていたとはな・・・」
「主はずっとジャガールを敵と認識していたからな」
「主はもっと人を見る目を養うべきだな」
「お前等もジャガールを敵視してただろうが!」
「我らは主の意見に従っていただけだ」
「我らが主に付き合ってやったのだ。感謝しろ」
イルマールが自分を主と言いながらもコケにしてくる従者に眉間にしわを寄せながら、ドラゴン信仰を忌み嫌い神殿にほぼ寄り付かず、あからさまな態度をしていたジャガールが、この国の歪みにいち早く気付き裏で奔走しつつ、表では新しく『太陽神』を崇める宗教の神官の座に立ち王家からの信用を勝ち取り、この王宮の最深部までの悪事を調べていった事に驚きしかない。
イルマールの父テルトワイトはルーファスからジャガールの話が出た時に、訳知り顔で頷きながら微笑んでいた。
恐らくテルトワイトはジャガールという人物がどういう人物かを把握していたのだろう。
テルトワイトに聞けば「そのうち教えてあげます」と微笑むばかりで教えてはくれなかった。
「父上も父上で謎の人だ・・・」
「主、ブツブツ言ってないで手を動かす」
「主、キリキリ働いて下さい」
「あーもう!お前達はおれを少しは主扱いしろ!」
エスタークとダリドアが兵士の左右の腕に鞭を絡めて動きを止めると、イルマールが半曲刃のサーベルで兵士を切りつける。と、そんな役割分担なので3人の中で一番働いているのはイルマールなのだが、2人の従者はそんな事はお構いなしに「次、遅いですよ主!」と叱咤してくるのだった。
王宮地下に辿り着くと、悪臭と熱気が一気に立ち込め、鼻の良い獣人のルーファスとシュテンが顔を歪める。
マグノリアが【清浄】魔法を使うが、それでも悪臭は酷かった。
薄暗い地下祭殿で天井から鎖で吊り下げられている大きな赤い石の下で、奴隷印の入った手枷を付けた奴隷たちが呻き声をあげて、狭い祭壇広場の中をひしめき合っていた。
「あの赤い石に魔法陣が彫ってありますね」
マグノリアが丸眼鏡をずり上げながら天井の石を見上げ、シュテンが眉間にしわを寄せる。
「床も見てください。床にも魔法陣です」
シュテンがルーファスに指示を仰ぐように見ると、ルーファスはポーションフォルダーから3本ポーションを出しマグノリアとシュテンに渡し、残りの1本を自分の口に入れて飲み干す。
「既に呪詛が出始めている。お前等も飲んでおけ。奴隷が邪魔だな。天井の石も床も奴隷が居るから叩き割れん」
「それにしても、この祭壇広場は妙な形をしていますね。まるでアリスが企画で描いてきたプールの様です」
シュテンが祭壇へ降りる階段を下がりながらそう言い、ルーファスも違和感のある祭壇の形に不気味さを感じる。
3人が階段を降り切った時に、上の方から声がした。
「一体、あいつ等は何なのだ!妾の国にっ!早う呪詛の完成を急がせ外の氷竜を殺せ!!」
「しかし、まだ奴隷の数が足りません」
「いいから早くするのだ!妾の命が聞けぬのか!」
「ハッ!ミディリア様!」
煌びやかな服装と装飾をした褐色の肌の豊満な女が甲高い声で騒ぎ立て、白いローブの魔術師達が困った顔で女の命令に従い階段を降り始める。
「妾の国・・・?王族にミディリアなんて王女は居ないはずだが」
「旦那様、とりあえず今は隠れましょう」
ルーファスの袖を引っ張りながらマグノリアとシュテンが柱の後ろに隠れ様子を伺う。
白い魔術師達が呪文を唱え始めると、赤い石が鈍く光り始め、床の魔法陣も赤く光り始める。
奴隷たちの悲鳴が部屋中に響き渡り、ルーファスが右端の男を指さし、シュテンが左端の男を指さし、マグノリアは自分のポーションフォルダーから細長いポーションを両手に4本ずつ持つと顎を突き出し、残った魔術師を指す。
3人が一斉に飛び出し魔術師に攻撃を仕掛けようと駆けだした瞬間、2つの影が元気よく地下祭壇の扉を開け放った。
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「お待たせー!タマちゃん参上!!!」
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