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9章
開戦の合図
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南国ミシリマーフ国に冬をもたらす氷竜グリムレインの出現に魔術師が応戦し開戦の合図が出た頃、温泉大陸の温泉街でも開戦の合図が大砲の音と共に鳴り響いた。
ドォォーン・・・。
「【防御】【治癒】」
テルトワイトが静かに魔法を唱え飛んできた大砲を空中で防御し、爆発させると後ろで怪我をして動けない人々に治癒魔法を行使してニコリと微笑む。
「テルトワイトに此処は任せて怪我人を【刻狼亭】へ運んで治療を!」
【刻狼亭】の従業員が指示を出し、温泉街の住民が慌ただしく客の避難と誘導を始める。
温泉街の屋根の上を白っぽい物が走り抜けたと思ったら、元・魔王のリロノスが長い金髪を靡かせながら港へと跳躍しながら移動している。
「船は私が押さえますから、大橋の方を皆さんはお願いします!」
海岸沖から温泉地陸へ大砲を撃ってくる3隻の大型船から再び大砲が撃ち込まれるとリロノスが両手から稲妻を発生させ砲弾が温泉大陸に届く前に爆発させていく。
ピィィィーッ!
リロノスが小さな白い笛を吹くと、温泉大陸の港に巨大な白いクジラ。ホエールデビルが姿を現す。
「リロっち!うちも行くし!」
「ちょっ!アリスはリリスの所に居てって言ったじゃないか!」
「アカリっちにリリちゃんは任せたし!ほら!行くっしょ!」
ありすが風魔法でリロノスに追いつくとリロノスに「困った奥さんだな」と諦めの表情をしながらありすを抱きかかえてホエールデビルに乗って港を出ていく。
沖合ではリロノスとありすが交戦を始め、それを見ていた他の住民は「大橋の方を死守に回れ!」と動き出す。
元とは言えリロノスも【魔王】なだけはあって実力がある。
今も冒険者として休日はありすやリリスを連れて魔獣討伐をして力が衰えない様に研鑽を積んでいる。
ついた二つ名が【魔王】なのはご愛敬だったりする。
【刻狼亭】旅館の旅館のロビーは怪我人の状態によって治療する部屋を振り分けられ、大広間と宴会場は怪我人であふれかえっていた。
「手の空いてる人、回復ポーションの追加を製薬室から持ってきて!」
「魔力回復ポーションは回復魔法の人へドンドン回して!」
「リネン室からシーツ持ってきて!」
指示が飛び交い、ここも戦場の様である。
グスグスと泣いている子供達を朱里が明るい声を出しながら遊戯施設になっているスペースに集める。
「皆、大丈夫だから、ね!直ぐに【刻狼亭】の皆が何とかしてくれるから!」
温泉街の子供や旅行客の子供達は朱里の声よりも大きな声で泣き、朱里が困ったなぁと眉を下げると、リュエールが「ウォン!」とビリビリと遊戯スペースに響く声を出すと、子供達の声がピタっと泣き止む。
「よし!泣き止んだな!お前らが泣くとお前らより小さい子も不安になる!自分がお兄さんお姉さんのじかくのあるやつは下の子たちのために泣くな!」
「う・・・っうあああん!」
泣き出した子供をリュエールが「こいつより小さい子は?」と手を上げた子数人に「こいつなぐさめてやって。こいつ年上止めて年下になるらしいから」と、ポイッと泣いている子供を小さな子に押し付ける。
泣いている子がリュエールに泣きながら手をブンブン振って叩きに行くと、リュエールが「泣き虫なくせにプライドあるなら、お前より小さい子の世話しろよ」と、足を掛けて転ばせる。
「コラ、リューちゃん駄目でしょ」
「いいんだよ、母上。これも子供なりのコミュニケーションなんだから」
ツンっとリュエールが泣いている子を1人見せしめにすると、他の子がリュエールの言う事を聞き始める。
リリスが手の平に水でウサギを作り踊らせてみせると小さい子がリリスの周りに集まる。
子供には子供の世界があるらしい・・・と、朱里が首をかしげながら見ていると、先程泣いていた子がリュエールに目配せする。
リュエールがニッと笑って指で丸を作る。
まさかの演技・・・!?
他の子供達を泣かせない様にこの短時間で打ち合わせたの!?と、朱里が驚いた顔をするとリュエールが人差し指を口の前に当てて朱里に笑って見せる。
うちの子末恐ろしい・・・っ!!
もう一人のトリニア家の双子の片割れシュトラールは大人に混じって回復魔法を行使しながら魔力ポーションをカブ飲みして次々怪我人を治していっている。
「歩けるようになったら他のケガ人の人とこうたいして!」
シュトラールが怪我人に退ける様に言うと、怪我人が「まだ痛い」と騒ぎ、シュトラールが「もう治ってる!誰かこの人持って行って!」と、声を出して怪我人は従業員に引きずられるように追い出される。
「ケガしてる人あとどれくらい?」
「坊ちゃん、あとは宴会場の重傷患者です。大広間は軽傷なのでポーションでいけます!」
「わかった!オレはじゅーしょー者に【全回復】するから魔力ポーション2本よういして!」
「はい!坊ちゃんお願いします!」
シュトラールが「おぇっ」と、ポーションでちゃぽちゃぽのお腹を押さえながら頭をブルブル振って宴会場へ向かっていく。
こちらもこちらで末恐ろしい子供である。
ドォォーン・・・。
「【防御】【治癒】」
テルトワイトが静かに魔法を唱え飛んできた大砲を空中で防御し、爆発させると後ろで怪我をして動けない人々に治癒魔法を行使してニコリと微笑む。
「テルトワイトに此処は任せて怪我人を【刻狼亭】へ運んで治療を!」
【刻狼亭】の従業員が指示を出し、温泉街の住民が慌ただしく客の避難と誘導を始める。
温泉街の屋根の上を白っぽい物が走り抜けたと思ったら、元・魔王のリロノスが長い金髪を靡かせながら港へと跳躍しながら移動している。
「船は私が押さえますから、大橋の方を皆さんはお願いします!」
海岸沖から温泉地陸へ大砲を撃ってくる3隻の大型船から再び大砲が撃ち込まれるとリロノスが両手から稲妻を発生させ砲弾が温泉大陸に届く前に爆発させていく。
ピィィィーッ!
リロノスが小さな白い笛を吹くと、温泉大陸の港に巨大な白いクジラ。ホエールデビルが姿を現す。
「リロっち!うちも行くし!」
「ちょっ!アリスはリリスの所に居てって言ったじゃないか!」
「アカリっちにリリちゃんは任せたし!ほら!行くっしょ!」
ありすが風魔法でリロノスに追いつくとリロノスに「困った奥さんだな」と諦めの表情をしながらありすを抱きかかえてホエールデビルに乗って港を出ていく。
沖合ではリロノスとありすが交戦を始め、それを見ていた他の住民は「大橋の方を死守に回れ!」と動き出す。
元とは言えリロノスも【魔王】なだけはあって実力がある。
今も冒険者として休日はありすやリリスを連れて魔獣討伐をして力が衰えない様に研鑽を積んでいる。
ついた二つ名が【魔王】なのはご愛敬だったりする。
【刻狼亭】旅館の旅館のロビーは怪我人の状態によって治療する部屋を振り分けられ、大広間と宴会場は怪我人であふれかえっていた。
「手の空いてる人、回復ポーションの追加を製薬室から持ってきて!」
「魔力回復ポーションは回復魔法の人へドンドン回して!」
「リネン室からシーツ持ってきて!」
指示が飛び交い、ここも戦場の様である。
グスグスと泣いている子供達を朱里が明るい声を出しながら遊戯施設になっているスペースに集める。
「皆、大丈夫だから、ね!直ぐに【刻狼亭】の皆が何とかしてくれるから!」
温泉街の子供や旅行客の子供達は朱里の声よりも大きな声で泣き、朱里が困ったなぁと眉を下げると、リュエールが「ウォン!」とビリビリと遊戯スペースに響く声を出すと、子供達の声がピタっと泣き止む。
「よし!泣き止んだな!お前らが泣くとお前らより小さい子も不安になる!自分がお兄さんお姉さんのじかくのあるやつは下の子たちのために泣くな!」
「う・・・っうあああん!」
泣き出した子供をリュエールが「こいつより小さい子は?」と手を上げた子数人に「こいつなぐさめてやって。こいつ年上止めて年下になるらしいから」と、ポイッと泣いている子供を小さな子に押し付ける。
泣いている子がリュエールに泣きながら手をブンブン振って叩きに行くと、リュエールが「泣き虫なくせにプライドあるなら、お前より小さい子の世話しろよ」と、足を掛けて転ばせる。
「コラ、リューちゃん駄目でしょ」
「いいんだよ、母上。これも子供なりのコミュニケーションなんだから」
ツンっとリュエールが泣いている子を1人見せしめにすると、他の子がリュエールの言う事を聞き始める。
リリスが手の平に水でウサギを作り踊らせてみせると小さい子がリリスの周りに集まる。
子供には子供の世界があるらしい・・・と、朱里が首をかしげながら見ていると、先程泣いていた子がリュエールに目配せする。
リュエールがニッと笑って指で丸を作る。
まさかの演技・・・!?
他の子供達を泣かせない様にこの短時間で打ち合わせたの!?と、朱里が驚いた顔をするとリュエールが人差し指を口の前に当てて朱里に笑って見せる。
うちの子末恐ろしい・・・っ!!
もう一人のトリニア家の双子の片割れシュトラールは大人に混じって回復魔法を行使しながら魔力ポーションをカブ飲みして次々怪我人を治していっている。
「歩けるようになったら他のケガ人の人とこうたいして!」
シュトラールが怪我人に退ける様に言うと、怪我人が「まだ痛い」と騒ぎ、シュトラールが「もう治ってる!誰かこの人持って行って!」と、声を出して怪我人は従業員に引きずられるように追い出される。
「ケガしてる人あとどれくらい?」
「坊ちゃん、あとは宴会場の重傷患者です。大広間は軽傷なのでポーションでいけます!」
「わかった!オレはじゅーしょー者に【全回復】するから魔力ポーション2本よういして!」
「はい!坊ちゃんお願いします!」
シュトラールが「おぇっ」と、ポーションでちゃぽちゃぽのお腹を押さえながら頭をブルブル振って宴会場へ向かっていく。
こちらもこちらで末恐ろしい子供である。
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