253 / 960
9章
熱い国
しおりを挟む
南国ミシリマーフ国に着くと熱くて乾いた空気が地面から上がってくる。
高速船【刻狼丸】と【風雷商】の貨物船の2隻で入港し、ルーファスと【風雷商】のアシュレイが港で顔を合わせるとお互いに久しぶりだと口に出しながら、荷を船から運び出させる。
「お前の所の番は元気か?」
「ああ。今、3人目が出来た所でな来年の初夏には家族が増える」
「ほぉ、やはり子供はいいものだろう?」
「初めから子供を否定はしていないぞオレは。お前こそ恋人と結婚したらどうだ?子供が3人も居て結婚をしないのはどうかと思うぞ?」
「それなら4人目が出来た時に結婚しないなら出ていくと言われて、出ていかれたよ」
「お前・・・そこまで結婚しないのに拘るのはある意味すごいな」
ルーファスとアシュレイが家庭の話をしながら、目的の人物が来るのを待っていると、ようやくその人物が港に現れる。
灰色の髪にコバルトブルーの瞳をした痩せ型の神経質そうな男ジャガール・リンデルが部下を引き連れて現れルーファスとアシュレイに「荷は宮殿に運ばせるように」と言い、部下の男から宮殿に荷を運ぶ許可証を渡される。
荷物の内容名は『酒瓶』『酒樽』『穀物』と、食べ物の名がずらりと並んでいる。
この国は作物を輸入で賄っている事もあり、こうした輸入品は多く出入りしている為に割りと入国しやすい国でもある。
ジャガールに連れられ2人はそれぞれ【刻狼亭】と【風雷商】の従業員数名と一緒にジャガールの屋敷に通される。
他の住民が土壁づくりの茶色い家に比べて、ジャガールの家は物は少ないが白塗りの家で床は大理石で出来ていて、カーペットは華美過ぎないが赤に金糸が使われていて質の良い物が使われている。
広々とした応接間に通されると狐獣人の幼女メビナがルーファスに駆け寄る。
「ルーファス!お疲れ様!暑かったでしょう?」
「メビナ、お疲れさん。ああ、暑いな」
「何か冷たい物持ってくる!」
くるくると尻尾を振りながらメビナが部屋を出ていこうとするとジャガールの部下がレモーネの入った水差しとグラスを持って現れるとメビナがそれを受け取る。
グラスに水を注ぎながらルーファス達に差し出しメビナがぐいーっと一気飲みする。
「ぷはーっ!」
「お前も飲むのか!」
「毒見は常識!」
呆れた声を出した従業員に扮したダリドアにメビナがフンッと鼻で笑う。
その様子を笑いながらジャガールが見つめ、ルーファスも仕方がない奴らめと苦笑いしながらグラスに口を付ける。
「さて、ジャガール殿。捕らえられた奴隷の状況を教えてくれ」
「今日の夜に奴隷船が密入港し、30人ほど追加されますので150人以上が王宮の地下に捕らえられています。状態はあまりよくは無いです。呪詛の前段階の呪術が発動していますから早急に打ち消さないと奴隷も危ないですが、呪術も完成してしまいます」
ジャガールが王宮の地図を出し、奴隷の捕らえられている地下を指さし、ルーファスが地図を覚えながら、この広さに150人は狭すぎないか?と、眉間にしわを寄せる。
恐らくはすし詰め状態にされて、この暑い中を苦しんでいるのだろう。
「ならば、今日中に片付けるのが得策か」
「王宮への秘密の抜け穴は幾つかありますが、一番近いのは使われていない古井戸からでしょうね」
「他の場所からも侵入させる。王宮に荷が届いたと連絡があり次第、各部隊突入させる。短期決戦で終わらせる。アシュレイ、荷から連絡は?」
ルーファスがアシュレイに話しかけるとアシュレイは魔法通信の指輪と腕輪に話しかけながら応対を繰り返している。
「荷がどうやら地下倉庫に入れられたらしいんだが、鍵を掛けられたようだ。別部隊で鍵を壊さないといけない」
「そうか。ならば、合図があり次第、各部隊に突入の指示を出してくれ」
「分かった。オレはあくまで非戦闘員の商人なんでな。オレはここらで船に退散させてもらう」
部屋に冷気がサァーッと広がると、メビナが厚手の服をバッと着こみ鎖鎌を出して狐火を周りにまとわせる。
「どうやらアシュレイ。少し作戦が早まったようだ。急いで港に行かないと凍らされるぞ」
「やれやれだな。じゃあ各部隊にここで連絡を取っておくさ」
ドォーンドォーン・・・。
ミシリマーフ王国の上空にグリムレインが現れると魔術師達との交戦が始まり、魔法反射の腕輪を付けているグリムレインが相手の魔法を反射して王都に雷が落ちている。
「戦闘開始だ!雷が落ちた所に反射された魔術師が居るはずだ!魔術師を各部隊撃破のちに王宮へ!」
アシュレイが各部隊に貸し出した指輪と腕輪に指示を飛ばし、静かにミシリマーフ国内で影が一斉に動き出す。
高速船【刻狼丸】と【風雷商】の貨物船の2隻で入港し、ルーファスと【風雷商】のアシュレイが港で顔を合わせるとお互いに久しぶりだと口に出しながら、荷を船から運び出させる。
「お前の所の番は元気か?」
「ああ。今、3人目が出来た所でな来年の初夏には家族が増える」
「ほぉ、やはり子供はいいものだろう?」
「初めから子供を否定はしていないぞオレは。お前こそ恋人と結婚したらどうだ?子供が3人も居て結婚をしないのはどうかと思うぞ?」
「それなら4人目が出来た時に結婚しないなら出ていくと言われて、出ていかれたよ」
「お前・・・そこまで結婚しないのに拘るのはある意味すごいな」
ルーファスとアシュレイが家庭の話をしながら、目的の人物が来るのを待っていると、ようやくその人物が港に現れる。
灰色の髪にコバルトブルーの瞳をした痩せ型の神経質そうな男ジャガール・リンデルが部下を引き連れて現れルーファスとアシュレイに「荷は宮殿に運ばせるように」と言い、部下の男から宮殿に荷を運ぶ許可証を渡される。
荷物の内容名は『酒瓶』『酒樽』『穀物』と、食べ物の名がずらりと並んでいる。
この国は作物を輸入で賄っている事もあり、こうした輸入品は多く出入りしている為に割りと入国しやすい国でもある。
ジャガールに連れられ2人はそれぞれ【刻狼亭】と【風雷商】の従業員数名と一緒にジャガールの屋敷に通される。
他の住民が土壁づくりの茶色い家に比べて、ジャガールの家は物は少ないが白塗りの家で床は大理石で出来ていて、カーペットは華美過ぎないが赤に金糸が使われていて質の良い物が使われている。
広々とした応接間に通されると狐獣人の幼女メビナがルーファスに駆け寄る。
「ルーファス!お疲れ様!暑かったでしょう?」
「メビナ、お疲れさん。ああ、暑いな」
「何か冷たい物持ってくる!」
くるくると尻尾を振りながらメビナが部屋を出ていこうとするとジャガールの部下がレモーネの入った水差しとグラスを持って現れるとメビナがそれを受け取る。
グラスに水を注ぎながらルーファス達に差し出しメビナがぐいーっと一気飲みする。
「ぷはーっ!」
「お前も飲むのか!」
「毒見は常識!」
呆れた声を出した従業員に扮したダリドアにメビナがフンッと鼻で笑う。
その様子を笑いながらジャガールが見つめ、ルーファスも仕方がない奴らめと苦笑いしながらグラスに口を付ける。
「さて、ジャガール殿。捕らえられた奴隷の状況を教えてくれ」
「今日の夜に奴隷船が密入港し、30人ほど追加されますので150人以上が王宮の地下に捕らえられています。状態はあまりよくは無いです。呪詛の前段階の呪術が発動していますから早急に打ち消さないと奴隷も危ないですが、呪術も完成してしまいます」
ジャガールが王宮の地図を出し、奴隷の捕らえられている地下を指さし、ルーファスが地図を覚えながら、この広さに150人は狭すぎないか?と、眉間にしわを寄せる。
恐らくはすし詰め状態にされて、この暑い中を苦しんでいるのだろう。
「ならば、今日中に片付けるのが得策か」
「王宮への秘密の抜け穴は幾つかありますが、一番近いのは使われていない古井戸からでしょうね」
「他の場所からも侵入させる。王宮に荷が届いたと連絡があり次第、各部隊突入させる。短期決戦で終わらせる。アシュレイ、荷から連絡は?」
ルーファスがアシュレイに話しかけるとアシュレイは魔法通信の指輪と腕輪に話しかけながら応対を繰り返している。
「荷がどうやら地下倉庫に入れられたらしいんだが、鍵を掛けられたようだ。別部隊で鍵を壊さないといけない」
「そうか。ならば、合図があり次第、各部隊に突入の指示を出してくれ」
「分かった。オレはあくまで非戦闘員の商人なんでな。オレはここらで船に退散させてもらう」
部屋に冷気がサァーッと広がると、メビナが厚手の服をバッと着こみ鎖鎌を出して狐火を周りにまとわせる。
「どうやらアシュレイ。少し作戦が早まったようだ。急いで港に行かないと凍らされるぞ」
「やれやれだな。じゃあ各部隊にここで連絡を取っておくさ」
ドォーンドォーン・・・。
ミシリマーフ王国の上空にグリムレインが現れると魔術師達との交戦が始まり、魔法反射の腕輪を付けているグリムレインが相手の魔法を反射して王都に雷が落ちている。
「戦闘開始だ!雷が落ちた所に反射された魔術師が居るはずだ!魔術師を各部隊撃破のちに王宮へ!」
アシュレイが各部隊に貸し出した指輪と腕輪に指示を飛ばし、静かにミシリマーフ国内で影が一斉に動き出す。
50
お気に入りに追加
4,628
あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する
アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。
しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。
理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で
政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。
そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。