黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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9章

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 『ゲームとか漫画で魔法のイメージがあると簡単』

 いつだったか、ありすが魔法を使うコツで教えてくれた言葉を思い出しながら、朱里が小さな兎獣人の子供に手をかざしながら、小さなオパール色の光を紡いでいく。
 イメージする物はほんの少し周りからの活力をこの子に分け与えてもらう様なイメージ。
この子が自力でご飯を食べられるぐらい。きっとこの子はモフモフして可愛い兎の子。大丈夫、きっとよくなるよ。

「アカリ・・・?何してんだ!」
 兎族の子供の看病をしながら少しうたた寝をしていたハガネが目を覚まし、目の前で朱里が魔法を使っていたことに慌てて止めに入る。
「あ・・・」
 朱里の手からオパール色の光は四散し、朱里が残念そうな声を出す。
「アカリ、魔法は初歩が出来てねぇと危ねぇって前も言っただろ?!しかもアカリは今腹に子供が居るのに何考えてんだよ!」
「だって・・・この子を助けたいの」
「そりゃ俺も助けてぇけどよ、魔法じゃどうしようもねぇ所まできてんだ。あとはこいつの生命力に掛けるしかねぇんだよ」

 朱里が肩を震わせて「何かしてあげたい・・・っ」と涙をポロポロ流し始めるとハガネが頭を掻くと「仕方ねぇな、まったく」とムスッと口を尖らせる。

「それじゃあ、アカリはこいつに何か流し込める様なもん作れるか?重湯をもう少し薄めた様なやつ」
「わかった。うん、作ってくる!」
「走るなよ!」
「はいっ!」
 走り出そうとした朱里にハガネが注意し、朱里が早足でキッチンに向かう。
重湯よりも薄めた物を小さな鍋で作り、スポーツドリンクならどうだろう・・・と、水に砂糖と塩を少し入れて味を調えると使っていないティーポットに淹れていく。

 兎獣人の子供の部屋に入るとハガネが回復ポーションを布に湿らせながら小さな兎の子を包んでいく。
「ハガネ、重湯とスポーツドリンク作って来たよ」
「あんがとな。すぽーつどりんくってなんだ?」
「運動の後に飲むと体に吸収されやすい飲み物なんだけど、どうかなって思って」
「んじゃ、それから飲ませてみるか」
 兎の子の口にティーポットの吸い口を含ませてゆっくりと流し込むと、兎の子は目を開ける。
赤い目が怯えたように震えハガネと朱里を見る。

「良かった。安心してね、ここはあなたを苦しめる人は居ないよ」
「お前名前は言えるか?」

「・・・イヴリン・・・」
蚊の鳴くような声でイヴリンと名乗ると朱里とハガネが笑顔で頷く。

「イヴリンくんだね。もう少しドリンク飲む?重湯もあるけどどうする?」
「アカリ、そんなに矢継ぎ早に言うなよ。混乱しちまうだろ?」
「えへへ。嬉しくて。イヴリンくん、ゆっくり休んで体を治してね」
「アカリは旦那に名前を伝えて家族を探す手がかりにしてもらえ」
「はい・・・直ぐに」

 朱里が腕輪に魔力を通し、ルーファスが受け取ったのを確認すると声を出す。

「兎族の子の名前が判ったんです。名前はイヴリンです」
 朱里がルーファスにイヴリンの名前を告げると、色々とルーファスに無茶をしない様に勘繰られたが、朱里は自分の出来る事をやるまでだと気合いを入れなおしてイヴリンの世話に戻る。

客間を温めイヴリンをローランドの部屋から移し終えると、40分程してルーファスとグリムレインが屋敷に戻り、ネヴァーとセリアにイヴリンの両親と姉がイヴリンの元へ駆けつけた。

 イヴリンの身元も解り、親元にも返せそうだとルーファスが肩の荷を少し下ろし、朱里を見れば安堵したのか少し眠そうな表情をしていたので、イヴリンの世話を両親とハガネに任せて朱里を寝室に連れて行きベッドに横にさせると直ぐにすやすやと寝息を立て始めた。

 次の日にはイヴリンが驚くほどの回復を見せ、全身の毛がフワフワとした白い子兎になっていた。
ハガネが朱里を困った顔で見て、朱里は目を逸らしながら「ドリンクのおかげかな?」とうそぶいていた。
イヴリンの口から出た誘拐された子供達の話にルーファスとグリムレインが大きくため息をつく。


「ミシリマーフ国が奴隷をかき集め呪詛を新たに作ろうとしている」 
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