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9章
ネーミングセンス
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ミルクの温かい香りにふくふくとした可愛らしい生まれたての子供の頬っぺた。
「かっわいい~赤ちゃん可愛いです」
久しぶりに抱く軽くて重い小さな命に朱里が明るい声を上げると、ベッドの上でフリウーラが微笑む。
赤毛に小さな爪程の珊瑚の丸い角。
「赤い髪はフリウーラ譲りですね。角はキリヒリさん譲りだね」
「女将に一番に抱き上げてほしくて待ってたんですよ」
「そうなんですか?!うわぁ・・・光栄ですっ!」
「こちらこそ。女将みたいに可愛い女の子に育つように親なりの願掛けですよ」
「ふふ。フリウーラに似たら美人になりますよ」
朱里がフリウーラの腕に赤ん坊を返すとフリウーラの顔が我が子を見つめる母親らしい顔つきになる。
その表情に朱里も満足して笑顔を向ける。
「女将にお願いがあるんです。良いですか?」
「はい。なんでしょうか?」
フリウーラのお願いに朱里が「うーん」と頭を捻り、ギルの書斎を荒らして回っている。
朱里の前には辞書や図鑑が山積みになり、リュエールとシュトラールがそれを1冊ずつ書斎の棚に戻している。
「母上、いい加減にしてよ。使わない本は戻して」
「母上、部屋の中以外にも探せるでしょ?」
「そんな事言ったって、母上は名前考えるの苦手なの~」
双子が魔獣のクロを見て「あー・・・」と残念そうな顔で見る。
「ナンナーウ?」
フリウーラに子供の名付けをお願いされ、朱里は自分のネーミングセンスはヤバいと頭を抱えてギルの書斎を荒らしまわりながら色々な所から名前をピックアップしている。
紙に名前をズラズラと書き連ねているが、朱里の考えは中学卒業時からあまり成長はしていない。
星三で『りゅうせい』と読ませるぐらいにヤバい。
「リューちゃんとシューちゃんはアルビーが付けてくれて良かったよ・・・」
「あー・・・うん。母上、人様の赤ちゃんにこれはない」
「母上・・・オレ、これ読めない」
朱里の書いた名前一覧を見ながら双子がダメ出しをする。
自分達も来年には妹か弟が増えるので「名前は父上か僕らで考えよう」と紙を見ながら思う。
「生まれて初めて貰えるプレゼントだから慎重に考えなきゃ!」
「そうだよ母上。真面目に考えて」
「これじゃふざけてるって思われるよ?」
「うーっ、母上は真面目です!ちゃんと考えてるのぉ~」
机に突っ伏しながら朱里が泣き言を言うと、双子は「真面目に考えてこれだからタチがわるい」と、自分達の母親に首を振る。
双子がやれやれと、これ以上書斎を荒らされては敵わないと朱里を書斎から追い出し、書斎の片づけを始めると朱里は紙とペンを持って屋敷をうろつきまわる。
既にドラゴン達は全員冬眠に入り、元気に起きているのはグリムレインぐらいで、グリムレインも冬の風物詩として「雪降らせて冬を知らせてくる!」と、外を飛び回っている。
グリムレインになにかあれば困る事もあって、グリムレインの腕輪に新たにポードレッタイトの宝石が付けられ、魔法通信が出来るように細工をした。
お値段は5ミリにも満たない宝石なのに家が一軒買えますよ!と、いう目玉がポロリとしそうなお値段に希少鉱石の価値を知り、朱里が自分の腕輪に付いているポードレッタイトをガクガクしながら見つめたりもした。
屋敷には結界が張られ、双子もイルマール達の冒険に出ていくとルーファスに即時バレる為に外に行くに行けず、朱里が妊娠しているという事もあり、余計に何処にも行けなくなり、朱里の指示で屋敷内を掃除したり手伝いをして回っている。
キチンとやればルーファスが休暇の日には狩りに連れて行って貰えることもあって真面目にやっている。
最近の双子は「早く12歳になって冒険者登録して冒険に行きたい」が口癖だ。
その為にもルーファスに体を鍛える様に言われ、暇を見つけては稽古をつけてもらっている。
魔法の先生のハガネは冬眠時期という事もあり、たまに起きてくると宿題を出していく。
屋敷には警護と朱里の家事のサポート用に羊獣人のプリシーが住み込みで居てくれている。
買い物などは定期的に【刻狼亭】から運び込まれ、実質、朱里は屋敷から出ていくことは無い。
今回、フリウーラの出産祝いに産院に出掛けたぐらいで、庭でガラスハウスと屋敷の往復が日課で、籠の鳥状態に見えなくもない・・・と、朱里は思う物の、冬の寒さに弱い朱里は自ら出歩こうとも思っていないのも確かである。
「名前・・・赤い髪に珊瑚の角・・・ああ、子供の頃呼んだおとぎ話の『人魚姫』も赤い髪だったなぁ」
でもあれは悲恋話だから、子供に付ける名前じゃないよねぇ・・・。
でも、人魚姫っていうのがしっくりくる可愛い女の子だった。
来年生まれるお腹の子ともお友達になってくれると良いな。
「ふふ。やっぱり女の子可愛い。女の子だと良いなぁ~でも、男の子でも元気なら良いかな。うん。ルーファスも女の子生まれるまで頑張ってくれるだろうし。ふふっ」
朱里が楽しみだなぁと、まだ小さいままのお腹を手で押さえながら名前を考えて歩き回る。
後日、フリウーラの元に朱里が候補の名前を持って行き、フリウーラとキリヒリの初めての子供の名前が決まる。
『シレーヌ』
フランス語で人魚。
異世界人の残した辞書にあった言葉で、ギルの書斎を荒らしまわった甲斐があった。と、朱里は言うが、書斎を片付けた双子はいい迷惑だったが、朱里の満足そうな顔に口を閉じたのだった。
「かっわいい~赤ちゃん可愛いです」
久しぶりに抱く軽くて重い小さな命に朱里が明るい声を上げると、ベッドの上でフリウーラが微笑む。
赤毛に小さな爪程の珊瑚の丸い角。
「赤い髪はフリウーラ譲りですね。角はキリヒリさん譲りだね」
「女将に一番に抱き上げてほしくて待ってたんですよ」
「そうなんですか?!うわぁ・・・光栄ですっ!」
「こちらこそ。女将みたいに可愛い女の子に育つように親なりの願掛けですよ」
「ふふ。フリウーラに似たら美人になりますよ」
朱里がフリウーラの腕に赤ん坊を返すとフリウーラの顔が我が子を見つめる母親らしい顔つきになる。
その表情に朱里も満足して笑顔を向ける。
「女将にお願いがあるんです。良いですか?」
「はい。なんでしょうか?」
フリウーラのお願いに朱里が「うーん」と頭を捻り、ギルの書斎を荒らして回っている。
朱里の前には辞書や図鑑が山積みになり、リュエールとシュトラールがそれを1冊ずつ書斎の棚に戻している。
「母上、いい加減にしてよ。使わない本は戻して」
「母上、部屋の中以外にも探せるでしょ?」
「そんな事言ったって、母上は名前考えるの苦手なの~」
双子が魔獣のクロを見て「あー・・・」と残念そうな顔で見る。
「ナンナーウ?」
フリウーラに子供の名付けをお願いされ、朱里は自分のネーミングセンスはヤバいと頭を抱えてギルの書斎を荒らしまわりながら色々な所から名前をピックアップしている。
紙に名前をズラズラと書き連ねているが、朱里の考えは中学卒業時からあまり成長はしていない。
星三で『りゅうせい』と読ませるぐらいにヤバい。
「リューちゃんとシューちゃんはアルビーが付けてくれて良かったよ・・・」
「あー・・・うん。母上、人様の赤ちゃんにこれはない」
「母上・・・オレ、これ読めない」
朱里の書いた名前一覧を見ながら双子がダメ出しをする。
自分達も来年には妹か弟が増えるので「名前は父上か僕らで考えよう」と紙を見ながら思う。
「生まれて初めて貰えるプレゼントだから慎重に考えなきゃ!」
「そうだよ母上。真面目に考えて」
「これじゃふざけてるって思われるよ?」
「うーっ、母上は真面目です!ちゃんと考えてるのぉ~」
机に突っ伏しながら朱里が泣き言を言うと、双子は「真面目に考えてこれだからタチがわるい」と、自分達の母親に首を振る。
双子がやれやれと、これ以上書斎を荒らされては敵わないと朱里を書斎から追い出し、書斎の片づけを始めると朱里は紙とペンを持って屋敷をうろつきまわる。
既にドラゴン達は全員冬眠に入り、元気に起きているのはグリムレインぐらいで、グリムレインも冬の風物詩として「雪降らせて冬を知らせてくる!」と、外を飛び回っている。
グリムレインになにかあれば困る事もあって、グリムレインの腕輪に新たにポードレッタイトの宝石が付けられ、魔法通信が出来るように細工をした。
お値段は5ミリにも満たない宝石なのに家が一軒買えますよ!と、いう目玉がポロリとしそうなお値段に希少鉱石の価値を知り、朱里が自分の腕輪に付いているポードレッタイトをガクガクしながら見つめたりもした。
屋敷には結界が張られ、双子もイルマール達の冒険に出ていくとルーファスに即時バレる為に外に行くに行けず、朱里が妊娠しているという事もあり、余計に何処にも行けなくなり、朱里の指示で屋敷内を掃除したり手伝いをして回っている。
キチンとやればルーファスが休暇の日には狩りに連れて行って貰えることもあって真面目にやっている。
最近の双子は「早く12歳になって冒険者登録して冒険に行きたい」が口癖だ。
その為にもルーファスに体を鍛える様に言われ、暇を見つけては稽古をつけてもらっている。
魔法の先生のハガネは冬眠時期という事もあり、たまに起きてくると宿題を出していく。
屋敷には警護と朱里の家事のサポート用に羊獣人のプリシーが住み込みで居てくれている。
買い物などは定期的に【刻狼亭】から運び込まれ、実質、朱里は屋敷から出ていくことは無い。
今回、フリウーラの出産祝いに産院に出掛けたぐらいで、庭でガラスハウスと屋敷の往復が日課で、籠の鳥状態に見えなくもない・・・と、朱里は思う物の、冬の寒さに弱い朱里は自ら出歩こうとも思っていないのも確かである。
「名前・・・赤い髪に珊瑚の角・・・ああ、子供の頃呼んだおとぎ話の『人魚姫』も赤い髪だったなぁ」
でもあれは悲恋話だから、子供に付ける名前じゃないよねぇ・・・。
でも、人魚姫っていうのがしっくりくる可愛い女の子だった。
来年生まれるお腹の子ともお友達になってくれると良いな。
「ふふ。やっぱり女の子可愛い。女の子だと良いなぁ~でも、男の子でも元気なら良いかな。うん。ルーファスも女の子生まれるまで頑張ってくれるだろうし。ふふっ」
朱里が楽しみだなぁと、まだ小さいままのお腹を手で押さえながら名前を考えて歩き回る。
後日、フリウーラの元に朱里が候補の名前を持って行き、フリウーラとキリヒリの初めての子供の名前が決まる。
『シレーヌ』
フランス語で人魚。
異世界人の残した辞書にあった言葉で、ギルの書斎を荒らしまわった甲斐があった。と、朱里は言うが、書斎を片付けた双子はいい迷惑だったが、朱里の満足そうな顔に口を閉じたのだった。
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