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9章
神官と金竜
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ジス家がずっと秘匿していた亡きドラゴンとの対話が途切れ、テルトワイトは自分の役目が終わった事を知る。
長い事、神官の家系をしていたジス家ももうイルマールに継がせる事なく終わる事にテルトワイトはホッとした気持ちもある。
ミシマリーフ国でドラゴン信仰が廃れてしまった以上は神官の役目ももうないのだろう。
テルトワイトが全てを受け入れて、これからの人生はどうなるか考え始めた時、【刻狼亭】の女将朱里が金竜エデンと光竜アルビーを連れてテルトワイトの元を訪れた。
「テルトワイトさんお久しぶりです。今回はエデンがあなたにお話がある様なので連れてきました」
「私はエデンの通訳として来てるだけだから気にしないでね」
「ピューイ」
朱里がエデンをテーブルの上に置き、テルトワイトが小さな金色のドラゴンを見る。
「お久しぶりです。金竜エデン・・・会うのは初めてですね。声はいつも聞いていましたが」
「『ジス家の子、今まで話相手になってくれてありがとう』だってさ」
言葉は無く、エデンとアルビーは目で会話するように意思を伝えあう。
「『わたしはもう自由。あなた達ジス家も自由になって』」
「『ジス家と交わした約束通り、これからもミシマリーフに力を貸しましょう』」
「『わたしは『友』との約束を守るから安心して』」
「『あなたがわたしの声を聞く最後のジス家の子テルトワイト・エデン・ジスよ』」
テルトワイトが少し寂しそうな顔で頷く。
「エデンの名を持つ最後のジス家としてお言葉を拝聴致します。貴女はもう自由なんですね。死んだ後も卵に孵れないと嘆く貴女はもういない。貴女が恋焦がれた青空の元に戻る事が出来た事を嬉しく思いますよ」
「『あなたの息子の瞳の色の様な青空は気持ちがいいわ。あなたが教えてくれた外の事、今1つずつ見て回っているの。わたしに色々教えてくれてありがとう』」
「私こそ、貴女には沢山知識を教えてもらいました。もうミシマリーフから貴女は手を引くべきです。何百年と先祖との約束を守り続けた貴女はもう十分約束を果たしてくださいました。ジス家の代表として、感謝と謝罪を。貴女を今まで苦しめていたのは私達ジス家です。ここで約束を反故する事にしましょう」
テルトワイトがエデンに頭を下げると、エデンは朱里の方を向き、朱里が自分の胸を手で軽く叩く。
自分が思う通りにしなさいとエデンに伝え、エデンが目をつぶる。
「『わたしがミシマリーフをこれからも救うのは主様の作るカレーパンを食べたいからよ。ミシマリーフの香辛料が無ければ作れないんですもの。ジス家とはこれで終わり。でも今度はわたしはカレーパンの為に頑張るのよ』だってさ。エデンは食いしん坊さんだね」
アルビーが笑いながらエデンの頬を小さく突くとエデンが小さな手を腰に当ててフンッとポーズをとる。
朱里もクスクス笑いながら「私も香辛料は欲しいからエデンに協力します」と言うと、エデンが朱里の頬に抱きつきチュッチュッとキスを繰り返す。
「香辛料の為・・・ですか?」
「ふふ。理由は何でもいいの。エデンがしたい事をさせてあげたいの。勿論、エデンの死体を呪詛に使った事に関しては許さないので、キッチリ仕返しはします!エデン以外のドラゴンを使って呪詛を作ろうとするかもしれないから、呪詛自体を消し去る方法も今探っているんですよ?まだ材料1個目ですけど」
朱里がシャドーボクシングの様にパンチをするポーズを取り、テルトワイトにウィンクしてみせ、アルビーがうんうんと頷いて「私も材料の特定頑張ってるよ!」と言い胸をトンっと叩く。
「貴女は息子の従者に殺されかけたのに、それでも助けてくれるのですか?」
「私が助けたいのは、ドラゴン達です。誰も犠牲にしたくないから、危険な芽は摘み取っておくの」
「ピューイ」
「エデンがアカリに『無茶しないでね。後方支援よ』だってさ。私もそう思う」
「わかってるよ。適材適所でしょ?私の持ち場は温泉大陸だもの」
「ピューイ」
「『わかっているなら良いのよ』だってさ」
「もう。エデンもアルビーも酷いんだから」
ドラゴン達と笑う朱里を見てテルトワイトは自分の役目が朱里に移ったのだと思う。
本来あるべきドラゴン信仰の姿は朱里の様にドラゴン達と意思疎通をし、物事を解決させようとする事なのだろうと。
朱里が「夕飯の買い物があるので、この辺で失礼しますね」と、エデンの言いたい事を伝えられただろうと、帰っていくと、テルトワイトはほんの少しだけ思う。
「私があの人を主君にする言ったらイルはどんな顔をするでしょうね?まぁ、私にそんな資格は無いのかもしれませんが・・・」
長い事、神官の家系をしていたジス家ももうイルマールに継がせる事なく終わる事にテルトワイトはホッとした気持ちもある。
ミシマリーフ国でドラゴン信仰が廃れてしまった以上は神官の役目ももうないのだろう。
テルトワイトが全てを受け入れて、これからの人生はどうなるか考え始めた時、【刻狼亭】の女将朱里が金竜エデンと光竜アルビーを連れてテルトワイトの元を訪れた。
「テルトワイトさんお久しぶりです。今回はエデンがあなたにお話がある様なので連れてきました」
「私はエデンの通訳として来てるだけだから気にしないでね」
「ピューイ」
朱里がエデンをテーブルの上に置き、テルトワイトが小さな金色のドラゴンを見る。
「お久しぶりです。金竜エデン・・・会うのは初めてですね。声はいつも聞いていましたが」
「『ジス家の子、今まで話相手になってくれてありがとう』だってさ」
言葉は無く、エデンとアルビーは目で会話するように意思を伝えあう。
「『わたしはもう自由。あなた達ジス家も自由になって』」
「『ジス家と交わした約束通り、これからもミシマリーフに力を貸しましょう』」
「『わたしは『友』との約束を守るから安心して』」
「『あなたがわたしの声を聞く最後のジス家の子テルトワイト・エデン・ジスよ』」
テルトワイトが少し寂しそうな顔で頷く。
「エデンの名を持つ最後のジス家としてお言葉を拝聴致します。貴女はもう自由なんですね。死んだ後も卵に孵れないと嘆く貴女はもういない。貴女が恋焦がれた青空の元に戻る事が出来た事を嬉しく思いますよ」
「『あなたの息子の瞳の色の様な青空は気持ちがいいわ。あなたが教えてくれた外の事、今1つずつ見て回っているの。わたしに色々教えてくれてありがとう』」
「私こそ、貴女には沢山知識を教えてもらいました。もうミシマリーフから貴女は手を引くべきです。何百年と先祖との約束を守り続けた貴女はもう十分約束を果たしてくださいました。ジス家の代表として、感謝と謝罪を。貴女を今まで苦しめていたのは私達ジス家です。ここで約束を反故する事にしましょう」
テルトワイトがエデンに頭を下げると、エデンは朱里の方を向き、朱里が自分の胸を手で軽く叩く。
自分が思う通りにしなさいとエデンに伝え、エデンが目をつぶる。
「『わたしがミシマリーフをこれからも救うのは主様の作るカレーパンを食べたいからよ。ミシマリーフの香辛料が無ければ作れないんですもの。ジス家とはこれで終わり。でも今度はわたしはカレーパンの為に頑張るのよ』だってさ。エデンは食いしん坊さんだね」
アルビーが笑いながらエデンの頬を小さく突くとエデンが小さな手を腰に当ててフンッとポーズをとる。
朱里もクスクス笑いながら「私も香辛料は欲しいからエデンに協力します」と言うと、エデンが朱里の頬に抱きつきチュッチュッとキスを繰り返す。
「香辛料の為・・・ですか?」
「ふふ。理由は何でもいいの。エデンがしたい事をさせてあげたいの。勿論、エデンの死体を呪詛に使った事に関しては許さないので、キッチリ仕返しはします!エデン以外のドラゴンを使って呪詛を作ろうとするかもしれないから、呪詛自体を消し去る方法も今探っているんですよ?まだ材料1個目ですけど」
朱里がシャドーボクシングの様にパンチをするポーズを取り、テルトワイトにウィンクしてみせ、アルビーがうんうんと頷いて「私も材料の特定頑張ってるよ!」と言い胸をトンっと叩く。
「貴女は息子の従者に殺されかけたのに、それでも助けてくれるのですか?」
「私が助けたいのは、ドラゴン達です。誰も犠牲にしたくないから、危険な芽は摘み取っておくの」
「ピューイ」
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「わかってるよ。適材適所でしょ?私の持ち場は温泉大陸だもの」
「ピューイ」
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「もう。エデンもアルビーも酷いんだから」
ドラゴン達と笑う朱里を見てテルトワイトは自分の役目が朱里に移ったのだと思う。
本来あるべきドラゴン信仰の姿は朱里の様にドラゴン達と意思疎通をし、物事を解決させようとする事なのだろうと。
朱里が「夕飯の買い物があるので、この辺で失礼しますね」と、エデンの言いたい事を伝えられただろうと、帰っていくと、テルトワイトはほんの少しだけ思う。
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