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9章
エデン
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企画室で金色の光が収束すると、朱里の手の平には金色の卵が1つ残る。
「エデン、もう大丈夫だよ。孵っておいで」
起き上がっていきなり手の平の卵に話しかけ始めた朱里に、ルーファスとありすが状況についていけずに眉を顰めると、朱里の手の平から「ピューィ」と声がする。
「エデン、良かった。黒い所もないね」
金色に光る小さなドラゴンをじっくりと見ながら朱里がホッと笑みを浮かべる。
「アカリ?」
「アカリっち?」
「あっ、ルーファス、特殊ポーションありがとう。何とか間に合ったみたい。ありすさんも何だか迷惑かけたみたいで、ごめんなさい」
朱里が2人を見ながら小さく首を傾けて、手の平に乗せたエデンをルーファスとありすに見せる。
「私の新しい家族。金竜のエデンです。エデン、こっちの黒い男の人が夫のルーファスです。こっちはお友達のありすさんです」
「ピューィ」
金色の小さなドラゴンを見ながらルーファスとありすが固まっていると、朱里が自分の居る場所が机の上だと知ると、慌てて降りようとしてルーファスに抱きとめられる。
「ルーファス?えーと、下りたいんだけど・・・」
「アカリ、いい加減にしろ!オレを心配させるなといつも言っているだろ!」
「ごめんなさい・・・。私もまさかあんなに早く呪詛が回って死にかけるとは思いませんでした。でもね、エデンが呪詛から抜け出したから、呪詛は消えたと思うの」
「アカリ・・・、そのドラゴンが何かは分らんが、説明をしてくれ」
「うちもそのドラゴン気になるし!」
ルーファスが心配した気持ちと安堵と驚きの気持ちを何処にもぶつけられずに眉を下げると、ありすも突然の光とドラゴンに説明を求む!と声を上げる。
机から降りて、椅子に座ると朱里がエデンを手の平に乗せたまま意識を失っている間の事を説明し、エデンと主君契約を結んだことを報告する。
「・・・つまり、そのエデンという金竜が呪詛をミシマリーフ国に教えたドラゴンなのか?」
「元はバステト国の呪詛をエデンが強力な物にしちゃったみたいで・・・うん。まぁエデンがやらかしちゃった感じではあるの。でもエデンも反省しているし、何百年も苦しんできたの」
「ピューィ・・・」
ルーファスが「ハァー・・・」と深く溜息を吐き、ありすが「アカリっち・・・」と、何とも言えない顔をして朱里を見つめ返してくる。
エデンが朱里の指先に必死に尻尾を絡ませながら首をゆらゆらとさせて朱里とルーファスを交互に見る。
バタバタと廊下から足音がし、企画室のドアが音を立てて開く。
「アカリは居るか!」
「嫁は何処だ!!!」
ハガネとグリムレインが血相を変えて部屋の中へ飛び込んでくると椅子に座っていた朱里を見付け、泣きそうな顔をした後で眉を吊り上げる。
「アカリ!このバカ!また無茶したんだろ!」
「この間抜け嫁!何をしているのだ!」
主君契約で朱里の状況を把握できる2人は朱里を心配して今まで旅館と料亭を探し回り、ようやく朱里の元までたどり着いたのである。
2人の従者に怒られ朱里が首を窄めて上目遣いで「ひぇぇ」と小さく声を上げる。
「ごめんなさい」
「ピューィ」
「ごめんじゃねぇ!アカリは危険な事に首を突っ込むな!また何か拾ってるし!」
「嫁は我の寿命を縮める気か!・・・っ、エデン!!お主が何で此処に!」
ハガネとグリムレインが怒りを爆発させつつ、朱里の指先に光り輝く小さなドラゴンに注目する。
「えーと、私の新しい従者の金竜のエデンです。エデン、私の初めての従者のハガネとエデンも知ってると思うけど、氷竜のグリムレインだよ」
朱里がエデンをハガネとグリムレインに見せながら紹介をすると、ハガネは「金ピカ・・・ちっせぇドラゴンだな」と、眉を顰めながらエデンを見る。
グリムレインは目を丸くしてエデンを凝視する。
「嫁よ・・・エデンを何処で見付けた?」
「えと、呪詛に掛かった時に呪詛にエデンが雑じってて連れて帰っちゃった」
「ピューイ」
グリムレインがエデンに指を近づけると、エデンがグリムレインの指先に乗り首を傾げる。
そっとエデンを頬に近付けてグリムレインが涙を流すとエデンがその涙をペロペロと舐めとる。
「エデン・・・もう会えないと思って居たぞ」
「クルルゥ」
「ああ、我も会いたかったさ」
「キュゥ」
グリムレインが朱里の方へ顔を向けると優しい目で朱里を見て笑う。
「嫁よ。我の同胞エデンを救ってくれて感謝する。エデンの主君契約は『愛』だ。エデンに愛を示してくれたのだな。嫁はやはり我の主だ」
「どういたしまして。それよりエデンは出会った時はお喋りしてたんだけど、喋れない感じなの?」
「卵から孵ったばかりだとまだ声帯が安定していない。そのうち喋り出す」
「そっか。それなら良かった」
グリムレインが大切な宝物の様にエデンを手に乗せて「アルビーにも会わせてくる」と、エデンを連れて帰ってしまうと、企画室に残った朱里はルーファスとありすとハガネに「心配させてごめんね」とへらっと笑い、3人を脱力させた。
「エデン、もう大丈夫だよ。孵っておいで」
起き上がっていきなり手の平の卵に話しかけ始めた朱里に、ルーファスとありすが状況についていけずに眉を顰めると、朱里の手の平から「ピューィ」と声がする。
「エデン、良かった。黒い所もないね」
金色に光る小さなドラゴンをじっくりと見ながら朱里がホッと笑みを浮かべる。
「アカリ?」
「アカリっち?」
「あっ、ルーファス、特殊ポーションありがとう。何とか間に合ったみたい。ありすさんも何だか迷惑かけたみたいで、ごめんなさい」
朱里が2人を見ながら小さく首を傾けて、手の平に乗せたエデンをルーファスとありすに見せる。
「私の新しい家族。金竜のエデンです。エデン、こっちの黒い男の人が夫のルーファスです。こっちはお友達のありすさんです」
「ピューィ」
金色の小さなドラゴンを見ながらルーファスとありすが固まっていると、朱里が自分の居る場所が机の上だと知ると、慌てて降りようとしてルーファスに抱きとめられる。
「ルーファス?えーと、下りたいんだけど・・・」
「アカリ、いい加減にしろ!オレを心配させるなといつも言っているだろ!」
「ごめんなさい・・・。私もまさかあんなに早く呪詛が回って死にかけるとは思いませんでした。でもね、エデンが呪詛から抜け出したから、呪詛は消えたと思うの」
「アカリ・・・、そのドラゴンが何かは分らんが、説明をしてくれ」
「うちもそのドラゴン気になるし!」
ルーファスが心配した気持ちと安堵と驚きの気持ちを何処にもぶつけられずに眉を下げると、ありすも突然の光とドラゴンに説明を求む!と声を上げる。
机から降りて、椅子に座ると朱里がエデンを手の平に乗せたまま意識を失っている間の事を説明し、エデンと主君契約を結んだことを報告する。
「・・・つまり、そのエデンという金竜が呪詛をミシマリーフ国に教えたドラゴンなのか?」
「元はバステト国の呪詛をエデンが強力な物にしちゃったみたいで・・・うん。まぁエデンがやらかしちゃった感じではあるの。でもエデンも反省しているし、何百年も苦しんできたの」
「ピューィ・・・」
ルーファスが「ハァー・・・」と深く溜息を吐き、ありすが「アカリっち・・・」と、何とも言えない顔をして朱里を見つめ返してくる。
エデンが朱里の指先に必死に尻尾を絡ませながら首をゆらゆらとさせて朱里とルーファスを交互に見る。
バタバタと廊下から足音がし、企画室のドアが音を立てて開く。
「アカリは居るか!」
「嫁は何処だ!!!」
ハガネとグリムレインが血相を変えて部屋の中へ飛び込んでくると椅子に座っていた朱里を見付け、泣きそうな顔をした後で眉を吊り上げる。
「アカリ!このバカ!また無茶したんだろ!」
「この間抜け嫁!何をしているのだ!」
主君契約で朱里の状況を把握できる2人は朱里を心配して今まで旅館と料亭を探し回り、ようやく朱里の元までたどり着いたのである。
2人の従者に怒られ朱里が首を窄めて上目遣いで「ひぇぇ」と小さく声を上げる。
「ごめんなさい」
「ピューィ」
「ごめんじゃねぇ!アカリは危険な事に首を突っ込むな!また何か拾ってるし!」
「嫁は我の寿命を縮める気か!・・・っ、エデン!!お主が何で此処に!」
ハガネとグリムレインが怒りを爆発させつつ、朱里の指先に光り輝く小さなドラゴンに注目する。
「えーと、私の新しい従者の金竜のエデンです。エデン、私の初めての従者のハガネとエデンも知ってると思うけど、氷竜のグリムレインだよ」
朱里がエデンをハガネとグリムレインに見せながら紹介をすると、ハガネは「金ピカ・・・ちっせぇドラゴンだな」と、眉を顰めながらエデンを見る。
グリムレインは目を丸くしてエデンを凝視する。
「嫁よ・・・エデンを何処で見付けた?」
「えと、呪詛に掛かった時に呪詛にエデンが雑じってて連れて帰っちゃった」
「ピューイ」
グリムレインがエデンに指を近づけると、エデンがグリムレインの指先に乗り首を傾げる。
そっとエデンを頬に近付けてグリムレインが涙を流すとエデンがその涙をペロペロと舐めとる。
「エデン・・・もう会えないと思って居たぞ」
「クルルゥ」
「ああ、我も会いたかったさ」
「キュゥ」
グリムレインが朱里の方へ顔を向けると優しい目で朱里を見て笑う。
「嫁よ。我の同胞エデンを救ってくれて感謝する。エデンの主君契約は『愛』だ。エデンに愛を示してくれたのだな。嫁はやはり我の主だ」
「どういたしまして。それよりエデンは出会った時はお喋りしてたんだけど、喋れない感じなの?」
「卵から孵ったばかりだとまだ声帯が安定していない。そのうち喋り出す」
「そっか。それなら良かった」
グリムレインが大切な宝物の様にエデンを手に乗せて「アルビーにも会わせてくる」と、エデンを連れて帰ってしまうと、企画室に残った朱里はルーファスとありすとハガネに「心配させてごめんね」とへらっと笑い、3人を脱力させた。
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