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9章
古文書
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魔国エグザドルから温泉大陸への定期船に乗り込んだテルトワイトは名残惜しそうな花人族の『踊り子』達に微笑んで手を振りながら「また会いましょう」と、別れを告げた。
テルトワイトに付き従っているダリドアは「主には見せられない」と、テルトワイトの張り付けた様な笑顔にくわばらくわばらと言いながら荷物を片手に船内を歩く。
「父君、部屋はこちらの様ですよ」
「荷物を置いたらレストランでも行きましょうか」
「いいですね。主にも船の中のレストランの話をしてあげられるように美味しい物食べましょう!」
これは役得だとダリドアがレストランのメニューは高い物を頼もうと目論みながらニンマリしている、そんな時、もう一人の従者エスタークも目の前の主であるイルマールを見ながらニンマリ笑っていた。
「主~。美幼女じゃないですかー?」
「うるさい。黙れエスターク」
ルーファスに呼び出され【刻狼亭】へ向かっている途中で偶然、ありすとリリスに遭遇した時、リリスがイルマールに少し頬を染めて軽く挨拶を交わしただけなのだが、従者のエスタークにずっと揶揄われているのだ。
「将来有望ですよ!美人ですよ主!」
「だから、うるさい。エスターク」
「主だって悪い気はしないくせに」
「あのなぁ、年が違いすぎるし、子供の頃の好いた惚れたは麻疹みたいなものだ」
「刻狼亭の夫婦は、あの子と主くらいの年の差ですから気にしなくていいと思うぞ」
エスタークにいい加減にしろと言いながら、温泉街の賑やかな路地を歩き、11歳の時に訪れた温泉街の街並みと変わらない情景にイルマールはまるで時が此処だけ切り取られた様だとも思う。
ここに自分の父親ともう一人の従者が揃えば、あの頃のまま元通りに再現出来たかもしれない。
冒険者が路地の足湯で仲間とじゃれ合いながら笑う姿も店の人が試作の飲み物だ食べ物だを勧めて、冒険者に味はどうだ?と、聞いている姿もあの頃のままだ。
冒険者は各地を歩き回り、色々と飲んだり食べたりしている為に、店としては新しい商品開発の協力に冒険者は都合がいいのもあるのだろう。
そうこうしているうちに、黒塗りの料亭へたどり着く。
【刻狼亭】のフロントロビーを入れば、双子の狐獣人の幼女が声を揃えて愛想よく挨拶をしてくるが、客ではないと分かると、営業スマイルを引っ込めて「お腹すいたー」「今日の賄い何かなー」と雑談を始め、銀色の狐獣人の男に「もう少しで昼交替だから我慢しろ」と怒られ、双子が耳を下げている。
「旦那様は事務所でお待ちだ」
銀色の狐獣人の男がイルマール達にそう言い、イルマールとエスタークは道案内図を頼りに事務所の方へ足を向ける。
事務所に着くと、事務員が4人ほど書類を山にしながら算盤を弾いている。
奥の少し立派な机に黒い着物の狼獣人ルーファス・トリニアが黒い眼鏡を掛けて書類を見ながら、黒い魔獣を膝に乗せている。
「ナーン。ナウナウー」
「ん?クロどうした?ああ、イルマール。来たか」
書類から顔を上げて、ルーファスがイルマール達に気付くと椅子から立ち上がり、クロは膝からルーファスの肩へと移動して尻尾をピーンと立てている。
「何か我々にご用件があるとか・・・」
「お前達を追っていた魔術師の1人を拘束していたのだが、死んだ。ドラゴンが近付くと呪詛が発動するらしくてな・・・まぁ、そこら辺は些末事だ。呼び出したのは、お前達に見せたいものがあるからだ」
ルーファスが机の上に置いた2枚の古い古文書のコピーを2人に見せる。
ドラゴンの絵と魔法陣の図形、そして黒い人の絵が描かれていて古代文字で文字が書かれている。
もう1枚には白い人型とドラゴンに魔法陣、そして草の様な物と鉱物が描かれている。
残念ながらイルマールもエスタークも古文文字に関しては読めるわけでは無い為に、絵柄から何かよろしくない物とだけわかる程度だ。
「ここには、ドラゴンがミシリマーフ国に教えた呪詛の方法が書いてある。呪詛を1人の人間に掛け、呪詛に掛かった人間に触れた者に呪詛をどんどん感染させていくというものだ。そして、もう1枚の方にはそれの解呪方法が書いてある」
ルーファスが【病魔】と小さく口にする。
「この古文書は恐らく、ミシリマーフ国にドラゴンが教えた物をバステト国が改良し、より凶悪な物に仕上げた物だろう。【病魔】の元になったと言ってもいい」
多くの人々が亡くなった【病魔】が元はミシリマーフ国がバステト国への戦争に用いていた呪詛が原因だとは思いもよらなかったイルマールとエスタークは古文書を見つめながら言葉を無くす。
「解呪方法なんだが、どうもこれに関しては虫食いもあってな、肝心な所が読めない。ただ『異世界の者』とあるから、バステト国で異世界召喚が行われたのは確かなようだ。その人間とドラゴンで何かをするらしいが、そこも虫食いで解読不可能だ。草と鉱物に関しても文字の部分が解読不可能だ。何に使ったのかもわからん」
肝心な場所が解らない解呪方法に肩を落とすしかないが、ありすや朱里といった解呪が出来る人間が居る以上は最悪は避けられるが、放置も出来ない物でもある。
ミシマリーフ国が悪用に近い形で、今更この禁呪にした物を復活させた以上は、呪詛を知る者もこうした古文書も始末をつけるのが今後の為だとも思うと、ルーファスが2人に静かに今後についての考え方を聞いた。
2人の答えはルーファスの意見をそのままに、呪詛が別の方向へ使われないうちに手を打つべきだと答えた。
テルトワイトに付き従っているダリドアは「主には見せられない」と、テルトワイトの張り付けた様な笑顔にくわばらくわばらと言いながら荷物を片手に船内を歩く。
「父君、部屋はこちらの様ですよ」
「荷物を置いたらレストランでも行きましょうか」
「いいですね。主にも船の中のレストランの話をしてあげられるように美味しい物食べましょう!」
これは役得だとダリドアがレストランのメニューは高い物を頼もうと目論みながらニンマリしている、そんな時、もう一人の従者エスタークも目の前の主であるイルマールを見ながらニンマリ笑っていた。
「主~。美幼女じゃないですかー?」
「うるさい。黙れエスターク」
ルーファスに呼び出され【刻狼亭】へ向かっている途中で偶然、ありすとリリスに遭遇した時、リリスがイルマールに少し頬を染めて軽く挨拶を交わしただけなのだが、従者のエスタークにずっと揶揄われているのだ。
「将来有望ですよ!美人ですよ主!」
「だから、うるさい。エスターク」
「主だって悪い気はしないくせに」
「あのなぁ、年が違いすぎるし、子供の頃の好いた惚れたは麻疹みたいなものだ」
「刻狼亭の夫婦は、あの子と主くらいの年の差ですから気にしなくていいと思うぞ」
エスタークにいい加減にしろと言いながら、温泉街の賑やかな路地を歩き、11歳の時に訪れた温泉街の街並みと変わらない情景にイルマールはまるで時が此処だけ切り取られた様だとも思う。
ここに自分の父親ともう一人の従者が揃えば、あの頃のまま元通りに再現出来たかもしれない。
冒険者が路地の足湯で仲間とじゃれ合いながら笑う姿も店の人が試作の飲み物だ食べ物だを勧めて、冒険者に味はどうだ?と、聞いている姿もあの頃のままだ。
冒険者は各地を歩き回り、色々と飲んだり食べたりしている為に、店としては新しい商品開発の協力に冒険者は都合がいいのもあるのだろう。
そうこうしているうちに、黒塗りの料亭へたどり着く。
【刻狼亭】のフロントロビーを入れば、双子の狐獣人の幼女が声を揃えて愛想よく挨拶をしてくるが、客ではないと分かると、営業スマイルを引っ込めて「お腹すいたー」「今日の賄い何かなー」と雑談を始め、銀色の狐獣人の男に「もう少しで昼交替だから我慢しろ」と怒られ、双子が耳を下げている。
「旦那様は事務所でお待ちだ」
銀色の狐獣人の男がイルマール達にそう言い、イルマールとエスタークは道案内図を頼りに事務所の方へ足を向ける。
事務所に着くと、事務員が4人ほど書類を山にしながら算盤を弾いている。
奥の少し立派な机に黒い着物の狼獣人ルーファス・トリニアが黒い眼鏡を掛けて書類を見ながら、黒い魔獣を膝に乗せている。
「ナーン。ナウナウー」
「ん?クロどうした?ああ、イルマール。来たか」
書類から顔を上げて、ルーファスがイルマール達に気付くと椅子から立ち上がり、クロは膝からルーファスの肩へと移動して尻尾をピーンと立てている。
「何か我々にご用件があるとか・・・」
「お前達を追っていた魔術師の1人を拘束していたのだが、死んだ。ドラゴンが近付くと呪詛が発動するらしくてな・・・まぁ、そこら辺は些末事だ。呼び出したのは、お前達に見せたいものがあるからだ」
ルーファスが机の上に置いた2枚の古い古文書のコピーを2人に見せる。
ドラゴンの絵と魔法陣の図形、そして黒い人の絵が描かれていて古代文字で文字が書かれている。
もう1枚には白い人型とドラゴンに魔法陣、そして草の様な物と鉱物が描かれている。
残念ながらイルマールもエスタークも古文文字に関しては読めるわけでは無い為に、絵柄から何かよろしくない物とだけわかる程度だ。
「ここには、ドラゴンがミシリマーフ国に教えた呪詛の方法が書いてある。呪詛を1人の人間に掛け、呪詛に掛かった人間に触れた者に呪詛をどんどん感染させていくというものだ。そして、もう1枚の方にはそれの解呪方法が書いてある」
ルーファスが【病魔】と小さく口にする。
「この古文書は恐らく、ミシリマーフ国にドラゴンが教えた物をバステト国が改良し、より凶悪な物に仕上げた物だろう。【病魔】の元になったと言ってもいい」
多くの人々が亡くなった【病魔】が元はミシリマーフ国がバステト国への戦争に用いていた呪詛が原因だとは思いもよらなかったイルマールとエスタークは古文書を見つめながら言葉を無くす。
「解呪方法なんだが、どうもこれに関しては虫食いもあってな、肝心な所が読めない。ただ『異世界の者』とあるから、バステト国で異世界召喚が行われたのは確かなようだ。その人間とドラゴンで何かをするらしいが、そこも虫食いで解読不可能だ。草と鉱物に関しても文字の部分が解読不可能だ。何に使ったのかもわからん」
肝心な場所が解らない解呪方法に肩を落とすしかないが、ありすや朱里といった解呪が出来る人間が居る以上は最悪は避けられるが、放置も出来ない物でもある。
ミシマリーフ国が悪用に近い形で、今更この禁呪にした物を復活させた以上は、呪詛を知る者もこうした古文書も始末をつけるのが今後の為だとも思うと、ルーファスが2人に静かに今後についての考え方を聞いた。
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