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9章
初恋騒動(番外編)
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イルマール達が温泉大陸で合流を果たして5日目。
刻狼亭の双子の片割れシュトラールは非常に面白くない。
崖道を使った事で父親には罰として毎日、魔力ギリギリまで回復魔法を使わされて獣化して家に帰る日々。
魔力回復ポーションの不味い味の物を「これも罰だから」と母親には出されて飲まされる。
魔力を回復しないと獣化したままだし、頭はガンガンするしで飲まなければ自分が辛いだけ。
「リュー、今日はサボろうよー」
「ダメ。母上にも父上にもおこられる」
「にげればいいよー」
「にげたらにげグセがつくからダメ」
リュエールはこういう所が真面目で融通が利かないとシュトラールは思う。
「5日もバツはうけたのにー」
「5日目だからそろそろゆるしてくれるハズ。今がふんばり時だよ」
リュエールがシュトラールのおでこを指でツンと突き、がんばれと笑うがシュトラールとしてはもう飽き飽きしているのだ。
何より、一緒に温泉鳥を治療しているリリスが「イルは今日なにをしてるかな?」とイルマールの事を気にしてばかりで面白くない。
「リュー、シュー。そろそろ出掛けるぞ」
父親のルーファスが子供部屋に入ってきて2人に声を掛けると、リュエールは直ぐに立ち上がるがシュトラールはムッと口をとがらせてベッドの上に座ったままだ。
怪我した温泉鳥は【刻狼亭】の宿舎と薬草園の間に建てられた鳥小屋で治療が行われるために、出勤ついでに双子をルーファスが連れて【刻狼亭】へ向かうのがこの4日間繰り返されている。
帰る時も一緒に連れて帰っているので、ルーファスは最近とても早い帰宅になっている。
「シュー。どうした?5日目にしてもう投げ出すか?」
ルーファスがシュトラールの頭をぐりぐりと撫でながら、少しでもシュトラールの気分を上げて連れて行こうとしているのだが、シュトラールは口を尖らせたまま無言で立ち上がってサッサッと部屋を出ていく。
「父上、シューはリリの事で少しイライラしてるだけだから」
「そうなのか?ただ単に治療に飽きたと思ったが・・・リリが好きなのか」
「父上、母上にはナイショだからね。母上はこういうはなし好きだからからかわれたらシューがかわいそうだ」
「ああ。アカリは恋愛話が好きだからな。父上とお前たちの秘密にしておく」
「ん。そうして」
「リューはリリを好きだったりはしないのか?」
「それはない。僕のりそうは母上だから」
「母上は父上の番だから駄目だぞ」
「知ってる。りそうが母上なだけ」
リュエールが小さく肩をすくめてルーファスに「行こう」と促して部屋を出ていく。
母親の朱里そっくりなリュエールは赤ん坊のころから朱里にべったりだが、女性の理想も朱里とは・・・ルーファスは少し苦笑いしながらも、女の子の恋は早いというが、男の子の子供達も十分早く恋を経験している様だと思う。
子供の成長は早い。
「しかし、シュトラールがリリスを好きだとは全然気が付かなかったな」
リリスの初恋がイルマールなのだからシュトラールにとっては辛い事になりそうだが、しかし、それもそれで良い人生勉強なのだろう。
リュエールに関しては朱里の様な女性を探すのは大変そうだが、頑張れとしか言えない。
朱里は自分の番だから世界一だから、世界一を超えるのは大変そうだ。
理想は低いより高い方が良い。
うんうん。と頷いてルーファスも子供部屋から出て1階に降りると、双子の頬に朱里がキスをしながら「いってらっしゃい」と笑っている。
「母上、あいさつにキスしなくていいよ」
「母上、そういうのは父上にだけしなよ」
双子が朱里にキスされた頬を腕でごしごしと拭いながら眉間にしわを寄せて文句を言っている。
朱里は「テレてるー可愛い。ふふふ」と2人に抱きついてワーワー騒ぎながら楽しそうにして、ルーファスに気付くと、双子には見せない表情でルーファスにもキスをしてくる。
双子には自愛にあふれた母親の顔で接するが、ルーファスにはいつでも恋人にキスするような顔でしてくるので、これに気付いた時はルーファスも自分だけ特別な扱いに少し浮かれたりもした。
「ルーファスもいってらっしゃい」
「行ってくる。今日も帰りは早いからな」
「はい。今日の夕飯のリクエストはある?」
「アカリにお任せだ」
「ふふ。はーい」
朱里にキスを返して双子と一緒に出ていくと、3人で歩きながらシュトラールがハァと小さく溜息を吐く。
「シュー、溜息はしまっておけ。恋の1つや2つまだこれからもあるさ」
「そうだよ、シュー、女の子は星のかずだけいるっていうし」
2人にそう言われ、みるみるうちにシュトラールの顔が赤くなり、尻尾をボンッと膨らませて耳を下げる。
「オレは別に恋だのなんだのじゃないよ!!なんなの?!」
ルーファスとリュエールが顔を見合わせ首をかしげる。
「だって、リューはリリの事好きでしょ?」
「ち、ちがうよ!リリは妹!だいじな妹だよ!好きもキライもないよ!」
リュエールがルーファスの顔を見上げると、ルーファスが「無自覚か?」と言い。
「なら、シューの好きな相手は、どんな子なんだ?」
「ええ?今そういうこときく?オレの好きなタイプは母上みたいにえがおのカワイイ子だよ!」
「おや?」とルーファスとリュエールがまた首をかしげる。
「さいきんリリがイルのこと気にするたびにモヤモヤしてるじゃない?」
「あれは、何かおもしろくないだけ!リリはリリのままでいてほしいの!」
ルーファスがクククッと笑いながら2人の頭を撫でる。
「なるほど、シュー。人は変わって成長していくものだ。いつまでも変わらない所もあるから、それを大事に、今はリリスを見守ってやれ。シューはリリスよりお兄さんなんだからな」
ルーファスがシュトラールに優しい目で人生の先輩らしくアドバイスを送り、シュトラールは『お兄さん』という言葉に少し納得して、その日から少しだけリリスの恋を応援するようになった。
恋ではなかったシュトラールの恋騒動に、リュエールが「シューとは女の子のシュミが似てるみたいだから、シューには恋人が出来てもしょうかいはしない」と、心に決めたのはこの時からだった。
刻狼亭の双子の片割れシュトラールは非常に面白くない。
崖道を使った事で父親には罰として毎日、魔力ギリギリまで回復魔法を使わされて獣化して家に帰る日々。
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魔力を回復しないと獣化したままだし、頭はガンガンするしで飲まなければ自分が辛いだけ。
「リュー、今日はサボろうよー」
「ダメ。母上にも父上にもおこられる」
「にげればいいよー」
「にげたらにげグセがつくからダメ」
リュエールはこういう所が真面目で融通が利かないとシュトラールは思う。
「5日もバツはうけたのにー」
「5日目だからそろそろゆるしてくれるハズ。今がふんばり時だよ」
リュエールがシュトラールのおでこを指でツンと突き、がんばれと笑うがシュトラールとしてはもう飽き飽きしているのだ。
何より、一緒に温泉鳥を治療しているリリスが「イルは今日なにをしてるかな?」とイルマールの事を気にしてばかりで面白くない。
「リュー、シュー。そろそろ出掛けるぞ」
父親のルーファスが子供部屋に入ってきて2人に声を掛けると、リュエールは直ぐに立ち上がるがシュトラールはムッと口をとがらせてベッドの上に座ったままだ。
怪我した温泉鳥は【刻狼亭】の宿舎と薬草園の間に建てられた鳥小屋で治療が行われるために、出勤ついでに双子をルーファスが連れて【刻狼亭】へ向かうのがこの4日間繰り返されている。
帰る時も一緒に連れて帰っているので、ルーファスは最近とても早い帰宅になっている。
「シュー。どうした?5日目にしてもう投げ出すか?」
ルーファスがシュトラールの頭をぐりぐりと撫でながら、少しでもシュトラールの気分を上げて連れて行こうとしているのだが、シュトラールは口を尖らせたまま無言で立ち上がってサッサッと部屋を出ていく。
「父上、シューはリリの事で少しイライラしてるだけだから」
「そうなのか?ただ単に治療に飽きたと思ったが・・・リリが好きなのか」
「父上、母上にはナイショだからね。母上はこういうはなし好きだからからかわれたらシューがかわいそうだ」
「ああ。アカリは恋愛話が好きだからな。父上とお前たちの秘密にしておく」
「ん。そうして」
「リューはリリを好きだったりはしないのか?」
「それはない。僕のりそうは母上だから」
「母上は父上の番だから駄目だぞ」
「知ってる。りそうが母上なだけ」
リュエールが小さく肩をすくめてルーファスに「行こう」と促して部屋を出ていく。
母親の朱里そっくりなリュエールは赤ん坊のころから朱里にべったりだが、女性の理想も朱里とは・・・ルーファスは少し苦笑いしながらも、女の子の恋は早いというが、男の子の子供達も十分早く恋を経験している様だと思う。
子供の成長は早い。
「しかし、シュトラールがリリスを好きだとは全然気が付かなかったな」
リリスの初恋がイルマールなのだからシュトラールにとっては辛い事になりそうだが、しかし、それもそれで良い人生勉強なのだろう。
リュエールに関しては朱里の様な女性を探すのは大変そうだが、頑張れとしか言えない。
朱里は自分の番だから世界一だから、世界一を超えるのは大変そうだ。
理想は低いより高い方が良い。
うんうん。と頷いてルーファスも子供部屋から出て1階に降りると、双子の頬に朱里がキスをしながら「いってらっしゃい」と笑っている。
「母上、あいさつにキスしなくていいよ」
「母上、そういうのは父上にだけしなよ」
双子が朱里にキスされた頬を腕でごしごしと拭いながら眉間にしわを寄せて文句を言っている。
朱里は「テレてるー可愛い。ふふふ」と2人に抱きついてワーワー騒ぎながら楽しそうにして、ルーファスに気付くと、双子には見せない表情でルーファスにもキスをしてくる。
双子には自愛にあふれた母親の顔で接するが、ルーファスにはいつでも恋人にキスするような顔でしてくるので、これに気付いた時はルーファスも自分だけ特別な扱いに少し浮かれたりもした。
「ルーファスもいってらっしゃい」
「行ってくる。今日も帰りは早いからな」
「はい。今日の夕飯のリクエストはある?」
「アカリにお任せだ」
「ふふ。はーい」
朱里にキスを返して双子と一緒に出ていくと、3人で歩きながらシュトラールがハァと小さく溜息を吐く。
「シュー、溜息はしまっておけ。恋の1つや2つまだこれからもあるさ」
「そうだよ、シュー、女の子は星のかずだけいるっていうし」
2人にそう言われ、みるみるうちにシュトラールの顔が赤くなり、尻尾をボンッと膨らませて耳を下げる。
「オレは別に恋だのなんだのじゃないよ!!なんなの?!」
ルーファスとリュエールが顔を見合わせ首をかしげる。
「だって、リューはリリの事好きでしょ?」
「ち、ちがうよ!リリは妹!だいじな妹だよ!好きもキライもないよ!」
リュエールがルーファスの顔を見上げると、ルーファスが「無自覚か?」と言い。
「なら、シューの好きな相手は、どんな子なんだ?」
「ええ?今そういうこときく?オレの好きなタイプは母上みたいにえがおのカワイイ子だよ!」
「おや?」とルーファスとリュエールがまた首をかしげる。
「さいきんリリがイルのこと気にするたびにモヤモヤしてるじゃない?」
「あれは、何かおもしろくないだけ!リリはリリのままでいてほしいの!」
ルーファスがクククッと笑いながら2人の頭を撫でる。
「なるほど、シュー。人は変わって成長していくものだ。いつまでも変わらない所もあるから、それを大事に、今はリリスを見守ってやれ。シューはリリスよりお兄さんなんだからな」
ルーファスがシュトラールに優しい目で人生の先輩らしくアドバイスを送り、シュトラールは『お兄さん』という言葉に少し納得して、その日から少しだけリリスの恋を応援するようになった。
恋ではなかったシュトラールの恋騒動に、リュエールが「シューとは女の子のシュミが似てるみたいだから、シューには恋人が出来てもしょうかいはしない」と、心に決めたのはこの時からだった。
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