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9章
踊り子と神官
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花籠を持ってパレードの中を踊る『踊り子』達。
ただの踊り子ではなく、花人族の人を魅了して歩く『踊り子』と名称付けられた流浪の民。
男でも女でもなく雌雄同体の体を持つ美しい者達。
そんな彼らは、人を魅了する能力を使い踊りながら人を物色して歩く。
魔国エグザドルに近いトリステンの街は今、夏の終わりを迎える花祭りを開催している。
トリステンの街に今現在、滞在している踊り子達は「祭りの間は稼ぎ時よ」と言いながら、魅了の力を存分に発揮している。
「新しい花籠を貰える?もう花を投げ終わってしまったの」
踊り子がそう言ってバンカーテントの中に顔を出すと、「どうぞ」と花でいっぱいになった花籠が渡される。
手渡した人物は長い金髪に花を幾つも付けて、一見女性にも見えるが男性で、褐色の肌に白い耳に白い尾をしたサファイアブルーの瞳の男だった。
テルトワイト・ジス。
イルマールの父親でミシリマーフの神官は『踊り子』達と行動を共にしている。
従者のダリドアは身軽な格好で踊る踊り子達と共にアクロバティックな動きをしながら、見ている人々を歓声で沸かせていた。
ダリドアの仕事は踊り子たちの護衛で、何かあれば直ぐに対処出来るように常に彼らの近くに居る。
何故、2人が踊り子たちと共に行動しているかと言えば、踊り子達が滞在していた貴族屋敷がテルトワイトの知り合いの屋敷で、踊り子たちが面白がって逃亡をするなら自分達と共に行動すればいいとテルトワイト達を旅に引きずり込んだのである。
息子のイルマールと従者のエスタークは既に移動していて足取りがつかめず、2人を探そうにも追手が自分達にも迫っていて同じ場所に留まる事が出来ず、泣く泣く踊り子たちと行動を共にした。
ダリドアは言う。
「主君契約をしているから、主に何かあれば判る。主は無事だ」
テルトワイトはその言葉だけを心の支えに今日もこうして騒がしくも賑やかな踊り子たちと共に居るのだった。
「神官様はとても綺麗ね。今日も麗しいわ」
「ありがとうございます」
踊り子が誉めてもテルトワイトはにこやかな笑みで返すだけで、踊り子たちの魅了が効かない。
その穏やかな雰囲気が踊り子たちをも魅了していた。
自分が落としてみたい。そう思う踊り子も居る程にテルトワイトは神秘的な見た目と人柄だった。
【病魔】の時に爛れた顔も【聖女】ありすが治療を施したお蔭で綺麗な顔に戻り、再び呪詛に掛けられたが、偶然手に入った【聖域の雫】という特殊なポーションで治った。
【聖域の雫】は踊り子が、ある貴族に貰った物でオパール色の雫は温泉大陸でルーファスが手渡してくれたポーションによく似ていた為に、テルトワイトはイルマールの為にもう一度温泉大陸へ行き、ルーファスからあのポーションを貰い、イルマールの呪詛を解除してやりたいと思って居る。
ようやく、温泉大陸への定期船が出ている魔国エグザドルの近くまでたどり着いたのである。
踊り子たちは時期じゃないので温泉大陸へ入る通行証が使えないらしい。
彼等、踊り子の通行証は冬の期間限定で通行できるものらしく、エグザドルで一旦、踊り子達とは行動を別れて過ごすことになる。
「神官様とあともう少しでお別れなんて寂しいわ」
「私も皆さんと離れるのは寂しいですよ」
ニコリとテルトワイトが微笑んで踊り子たちが黄色い声を上げる。
「主が見たら何というか・・・」
喉を潤しに戻ったダリドアがテルトワイトに少し呆れた声を出して、飲み物を飲み干すとまた踊り子たちと一緒に人々を沸かせに行ってしまう。
「私にはダリドアがあの子以外と一緒に行動している事の方が何とも言えませんけどね」
小さくテルトワイトが言いながら、また花籠に髪に挿した花を取りながら埋めていく。
「イルは元気でいるでしょうか・・・」
バンカーテントから見上げる陽気な空を見上げて、テルトワイトが自分の息子に思いをはせる。
空の色はまるでイルマールの瞳の色の様だとテルトワイトは思い、手を伸ばす。
__温泉大陸【刻狼亭】『女将亭』。
朱里と双子がアルビーを宥めるのに失敗し、アルビーが怒って「ほっといて!」と、飛んで行ってしまった。
申し訳なさそうな顔をしたイルマールとエスタークに朱里も申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい。アルビーの気持ちも少しわかるから私は強くは言えないの」
「ごめんねオジサン」
「元気出せよオジサン」
イルマールが首を振り、苦笑いをして「参ったな」と言ってグリムレインを見る。
「グリムレインはドラゴン・ハーフには怒らないんですね」
グリムレインが氷をガリボリ音を立てて食べながら、首をかしげる。
「・・・んっ?我に怒って欲しいのか?」
「あ、いえ、そうではないです。光竜の様な反応が無いと思って」
「我はドラゴン・ハーフになった人間も食われた同胞にも興味はない。卵に孵る時は己の安全を怠った同胞が悪い。そして同胞を食った愚か者はドラゴンの呪いで短命だ。そのうち淘汰される。我の気にする事ではないのだ」
「え・・・?短命?」
「なんだジス家の息子はそんな事も知らずにドラゴン・ハーフを従者にしていたのか?」
グリムレインがエスタークの命の期限を「あと持って50年。短いものだな」と告げる。
永遠を生きるドラゴンから見た人の人生はとても短い。
グリムレインの言葉にイルマールもエスタークも複雑な顔をするしかなかった。
ただの踊り子ではなく、花人族の人を魅了して歩く『踊り子』と名称付けられた流浪の民。
男でも女でもなく雌雄同体の体を持つ美しい者達。
そんな彼らは、人を魅了する能力を使い踊りながら人を物色して歩く。
魔国エグザドルに近いトリステンの街は今、夏の終わりを迎える花祭りを開催している。
トリステンの街に今現在、滞在している踊り子達は「祭りの間は稼ぎ時よ」と言いながら、魅了の力を存分に発揮している。
「新しい花籠を貰える?もう花を投げ終わってしまったの」
踊り子がそう言ってバンカーテントの中に顔を出すと、「どうぞ」と花でいっぱいになった花籠が渡される。
手渡した人物は長い金髪に花を幾つも付けて、一見女性にも見えるが男性で、褐色の肌に白い耳に白い尾をしたサファイアブルーの瞳の男だった。
テルトワイト・ジス。
イルマールの父親でミシリマーフの神官は『踊り子』達と行動を共にしている。
従者のダリドアは身軽な格好で踊る踊り子達と共にアクロバティックな動きをしながら、見ている人々を歓声で沸かせていた。
ダリドアの仕事は踊り子たちの護衛で、何かあれば直ぐに対処出来るように常に彼らの近くに居る。
何故、2人が踊り子たちと共に行動しているかと言えば、踊り子達が滞在していた貴族屋敷がテルトワイトの知り合いの屋敷で、踊り子たちが面白がって逃亡をするなら自分達と共に行動すればいいとテルトワイト達を旅に引きずり込んだのである。
息子のイルマールと従者のエスタークは既に移動していて足取りがつかめず、2人を探そうにも追手が自分達にも迫っていて同じ場所に留まる事が出来ず、泣く泣く踊り子たちと行動を共にした。
ダリドアは言う。
「主君契約をしているから、主に何かあれば判る。主は無事だ」
テルトワイトはその言葉だけを心の支えに今日もこうして騒がしくも賑やかな踊り子たちと共に居るのだった。
「神官様はとても綺麗ね。今日も麗しいわ」
「ありがとうございます」
踊り子が誉めてもテルトワイトはにこやかな笑みで返すだけで、踊り子たちの魅了が効かない。
その穏やかな雰囲気が踊り子たちをも魅了していた。
自分が落としてみたい。そう思う踊り子も居る程にテルトワイトは神秘的な見た目と人柄だった。
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【聖域の雫】は踊り子が、ある貴族に貰った物でオパール色の雫は温泉大陸でルーファスが手渡してくれたポーションによく似ていた為に、テルトワイトはイルマールの為にもう一度温泉大陸へ行き、ルーファスからあのポーションを貰い、イルマールの呪詛を解除してやりたいと思って居る。
ようやく、温泉大陸への定期船が出ている魔国エグザドルの近くまでたどり着いたのである。
踊り子たちは時期じゃないので温泉大陸へ入る通行証が使えないらしい。
彼等、踊り子の通行証は冬の期間限定で通行できるものらしく、エグザドルで一旦、踊り子達とは行動を別れて過ごすことになる。
「神官様とあともう少しでお別れなんて寂しいわ」
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ニコリとテルトワイトが微笑んで踊り子たちが黄色い声を上げる。
「主が見たら何というか・・・」
喉を潤しに戻ったダリドアがテルトワイトに少し呆れた声を出して、飲み物を飲み干すとまた踊り子たちと一緒に人々を沸かせに行ってしまう。
「私にはダリドアがあの子以外と一緒に行動している事の方が何とも言えませんけどね」
小さくテルトワイトが言いながら、また花籠に髪に挿した花を取りながら埋めていく。
「イルは元気でいるでしょうか・・・」
バンカーテントから見上げる陽気な空を見上げて、テルトワイトが自分の息子に思いをはせる。
空の色はまるでイルマールの瞳の色の様だとテルトワイトは思い、手を伸ばす。
__温泉大陸【刻狼亭】『女将亭』。
朱里と双子がアルビーを宥めるのに失敗し、アルビーが怒って「ほっといて!」と、飛んで行ってしまった。
申し訳なさそうな顔をしたイルマールとエスタークに朱里も申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい。アルビーの気持ちも少しわかるから私は強くは言えないの」
「ごめんねオジサン」
「元気出せよオジサン」
イルマールが首を振り、苦笑いをして「参ったな」と言ってグリムレインを見る。
「グリムレインはドラゴン・ハーフには怒らないんですね」
グリムレインが氷をガリボリ音を立てて食べながら、首をかしげる。
「・・・んっ?我に怒って欲しいのか?」
「あ、いえ、そうではないです。光竜の様な反応が無いと思って」
「我はドラゴン・ハーフになった人間も食われた同胞にも興味はない。卵に孵る時は己の安全を怠った同胞が悪い。そして同胞を食った愚か者はドラゴンの呪いで短命だ。そのうち淘汰される。我の気にする事ではないのだ」
「え・・・?短命?」
「なんだジス家の息子はそんな事も知らずにドラゴン・ハーフを従者にしていたのか?」
グリムレインがエスタークの命の期限を「あと持って50年。短いものだな」と告げる。
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グリムレインの言葉にイルマールもエスタークも複雑な顔をするしかなかった。
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