黒狼の可愛いおヨメさま

８章

ハガネと3人の子供達

　朱里の1人目の従者のハガネ。
東国の幻惑使いと呼ばれ、幻惑の使い手。
魔法に関しては割りと造詣が深い。
日常生活においては経験から色々な物事を吸収しやれない事はなさそうな器用さを発揮している。
性格は少しふざけた所もあり飽きっぽい所もあるけれど、基本優しい男なのだ。
貉むじなの獣人で「狸」とよく言われているがアナグマが正解らしい。

「はがにゃー！だっこー！」
「おっ、シュー坊。今日もご機嫌だな」

ハガネがシュトラールを抱き上げると、ハガネの足元をテシテシとリュエールがムスッとしながら叩いてしがみつく。

「・・・はがにゃ、しゅーかえして。かえして」
「返して欲しいのか？シュー坊、リュー坊が返してだってよ」
「りゅー！はがにゃ、だっこ！」
「おっ、リューも抱っこすりゃいいのか？」
「りゅー！だっこ！だっこ！」
「だっこ、しにゃい！しゅー、かえして！」
「ほらよ。リュー坊は素直じゃねぇな」

ハガネに双子が抱き上げられると双子がドヤっとした顔をしてご機嫌で足をバタつかせる。

「はがにゃ・・・りりも・・・」

既にハガネの腕が双子に取られていて自分の場所が無い事を見ると、リリスの顔がしょんぼりとしていくと、リュエールがハガネの腕から肩によじ登り、ハガネの頭にしがみつきリリスに向けた視線をフイッと横にする。

「リリ助。リューが場所譲るってよ。リリ助も来い来い」
「はがにゃ！はがにゃ！」

　リリスがぴょんぴょん跳ねてハガネが抱き上げ、右腕にシュトラール、左腕にリリス、両肩に足を掛けて頭にしがみついているリュエールの3人乗せをしながら、朱里の店の庭を歩くと森の中から温泉鳥達が「アゴー」と声を出しながらハガネの周りに集まってくる。

「よーし！今日もこいつ等、温泉鳥を使って魔法の練習をするぞ！」
「まほー！」
「・・・フッ」
「まほー！」

　リュエールだけが鼻で返事をし、シュトラールとリリスが元気に答える。
ハガネが怪我をした温泉鳥を魔法で治す方法を3人に教えながら、3人の能力を伸ばして勉強をさせている。

　リュエールとシュトラールは2歳3ヶ月リリスが2歳1ヶ月と、2歳の誕生日をそれぞれ迎え、能力に関しても判明してきた部分が多い。

　リュエールは【破壊】の能力を1歳5ヶ月の時からハガネが使い方をリュエールと共に解析していったところ、【破壊】は進化し、今では病気になった温泉鳥の病気だけを破壊して治すという物に進化した。
ただし、まだ子供なので力加減が出来ずに未だに感情の起伏で物を普通に破壊してしまう事がある。

　性格だけならば、リュエールは少しひねくれた所が出始め、少し『ツン』『察して』属性と朱里に言われている。
ただ、一番上のお兄さんの自覚もあるのでシュトラールやリリスに譲る事が多い為、朱里がそれを見るたびに全力で可愛がり「お兄ちゃん偉い！お兄ちゃん流石！出来た子！」と抱きしめたりするので朱里にだけはリュエールも素直に甘えている。


　シュトラールの【全回復】は範囲が固定されずに全力で周りを軒並み回復してしまう傾向にあるので、こちらもハガネが使い方を制御させようと奮闘している。
範囲が広いとすぐに魔力を使い果たし獣化したまま何日も姿が戻らず、製薬部隊では子供用の魔力回復ポーションを作るのに四苦八苦している。
朱里に似て一口目で不味ければ飲んではくれない、困ったところが母親に似ている。
今のところ、範囲を狭める魔法を覚えている最中といったところだ。

　性格はいつもニコニコしていて元気いっぱいな子供らしい子供だが、リュエールの解り難い態度を一番察していて、リュエールの通訳機なところがある。
人を思いやる能力に長けている子で優しい子だと、朱里が自慢している。
愛想の良い子ではあるが、怖がりな所もあり、何かあるとリュエールの後ろに隠れてしまう困った子でもある。


　リリスは【聖堂】という能力を持っている。
リリスの能力が発動すると【聖堂】の発動した範囲は悪意のある者や魔獣・病気・災害などが弾かれるために、プチ【聖女】と呼ばれている。
ただし、これも子供なので魔力の消費が早く長時間は保てない。
ありすと違い、駄々洩れしている能力ではなく、自分の意思で出している為に範囲などをハガネが教えてコントロールさせている。
普通に聖属性の回復も小さなかすり傷程度なら治すので、温泉鳥を使い傷を治させながらコントロールを覚えさせている最中である。

　性格は引っ込み思案で、リュエールやシュトラールの後ろをいつもついて歩いている。
朱里を自分の母親ではないと少し理解しているものの、やはり母恋しさに朱里に甘えてしまいリロノスの少し困った顔にしょんぼりとした顔をするので、リロノスがその度にリリスを連れて色々と見せて回るのでリリスは双子よりも外の世界を知っているし、リロノスの戦い方を見て自分がどう動けば安全かを知っている為に温泉大陸以外では、達観した2歳児である。

　3人共、母親達の【聖女】【聖域】の影響で体に毒素が溜まりやすくなる事を懸念されたが、問題はなく、むしろ朱里が毒素が溜まったり熱を出したりすると、触っただけで回復してくれる。
しかし、これに関しては誰が出した能力かは判らず、今現在問題は保留されている。


　リリスの母親ありすを助ける為にシュトラールの【全回復】を使える様にしたいところではあるが、2歳児なので今はまだ訓練中で、アルビーと朱里頼りでありすを目覚めさせる計画を進めている。