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8章
ありすの子供 ※出産表現アリ
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紅葉が深まる木々の色を見ながら、新しい【刻狼亭】の販売スペースに【風雷商】経由でガルドアス領から荷物が届き、木箱から販売する為の温泉鳥の人形を取り出して並べていく。
金髪の髪を一つに縛り、エプロンをしている青年はテキパキと陳列の仕事をこなしていく。
アメジスト色の瞳が朱里と合うと、申し訳なさそうな表情になる。
「アカリさん、すいません。うちの子まで見てもらって」
「良いんですよ。リロノスさんがお店を手伝ってくれてるから助かってますし」
朱里が腕の中に抱いた金髪に白い角の生えた赤ん坊をあやしながら、荷物のチェックをしていく。
ありすとリロノスの子供で女の子のリリス。
まだ生後3週間の乳飲み子で、ありすの代わりに朱里が面倒を見ている。
「リロノスさん、陳列が終わったらお昼にしましょう」
「ええ。すいません」
「リロノスさん、すいませんは要らないですよ。こういう時はお互い様ですから」
「ありがとう」
「はい。2階でご飯の準備してますね」
朱里が2階に姿を消すと、リロノスが寂しそうな表情をして陳列作業に戻る。
朱里の腕の中で少しぐずっていたリリスを思うと、リロノスの心は沈んでいく。
「アリス・・・私達の娘は元気にしているよ」
3週間前まではこんな事になるなんて誰も予想していなかった。
予定日より3日程早く破水したありすが産院に運び込まれ、ありすもその時は「うちの頑張りを見とくし!」と、元気に騒いでいたのだ。
産医に渡された出産の冊子等も読んで色々と勉強していたのだが、いざこうなるとオロオロと落ち着かず、痛がるありすに何かしてあげる事も出来ない。
手を握ろうとしたら産医に「手を折られるから止めておきなさい」と、注意を受けた。
むしろ邪魔だからと、追い出された。
部屋の前でウロウロしていたら、知らせを聞いた朱里がスマートフォンを持って現れた。
ギリギリ修復に間に合ったらしく、急げとばかりに朱里が産院までグリムレインに乗って着地した時の衝撃でリロノスが部屋のドアに鼻をぶつけてしまったのはご愛敬である。
朱里がスマートフォンの使い方をリロノスに教えて「頑張れ!」と、応援しながら廊下の椅子に座ってリロノスと一緒に待っていたのだが、3時間以上待っても進展はなく、時間が掛かるのも仕方が無いと、グリムレインを連絡要員に産院に置いていき、朱里に連れられて一旦、朱里達の家に招かれて食事を摂った。
「リロノスさん、出産後の方が大変なんだから今は体力温存です」
「そうだぞ。出産後に動けるのはお前だけなんだからな」
朱里とルーファスに2ヶ月先輩の育児のアドバイスを受け、リロノスが素直に聞き、お互いの手を口に持っていこうとする双子の赤ん坊に微笑む。
「あと少しで私にも可愛い子供が・・・」
「うちの子達を見て可愛いなら、自分達の子供はもっと可愛く感じますよ」
「アカリ、うちの子達は可愛いぞ」
「ええ。でも親の欲目もありますからね?ふふ」
「リュー、シュー、口にお互いの手を入れるんじゃない」
ルーファスが双子の口から手を取り出して布巾で双子の手を拭くと、逆の手をまた口に入れてルーファスが苦笑いしながら「降参だ」と、早くも白旗を上げた。
「出産は1日掛かる人もいますから、休める時に休んでありすさんが必要と思う時に直ぐに駆け付けられるようにしてください」
「ええ。食べ終わったら直ぐにアリスの元へ戻ります」
リロノスが直ぐに戻りたそうにしているのは見てわかっているので、朱里もルーファスも止めたりはしない。
言葉通り、食べ終わるとリロノスは直ぐに産院に戻っていってしまった。
「男の子と女の子どっちでしょうね?」
「男ならうちの子達の良い遊び仲間になるな。女だとシノノメに似て騒がしい子になりそうだ」
「ルーファス、前から思ってましたけど、ありすさんはリロノスさんと結婚してるので、シノノメではなく、アリスと呼んであげるのが正しいと思います」
「それもそうだな。シノノメの方で定着していた」
「リロノスさんですらアリス呼びになっているのだから、気を付けましょうね」
「ああ。わかった」
リロノスと交替でグリムレインが家に戻ると渋い顔をして朱里の顔を見る。
「グリムレインどうかしたの?」
「嫁・・・、いや、嫁には血が足りないな」
朱里が首をかしげると、グリムレインが朱里の頭を撫で、双子を見つめて小さく溜息を吐く。
グリムレインの様子にルーファスがグリムレインをリビングから連れ出し、小声で何があったかを尋ねる。
「アリスの状態を見たのだが、あのままでは大量出血を起こす。おそらく助からない」
「・・・そうか。それでアカリの血を必要としているわけか」
「嫁は乳をやっている分、血液が足りない。嫁まで命の危険に晒せない」
「他の人間の血は使えないのか?」
「嫁の血でなければアリスの血が穢れてしまうだろうな」
「・・・アカリには言わない方がいいだろうな」
ありすの命も大事だが、双子の為にも朱里には無茶をしてほしくないのが2人の本心だ。
その日は表面上は何事もなく過ぎ、次の日、ルーファスが仕事に出掛けハガネとアルビーに双子を預けて朱里がグリムレインと産院に様子を見に行くと、産院は慌ただしくなっていた。
廊下で呆然としているリロノスに朱里が何事かと尋ねれば、リロノスが朱里の肩を掴みありすを助けてくれと叫ぶように懇願した。
「赤ん坊の角が・・・アリスの中で刺さって、大量出血を起こして・・・君なら【聖域】の力でアリスを助けられるだろ?!助けてくれ!!」
「それは、無理です・・・ごめんなさい。私の能力は怪我を治すものじゃなくて穢れや呪いを払うものだから・・・」
産院の廊下でリロノスの悲痛な「助けてくれ」という声が響いた。
金髪の髪を一つに縛り、エプロンをしている青年はテキパキと陳列の仕事をこなしていく。
アメジスト色の瞳が朱里と合うと、申し訳なさそうな表情になる。
「アカリさん、すいません。うちの子まで見てもらって」
「良いんですよ。リロノスさんがお店を手伝ってくれてるから助かってますし」
朱里が腕の中に抱いた金髪に白い角の生えた赤ん坊をあやしながら、荷物のチェックをしていく。
ありすとリロノスの子供で女の子のリリス。
まだ生後3週間の乳飲み子で、ありすの代わりに朱里が面倒を見ている。
「リロノスさん、陳列が終わったらお昼にしましょう」
「ええ。すいません」
「リロノスさん、すいませんは要らないですよ。こういう時はお互い様ですから」
「ありがとう」
「はい。2階でご飯の準備してますね」
朱里が2階に姿を消すと、リロノスが寂しそうな表情をして陳列作業に戻る。
朱里の腕の中で少しぐずっていたリリスを思うと、リロノスの心は沈んでいく。
「アリス・・・私達の娘は元気にしているよ」
3週間前まではこんな事になるなんて誰も予想していなかった。
予定日より3日程早く破水したありすが産院に運び込まれ、ありすもその時は「うちの頑張りを見とくし!」と、元気に騒いでいたのだ。
産医に渡された出産の冊子等も読んで色々と勉強していたのだが、いざこうなるとオロオロと落ち着かず、痛がるありすに何かしてあげる事も出来ない。
手を握ろうとしたら産医に「手を折られるから止めておきなさい」と、注意を受けた。
むしろ邪魔だからと、追い出された。
部屋の前でウロウロしていたら、知らせを聞いた朱里がスマートフォンを持って現れた。
ギリギリ修復に間に合ったらしく、急げとばかりに朱里が産院までグリムレインに乗って着地した時の衝撃でリロノスが部屋のドアに鼻をぶつけてしまったのはご愛敬である。
朱里がスマートフォンの使い方をリロノスに教えて「頑張れ!」と、応援しながら廊下の椅子に座ってリロノスと一緒に待っていたのだが、3時間以上待っても進展はなく、時間が掛かるのも仕方が無いと、グリムレインを連絡要員に産院に置いていき、朱里に連れられて一旦、朱里達の家に招かれて食事を摂った。
「リロノスさん、出産後の方が大変なんだから今は体力温存です」
「そうだぞ。出産後に動けるのはお前だけなんだからな」
朱里とルーファスに2ヶ月先輩の育児のアドバイスを受け、リロノスが素直に聞き、お互いの手を口に持っていこうとする双子の赤ん坊に微笑む。
「あと少しで私にも可愛い子供が・・・」
「うちの子達を見て可愛いなら、自分達の子供はもっと可愛く感じますよ」
「アカリ、うちの子達は可愛いぞ」
「ええ。でも親の欲目もありますからね?ふふ」
「リュー、シュー、口にお互いの手を入れるんじゃない」
ルーファスが双子の口から手を取り出して布巾で双子の手を拭くと、逆の手をまた口に入れてルーファスが苦笑いしながら「降参だ」と、早くも白旗を上げた。
「出産は1日掛かる人もいますから、休める時に休んでありすさんが必要と思う時に直ぐに駆け付けられるようにしてください」
「ええ。食べ終わったら直ぐにアリスの元へ戻ります」
リロノスが直ぐに戻りたそうにしているのは見てわかっているので、朱里もルーファスも止めたりはしない。
言葉通り、食べ終わるとリロノスは直ぐに産院に戻っていってしまった。
「男の子と女の子どっちでしょうね?」
「男ならうちの子達の良い遊び仲間になるな。女だとシノノメに似て騒がしい子になりそうだ」
「ルーファス、前から思ってましたけど、ありすさんはリロノスさんと結婚してるので、シノノメではなく、アリスと呼んであげるのが正しいと思います」
「それもそうだな。シノノメの方で定着していた」
「リロノスさんですらアリス呼びになっているのだから、気を付けましょうね」
「ああ。わかった」
リロノスと交替でグリムレインが家に戻ると渋い顔をして朱里の顔を見る。
「グリムレインどうかしたの?」
「嫁・・・、いや、嫁には血が足りないな」
朱里が首をかしげると、グリムレインが朱里の頭を撫で、双子を見つめて小さく溜息を吐く。
グリムレインの様子にルーファスがグリムレインをリビングから連れ出し、小声で何があったかを尋ねる。
「アリスの状態を見たのだが、あのままでは大量出血を起こす。おそらく助からない」
「・・・そうか。それでアカリの血を必要としているわけか」
「嫁は乳をやっている分、血液が足りない。嫁まで命の危険に晒せない」
「他の人間の血は使えないのか?」
「嫁の血でなければアリスの血が穢れてしまうだろうな」
「・・・アカリには言わない方がいいだろうな」
ありすの命も大事だが、双子の為にも朱里には無茶をしてほしくないのが2人の本心だ。
その日は表面上は何事もなく過ぎ、次の日、ルーファスが仕事に出掛けハガネとアルビーに双子を預けて朱里がグリムレインと産院に様子を見に行くと、産院は慌ただしくなっていた。
廊下で呆然としているリロノスに朱里が何事かと尋ねれば、リロノスが朱里の肩を掴みありすを助けてくれと叫ぶように懇願した。
「赤ん坊の角が・・・アリスの中で刺さって、大量出血を起こして・・・君なら【聖域】の力でアリスを助けられるだろ?!助けてくれ!!」
「それは、無理です・・・ごめんなさい。私の能力は怪我を治すものじゃなくて穢れや呪いを払うものだから・・・」
産院の廊下でリロノスの悲痛な「助けてくれ」という声が響いた。
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