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7章
刻狼亭の双子
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ルーファスと朱里に双子が生まれた事を知らせにグリムレインが【刻狼亭】へ知らせに飛び、屋敷に戻ったギルにもついでに伝えに行くと、ギルより先にアルビーが屋敷を飛び出した。
新店舗の【刻狼亭】1階の販売スペースになる場所に【刻狼亭】の関係者が集まり、ハガネに「静かにしねぇと叩きだす」と怒られていた。
「お湯玉で全身洗ったから!」
「せめて一目16代目を見せてくれー!」
「女将に一言労いの言葉を!」
ワッと騒ぐ来訪者たちにハガネが目を吊り上げる。
「だーかーらー、赤ん坊が起きて泣くから声を出した奴は帰れ!」
来訪者たちは自分たちの口を押えながら、目で訴えるがハガネが「お帰りはあちら」と指で出入口をさす。
「可愛かったー」
「私の大甥達は天使でした。もう少し見ていたいです」
「アカリの迷惑になる。主は早く帰るべきだ」
2階からアルビーとギルとネルフィームが下りてくるとワラッと来訪者たちが3人に群がる。
「どんな感じでしたか?」
「どっち似ですか?」
アルビーとギルが少し興奮気味に話しに食いつき、目じりを下げる。
「お兄さんがアカリに似てて、弟がルーファスに似てたよ」
「黒狼族の子だと直ぐにわかる耳と尻尾は可愛かったです!」
「【刻狼亭】も安泰だね」
「私もようやく肩の荷が下りました。ああ、でも大甥達を鍛えないと」
「ギル、それは駄目」
「主はいい加減にしろ。まったく、周りの者も後日改めるべきだ。アカリを休ませてやれ」
ネルフィームの言葉に来訪者たちは項垂れながらも、産んでから数時間しか経っていないのに押し掛けたのはさすがに駄目かとすごすごと帰っていく。
アルビーとギルもネルフィームに首を掴まれながら、ギルが双子とは予想外だったのでベビーベッドをもう1台注文すると張り切って帰っていった。
寝室のベッドに横になりながら朱里が少し困った顔をする。
「どうしたアカリ?」
「私、胸大きいのにお乳あんまり出ないんだなーって・・・」
「まぁ、仕方がないな。乳の出る乳母でも雇うしかないだろう」
「自分のお乳で育てたかったのに、残念です・・・」
「とりあえず、アカリは今は休んでおけ。これから忙しくなるんだしな」
「はい。少し疲れてるので寝ます・・・」
ウトウトしながら朱里が「一仕事終えました」と、言うと眠りについた。
朱里のおでこにキスをして「ご苦労様」と一言いい、ルーファスが静かに部屋を出ていく。
ルーファスがリビングに行くと、ハガネとグリムレインがベビーベッドを囲んで双子を見ている。
「旦那、アカリはどうだ?休んだか?」
「ああ。ようやく休んだ」
「明日の昼ぐらいからアカリが大変になるから今のうちに休ませねぇとな」
「それなんだが、乳母を雇おうと思っている」
「乳母なんて居なくても俺等が居れば何とかなるだろ?」
「アカリの乳の出が悪いみたいでな」
「なら少し様子見だな。出産して1日くらい経たないと母乳はでねぇんですよ」
「そうなのか?」
「出る奴は出るみてぇだが、一般的には出産後1日が目安らしいぞ?」
「ハガネは何でも知ってるな・・・」
「経験値の差だな」
ベビーベッドを覗き込みながらルーファスが「後少しだけお母さんを休ませてあげるんだぞ?」と、子供達に小さく願うと、ハガネがルーファスを見ながら「十分大人しくしてる良い子達じゃねぇか」と白い歯を見せて笑う。
「我の『祝福』で安産だっただろう。感謝しろ婿よ」
「グリムレイン、その『祝福』で兄の方は獣化したままだったのか?」
「そうかもしれんし、違うかもしれん。一番安産になりやすい形で生まれるからな」
「ふむ。しっかり大きくなってくれたらそれでいいんだが」
双子の弟より小さな兄はちゃんと成長できるかがルーファスとしては心配で、長子が16代目を継ぐ事もあり、ギルの様になりたくはないが、少し鍛えてあげた方が将来的には良いのかも迷う。
しかし、一番の懸念は双子が朱里の【聖域】を受け継いでいるかどうかだ。
受け継いでいたら、朱里同様に色々な物から守っていかなければいけない。
「うーん」と唸りながら悩むルーファスにハガネが肩をすくめる。
「旦那、若2人に色々心配する前に先に悩むことがあるだろ?」
「何かあったか?」
「若2人の名前だよ」
「ああ、それはアルビーの仕事だ。昔からの約束だからな」
「ギルが文句言わねぇのか?」
「それはないな。アルビーの主君の契約は『名付け親』になる事だからな。ギル叔父上がオレの為にアルビーを卵で連れ帰ったが、契約条件が合わずに、オレに子供が生まれたら名付け親にアルビーがなって、次の当主を守るドラゴンにする話だったからな」
「アカリもドラゴンの君主なら若達もドラゴン持ちになんのか」
ベビーベッドで眠る双子にハガネが「ふへぇ」と声を出すと、グリムレインがドヤ顔をしてハガネに「オレが先輩だからな?」と言われ、小さな火花を散らせる。
意外とこだわるハガネにルーファスが「アカリに関してはオレが一番先輩だからな」と、笑いながら言うと「旦那(婿)は参戦しなくていい」と却下される。
一晩休んだ朱里が朝には胸が張って「お乳がでますよ!」とルーファスを叩き起こし、母乳問題が解決したことを宣言し、同時に赤ん坊の泣き声に慌ただしくなっていった。
ルーファスのお願いをちゃんと聞いてくれる息子達に「両親思いの良い子達だ」とルーファスが頷く。
「ルーファス手伝って~」
早速、新米お母さんから要請が出てルーファスが慌てて駆けていった。
新店舗の【刻狼亭】1階の販売スペースになる場所に【刻狼亭】の関係者が集まり、ハガネに「静かにしねぇと叩きだす」と怒られていた。
「お湯玉で全身洗ったから!」
「せめて一目16代目を見せてくれー!」
「女将に一言労いの言葉を!」
ワッと騒ぐ来訪者たちにハガネが目を吊り上げる。
「だーかーらー、赤ん坊が起きて泣くから声を出した奴は帰れ!」
来訪者たちは自分たちの口を押えながら、目で訴えるがハガネが「お帰りはあちら」と指で出入口をさす。
「可愛かったー」
「私の大甥達は天使でした。もう少し見ていたいです」
「アカリの迷惑になる。主は早く帰るべきだ」
2階からアルビーとギルとネルフィームが下りてくるとワラッと来訪者たちが3人に群がる。
「どんな感じでしたか?」
「どっち似ですか?」
アルビーとギルが少し興奮気味に話しに食いつき、目じりを下げる。
「お兄さんがアカリに似てて、弟がルーファスに似てたよ」
「黒狼族の子だと直ぐにわかる耳と尻尾は可愛かったです!」
「【刻狼亭】も安泰だね」
「私もようやく肩の荷が下りました。ああ、でも大甥達を鍛えないと」
「ギル、それは駄目」
「主はいい加減にしろ。まったく、周りの者も後日改めるべきだ。アカリを休ませてやれ」
ネルフィームの言葉に来訪者たちは項垂れながらも、産んでから数時間しか経っていないのに押し掛けたのはさすがに駄目かとすごすごと帰っていく。
アルビーとギルもネルフィームに首を掴まれながら、ギルが双子とは予想外だったのでベビーベッドをもう1台注文すると張り切って帰っていった。
寝室のベッドに横になりながら朱里が少し困った顔をする。
「どうしたアカリ?」
「私、胸大きいのにお乳あんまり出ないんだなーって・・・」
「まぁ、仕方がないな。乳の出る乳母でも雇うしかないだろう」
「自分のお乳で育てたかったのに、残念です・・・」
「とりあえず、アカリは今は休んでおけ。これから忙しくなるんだしな」
「はい。少し疲れてるので寝ます・・・」
ウトウトしながら朱里が「一仕事終えました」と、言うと眠りについた。
朱里のおでこにキスをして「ご苦労様」と一言いい、ルーファスが静かに部屋を出ていく。
ルーファスがリビングに行くと、ハガネとグリムレインがベビーベッドを囲んで双子を見ている。
「旦那、アカリはどうだ?休んだか?」
「ああ。ようやく休んだ」
「明日の昼ぐらいからアカリが大変になるから今のうちに休ませねぇとな」
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「アカリの乳の出が悪いみたいでな」
「なら少し様子見だな。出産して1日くらい経たないと母乳はでねぇんですよ」
「そうなのか?」
「出る奴は出るみてぇだが、一般的には出産後1日が目安らしいぞ?」
「ハガネは何でも知ってるな・・・」
「経験値の差だな」
ベビーベッドを覗き込みながらルーファスが「後少しだけお母さんを休ませてあげるんだぞ?」と、子供達に小さく願うと、ハガネがルーファスを見ながら「十分大人しくしてる良い子達じゃねぇか」と白い歯を見せて笑う。
「我の『祝福』で安産だっただろう。感謝しろ婿よ」
「グリムレイン、その『祝福』で兄の方は獣化したままだったのか?」
「そうかもしれんし、違うかもしれん。一番安産になりやすい形で生まれるからな」
「ふむ。しっかり大きくなってくれたらそれでいいんだが」
双子の弟より小さな兄はちゃんと成長できるかがルーファスとしては心配で、長子が16代目を継ぐ事もあり、ギルの様になりたくはないが、少し鍛えてあげた方が将来的には良いのかも迷う。
しかし、一番の懸念は双子が朱里の【聖域】を受け継いでいるかどうかだ。
受け継いでいたら、朱里同様に色々な物から守っていかなければいけない。
「うーん」と唸りながら悩むルーファスにハガネが肩をすくめる。
「旦那、若2人に色々心配する前に先に悩むことがあるだろ?」
「何かあったか?」
「若2人の名前だよ」
「ああ、それはアルビーの仕事だ。昔からの約束だからな」
「ギルが文句言わねぇのか?」
「それはないな。アルビーの主君の契約は『名付け親』になる事だからな。ギル叔父上がオレの為にアルビーを卵で連れ帰ったが、契約条件が合わずに、オレに子供が生まれたら名付け親にアルビーがなって、次の当主を守るドラゴンにする話だったからな」
「アカリもドラゴンの君主なら若達もドラゴン持ちになんのか」
ベビーベッドで眠る双子にハガネが「ふへぇ」と声を出すと、グリムレインがドヤ顔をしてハガネに「オレが先輩だからな?」と言われ、小さな火花を散らせる。
意外とこだわるハガネにルーファスが「アカリに関してはオレが一番先輩だからな」と、笑いながら言うと「旦那(婿)は参戦しなくていい」と却下される。
一晩休んだ朱里が朝には胸が張って「お乳がでますよ!」とルーファスを叩き起こし、母乳問題が解決したことを宣言し、同時に赤ん坊の泣き声に慌ただしくなっていった。
ルーファスのお願いをちゃんと聞いてくれる息子達に「両親思いの良い子達だ」とルーファスが頷く。
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早速、新米お母さんから要請が出てルーファスが慌てて駆けていった。
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