黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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7章

17歳

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「今日・・・そういえば4月1日、誕生日」

朱里が自分の口元に手を当てながらルーファスを驚いた顔で見る。
ルーファスは笑顔で頷きながら、朱里の腕にブレスレットをはめる。

「アカリがこの世界にくる前の日が誕生日だと前に言ってたからな」
「覚えててくれたの?どうしよう・・・すごく嬉しい!」
「自分の番の誕生日くらい覚えているさ」
「私、ルーファスの誕生日知らない・・・教えて?」
「9月3日だ」
「覚えました!9月3日は盛大にお祝いしましょうね!」

 朱里が少し興奮気味に元気よく言った瞬間、顔をしかめて「痛・・・っ」と、お腹を押さえるとルーファスがサッと血の気の引いた顔で立ち上がる。 

「アカリ大丈夫か?産医を呼ぶか?」

周りの従業員にも緊張が走り、ガタッと音があちらこちらでする。
朱里が片手を上げて座る様にルーファスに促す。

「嬉しすぎて、興奮しちゃって、お腹が張っただけだから・・・大丈夫、あたた」

 椅子の背もたれにのけぞる様に座り、朱里が「えへへ」と笑いながら、周囲の席の人物たちに気付く。
少し中腰で心配そうに見ている客達は【刻狼亭】の従業員たちで私服姿で朱里達の席を囲んでいる。

「ん?んー・・・?」

 朱里がぐるりと見回してルーファスに目線を戻すと、困った顔で笑っている。
流石に朱里も気付く、これサプライズのバレちゃいけないヤツだと・・・。

「あー、まぁそのなんだ。飯でも食うか」
「はい・・・」

 料理長のアーネスが自ら食事のワゴンを運び、その場で野菜を飾り切りしながらガラスの器に花を作り上げ、前菜を作り、目で楽しませて朱里に「誕生日おめでとうございます女将」と告げて小さくウィンクする。

「アーネスありがとうございます。見て、ルーファス、お野菜が花だよ」
「ああ。アカリの為に見せ方を研究したらしいぞ」
「すごい・・・食べるのが勿体ない」
「まだまだ料理は続くから食べてやってくれ」
「はい。でも、本当に綺麗です」

 朱里が小さな白い花をフォークで刺して口の中に入れシャクシャクと食べ始める。
薄く切られた小さな白蕪しろかぶはほんのり甘くてお酢の味もしている。
柚子も少し入っているかもしれない。と、小さな花の味を楽しみ、食べ終わるとアーネスが次の料理をその場で出す。
透明なスープが小さな器に出て真ん中に白い水餃子の様な物が沈んでいる。
小さなスプーンで割ると、中から小さく切られた野菜が広がり、口の中に入れると酸味のある味にそれが何か気付く。

「これ、トゥートのスープにキュウリかな?」
「そうですよ。トゥートの透明スープです。キュウリは妊娠中の方には良い食材と伺ったので」
「美味しいです。お心遣いありがとうございます」

 朱里もキュウリがむくみ改善や葉酸が含まれているから食べると良いと産医に言われてしっかり摂る様にしている食材の1つでもある。

 魚料理が次に出て、その次に小さな凍らせたフルーツ、そして肉料理がでた時に朱里のお腹がポコポコと元気に動き、「お肉に反応しすぎです」と、お腹に向かって朱里が笑い、ルーファスとアーネスも「元気でなにより」と笑う。
最後に氷菓子とケーキにベリー系の実が添えられた物がデザートに出て食事のコースが終わる。

 温かいルイボスティーにバニラの香りが入ったお茶が出され、朱里がアーネスにお礼を言っていると、料亭内の照明が消され、隣のテーブルに何か丸い物が運び込まれる。

 周りのテーブルから従業員が立ち上がり、小さなガラスの花に魔力を通し色を付けると、隣りのテーブルの丸い物に花を挿して朱里に「誕生日おめでとうございます」と、一言ずつ言いながら丸い物が色とりどりのガラスの花で埋まっていく。

 薄暗い料亭内で綺麗な花籠が出来上がると、従業員が声を揃えて「おめでとう」と言ってくれて、朱里がぽろぽろと涙を流すと、料亭内の照明が明るくなり、朱里が両手で顔を隠しながらお礼を言う。

「皆、私を喜ばせすぎです。皆さん、本当にありがとうございます」

「アカリ、良かったな。他にもプレゼントがあるそうだが、屋敷の方へ持っていかせた」

「今度、全員の誕生日調べ上げますからね!」

 朱里がそう宣言しながら、楽しい誕生日を料亭内で過ごして花籠をルーファスに持って貰いながら屋敷に帰っていった。

 ルーファスに花籠を部屋に飾って貰い、屋敷に届けられたプレゼントを誰から何を貰ったかをメモしつつ、朱里の17歳の誕生日が過ぎていった。

 次の日にルーファスが出会った記念日と言ってキスと一緒に花束を渡され、2週間後に番になった日なので結婚記念日と言ってお揃いの指輪を貰った。

「幸せすぎて死んじゃう・・・」
「もっと幸せにするから、死ぬなら老衰で大往生にしてくれ」
「ルーファスも私が寂しいと困るので大往生で私より1分でも遅くお願いします」
「善処する」

 2人で顔を見合わせ合いながら笑ってキスを交わすと、ポコポコとお腹が鳴り、また2人が笑いだす。

「お腹が空いた様なので、ご飯ですね」
「そのようだ」

すっかり食いしん坊キャラが定着している我が子に2人は笑う。
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