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7章
魔国へようこそ
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「気持ち悪い・・・うぇー・・・」
魔国の港に到着した朱里の第一声がこれだった。
楽しい船旅になるはずが、時季外れの時化で海が荒れてしまい、操舵士の航海術の能力では揺れが全て押さえられるほどの能力はなかったらしい。
むしろ、揺れるならガンガン揺れていた方がマシなぐらいに、中途半端な揺れに揺さぶられすぎて朱里がダウンしたのだった。
ルーファスに支えてもらいながらヨロヨロと船のタラップを降りて、船酔い止め魔法を銀貨1枚で施します!というボッタクリな船の前で看板を出している男に頼みたいぐらいだったが・・・。
「1万円は高い!」と、朱里がヨロヨロしながら叫びルーファスの腕を取って歩き出す。
「アカリ、治してもらってからの方がいいんじゃないか?」
「駄目です。地面に着いたのなら私の勝ちですから!すぐ治るから!」
銀貨1枚は1万円、朱里にとっては1日フルで働いてようやく貰えるかどうかの金額だと極貧時代のバイト時代に染みついている金銭感覚で「駄目!絶対!勿体無い!」と、なっている。
逆にルーファスとしては「何が勝ちなのか?無理やり治させるべきか?」と頭を悩ませているところだ。
「アカリっちー!!」
人混みの中で明るい声が2人に近づいてくる。
声だけで誰かが分る特徴的な口調で、それが東雲ありすだと判る。
朱里が目を凝らして人混みの中をありすの姿を探すが、ありすの姿が見つからずキョロキョロと目を動かす。
「シノノメか。久しぶりだな」
ルーファスが目の前の少女に話しかけ、朱里が目を丸くする。
ルーファスの目の前に居た少女は朱里の記憶にあるありすとは少し変わっていた。
脱色した金髪ツインテールは黒髪の肩口まで切りそろえられた髪になっており、ドーランで褐色の肌をしていた肌も肌色になり、化粧を施していた顔も眉を描いてあるくらいだった。
「ルーっちにアカリっち、マジ久しぶりー!」
声と口調だけは変わらない。
ありすが朱里にニコッと笑って抱きしめると、変わらないありすの温かさに朱里も笑って抱きしめ返す。
「ありすさん、お久しぶりで・・・ぅぇ・・・」
「アカリっち、大丈夫?船酔い?」
「そうなんです。船が揺れまくって大変でしたよー」
「うち良い物持ってるよ」
ありすがスカートの中から小さな缶を出すと朱里の手の平にラムネの様な小さな緑色の粒を出す。
ありすも1粒食べて朱里にも食べる様に促すと、朱里も口に入れる。
「んっ!コレ、ミントタブレットですか?」
「そそ。ミントとブドウに薬草が混じったやつで吐き気がする時に食べると吐き気が収まるっしょ」
「スーッとして胃が落ち着きますね」
「でしょー。うちの最近の手放せないアイテムっしょ」
「そうなんですか?でも確かにコレ美味しいですから手放せなくなるの解ります」
「それだけじゃないんだけど、詳しくはうちの家に行ってからにするし」
ありすが朱里の手を引き、ルーファスが2人の後について歩く。
魔国は魔族が多いだけあって角が頭に生えていたり羽が背中に生えていたりと、ちょっとしたハロウィンパーティー会場だなと朱里は思いながらあるく。
温泉大陸と違い、着物を着ている人は居らず、どちらかと言えば中世のドレスといった風体の人々が多い。
ありすが2人を連れて訪れた場所はこじんまりした2階建ての1軒屋で周りの住民の家と大差ないレンガ造りの家だった。
「うちとリロッちの愛の巣っしょ」
そう言いながらありすが家の扉を開くと、入ってすぐリビングとキッチンがあり、リビングの横の階段で2階へ上がって客間を使う様に言われる。
「何だか予想外に普通の個人宅へお泊りに来た感じがする」
「オレも正式招待の定義を少し考えている」
ルーファスと朱里が目線を合わせて苦笑いしながら、ありすらしくて良いかと、結論を出し、トランクからありすとリロノスへのお土産を出すと1階へ戻る。
ありすがお茶を用意しながら、楽しそうにキッチンで動き回っている。
「ありすさんお手伝いしましょうか?」
「平気っしょ。アカリっちはお客さんなんだから椅子に座っててほしーっしょ」
「そうですか?」
ありすが頷きながら、リビングに戻りロールケーキとお茶を2人に出す。
「ありすさん、これお土産です。アンゴラータ族の織物で作ったケープです。ありすさんと私のはお揃いにして作ってもらったので、フード付きですこし長めに作ってもらったんです。あと、リロノスさんにワイン持ってきました」
「アカリっち、ありがとー!可愛いケープっしょ」
薄い桜色のフード付きケープに革で作った白いレースの特別仕様の物を渡し、ありすが喜ぶのを見ると朱里も頬を緩める。
「本当はお城でお迎えしたかったんだけどね、リロっちの弟くんに【魔王】の称号をもうあげている様な状態だから、お城からここへ移り住んでるところなんっしょ」
「そうだったんですか?もう問題は片付いたんですか?」
「ううん。でも基盤は作ったから、後は弟くんが引き継いでやっていくんだって。マデリーヌも引き続き手を貸してくれるし、魔国は安泰っしょ」
「それは良かったです」
外に騎獣の足音がすると慌ただしく玄関の扉が開き、長い髪を三つ編みでまとめた白い角の金髪で背の高い美丈夫の青年が入ってくる。
「リロっち、おかえりー」
「シノノメ!ただいま!体調は?今日は何ともない?」
ありすの体をまじまじと見つめながら【魔王】リロノスがありすに顔をグイっと引っ張られて「お客様っしょ」と朱里達の方へ顔を向けられる。
「失礼した。ようこそ魔国へ【刻狼亭】のお二人」
サッと顔を変えて笑顔をみせながら挨拶するリロノスは少し前まで情けない表情で自分の番を心配しまわっていた男とは思えない変わり身の速さである。
「お邪魔しています」
「久しいな【魔王】リロノス」
2人がリロノスに挨拶をすると、リロノスがありすに「説明はした?」「してない」と話し合い、リロノスがありすを椅子に座らせ、自分も椅子に座るとありすの手を握りながらルーファスと朱里に口を開く。
「実は、シノノメに子供が出来た」
魔国の港に到着した朱里の第一声がこれだった。
楽しい船旅になるはずが、時季外れの時化で海が荒れてしまい、操舵士の航海術の能力では揺れが全て押さえられるほどの能力はなかったらしい。
むしろ、揺れるならガンガン揺れていた方がマシなぐらいに、中途半端な揺れに揺さぶられすぎて朱里がダウンしたのだった。
ルーファスに支えてもらいながらヨロヨロと船のタラップを降りて、船酔い止め魔法を銀貨1枚で施します!というボッタクリな船の前で看板を出している男に頼みたいぐらいだったが・・・。
「1万円は高い!」と、朱里がヨロヨロしながら叫びルーファスの腕を取って歩き出す。
「アカリ、治してもらってからの方がいいんじゃないか?」
「駄目です。地面に着いたのなら私の勝ちですから!すぐ治るから!」
銀貨1枚は1万円、朱里にとっては1日フルで働いてようやく貰えるかどうかの金額だと極貧時代のバイト時代に染みついている金銭感覚で「駄目!絶対!勿体無い!」と、なっている。
逆にルーファスとしては「何が勝ちなのか?無理やり治させるべきか?」と頭を悩ませているところだ。
「アカリっちー!!」
人混みの中で明るい声が2人に近づいてくる。
声だけで誰かが分る特徴的な口調で、それが東雲ありすだと判る。
朱里が目を凝らして人混みの中をありすの姿を探すが、ありすの姿が見つからずキョロキョロと目を動かす。
「シノノメか。久しぶりだな」
ルーファスが目の前の少女に話しかけ、朱里が目を丸くする。
ルーファスの目の前に居た少女は朱里の記憶にあるありすとは少し変わっていた。
脱色した金髪ツインテールは黒髪の肩口まで切りそろえられた髪になっており、ドーランで褐色の肌をしていた肌も肌色になり、化粧を施していた顔も眉を描いてあるくらいだった。
「ルーっちにアカリっち、マジ久しぶりー!」
声と口調だけは変わらない。
ありすが朱里にニコッと笑って抱きしめると、変わらないありすの温かさに朱里も笑って抱きしめ返す。
「ありすさん、お久しぶりで・・・ぅぇ・・・」
「アカリっち、大丈夫?船酔い?」
「そうなんです。船が揺れまくって大変でしたよー」
「うち良い物持ってるよ」
ありすがスカートの中から小さな缶を出すと朱里の手の平にラムネの様な小さな緑色の粒を出す。
ありすも1粒食べて朱里にも食べる様に促すと、朱里も口に入れる。
「んっ!コレ、ミントタブレットですか?」
「そそ。ミントとブドウに薬草が混じったやつで吐き気がする時に食べると吐き気が収まるっしょ」
「スーッとして胃が落ち着きますね」
「でしょー。うちの最近の手放せないアイテムっしょ」
「そうなんですか?でも確かにコレ美味しいですから手放せなくなるの解ります」
「それだけじゃないんだけど、詳しくはうちの家に行ってからにするし」
ありすが朱里の手を引き、ルーファスが2人の後について歩く。
魔国は魔族が多いだけあって角が頭に生えていたり羽が背中に生えていたりと、ちょっとしたハロウィンパーティー会場だなと朱里は思いながらあるく。
温泉大陸と違い、着物を着ている人は居らず、どちらかと言えば中世のドレスといった風体の人々が多い。
ありすが2人を連れて訪れた場所はこじんまりした2階建ての1軒屋で周りの住民の家と大差ないレンガ造りの家だった。
「うちとリロッちの愛の巣っしょ」
そう言いながらありすが家の扉を開くと、入ってすぐリビングとキッチンがあり、リビングの横の階段で2階へ上がって客間を使う様に言われる。
「何だか予想外に普通の個人宅へお泊りに来た感じがする」
「オレも正式招待の定義を少し考えている」
ルーファスと朱里が目線を合わせて苦笑いしながら、ありすらしくて良いかと、結論を出し、トランクからありすとリロノスへのお土産を出すと1階へ戻る。
ありすがお茶を用意しながら、楽しそうにキッチンで動き回っている。
「ありすさんお手伝いしましょうか?」
「平気っしょ。アカリっちはお客さんなんだから椅子に座っててほしーっしょ」
「そうですか?」
ありすが頷きながら、リビングに戻りロールケーキとお茶を2人に出す。
「ありすさん、これお土産です。アンゴラータ族の織物で作ったケープです。ありすさんと私のはお揃いにして作ってもらったので、フード付きですこし長めに作ってもらったんです。あと、リロノスさんにワイン持ってきました」
「アカリっち、ありがとー!可愛いケープっしょ」
薄い桜色のフード付きケープに革で作った白いレースの特別仕様の物を渡し、ありすが喜ぶのを見ると朱里も頬を緩める。
「本当はお城でお迎えしたかったんだけどね、リロっちの弟くんに【魔王】の称号をもうあげている様な状態だから、お城からここへ移り住んでるところなんっしょ」
「そうだったんですか?もう問題は片付いたんですか?」
「ううん。でも基盤は作ったから、後は弟くんが引き継いでやっていくんだって。マデリーヌも引き続き手を貸してくれるし、魔国は安泰っしょ」
「それは良かったです」
外に騎獣の足音がすると慌ただしく玄関の扉が開き、長い髪を三つ編みでまとめた白い角の金髪で背の高い美丈夫の青年が入ってくる。
「リロっち、おかえりー」
「シノノメ!ただいま!体調は?今日は何ともない?」
ありすの体をまじまじと見つめながら【魔王】リロノスがありすに顔をグイっと引っ張られて「お客様っしょ」と朱里達の方へ顔を向けられる。
「失礼した。ようこそ魔国へ【刻狼亭】のお二人」
サッと顔を変えて笑顔をみせながら挨拶するリロノスは少し前まで情けない表情で自分の番を心配しまわっていた男とは思えない変わり身の速さである。
「お邪魔しています」
「久しいな【魔王】リロノス」
2人がリロノスに挨拶をすると、リロノスがありすに「説明はした?」「してない」と話し合い、リロノスがありすを椅子に座らせ、自分も椅子に座るとありすの手を握りながらルーファスと朱里に口を開く。
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