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7章
遠い日の約束
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「俺は言ったはずだ!冷やかしにくると!」
とても演技がかったポーズと共にアシュレイが言うと、ルーファスが半目でアシュレイを見つめ、手はお腹を抱えて笑う朱里の背中をさすっている。
「ああ、【病魔】騒ぎの時に言っていたが、そんな事の為に来たのか?暇な奴だな」
冷めた反応のルーファスにアシュレイが「ぐぬぬ」っと声を絞り出す。
「噂を信じて来たのに、噂と違う!何処が『美女』で『黒真珠』なんだ!」
「オレの番は美女ではなく『可愛い』だ。黒髪黒目、まさに『黒真珠』だろう?まぁ、貴族連中に言われているだけで、オレに言わせれば番の可愛らしさは宝石で例えられる物ではないな」
ルーファスがフッと笑い朱里の髪を撫でると、朱里が顔を上げて困った顔で「お腹痛い~」と手をお腹に当てながら笑う。
「ハァー、ハァー、ふぅ。ごめんなさい。もう、顔見るだけで笑えちゃって、ふふ」
「困った子だな。可愛いアカリのお腹が筋肉痛を起こす前に出て行ってもらおう」
朱里の笑いすぎでにじみ出た涙を唇で吸い取るとルーファスが満足そうに舌で唇を舐め「相変わらず甘い」とクスリと笑うと朱里が「メッ」とルーファスの唇に指を押し当てる。
ルーファスと朱里の様子にアシュレイが髪を掻き上げながら不機嫌な顔になって撫すくれる。
「お前は本当に俺の幼馴染のルーファスなのか?そんな腑抜けになって!」
朱里がルーファスの顔を見て首をかしげる。
「この人と幼馴染なんですか?」
「【刻狼亭】と【風雷商】は昔からの馴染みで代々付き合いがある。父上が生きていた頃にコイツとは出会ったから6歳ぐらいだったか?」
アシュレイが髪を掻き上げて髪をなびかせるような仕草をすると、ルーファスが「昔はマトモな子供だったんだがな・・・」と、少し遠い目をしてから朱里の頬に顔をスリ寄せる。
「お前こそ!ルーファス少し前のお前は、女にデレデレする様な奴じゃなかったはずだろ?大体そんなちんちくりんはお前の趣味じゃなかったはずだ!」
「いい加減にしろ!口が過ぎるぞ!それ以上言う様なら直ぐ様叩き出すぞ!」
アシュレイとルーファスが険悪なムードになると朱里が眉を下げて笑う。
「私が居ると色々話せないだろうから、食器を片付けてこようかな」
朱里が朝食の皿をまとめてトレイに置くと逃げる様にクロと一緒に食堂ルームから出ていく。
ルーファスが嫌そうな顔でアシュレイを睨むと、アシュレイがサッと表情を変える。
真面目な顔でルーファスに静かに微笑む。
「久しぶりだな【刻狼亭】」
「始めからそっちでくればいいものを。久しぶりだ【風雷商】」
「そうは言ってもな【刻狼亭】の女将になる娘を『目利き』するのも【風雷商】の代々の務めだからな」
「そんなものは頼んではいない。アカリ以外はオレは娶ろうとは思っていない」
頬杖を付きながらルーファスが「面倒な奴はこれだから嫌なんだ」と悪態を付けば、アシュレイが「面倒くさいのはお互い様だ」と悪態を突き返す。
「で、本当に何をしに来たんだ?」
「【刻狼亭】の女将を見に来たのと、新しい【刻狼亭】を作ると聞いたから結婚祝いに色々贈ろうと思ってきたんだが、中々に面白い女将でつい揶揄ってしまった」
「お前は昔から素直じゃない奴だよ【風雷商】」
「あとはコレを渡しにきた」
テーブルの上に金色のロケットペンダントを置くと、ルーファスが、ロケットを開けると小さな紙が出てくる。
『しょうらい こくろうていとふうらいていを おおきくする るーふぁす あしゅれい』
名前の後ろには血判までついている辺り、あの頃のルーファス達は大人に憧れる背伸びした子供達だった。
2人で約束をしたのだ。
『妻は作らず2人で店を大きくして自分達の様に悲しい子供を作らない様にしよう』
ルーファスもアシュレイも年齢も同じなら生まれ育った境遇も同じ物だった。
1人息子で母親は居ない。
背負うものは代々続いた老舗の由緒ある物。
父親は妻を亡くした事で何処かいつも悲しみに暮れていて、自分達はいつも目の前に居ても寂しいと思っていた。
父親の悲しみの元は妻を亡くしたことなら、自分達は妻をもたなければ良いと思った。
自分達の様に悲しいだけの存在はこの代限りにしようと。
あの頃は本気で思っていた。
次第に周りに妻はともかく子供は作るべきだと無責任な事を言われ、アシュレイは妻は娶らないが跡取りの子供を作り、既に3人程子供が居る。
始めに約束を破ったのはアシュレイだし、子供の頃の約束でルーファスも気にも留めていない事なのだが、アシュレイはずっと首からこのロケットを下げていた。
アシュレイなりの気持ちの整理のつかない物だったのかもしれない。
結局、ルーファスが番を得て、ようやくアシュレイもロケットを手放し、寂しい子供時代の自分と決別する事にしたのだろう。と、ルーファスは思っている。
「【刻狼亭】の女将は『目利き』だと希少だが扱いが難しい。壊れやすく厳重に壊れない様にしまい込んでおかなければいけない商品・・・と、いうところだな」
「オレの番は繊細なんだ。だから【風雷商】お前も取り扱いには気を付けろ」
食堂ルームに再び朱里が顔を出すと新しいお茶を用意して持ってくる。
「お茶とお茶請けのマフィン置いておきますね」
「ありがとう」
朱里が小さく笑って、アシュレイに頭を小さく下げてからトテトテと部屋から出ていく。
とても演技がかったポーズと共にアシュレイが言うと、ルーファスが半目でアシュレイを見つめ、手はお腹を抱えて笑う朱里の背中をさすっている。
「ああ、【病魔】騒ぎの時に言っていたが、そんな事の為に来たのか?暇な奴だな」
冷めた反応のルーファスにアシュレイが「ぐぬぬ」っと声を絞り出す。
「噂を信じて来たのに、噂と違う!何処が『美女』で『黒真珠』なんだ!」
「オレの番は美女ではなく『可愛い』だ。黒髪黒目、まさに『黒真珠』だろう?まぁ、貴族連中に言われているだけで、オレに言わせれば番の可愛らしさは宝石で例えられる物ではないな」
ルーファスがフッと笑い朱里の髪を撫でると、朱里が顔を上げて困った顔で「お腹痛い~」と手をお腹に当てながら笑う。
「ハァー、ハァー、ふぅ。ごめんなさい。もう、顔見るだけで笑えちゃって、ふふ」
「困った子だな。可愛いアカリのお腹が筋肉痛を起こす前に出て行ってもらおう」
朱里の笑いすぎでにじみ出た涙を唇で吸い取るとルーファスが満足そうに舌で唇を舐め「相変わらず甘い」とクスリと笑うと朱里が「メッ」とルーファスの唇に指を押し当てる。
ルーファスと朱里の様子にアシュレイが髪を掻き上げながら不機嫌な顔になって撫すくれる。
「お前は本当に俺の幼馴染のルーファスなのか?そんな腑抜けになって!」
朱里がルーファスの顔を見て首をかしげる。
「この人と幼馴染なんですか?」
「【刻狼亭】と【風雷商】は昔からの馴染みで代々付き合いがある。父上が生きていた頃にコイツとは出会ったから6歳ぐらいだったか?」
アシュレイが髪を掻き上げて髪をなびかせるような仕草をすると、ルーファスが「昔はマトモな子供だったんだがな・・・」と、少し遠い目をしてから朱里の頬に顔をスリ寄せる。
「お前こそ!ルーファス少し前のお前は、女にデレデレする様な奴じゃなかったはずだろ?大体そんなちんちくりんはお前の趣味じゃなかったはずだ!」
「いい加減にしろ!口が過ぎるぞ!それ以上言う様なら直ぐ様叩き出すぞ!」
アシュレイとルーファスが険悪なムードになると朱里が眉を下げて笑う。
「私が居ると色々話せないだろうから、食器を片付けてこようかな」
朱里が朝食の皿をまとめてトレイに置くと逃げる様にクロと一緒に食堂ルームから出ていく。
ルーファスが嫌そうな顔でアシュレイを睨むと、アシュレイがサッと表情を変える。
真面目な顔でルーファスに静かに微笑む。
「久しぶりだな【刻狼亭】」
「始めからそっちでくればいいものを。久しぶりだ【風雷商】」
「そうは言ってもな【刻狼亭】の女将になる娘を『目利き』するのも【風雷商】の代々の務めだからな」
「そんなものは頼んではいない。アカリ以外はオレは娶ろうとは思っていない」
頬杖を付きながらルーファスが「面倒な奴はこれだから嫌なんだ」と悪態を付けば、アシュレイが「面倒くさいのはお互い様だ」と悪態を突き返す。
「で、本当に何をしに来たんだ?」
「【刻狼亭】の女将を見に来たのと、新しい【刻狼亭】を作ると聞いたから結婚祝いに色々贈ろうと思ってきたんだが、中々に面白い女将でつい揶揄ってしまった」
「お前は昔から素直じゃない奴だよ【風雷商】」
「あとはコレを渡しにきた」
テーブルの上に金色のロケットペンダントを置くと、ルーファスが、ロケットを開けると小さな紙が出てくる。
『しょうらい こくろうていとふうらいていを おおきくする るーふぁす あしゅれい』
名前の後ろには血判までついている辺り、あの頃のルーファス達は大人に憧れる背伸びした子供達だった。
2人で約束をしたのだ。
『妻は作らず2人で店を大きくして自分達の様に悲しい子供を作らない様にしよう』
ルーファスもアシュレイも年齢も同じなら生まれ育った境遇も同じ物だった。
1人息子で母親は居ない。
背負うものは代々続いた老舗の由緒ある物。
父親は妻を亡くした事で何処かいつも悲しみに暮れていて、自分達はいつも目の前に居ても寂しいと思っていた。
父親の悲しみの元は妻を亡くしたことなら、自分達は妻をもたなければ良いと思った。
自分達の様に悲しいだけの存在はこの代限りにしようと。
あの頃は本気で思っていた。
次第に周りに妻はともかく子供は作るべきだと無責任な事を言われ、アシュレイは妻は娶らないが跡取りの子供を作り、既に3人程子供が居る。
始めに約束を破ったのはアシュレイだし、子供の頃の約束でルーファスも気にも留めていない事なのだが、アシュレイはずっと首からこのロケットを下げていた。
アシュレイなりの気持ちの整理のつかない物だったのかもしれない。
結局、ルーファスが番を得て、ようやくアシュレイもロケットを手放し、寂しい子供時代の自分と決別する事にしたのだろう。と、ルーファスは思っている。
「【刻狼亭】の女将は『目利き』だと希少だが扱いが難しい。壊れやすく厳重に壊れない様にしまい込んでおかなければいけない商品・・・と、いうところだな」
「オレの番は繊細なんだ。だから【風雷商】お前も取り扱いには気を付けろ」
食堂ルームに再び朱里が顔を出すと新しいお茶を用意して持ってくる。
「お茶とお茶請けのマフィン置いておきますね」
「ありがとう」
朱里が小さく笑って、アシュレイに頭を小さく下げてからトテトテと部屋から出ていく。
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