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7章
女将と女装商人と旦那様
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朝の日課のアルビーの苗木への水やりが終わり、キッチンで朝ごはんの盛り付けをしていた朱里の背後からルーファスが抱きついてきて、朱里の首筋を後ろから甘噛みすると朱里が小さく笑う。
「朝ごはんはあと少しなので待ってください」
「んっ、アカリを先に齧ってるから急がないでいい」
「つまみ食い禁止です。ふふふ、くすぐったい」
「アカリから良い匂いがする」
「私じゃなくてご飯の匂いですよ?」
朱里が手元で作っていたハニーマスタードをナゲットに付けてルーファスの口元に差し出すとルーファスが口を開いてナゲットを入れてもらう。
「ん、甘さの中にピリっとした感じが良いな。あとナゲットも少し甘い感じがする」
「ナゲットに使ったミンチ肉にお砂糖少し入れてしっとりさせてるの」
「アカリはまた料理のレパートリー増えたんじゃないか?」
「はい。今年の目標の1つにお料理のレパートリー増やす事も入ってます」
「今年のアカリは初っ端から目標を達成していくな」
「まだまだ今年の私は止まりませんよー!」
朱里が「よし、出来た!」と、パンにレタスとトゥートと厚切りベーコンとチーズを挟んだハンバーガーと、フライドポテトとナゲットにコーンスープというジャンクフードな朝ごはんを作り上げ、バスケットに7人分入れてルーファスに持たせると門の外のキャンプ組に配達を任せる。
「いってらっしゃい。戻ってきたら私達もご飯にしましょう」
「行ってくる」
朱里が少し足を伸ばして目を瞑るとルーファスが少しかがんでキスをしてから出掛けて行く。
キッチンで朱里が少し照れながらも「アカリ・トリニアなんだから新妻なら普通の事」と、言って口元を手で押さえて1人ぶつぶつ言っていた。
朱里の耳に「キャイーン」という声が聞こえたのでどうやらまた4人が何かやらかしたんだな?と、苦笑いして食堂ルームに2人分の食事を持って行き、ティーカップと茶葉も持って行く。
お茶を淹れるのはルーファスの仕事で、朱里はその前準備が仕事。
ルーファスがムスッとした顔をして食堂ルームに入ってくると、ルーファスの背後にルーファスより少しだけ背の高いドレスを着た人物が付いて来ている。
見覚えのある顔に朱里が「はて?」と、首をかしげる。
薄緑色の髪に瑠璃色の目。
左目は髪で隠れていて見えない。
「あの、お客様ですか?」
「気にしなくていい。直ぐに叩き出すから」
朱里がルーファスと客人を目で交互に見ると、客人が扇子でテーブルを指す。
「朝からなに胃に重たいもん食わせてんだ?このちんくしゃな使用人は」
ルーファスが肘で客人の鳩尾に攻撃をして黙らせると、ハァっと息を吐く。
朱里はちんくしゃ呼ばわりでムッとしたものの、客人の声に聞き覚えがあり、何より男性の声という事もあって、記憶から引きずり出されたのは1人の商人だった。
「釣書の女装の人だー!!!」
【風雷商】の跡取り息子アシュレイ・ビンクス。
釣書の姿絵と実物の背の高さにイマイチ思い出せなかったが、女装癖のある人物はそれ以外には思い当たらなかった。
「なんだ?使用人も俺の姿絵を見たのか?感想は?」
「えーと・・・笑わせてもらいました?」
「なっ?!」
朱里が正直な感想をそのまま述べるとアシュレイが眉間にしわを寄せる。
そして判ってないなという風に鼻で笑うと朱里に扇子を向ける。
「お前は使用人失格だな」
スパーンと、アシュレイの頭をルーファスが叩き、朱里を抱き上げる。
「うちの番を使用人呼ばわりするな。そして失格なのはお前だ」
「痛っ、ルーファス痛いぞ!このちんくしゃが番?はぁ?」
ルーファスに頭を叩かれアシュレイが朱里をじっと見つめると、朱里が目を逸らして「ふ・・・っふふふ」と肩を震わせて笑いをこらえ始める。
「アカリの変なツボにまた入ったか・・・アシュレイ、とりあえず着替えて来い」
「このドロボー猫め!後で覚えておけ!」
演技がかった言葉を吐いてアシュレイが食堂ルームを出ていくと、ルーファスの胸を叩きながら朱里が声を出して笑いだす。
「ぷはっ、ドロ、どろぼー、猫、あはははは、もう、駄目、お腹苦しっ」
「やれやれ。アカリは笑い上戸だな」
朱里を椅子に座らせるとルーファスがお湯玉を作りながらお茶を淹れて朱里の笑いが静まるのを待って朝食に手を付け始める。
ケホケホと、笑いすぎで咳を出しながら朱里が涙を指で拭い、朝食に朱里も手を付け始める。
「はぁー、笑いました。ああ、でも朝から油物は重かったかな?」
「別に構わないさ。最近は正月関係の縁起物ばかり食べさせられていたしな」
「それです。お正月後は何かこう、お正月になかった物が食べたくなちゃって」
「外の連中はもっと寄越せと騒いでいたけどな」
「ああ、それでさっきの『キャイーン』だったんですね。困った人達だね」
2人で他愛もない話をしながら食事をしているとクロが足元にやってきて「ご飯寄越せー」と騒ぎ立て、2人で交互にクロ用の野菜スティックをあげているとアシュレイが戻ってきた。
「ルーファス!なんだそのだらしない顔は!」
ビシッと指をさしながら男性用の服に着替えたアシュレイに、朱里が再び吹き出す。
「朝ごはんはあと少しなので待ってください」
「んっ、アカリを先に齧ってるから急がないでいい」
「つまみ食い禁止です。ふふふ、くすぐったい」
「アカリから良い匂いがする」
「私じゃなくてご飯の匂いですよ?」
朱里が手元で作っていたハニーマスタードをナゲットに付けてルーファスの口元に差し出すとルーファスが口を開いてナゲットを入れてもらう。
「ん、甘さの中にピリっとした感じが良いな。あとナゲットも少し甘い感じがする」
「ナゲットに使ったミンチ肉にお砂糖少し入れてしっとりさせてるの」
「アカリはまた料理のレパートリー増えたんじゃないか?」
「はい。今年の目標の1つにお料理のレパートリー増やす事も入ってます」
「今年のアカリは初っ端から目標を達成していくな」
「まだまだ今年の私は止まりませんよー!」
朱里が「よし、出来た!」と、パンにレタスとトゥートと厚切りベーコンとチーズを挟んだハンバーガーと、フライドポテトとナゲットにコーンスープというジャンクフードな朝ごはんを作り上げ、バスケットに7人分入れてルーファスに持たせると門の外のキャンプ組に配達を任せる。
「いってらっしゃい。戻ってきたら私達もご飯にしましょう」
「行ってくる」
朱里が少し足を伸ばして目を瞑るとルーファスが少しかがんでキスをしてから出掛けて行く。
キッチンで朱里が少し照れながらも「アカリ・トリニアなんだから新妻なら普通の事」と、言って口元を手で押さえて1人ぶつぶつ言っていた。
朱里の耳に「キャイーン」という声が聞こえたのでどうやらまた4人が何かやらかしたんだな?と、苦笑いして食堂ルームに2人分の食事を持って行き、ティーカップと茶葉も持って行く。
お茶を淹れるのはルーファスの仕事で、朱里はその前準備が仕事。
ルーファスがムスッとした顔をして食堂ルームに入ってくると、ルーファスの背後にルーファスより少しだけ背の高いドレスを着た人物が付いて来ている。
見覚えのある顔に朱里が「はて?」と、首をかしげる。
薄緑色の髪に瑠璃色の目。
左目は髪で隠れていて見えない。
「あの、お客様ですか?」
「気にしなくていい。直ぐに叩き出すから」
朱里がルーファスと客人を目で交互に見ると、客人が扇子でテーブルを指す。
「朝からなに胃に重たいもん食わせてんだ?このちんくしゃな使用人は」
ルーファスが肘で客人の鳩尾に攻撃をして黙らせると、ハァっと息を吐く。
朱里はちんくしゃ呼ばわりでムッとしたものの、客人の声に聞き覚えがあり、何より男性の声という事もあって、記憶から引きずり出されたのは1人の商人だった。
「釣書の女装の人だー!!!」
【風雷商】の跡取り息子アシュレイ・ビンクス。
釣書の姿絵と実物の背の高さにイマイチ思い出せなかったが、女装癖のある人物はそれ以外には思い当たらなかった。
「なんだ?使用人も俺の姿絵を見たのか?感想は?」
「えーと・・・笑わせてもらいました?」
「なっ?!」
朱里が正直な感想をそのまま述べるとアシュレイが眉間にしわを寄せる。
そして判ってないなという風に鼻で笑うと朱里に扇子を向ける。
「お前は使用人失格だな」
スパーンと、アシュレイの頭をルーファスが叩き、朱里を抱き上げる。
「うちの番を使用人呼ばわりするな。そして失格なのはお前だ」
「痛っ、ルーファス痛いぞ!このちんくしゃが番?はぁ?」
ルーファスに頭を叩かれアシュレイが朱里をじっと見つめると、朱里が目を逸らして「ふ・・・っふふふ」と肩を震わせて笑いをこらえ始める。
「アカリの変なツボにまた入ったか・・・アシュレイ、とりあえず着替えて来い」
「このドロボー猫め!後で覚えておけ!」
演技がかった言葉を吐いてアシュレイが食堂ルームを出ていくと、ルーファスの胸を叩きながら朱里が声を出して笑いだす。
「ぷはっ、ドロ、どろぼー、猫、あはははは、もう、駄目、お腹苦しっ」
「やれやれ。アカリは笑い上戸だな」
朱里を椅子に座らせるとルーファスがお湯玉を作りながらお茶を淹れて朱里の笑いが静まるのを待って朝食に手を付け始める。
ケホケホと、笑いすぎで咳を出しながら朱里が涙を指で拭い、朝食に朱里も手を付け始める。
「はぁー、笑いました。ああ、でも朝から油物は重かったかな?」
「別に構わないさ。最近は正月関係の縁起物ばかり食べさせられていたしな」
「それです。お正月後は何かこう、お正月になかった物が食べたくなちゃって」
「外の連中はもっと寄越せと騒いでいたけどな」
「ああ、それでさっきの『キャイーン』だったんですね。困った人達だね」
2人で他愛もない話をしながら食事をしているとクロが足元にやってきて「ご飯寄越せー」と騒ぎ立て、2人で交互にクロ用の野菜スティックをあげているとアシュレイが戻ってきた。
「ルーファス!なんだそのだらしない顔は!」
ビシッと指をさしながら男性用の服に着替えたアシュレイに、朱里が再び吹き出す。
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