黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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6章

冬の従者

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 「若旦那、何だか面倒くせぇのが門の所に居たけど・・・って、何だこいつ等!」

お屋敷に朝の早くから立ち寄ったハガネの第一声がこれです。
こいつ等呼ばわりされているのは勿論、4人の犬獣人の人達。

「ハガネか。門の前は後で処理する」

「ハガネ。おはようございます」

「若旦那、アカリ、おはようって言いてぇけど、こいつ等どうしたんだ?」

「昨日、門の前で『踊り子』さんの魅了に対処出来なかったから、こちらに泊まってもらったんだけど・・・夜中に1階は歩き回るなって言ったのに、言う事聞かなかったから、ルーファスが怒ってグルグル巻きにしたの」

 縄で縛られ放置されて一夜を明かした間抜けな4人のワンコ達です。
お腹が空いたとかでキッチンを漁った後に、何を考えたのか1階を探検したようで・・・。

 私はすやすやと寝ていて気付かなかったんだけど、どうやら私の部屋にも侵入したみたいで一緒に寝ていたルーファスにガブガブされたみたいです。
ルーファスは獣化していたので文字通りガブガブしたのです。

「キューン・・・」
「クゥーン・・・」

 切なそうに鳴いてますけど、自業自得なので私にはどうする事もできないです。
懲りない4人なのでお灸はすえておくべき。

「ハガネ、朝ごはん食べていく?」

「おう、何か食わしてくれ。ってか、作ろうか?」

「大丈夫。パンは焼いたし、ポトフも出来てるからベーコンと目玉焼き焼くくらいだからね」

 ハガネがワシワシと頭を撫でてから食堂ルームの椅子に座ると、ハガネの後ろで「キャンキャン」騒ぐ4人の大合唱にハガネがからかう様に白い歯を見せて笑って、テーブルの上のパンをかじる。

ぐぅぅぅぅ~。

腹ペコ4人組のお腹の音にハガネがカラカラ笑って大うけしながら、「仕方ねぇなぁ」と、縄を解く辺り、ハガネも優しいのです。

まぁ、4人の分もご飯は用意しておいたんですけどね。
うん。我ながら甘い。

「食事が終わったら外の『踊り子』に話をつけておきたいのでな、アカリを少しの間頼めるかハガネ」

「そりゃあいいけど、若旦那1人で大丈夫か?こいつら・・・は、役に立ちそうにねぇよなぁ」

 ルーファスとハガネが4人を見ると4人は食事の手を止める事無く「無理すっ」と、声をそろえて言う。
そこは「自分達、頑張ります!」と、嘘でも言って「気持ちだけでいい」と、言ってもらう方がベストだと、私は思いますけど・・・。

「私なら終わるまでお料理でもしているから、ハガネも一緒に行って?」

「いや、アカリを1人には出来ない。オレが1人で片付けてくる」

「だってさ、どうすりゃいい?アカリ」

ルーファスは過保護ですねぇ・・・。
でも、この4人もお屋敷に居るなら平気だと思うのですよ?

「『踊り子』さん達は殺傷事件を何度も起こしているのでしょう?心配で私が見に行かなくて良い様に、私の為にハガネを連れて行って下さい。ハガネ、お願いします」

「んじゃ、俺はアカリに従って若旦那と行動だな。お前等、役に立たないなりにアカリの指示に従えよ?アカリに何かあったら若旦那より先に俺がお前等を細切れにするからな?」

 ルーファスは私に片眉を上げて複雑そうな顔をしますけど、危ない所に一人で行かせられるわけがないですし、ハガネなら私を主君にしているから魅了に掛からないので安全なのです。

「確かにハガネならば魅了には掛からないが・・・こいつら4人をアカリの護衛にするにはいささか不安だな」

「まぁまぁ、若旦那。こいつ等は犬族なんだから番犬にはなるだろ?死ぬ気で食らいつくぐらいの気概は持ってんだろ。なっ?お前等」


何やらハガネを尊敬の目で見つめる4人・・・尻尾が左右に揺れて、まさに忠犬状態です。

「し・・・師匠とお呼びしても?」
「アニキぃ」
「弟子入りしても?!」
「兄貴ィ!」

ハガネがニッと笑って私を見ると、私の手を取って小さく手の甲に口づけする。

「俺の主君が許したらな?」

イタズラっ子の様な笑顔でハガネが言うと、4人がバッと私を見てじりじりと私に近付く・・・。

「私は知りませんよ!ハガネ、面倒な事を押し付けましたね?!」

 私がルーファスの後ろに隠れると、4人が「主君とお呼びしても?!」と、調子に乗って言うので、勿論、却下しました。
こんな食い意地の張って言う事を聞かない従者はどうかと思うのです。

 ルーファスとハガネがお屋敷を出て『踊り子』さん達の相手をしている間に、私が食器の片づけを始めると、4人はちゃんと片づけを手伝ってくれて、1人は玄関ホールの外側と内側に1人、もう1人はキッチンのお勝手口の外に、最後の1人は私の近くで護衛をしています。

 ちゃんとお仕事出来たのですね?
顔をキリッと引き締めて警戒を怠らない様にしている様子を見ると、「キャイン」と騒いでいる姿とご飯をガッツいている姿が嘘の様です。


彼らもお仕事モードならば、私もちゃんと自分のお仕事をしなくては。
私のお仕事?勿論、お屋敷に無事に帰ってくる旦那様達に無事に笑顔で出迎える事と、お昼ご飯の仕込みをちゃんとしておくことです。

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