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5章
自傷と笑顔
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白いシーツの塊が嗚咽を漏らすたびに動いて丸くなって部屋の片隅で震えている。
「アカリ、大丈夫か?」
声を掛けるも、嗚咽だけで顔を見せてくれない。
【刻狼亭】の従業員とコミュニケーションすらまともに取れず、脅えて泣いて暴れた朱里はずっと泣いてシーツの中から出てこない。
「アカリ、触るぞ」
ルーファスが近付くとビクッと白いシーツが動くが、シーツごと朱里を抱き上げて部屋の壁にもたれてそのまま座り込み膝の上に朱里を乗せて抱きしめると、朱里の「うーっ」と泣き声をこらえる声がシーツの中からする。
「アカリ、大丈夫だ。誰もアカリを攻撃したりしないから」
「・・・うー・・・っ」
安心しろと言う様に背中を撫でれば、シーツから小さな白い手が出てルーファスの着物を握りしめる。
シーツ越しに頭にキスを落としながら朱里の匂いを嗅げば少し鉄さびた香りが鼻にかすめる。
「・・・アカリ?シーツを取るぞ」
勢いよくルーファスがシーツを剥ぎ取れば、朱里が片方の手を噛み、口と手を血で汚していた。
涙でぐしゃぐしゃの泣き顔で朱里がルーファスを見る。
「アカリ!直ぐに手を口から離せ!」
無理やり朱里の手を口から離すと、朱里が小さく暴れるが片腕で朱里の動きを止めると手の平から鍵を出して空間に鍵をさし、【聖女】の特殊ポーションを出すと朱里の腕に振りかける。
腕の傷が消えると残りのポーションを口元に持っていくが、首を振って嫌がられる。
シーツで朱里の口元を拭い傷なのか手の血の痕かを調べると、唇に噛んだ傷跡と血がにじみ出していた。
「アカリ、唇が傷になってる。ポーションを飲んでおけ」
「・・・グスッ」
涙を目に溜めてルーファスを見る朱里に仕方がないとばかりにポーションを口に含むと朱里の唇を塞ぎ、唇を舐めあげてポーションを流し込む。
「っ!ゲホッ、んっぐ、エホッ」
朱里がむせながらポーションを飲みこむと涙をぽろぽろと流しながらルーファスの胸に顔を押し付けて静かに泣き始める。
「うー・・・っ、グスッ」
「アカリ、自分を傷付けるな。アカリは悪くない」
「・・・グスッ」
「怖がらなくていい。もう大丈夫だからな」
「・・・本当、に?」
「ああ。オレもハガネもアルビーも他の従業員もいる」
「・・・うん」
「だから、アカリは安心して笑っていればいい」
「・・・うん」
朱里が涙を拭いて、少し顔を上げるとルーファスが薄く笑う。
釣られて少し朱里が笑うとルーファスの表情も和らぐ。
「アカリが怖がるモノはオレが全部噛み砕いてやるからな」
「・・・それは怖い、ふふ」
「ハガネ辺りは逆に飲み込まれるかもしれないがな」
「ふふふ」
「ようやく笑ったな」
「ふふ。もう、ルーファス。ふふふ」
「ん、アカリは笑ってた方が良い。」
「うん。ありがとう」
朱里の頬を両手で包み込みながらおでこにキスを落とすと朱里のはにかんだ笑顔が返ってくる。
朱里もルーファスの頬を両手で挟んで目を閉じると唇にルーファスの唇が重なる。
触れ合うだけの軽いキス。
「まだ、色々怖くて迷惑かけちゃうかもしれないけど、頑張るね」
「ああ、でも無理はするな」
「怖がって、従業員の人に迷惑かけたの謝りたい・・・」
「気にするな。きっと今頃、皆でアカリを笑わせる方法でも考えてるさ」
「怒ってないかな・・・」
「怒るより、悲しんでるだろ。あいつ等は何だかんだでアカリが好きだからな」
「ダメな若女将でごめんね?」
「そんなことない。うちの大事な看板女将だからな」
「ふふふ。休業中だけど、ね?」
「クククッ、確かに。オレも休業中だがな」
おでこ同士を合わせながら2人で笑い合えばほんの少し朱里の心が軽くなる。
怖くて整頓出来ない心の中は自分でもわからない。
でも、昔と違って1人で泣かなくていい。
こうして目の前の人が一緒に居てくれるなら、きっと大丈夫。
「アカリ、オレの可愛い番。一緒にこれからも居てくれ」
「はい。私の素敵な旦那さま、一緒にいてくださいね」
少しだけ震える唇にもう一度触れるだけのキスを交わして自分は大丈夫だと言い聞かせる。
久しぶりの【刻狼亭】の部屋で2人で寄り添って眠れば怖い夢も見なかった。
朝になり、魔獣のクロに久しぶりの喜びを体当たりで受け、クロを連れて朝食を取りに食堂へ顔を出せば、従業員から「頭を撫でてもいいですか!」と、言われて目を丸くして頷けば、我も我もと撫でられ・・・。
困惑顔でルーファスを見れば、ルーファスが従業員に手で「散れ」とシッシッと追い払うものの、数分ごとに来るので、結局、ルーファスの後ろに隠れて顔を赤くする朱里に従業員が「若女将~っ」と泣き声を上げた。
「だから、しつこくしたら駄目だと言ったのにねぇー」
テンが小鬼の口にオカズを入れながら、1人クスリと笑う。
「アカリ、大丈夫か?」
声を掛けるも、嗚咽だけで顔を見せてくれない。
【刻狼亭】の従業員とコミュニケーションすらまともに取れず、脅えて泣いて暴れた朱里はずっと泣いてシーツの中から出てこない。
「アカリ、触るぞ」
ルーファスが近付くとビクッと白いシーツが動くが、シーツごと朱里を抱き上げて部屋の壁にもたれてそのまま座り込み膝の上に朱里を乗せて抱きしめると、朱里の「うーっ」と泣き声をこらえる声がシーツの中からする。
「アカリ、大丈夫だ。誰もアカリを攻撃したりしないから」
「・・・うー・・・っ」
安心しろと言う様に背中を撫でれば、シーツから小さな白い手が出てルーファスの着物を握りしめる。
シーツ越しに頭にキスを落としながら朱里の匂いを嗅げば少し鉄さびた香りが鼻にかすめる。
「・・・アカリ?シーツを取るぞ」
勢いよくルーファスがシーツを剥ぎ取れば、朱里が片方の手を噛み、口と手を血で汚していた。
涙でぐしゃぐしゃの泣き顔で朱里がルーファスを見る。
「アカリ!直ぐに手を口から離せ!」
無理やり朱里の手を口から離すと、朱里が小さく暴れるが片腕で朱里の動きを止めると手の平から鍵を出して空間に鍵をさし、【聖女】の特殊ポーションを出すと朱里の腕に振りかける。
腕の傷が消えると残りのポーションを口元に持っていくが、首を振って嫌がられる。
シーツで朱里の口元を拭い傷なのか手の血の痕かを調べると、唇に噛んだ傷跡と血がにじみ出していた。
「アカリ、唇が傷になってる。ポーションを飲んでおけ」
「・・・グスッ」
涙を目に溜めてルーファスを見る朱里に仕方がないとばかりにポーションを口に含むと朱里の唇を塞ぎ、唇を舐めあげてポーションを流し込む。
「っ!ゲホッ、んっぐ、エホッ」
朱里がむせながらポーションを飲みこむと涙をぽろぽろと流しながらルーファスの胸に顔を押し付けて静かに泣き始める。
「うー・・・っ、グスッ」
「アカリ、自分を傷付けるな。アカリは悪くない」
「・・・グスッ」
「怖がらなくていい。もう大丈夫だからな」
「・・・本当、に?」
「ああ。オレもハガネもアルビーも他の従業員もいる」
「・・・うん」
「だから、アカリは安心して笑っていればいい」
「・・・うん」
朱里が涙を拭いて、少し顔を上げるとルーファスが薄く笑う。
釣られて少し朱里が笑うとルーファスの表情も和らぐ。
「アカリが怖がるモノはオレが全部噛み砕いてやるからな」
「・・・それは怖い、ふふ」
「ハガネ辺りは逆に飲み込まれるかもしれないがな」
「ふふふ」
「ようやく笑ったな」
「ふふ。もう、ルーファス。ふふふ」
「ん、アカリは笑ってた方が良い。」
「うん。ありがとう」
朱里の頬を両手で包み込みながらおでこにキスを落とすと朱里のはにかんだ笑顔が返ってくる。
朱里もルーファスの頬を両手で挟んで目を閉じると唇にルーファスの唇が重なる。
触れ合うだけの軽いキス。
「まだ、色々怖くて迷惑かけちゃうかもしれないけど、頑張るね」
「ああ、でも無理はするな」
「怖がって、従業員の人に迷惑かけたの謝りたい・・・」
「気にするな。きっと今頃、皆でアカリを笑わせる方法でも考えてるさ」
「怒ってないかな・・・」
「怒るより、悲しんでるだろ。あいつ等は何だかんだでアカリが好きだからな」
「ダメな若女将でごめんね?」
「そんなことない。うちの大事な看板女将だからな」
「ふふふ。休業中だけど、ね?」
「クククッ、確かに。オレも休業中だがな」
おでこ同士を合わせながら2人で笑い合えばほんの少し朱里の心が軽くなる。
怖くて整頓出来ない心の中は自分でもわからない。
でも、昔と違って1人で泣かなくていい。
こうして目の前の人が一緒に居てくれるなら、きっと大丈夫。
「アカリ、オレの可愛い番。一緒にこれからも居てくれ」
「はい。私の素敵な旦那さま、一緒にいてくださいね」
少しだけ震える唇にもう一度触れるだけのキスを交わして自分は大丈夫だと言い聞かせる。
久しぶりの【刻狼亭】の部屋で2人で寄り添って眠れば怖い夢も見なかった。
朝になり、魔獣のクロに久しぶりの喜びを体当たりで受け、クロを連れて朝食を取りに食堂へ顔を出せば、従業員から「頭を撫でてもいいですか!」と、言われて目を丸くして頷けば、我も我もと撫でられ・・・。
困惑顔でルーファスを見れば、ルーファスが従業員に手で「散れ」とシッシッと追い払うものの、数分ごとに来るので、結局、ルーファスの後ろに隠れて顔を赤くする朱里に従業員が「若女将~っ」と泣き声を上げた。
「だから、しつこくしたら駄目だと言ったのにねぇー」
テンが小鬼の口にオカズを入れながら、1人クスリと笑う。
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