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5章
花と竜
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山脈の中心に湖があり、その中心に広がる花畑。
朱里の知っている馴染みの花もあれば知らない花も多く、アルビーが1つ1つ花の名前と花言葉を教えてくれる。
「この黄色い花はアマランダだよ。前にアカリが着てた浴衣の青い花を探していたんだけど、星型の花びらで似てるかなって思って覚えておいたんだ。花言葉は”恋に落ちる前”だって」
アルビーが3cm程の小さな花びらの黄色い花の前で指を回して透明な球を作り出すと朱里の鼻先に持っていく。
フワッと花の香りがして朱里が喜ぶとアルビーも得意な顔をする。
「キョウチクトウみたいな香りだね」
「うん。種類的にはキョウチクトウに入るからね」
アルビーと朱里が花畑を探索する中、ハガネが湖の畔で釣り竿を垂らしながら魚を釣りつつ朱里達の様子を見て時たま2人に声を掛ける。
「あんまし遠くにいくなよ」
「はーい」
「わかってるー」
朱里とアルビーは2人にしておくと、どこか子供らしさに磨きがかかるのでハガネとしては目が離せない・・・が、実際、この湖畔は安全地区に指定されている為に危険はない。
「アカリ、次はこっちの花!花言葉は”小さな恋人”だよ」
「可愛い花だね。花びらが小さくて可愛い」
「アカリみたいで可愛いでしょ?」
「・・・アルビー意外と口がうまいね?」
「私は正直だよ?」
2人がきゃーと声を上げながらはしゃぐ声でハガネは安心して釣りを再開する。
アルビーが提案した花畑で朱里の快気祝いのピクニックをしよう!と、言う事で包帯が取れたその日にピクニックを決行する事になった。
ハガネは魚担当と、ついでに見張り役をしている。
ルーファスとネルフィームは森で食材を探している。
【刻狼亭】の従業員達も参加したいと騒いでいたが、朱里が騒がしすぎると怖がるかもしれないと今回は遠慮させた。きっと今頃、朱里の為に従業員は何かしらやっていそうではあるが・・・。
吊り上げた魚を下処理して塩と花畑に生えていたローズマリーを一緒にかける。
石を積み上げて作った釜戸に鉄製のケースを置き、油を少し引いて魚を置いて焼いていく。
ハガネが手持ち無沙汰になり、朱里達の所へ行くと2人は花冠に挑戦していた。
「アルビー、蔓をこう持ってきてね・・・あれ?上手くいかない」
「えーと、こう?」
「久しぶり過ぎて忘れちゃった」
そんな会話にハガネが懐かしい物を感じながら朱里の手から作りかけの花冠を取り、器用に作っていく。
「ほれ。こうすれば完成だ」
「ハガネ、やっぱり器用だね」
「すごい!ハガネ、顔に似合わない!」
朱里の頭の上に花冠を置いて、アルビーの手に持っていた花冠も作り上げてアルビーの鼻の上に置く。
「似合わないは余計なんだよ。俺はこう見えて何でも出来んだよ」
朱里が『お姉ちゃん』であった様に、ハガネも『お兄ちゃん』だった時期があり、妹の為に花冠を作った事もある。
もう作る事は無いと思っていた物が主君を持つたびに毎回作っている気がする。
番を忘れる為に求めた主君が与えてくれる物は優しい記憶を呼び戻してハガネの心に新しい記憶として塗り替えさせていってくれる。
「ハガネはすごいね!」
”お兄ちゃんはすごいね!”
笑ってそう言う朱里がどこか幼かった日の妹と被る。
番に固執せずに主君に出会えて良かった。
多分、幸せはそれぞれだろうけれど、ハガネにとってはこの選択が幸せだと言える。
しばらく3人で花冠を作って遊んでいるとネルフィームとルーファスが手に大きな葉で包んだ物を持って帰ってくる。
「アカリには血なまぐさい物を見せるのはアレなんでな。その場で解体してきた」
「女の子に肉の解体を見せるのは良くない」
ルーファスとネルフィームが葉で包んだ肉をハガネに渡すと、ハガネがまた近場に生えていたローズマリーを湖で洗い肉に擦り付けて塩を振り火の上に鉄網を置くと焼いていく。
「アカリ、ただいま。花だらけだな」
ルーファスが花冠と花で作ったネックレスに腕輪と花だらけの朱里とアルビーを見て笑うと2人も顔を見合わせて笑う。
「おかえりなさい。ルーファスすごいでしょ?」
「ああ、すごいな。花の妖精みたいだ」
「子供の頃に戻ったみたい」
「アカリ、すごく可愛い」
照れて笑う朱里にルーファスもアルビーの提案に乗って花畑にピクニックに来て良かったと思いながら、朱里の心が癒えたその時に、今度は2人で来れたらとも思う。
魚を齧りながらアルビーが首をゆらゆらとさせて目を細める。
アルビーの目の前にはルーファスの膝に座る朱里が居て、笑いながらルーファスの口に焼けた肉を放り込んでいる。
ハガネはひたすら肉を焼いてはネルフィームに焼いていく先から食べられて、ネルフィームに早く次を焼けと急かされている。
「うん。今日は楽しい日になって良かった」
アルビーが満足そうに声を出して、次は何をしようかな?と次の予定に胸を膨らます。
朱里の知っている馴染みの花もあれば知らない花も多く、アルビーが1つ1つ花の名前と花言葉を教えてくれる。
「この黄色い花はアマランダだよ。前にアカリが着てた浴衣の青い花を探していたんだけど、星型の花びらで似てるかなって思って覚えておいたんだ。花言葉は”恋に落ちる前”だって」
アルビーが3cm程の小さな花びらの黄色い花の前で指を回して透明な球を作り出すと朱里の鼻先に持っていく。
フワッと花の香りがして朱里が喜ぶとアルビーも得意な顔をする。
「キョウチクトウみたいな香りだね」
「うん。種類的にはキョウチクトウに入るからね」
アルビーと朱里が花畑を探索する中、ハガネが湖の畔で釣り竿を垂らしながら魚を釣りつつ朱里達の様子を見て時たま2人に声を掛ける。
「あんまし遠くにいくなよ」
「はーい」
「わかってるー」
朱里とアルビーは2人にしておくと、どこか子供らしさに磨きがかかるのでハガネとしては目が離せない・・・が、実際、この湖畔は安全地区に指定されている為に危険はない。
「アカリ、次はこっちの花!花言葉は”小さな恋人”だよ」
「可愛い花だね。花びらが小さくて可愛い」
「アカリみたいで可愛いでしょ?」
「・・・アルビー意外と口がうまいね?」
「私は正直だよ?」
2人がきゃーと声を上げながらはしゃぐ声でハガネは安心して釣りを再開する。
アルビーが提案した花畑で朱里の快気祝いのピクニックをしよう!と、言う事で包帯が取れたその日にピクニックを決行する事になった。
ハガネは魚担当と、ついでに見張り役をしている。
ルーファスとネルフィームは森で食材を探している。
【刻狼亭】の従業員達も参加したいと騒いでいたが、朱里が騒がしすぎると怖がるかもしれないと今回は遠慮させた。きっと今頃、朱里の為に従業員は何かしらやっていそうではあるが・・・。
吊り上げた魚を下処理して塩と花畑に生えていたローズマリーを一緒にかける。
石を積み上げて作った釜戸に鉄製のケースを置き、油を少し引いて魚を置いて焼いていく。
ハガネが手持ち無沙汰になり、朱里達の所へ行くと2人は花冠に挑戦していた。
「アルビー、蔓をこう持ってきてね・・・あれ?上手くいかない」
「えーと、こう?」
「久しぶり過ぎて忘れちゃった」
そんな会話にハガネが懐かしい物を感じながら朱里の手から作りかけの花冠を取り、器用に作っていく。
「ほれ。こうすれば完成だ」
「ハガネ、やっぱり器用だね」
「すごい!ハガネ、顔に似合わない!」
朱里の頭の上に花冠を置いて、アルビーの手に持っていた花冠も作り上げてアルビーの鼻の上に置く。
「似合わないは余計なんだよ。俺はこう見えて何でも出来んだよ」
朱里が『お姉ちゃん』であった様に、ハガネも『お兄ちゃん』だった時期があり、妹の為に花冠を作った事もある。
もう作る事は無いと思っていた物が主君を持つたびに毎回作っている気がする。
番を忘れる為に求めた主君が与えてくれる物は優しい記憶を呼び戻してハガネの心に新しい記憶として塗り替えさせていってくれる。
「ハガネはすごいね!」
”お兄ちゃんはすごいね!”
笑ってそう言う朱里がどこか幼かった日の妹と被る。
番に固執せずに主君に出会えて良かった。
多分、幸せはそれぞれだろうけれど、ハガネにとってはこの選択が幸せだと言える。
しばらく3人で花冠を作って遊んでいるとネルフィームとルーファスが手に大きな葉で包んだ物を持って帰ってくる。
「アカリには血なまぐさい物を見せるのはアレなんでな。その場で解体してきた」
「女の子に肉の解体を見せるのは良くない」
ルーファスとネルフィームが葉で包んだ肉をハガネに渡すと、ハガネがまた近場に生えていたローズマリーを湖で洗い肉に擦り付けて塩を振り火の上に鉄網を置くと焼いていく。
「アカリ、ただいま。花だらけだな」
ルーファスが花冠と花で作ったネックレスに腕輪と花だらけの朱里とアルビーを見て笑うと2人も顔を見合わせて笑う。
「おかえりなさい。ルーファスすごいでしょ?」
「ああ、すごいな。花の妖精みたいだ」
「子供の頃に戻ったみたい」
「アカリ、すごく可愛い」
照れて笑う朱里にルーファスもアルビーの提案に乗って花畑にピクニックに来て良かったと思いながら、朱里の心が癒えたその時に、今度は2人で来れたらとも思う。
魚を齧りながらアルビーが首をゆらゆらとさせて目を細める。
アルビーの目の前にはルーファスの膝に座る朱里が居て、笑いながらルーファスの口に焼けた肉を放り込んでいる。
ハガネはひたすら肉を焼いてはネルフィームに焼いていく先から食べられて、ネルフィームに早く次を焼けと急かされている。
「うん。今日は楽しい日になって良かった」
アルビーが満足そうに声を出して、次は何をしようかな?と次の予定に胸を膨らます。
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