黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

文字の大きさ
上 下
79 / 960
5章

セイラン

しおりを挟む
森の精霊の王セイラン。

もう、精霊の王族でキチンとした血筋で残っているのは森の精霊の王セイランと、水の精霊の王の2人だけだった

王達にとって、他の精霊の王族と婚姻を結ぶのは禁忌とされていた。

しかし大地の王と風の王の息子と娘が婚姻を結び、子供を成した。
生まれた子供は土と風の精霊の力を持った子供だった。

強力な力を持った子供に興味を抱いた水の王が、土と風の国を滅ぼし、その子供に無理やり自分の子供を産ませた。
その生まれた子供がサアユの父親だった。

父親は土・風・水の精霊の力を持っていたが、土も風も使い物と呼ぶには弱く、水の精霊の力のみ多少は使える程度の失敗作と水の王に言われていた。

だからなのか、サアユの父親は逃げ出すように村娘と駆け落ちをして子供を儲けた。
しかし、サアユの膨大な魔力は弱い精霊族では近寄れず、母親を殺してしまい、父親はサアユを連れて父王の元へ戻るしか出来なかった。

セイランの父王は水の王のやり方に異議を唱え、戦争になってしまった。
そして、水の王に殺され、セイランは森の王になり、サアユの父親を報復の意味で殺した。

仕上げとばかりに水の王族の血を根絶やしにするつもりで幽閉されたと噂されている隠された王女を求めてアクアトーネ都市に奇襲を仕掛けた。

アクアトーネ都市が近づけば近づく程に自分の心臓がうるさく、沸き上がる不思議な気持ちと高揚感にセイランは「武者震いか?」くらいの気持ちで居たが、アクアトーネ都市に着いた瞬間、解かった。

自分の『番』がこの街のどこかに居ると。
地下奥深くから、花の様な甘い香りと引き寄せられる感覚。
まさか、水の王の孫が自分の『番』とは驚いたが、王女は初めて見た海と太陽に「綺麗」と涙を流すほどに、何も知らず不遇を強いられてきた。
そんな王女にこれ以上、何かをしようとはセイランは思わなかった。

今までの不遇を自分が幸せな物に変えて行ってやりたい。
それがセイランがサアユに抱いた初めての想いだった。


サアユは出会ってから「アレは何?」と質問して来たり、自分で体験しようと色々と活動的に動いたりと、自由でいて強気で何者にも負けない強い意思を持っていた。

大抵の体験事は失敗したりしてセイランが慌てて駆けつける事が多かったが、サアユはそんな失敗事も笑い飛ばすぐらいには強い女性だった。


魔力は『番の義』で少し安定し、弱い精霊族にも害が無くなったが、相変わらず魔法は使えず、たった1つの魔法しか覚えることは無かった。

そして、魔法が使えない分、体術を極めていっていた。
もうセイランが相手をするのも無理なほどにサアユの体術は目を見張るものがあった。

妖艶で美しく精霊らしい見た目なのに武道派。
それがサアユだった。



「サアユ、また騎士団をいじめたんだって?」

森の国の王宮に戻ると、セイランが腰に手を当てて「出直しておいで!」と騎士団長に言い放つサアユに声を掛ける。
サアユはフフーンと、得意そうに笑いセイランに笑って見せる。

「私に勝てない様じゃセイランを守る騎士団とは言えないわ!」

「そうか。サアユが私を守ってくれるんだろ?」

「当たり前よ。ああ、でも真面目な話。戦力増強に人を雇い入れたいわ」

サアユがセイランに駆け寄り、おかえりなさいと抱きしめるとセイランからキスを送られサアユが微笑んで幸せそうに寄り添う。

「水の王が水人と亜人を集め始めたと聞くしな。増強は必要だな」

セイランにサアユが「なら私達は獣人とかどう?」と笑うとセイランも「考えておこう」と答えた。

まさかこの提案でハガネはサアユにスカウトされるとは思わなかったが・・・。
しおりを挟む
感想 1,004

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

婚約者である皇帝は今日別の女と結婚する

アオ
恋愛
公爵家の末娘として転生した美少女マリーが2つ上の幼なじみであり皇帝であるフリードリヒからプロポーズされる。 しかしその日のうちにプロポーズを撤回し別の女と結婚すると言う。 理由は周辺の国との和平のための政略結婚でマリーは泣く泣くフリードのことを諦める。しかしその結婚は実は偽装結婚で 政略結婚の相手である姫の想い人を振り向かせるための偽装結婚式だった。 そんなこととはつゆ知らず、マリーは悩む。すれ違うがその後誤解はとけマリーとフリードは幸せに暮らしました。

大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた

黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」 幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。