黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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4章

製薬部隊

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「わかった。【風雷商】に話をつけておこう」

ルーファスのため息交じりの承諾にマグノリアが丸メガネを頭の上に掛けながら良い笑顔を向けて「ありがとう!若旦那!今度良い薬あげるから!」と言ってオープンスペースから勢いよく出ていく。
廊下の方で「お前等旅の準備だ!」と、騒いでいる声が響いた。

「やれやれ。ああなると製薬部隊は歯止めが効かないからな」

「魔法通信の準備をしてきます」

「頼んだ。ハァー・・・あいつの顔は見たくないんだがな」

「若、仕方がありませんよ」

ルーファスとシュテンが乾いた声を出しながら書簡を箱詰めしていく。
朱里がヨレヨレになった絵姿を見つつ、小さく肩を震わせている。
ルーファスはその姿を見つつ、オレの番の笑いのツボが判らないな。と、思いつつも楽しそうで何よりだと小さく笑って朱里を抱き上げる。

「ルーファス、あとで釣書のお返事書くんでしょ?」

「ああ、全て断ってアカリと番になったから、もう寄越すなと書いておくさ」

朱里が笑顔でルーファスの頬にチュッと音を立てて唇を寄せてルーファスの耳を触り、ルーファスの尻尾が左右に揺れていた。




ガチャガチャガチャ・・・・ガチャガチャガチャ・・・。

チャパチャパ・・・チャパチャパ・・・。

木箱の中で大量のポーション瓶が揺れながら、運ばれていく。
製薬執務室で在庫のポーションを記録する為にペンを走らせているのは製薬部隊の副責任者のテッチ・ワールミーだ。

栗毛色のくせのある髪を後ろで縛り、緑色のつり目がせわしなくポーションの数を追っている。
少し猫背な彼は前かがみで記録した紙に効能を走り書きして、最後に自分のサインを書く。

「ロタルス、ウェイト。お前等は室長と出掛けるんだから荷造りちゃんとしとけよ?」

ロタルスとウェイトはポーションの木箱にラベルを貼りながらテッチの方を向いて手を止める。
夕焼け色のツンツンした刈り上げの髪にバンダナを巻き付け直してロタルスが笑顔を向ける。

「わかってるって。テッチは心配性だな」

「おれ等も子供じゃないんだから平気だって」

サラサラした紫色の髪を掻き上げながらウェイトもテッチに親指を上げて笑う。

「お前等だから心配なんだよ。ポーションばっか詰め込んで肝心の着替えや食器なんか持って行かなさそうだからな。良いか、マグノリア室長はほっとくと飯も食わずに研究するからお前等がちゃんと面倒みるんだぞ?」

テッチが2人に言い聞かせながら、【刻狼亭】に居残り組となった薄い桃色の髪のピルマーを見る。
ピルマーは灰色の目で同僚の顔を見ながら布袋を取り出す。

「おれ特性の栄養剤作っておいたから、いざとなったらこれを食べて食事要らずで頑張れよ」

ピルマーの言葉にテッチが苦い顔をし、ロタルスとウェイトが「鬼かな?」と固まった。

そんな部下のやり取りに長い白髪をもっさりとさせた製薬部隊の責任者マグノリアが「うちの子達は元気だ」と丸メガネを指でずり上げる。

「まぁ、まだ若旦那が連絡入れている最中だから、そんなに慌てなくてもいいけどさ。でも今回は時間があと1ヵ月も無いからギリギリだと思って動く事、それだけは忘れるなよ。45年後なんておれ等は爺になってんだから後世に出来るだけ資料を残せるぐらいの成果は出しておきたいな」

「わかってるよ。でも、マグノリア室長は話が決まったら直ぐに動くだろ?だったら直ぐに動ける準備をするのは無駄じゃない。そうだろ?」

マグノリアにテッチが朱里の作ったポーションを割れにくい瓶に移し替えてポーションホルダーに入れた物を渡す。
テッチの頭をわしわしと撫でながらポーションホルダーを手に嬉しそうにしてマグノリアが笑顔を見せる。

「だーっ、もう。いい加減マグノリア室長はおれ等を子供扱いすんなよ!」

「ふふふ。お前等はおれの可愛い弟子だからな。おれを超えるまでは子供さ」

製薬師の中でマグノリアは5本の指に入るほどの薬学士なのだが、研究に没頭したり、薬の効能一番で危険な味の物を生み出すせいで評価は悪いが、同じ薬学と製薬を学ぶ4人はマグノリアを尊敬しているし、師として仰いでいる。
10歳程マグノリアが年齢が上ではある為に子供扱いをされているが、彼らは一応成人男性達である。
そして少し師に似たのか研究熱心で常識にとらわれないところも少しだけある。



そんな彼らの元に【風雷商】との話が終わったと連絡が届いたのは、彼らの準備が整って直ぐだった。
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